臨床研修ブログ

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職業歴の効用

2024.12.10
カテゴリー: 初期研修

あなたは問診の際に患者さんの職業(もしくは職業歴)を聞いていますか?

 

編集長が学生の時は、職業を患者さんに聞くのは、なんだか職務質問をしているみたいで、患者さんを不愉快にさせてしまうのではないか・・・、と当時はその必要性を全く理解できませんでした。ところが今は外来でもERでも、ほぼ全例で患者さんの職業を聞いています。

 

なぜかと言うと、3つの点でメリットがあると思っているからです。

 

1つ目は、診断に役に立ちます。

 

職業や家族構成、宗教、嗜好品や趣味などを聞くのは、診断の大きなヒントになるのは間違いありません。例えば農業や林業を仕事にしている人ならツツガムシを鑑別に挙げるとか、家族内発症があるとか、HTLV1とか住血吸虫とかなら、出身地がどこかが大きなヒントになります。

 

2つ目は、治療に役立ちます。

 

内服薬のアドヒアランスを上げるために職業を把握するのは重要です。例えば飲食店(居酒屋)をやっている人に糖尿病薬を処方するとします。居酒屋なら、起床は10時ごろで朝食は取らずに昼頃から仕込みをして、開店前に食事。夕食は店を閉めて片付けが終わった0時過ぎという感じ。こんな仕事をしている患者さんに糖尿病薬を朝食後として処方してもいつ飲めばいいのか分かりません。患者さんの生活スタイルに合わせて処方時間を変えるなど、アドヒアランスを上げる工夫が大事ですが、職業歴は大きなヒントをくれます。

 

3つ目は、コミュニケーションを円滑にする重要なツールだからです。

 

例えば、金融関係や経理をやっている患者さんなら、具体的に何%とか数字を示して他の疾患との比較をすると理解してくれることがあります。また編集長の経験した患者さんの中には、研究機関に勤めている人で根拠となる文献を渡したことがありました。

 

一方で、農家のおじさんに同じように説明をしても、さっぱり理解してくれませんでした。数字をあまり入れずに、分かりやすい例えを用いる工夫がいります。

 

このように、ERやベッドサイドであなたが患者さんと話している時、実はあなたの言葉が患者さんに理解できない言葉になっていることが良くあります。良く理解できていなくても「はい」と返事しているのです。

 

コミュニケーションの場においては、常に相手の立場、相手の考え方、相手の気持ちを考える必要があります。職業を把握することは、患者さんを理解する重要なヒントをくれます。そして患者さんが理解しやすいように説明の仕方を変えることが出来ます。あなたも上手にコミュニケーションがとれるように、ぜひ職業を必ず聞いてみてください。

(編集長)

総合内科の夕カンファ

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