臨床研修ブログ

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直腸潰瘍 その1

2022.03.05

あなたは80歳台の心不全患者さんを担当していました。心不全は落ち着いていますが、入院を契機にADLが低下してしまい、リハビリ以外はベッド上で過ごすことがほとんどでした。

 

そんなある日、病棟の看護師さんから「先生!下血しています。結構な量ですよ」とコールがありました。行って見ると、おむつに野球ボールくらいのコアグラがありました。患者さんは腹痛の訴えはなく、腹部を触診しても柔らかく圧痛もありませんでした。

 

さて、あなたは鑑別に何を考えますか?

黒色便ではない下血の時は一般的に下部消化管からの出血を考えますが、腹痛を伴わない下血では①内痔核、②憩室出血、③直腸潰瘍

この3つを考えてみてください。冒頭の症例は直腸潰瘍からの出血で、内視鏡で止血を行ってもらいました。

 

でも、直腸潰瘍ってどんな患者さんにできるのでしょうか?

 

意外と鑑別に挙げられないのですが、入院中の患者さんで時々遭遇する直腸潰瘍について、J1のくま先生がまとめてくれたのでシェアします。

(編集長)

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直腸に発症する潰瘍性病変は、疾患概念や臨床病理学的特徴から急性出血性直腸潰瘍(acute hemorrhagic rectal ulcer : AHRU)、直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome : MPS)、宿便性潰瘍虚血性大腸炎NSAID起因性大腸潰瘍外傷(浣腸、異物)などに分類されます。特にAHRUや宿便性潰瘍は高齢者の長期臥床患者に多く、直腸粘膜への血流障害が原因となります。

今回はAHRUについてポイントを紹介します。

 

【急性出血性直腸潰瘍(AHRU】

<好発年齢>:高齢者

 

<性 差>:女性>男性

 

<機 序>:ストレスや臥床による血流低下など

<基礎疾患>:

脳血管疾患(最多、脳血管疾患と脳腫瘍を合わせると半数を超えるとされている)、肺炎、閉塞性黄疸、糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全、心不全、肝不全、COPD、敗血症、多臓器不全、膵炎、脱水、不明熱 

 

<症 状>

突然の大量新鮮血下血(1000ml超が多いが、ごく少量の場合もある)

無痛性が多いが、肛門部痛と下痢を契機に診断されたケースも

 

<発生部位>

歯状戦に接するか、その近傍の下部直腸に限局

 

<内視鏡所見>

不整形、帯状、地図状の潰瘍で横軸方向に長く分布

単発も多発もある

潰瘍内部に露出血管を伴うことが多い

 

<病 理>

全周性、輪状、不整形、地図状、類円形、

潰瘍底に露出血管を伴うことが多い

単発も多発もある

 

<治 療>

補液

止血処置(内視鏡、経肛門的結紮術、動脈塞栓術、直腸部分切除、直腸切断術、人工肛門)

治癒までには平均3~5週

(くま)

患者さんとお話し中

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