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水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
外来診療をスムーズにする10のコツ(1)
前回は水戸済生会での外来研修について紹介しました。
一般内科外来を1年間を通して患者さんをフォローすることで、ERとは違った臨床能力が身につくと考えています。
外来では限られた時間の中で患者さんの状態を把握して、必要な検査を計画し、診断さらに治療計画を立てるという、非常に高度なスキルが求められる場です。外来研修を始めたばかりの頃は
上手くいかずに大事なことを聞き出せなかったり、患者さんの話を止められずに時間ばかりかかったり・・・、と言う感じですが、コツをおさえると能率よく、そして患者さんと良好な関係が
作れます。
この外来研修導入前の先輩たちは口をそろえて「今のJ1,J2はうらやましい」と言います。専攻医になって、いきなり外来をやると言っても、どうしていいか分からないものです。
今回から、そんなあなたに役立つ「外来診療をスムーズにする10のコツ」を紹介します。
昨年もこの内容を紹介しましたが、あなたがこの通りにやれば、患者さんに良い印象を持たれて、外来もスムーズに進むはずです。たとえ一部分だけでも取り入れてみると、だんだんとその良さを実感できるはずです。ぜひやってみてください。
1)挨拶と自己紹介
患者さんが診察室に入ってきたら、患者さんの方に体を向けて挨拶です。「お待たせしました。内科の○○です」と、はっきり言いましょう。ここでの注意点は、電子カルテの方に体を向けたままでの挨拶はNGです。これから話を聞くのに、誠意に欠けた印象を持たれてしまいます。そして患者さんの名前を確認して、荷物や姿勢などに配慮しましょう。
この時に付き添っている人にも患者さんとの関係を聞いておくと良いと思います。ここで注意点は「患者さんとのご関係を教えていただけますか?」と聞きくことです。例えばご年配の男性患者さんに付き添っていた方を、勝手に奥さんだと思い込んで「奥さまですね」と話しかけたら、なんと娘さんだった(!)という失敗を編集長は何度もやっています。この後の会話の気まずさと言ったらありません・・・。必ず上記のセリフ通りに尋ねることが大事です。
2)開放型質問から始める
よく言われることですが、「今日はどうしましたか?」など、患者さんが自由に話せるような質問(開放型質問)から始めます。最初の数分間だけでも、こちらから言葉を挟まずに聞くことに徹します。患者さんの方に体を向けて、時々目線を合わせながら話を聞きましょう。
3)言葉かけ,うなずき,相槌で話を促す
患者さんは医師の前では話したいことの半分も話せていません。ホントはもっと話したいと思っています。なので、うなずいたり、上手に相槌を入れたり、「他に心配なことはないですか?」と話を促しましょう。これですごく良い印象を持ってもらえます。誤解を恐れずに言うと、気になっていることを全部話せると、それだけですっきりして検査をせずに安心して帰ってくれます。
(編集長)
患者さんに入ってもらう前の
カルテの確認
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水戸済生会の外来研修2023
初期研修のカリキュラムに外来研修が必修化されて4年目になります。水戸済生会での外来研修は、一般内科外来を1年間を通して行う並行研修で行っています。
具体的にはJ1の秋からJ2の秋までの1年間をかけて、週1回の外来を継続する、というものです。このようなスタイルで外来研修を行っている施設はほとんどないと聞きていますが、長期間にわたって患者さんをフォローできるという大きなメリットがあります。一方で、外来の曜日と指導医を固定すると、どうしても疾患の偏りが出てしまうという問題が生じましたが、現在のJ2は半年経過したところで外来日をシャッフルすることでこの問題はクリアしてきました。今年度も11月からJ1の外来研修を開始する予定です。
外来研修では、「症候・病態について適切な臨床推論プロセスを経て解決に導き、頻度の高い慢性疾患の継続診療を行うために、特定の疾病に偏ることなく、原則として初診患者の診療及び慢性疾患患者の継続診療を含む研修を行う」とされています。
