臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。

血培陽性です!

2019.01.26

80歳台の女性。

尿路感染症による発熱で、

体動困難となり入院しました。

 

入院時の血液培養は陰性で、

尿培養は素直な大腸菌(E.coli)。

点滴でセフェム系抗菌薬を選択して

順調に発熱も尿所見も改善して

いました。

 

ところが入院4日目に突然の

悪寒戦慄を伴う発熱を来しました。

再度血液培養を2セット採取したところ、

翌日の夕方に細菌検査室から、

「先生!血培陽性でした。4本中1本から

GPC(グラム陽性球菌)が出ました。」

 

こんな時、あなたは次にどうしますか?

このような状況で考えておくべきことは

点滴ラインからの血流感染です。

 

特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus 

aureus)による菌血症は感染性心内膜炎

や腸腰筋膿瘍など、厄介なことに

つながる可能性があり、決して甘く

見てはいけません。

 

患者さんの状態によっては、

菌が同定される前に適切な抗菌薬に

変更するなど、迅速な対応が必要と

なります。

 

一方で、血液培養を採取する際の

汚染(Contamination)の可能性も

考えられます。

具体的には表皮ブドウ球菌

(Staphylococcus epidermidis)の

場合です。

 

そこであなたは、

「菌の同定や感受性はどうですか?」

と聞いてみましたが、「明日にならないと

分かりません」と言われてしまいました。

 

でもあなたは、ここで引き下がっては

いけません。

 

「コアグラーゼはどうですか?」

聞いてみて下さい。

 

コアグラーゼ陽性か陰性かで、

菌がある程度推察できます。

 

もし、コアグラーゼ陽性(CPS:

Coagulase Positive Staphylococcus)

なら黄色ブドウ球菌

 

コアグラーゼ陰性(CNS: 

Coagulase Negative Staphylococcus)

なら表皮ブドウ球菌となります。

 

4本中1本でCNSなら、汚染菌の可能性

が高くなり、もう少し様子を見ても良い

かな?と判断できます。

 

一方、CPSなら点滴ラインからの

血流感染がより疑わしくなるので

ラインの抜去・差し替えと共に

抗菌薬の変更を検討します。

 

臨床的にヤバそうな患者さんなら、

MRSAの可能性を考えてバンコマイシン

(VCM)を考慮します。後日、MRSAでは

ないことが判明すれば第1世代セフェムの

セファゾリン(CEZ)を選択します。

 

状態のよい患者であれば、そう慌てる

ことはないかもしれません。しかし、

状態の悪い患者さんに血液培養で

GPCが検出されたら、速やかな対応が

必要となる場合があることは知って

おいて下さい。

 

こんな時、菌が同定されなくても、

ある程度がヤバいか、ヤバくないかの

判断ができることを知っておきましょう。

(編集長)

 

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