臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
医者は世間知らずなのか?
この4月から初期臨床研修を開始する皆さん、幾多の苦労を乗り越え、無事に国家試験を突破されました。本当におめでとうございます。これからも更なる試練が待ち受けるでしょうが、国家試験より大変なことはなかなかないはずです(注 個人の感想です)。
さて、表題の言葉ですが、これは以前、実際に患者さんの家族から言われた言葉です。
ある消化器癌を診断した患者さんでした。急性期の処置を終え退院調整をしようとしたところ、家族が退院を拒否。転院や施設への退院も拒否。退院をお願いするためのICでのこと「がんと診断したんだから、がんがある人を家に帰そうなんておかしい。最後まで病院で責任をもって見るべきだ。そんなこともわからないなんて医者は世間知らずだ。」
この発言自体が世間知らずなのですが、この言葉を言われて僕はその後しばらく悩みました。自分は世間知らずなんかではない、と一生懸命自分に言い聞かせようとしていたわけです。
ですが、私は本当に世間知らずなんかではないのでしょうか?
みなさんも、ここまで来るのに勉強はもちろん、それ以外にバイトやサークル、部活などをやって来たと思いますが、就職活動で苦労されたでしょうか?また、臨床研修制度がしっかりしたおかげで、医師のワーキングプアはもうまずあり得ません。この先、なんでも買えるほどの給料ではないにせよ、普通の生活に困ることはまずありません。病院が倒産することはあるでしょうが、仕事にあぶれることを恐れる必要もありません。そういう意味で、普通の感覚という部分からどんどんとずれてしまってくると・・・。
また、通常であれば、新入社員というのは厳しく育てられていくことが多いと思いますが(ホワイト企業ではまた違うかもしれませんが)、もう何にもできない初日から先生、先生と言われてしまうわけです。なんなら学生時代のうちから、先生と言われているかもしれません。
ですので、皆さんは一般的な感覚を持っていないかもしれない、ずれているかもしれない、いわゆるところの世間知らずかもしれません。このことを肝に銘じ、仕事以外のプライベートでの医療者以外との交流も大切にし、謙虚な気持ちで日々のこれからの業務にあたっていただきたいと思います。これからの2年、楽しいこともつらいことも、悔しいことも、医師としての仕事に誇りを持てる出来事もいろんなことが待ち受けています。
また、興味のない科を回らなければならなかったり、不安な救急外来当直が待っていたり、できればやりたくないことも目白押しだと思います。
でも、一つだけ僕が自信をもってお伝えしておきたいことがあります。「人生において無駄な経験はない」ということです。
多くの偉人達も遺している言葉ですが、私は消化器内科医なのにコロナチームの立ち上げから診療と、本当に中心メンバーとして働いてきて、この消化器内科とは関係なく、僕の医師キャリアに何のメリットもないと思われる業務でたくさんのものを得ました。詳細は別の機会に譲りますが、「無駄な経験はない」、これはぜひ覚えて一回しかできない初期研修ですので頑張ってください!
(Nao)
もうすぐ2年間の研修を終える先輩たち
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