そして、研修目標として「コンサルテーションや医療連携が可能な状況下で、単独で一般外来診療を行える」ことが掲げられています。ERや病棟での診療とは異なり、一般外来診療となると、対象となる患者さんや疾患も異なってきます。当然、やり方も変えていく必要が出てきます。
そこで一つだけアドバイスすると、外来診療では「時間を味方につける」ことがポイントになります。ERと違って、その場で検査を全部やって、診断を付けなくともよいのです。それから、長い経過を見ていくことが重要です。何てことないと思っていた胸部レントゲンの影が半年後には肺がんだったということもあります。
当院では1年間にわたって、各ローテーションと外来診療を並行して行いますので、できるだけ長く患者をフォローして、臨床能力の向上を目指してもらいます。
(編集長)
研修医用の外来診察室
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脊髄梗塞(2)
みなさんこんにちは、研修医のUminekoです。前回に引き続き脊髄梗塞について話していこうと思います。
前回は血管支配や病因など知識面多めでしたが、今回は実際の臨床像などについてまとめていきます。
【臨床症状】
脊髄梗塞の発症経過としては数時間での発症が多く、ほとんどの患者では症状出現時に重度の背部痛や手足の疼痛を持つと言われています。脊髄梗塞の神経学的所見は関与する血管領域によって異なり、その程度としては対麻痺から軽度の痺れまで幅広くあります。そして背中や首の痛みは、通常脊髄虚血が起こっている病変のレベルで発生します。
脊髄梗塞の一般的な臨床症状が前脊髄動脈症候群です。前脊髄動脈の支配する領域である腹側2/3が障害されることで、急速に発現する対麻痺や四肢麻痺、病変レベル以下の温痛覚の低下などが認められます。また自律神経機能の障害により低血圧、性機能障害、膀胱直腸障害が生じる可能性が考えられます。
【診断】
脊髄梗塞の診断にはMRIが必要です。まずはヘルニアや脊柱管狭窄症などの圧迫による脊髄疾患を除外することが大切です。脊髄梗塞でのMRI所見としてはT2強調画像や拡散強調画像での高信号などがあります。特に脊髄血管領域または腹側角に限定したT2高信号はOwl’s eyesやsnake eyesと言われ、脊髄梗塞に特異的な所見となっています。
MRI以外の検査は必ずしも必要ではなく、その他疾患を除外する目的で検査を追加することがあります。(例.大動脈解離鑑別のCT、感染症・炎症性疾患鑑別の腰椎穿刺や髄液検査など)
【治療】
残念ながら脊髄梗塞に対して定められた治療法はまだありません。可能性として脊髄虚血に対する血栓溶解療法が現在調査中との報告もあります。脊髄梗塞を引き起こす根本的な病因がある場合は、2次的な障害が出ることを防ぐ目的に治療する場合があります。
脊髄虚血が起きてしまった時の対処としては脊髄への酸素供給を維持することが大切です。具体的な方法としては酸素飽和度の維持や貧血の改善などをしてみるといいでしょう。
またある報告ではAAAの手術時に内科的予防として脳脊髄液圧を下げる目的にスパイナルドレナージを行ったり、脊髄血流量を改善する働きのあるオピオイド受容体拮抗薬(ナロキソン)を投与したりすることもあるそうです。いろんな報告・検証があるのでみなさんもぜひ調べてみて下さい。
いかがだったでしょうか。
脊髄梗塞は稀な疾患であり、臨床現場ではなかなか見る機会はないかもしれません。ですが脊髄梗塞による症状である麻痺や感覚障害などは日々の診療で多く見ると思います。そのような患者さんと遭遇した際にきちんと脊髄梗塞を鑑別に上げられるかどうか非常に大切だと思います。自分も今回のブログで改めて脊髄梗塞について学ぶことができましたので、今後下肢の麻痺患者さんの診察の際にはきちんと想定できるようにしていきたいと思います。
それではみなさん失礼します。
(Umineko)
カルテを見ながら皆で相談
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脊髄梗塞(1)
みなさんこんにちは、初めてブログを書いています、研修医のUminekoです。
実は水戸済生会に、今秋から新しく神経内科やリウマチ・膠原病内科の先生が常勤としていらっしゃることとなりました。そのため今では総合内科での日々の回診で循環器内科、神経内科、膠原病内科のプロフェッショナルな方々からの熱心なご指導・フィードバックをいただけるという贅沢なものとなっています。
今日はそんな回診の中で話題に上がった「脊髄梗塞」についてまとめてみようと思います。自分としても脊髄梗塞は大学の学びであった以来であり、改めて学び直した内容ですのでみなさんもぜひ一緒に勉強していってください。
そもそも脊髄梗塞とはどういう疾患なのか。梗塞といえば心筋梗塞や脳梗塞などがよく聞き馴染みますが、脊髄梗塞も他の疾患と同じで脊髄を栄養する動脈の虚血が原因で起きる疾患です。発症頻度としては、脊髄動脈が脳動脈と比べてアテローム性変化が少なく、側副血行路が発達しているため、脳梗塞と比べて脊髄梗塞の頻度は極めて少ないと言われています。
【血管支配】
脊髄梗塞を学ぶにあたって、脊髄周囲の動脈について学ばないといけません。脊髄に栄養する血管は主に2種類あり、脊髄前方を栄養する前脊髄動脈と後方を栄養する後脊髄動脈があります。
前脊髄動脈(ASA)は椎骨動脈から発生し、大後頭孔から脊髄円錐まで走る体内で一番長い血管です。各神経根に栄養する際には神経根動脈によって増強されます。有名な動脈としては腰部にあるAdamkiewiczs動脈で、脊髄尾側1/3への栄養を補助していると考えられています。また脊髄深部への栄養はASAから出る中心溝動脈(Sulcul artery)が担っています。
後脊髄動脈(PSA)も椎骨動脈から発生しています。PSAはASAよりも多くの神経根動脈によって補助されていると考えられています。
脊髄への血流は平均動脈圧と脊髄内圧の差である灌流圧の影響を受けます。本来であれば自己調整により脊髄血流は一定のレベルで維持されています。しかし自己調整できない範囲の全身性低血圧や脊髄内圧の上昇は、脊髄を栄養する血管の灌流を減少させ脊髄梗塞を引き起こす可能性があります。
図 脊髄周囲の血管
【原因疾患・要因】
・大動脈疾患:大動脈解離、大動脈瘤、TEVAR後
・全身の低灌流:心停止、全身出血
・心原性塞栓症:細菌性心内膜炎、心房粘液腫
・血管炎:全身性エリテマトーデス、動脈炎
・感染症:細菌性髄膜炎、梅毒
・脊椎・脊髄疾患:脊椎手術後、椎骨動脈解離、脊髄血管奇形
今日はここまでにしようと思います。次回のブログでは脊髄梗塞の症状や診断、治療方法など臨床で知っておくべき内容についてまとめていきたいと思います。それではさようなら。
(Umineko)
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せん妄の対処2
今回はせん妄に対する各薬剤の特徴についてです。
【各薬剤の特徴など】
<第二世代>
リスペリドン(リスパダール®)
液剤の頓服での使用が多い。錐体外路症状(EPS)や誤嚥性肺炎に注意。腎代謝。
クエチアピン(セロクエル®)
食欲増進。耐糖能異常・起立性低血圧に注意。DMには禁忌。QT延長しやすい。
オランザピン(ジプレキサ®)
DMには禁忌。体重増加しやすい。EPSは起こりにくい。抑うつ・双極性障のうつ病相にも適応あり。
アリピプラゾール(エビリファイ®)
ドパミン部分アゴニスト。副作用が起こりにくい。他の抗精神病薬内服下や、切り替え時は精神病症状増悪に注意。抑うつ・双極性障害の躁状態に使用できる。
ペロスピロン(ルーラン®)
抗不安作用が強い。抗幻覚・妄想と鎮静作用は弱い。
<第一世代>
チアプリド(グラマリール®)
せん妄に対し保険適応あり。夕方に処方量を徐々に増量(25→50→75mg)することが多い。腎代謝。遷延注意。脳梗塞後遺症に伴う攻撃的行為、精神興奮、徘徊、せん妄が適応症。
スルピリド(ドグマチール®)
150mgまでの低用量で胃潰瘍などに使用し、600mgまででは抗鬱薬、1200mgで抗精神病薬としての適応。
<そのほか>
トラゾドン(デジレル®、レスリン®)
睡眠―覚醒リズムの適性が必要なせん妄に使用。
抑肝散
元来は小児の夜泣きなどに使用されていた。高齢者の易刺激性によく使用される。
*睡眠薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、抗うつ薬をジャンル毎に記憶したあと、各薬剤の他の疾患適応を考慮に入れて、実際の現場に役に立てればと思います。
(ヒロキ)
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せん妄の対処1
入院した初日からせん妄のためソワソワする患者さんがいます。特に高齢者ではびっくりするほど豹変することがあるのは、あなたも実感していると思います。
出来るな環境調整をしてせん妄を落ち着かせたいところですが、なかなか上手くいかずに薬剤を使用せざるを得ないのも事実です。
以前に先輩研修医のヒロキが書いてくれたせん妄の記事がこんな時に役立ちますので、再度紹介します。合わせて、関連記事もご覧ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【せん妄とは】
せん妄は急性発症の意識混濁に錯覚・幻覚や不穏・興奮・不安が加わった意識変容状態を指す。
様々な原因から発症するが、いずれの場合も同様の症状を示す。認知症に合併することも多い。
病態としては大脳辺縁系や脳幹を中心とする毛様体賦活系の障害によって引き起こされる。
【せん妄治療】
せん妄の原因や発症要因となっている身体的な問題を治療することである。第二に環境調整を行う。家族や親しい人に付き添いをしてもらい、患者の周辺になじみのあるものを置くなども有効である。
薬物療法は第三の手段であるが、幻覚、不穏、焦燥が強く、しかも早急に改善を図る場合はこれが第一選択となる。最後の手段として、四肢や体幹の抑制による身体拘束がある。
【せん妄の薬物療法】
薬物使用の第一選択薬は抗精神病薬である。意識レベルを落とさずに鎮静をかける作用があるためである。
現在は第二世代が第一世代よりも副作用が少ないため、リスパダール、セロクエル、ジプレキサ、ルーラン、エビリファイが中心に用いられる。
各薬剤の特徴は次回に続きます。
(ヒロキ)
回診のメンバーが代わりました♪
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救命救急センターだより「脳死と植物状態」
長い長い長い夏も終わりを告げ、だいぶ涼しくなってきましたね!来年は涼しい夏であることを期待しますが、期待だけに終わるでしょうね…
さて、本日も空を夢見る消化器内科医ことNaoです。こんにちは。この間の当番日は雨で飛べず、不完全燃焼中です。
今日のお話しは「脳死」と「植物状態」の違いです。
医者なら即答できなければいけない質問かもしれません。が、恥ずかしながら、医者を10年以上やっておりましたが、今までその違いを明確に区別できていませんでした。いや、ほんとに恥ずかしながら、ですね。
植物状態と脳死、これは実は厳密には同じ土俵で語る内容ではありません。植物状態というのは患者さんの状態を表す言葉で、脳死(本来は全脳死)は生理学・解剖学的な障害部位を指す言葉であり、本来対比されるべきではありません。
細かいことを話し始めると、とてもとてもブログにまとめられないので…(神経内科の師匠に話を聞いたら、難しくて途中から全く理解できませんでした) なので、これから脳神経を専門にしていく学生さんにとっては、ちょっとおかしいぞ、っていう内容もあるかもしれません。ごめんなさい。とりあえず、皆さんが考えるきっかけづくりになれればと思い、記事を書いてみます!ちょっと長くなりますが、記事を分けずに書き切ります。
さていわゆる「植物状態」については明確な定義はありませんが、一般的には
「大脳半球の機能障害により、覚醒状態が欠如した状態であり、自律神経反射や運動反射を維持できるだけの還納および脳幹機能は保たれている状態。」
つまるところ、「栄養さえ与えられ続ければ、人工呼吸器などの助けなしに生命機能の持続がなされる状態」を指します。
脳の機能部位で言うと、大脳の機能は失われているが、生命維持のために必要な脳幹部の機能はある程度保たれている状態です。そして植物状態は非常にわずかな可能性ながら、機能が回復する可能性は否定されない、と言えると思います。
一般的に言われる「脳死」は「全脳死」を指し、「脳幹を含む全脳髄が不可逆的に機能を失った状態」となります。
脳の機能はすべて失われ、機械のサポートなしには呼吸をすることもできなくなっており、もちろん体を動かす、言葉をしゃべる、そもそも感情などの人間的活動はすべて失われています。自律神経のコントロールもありませんので、レートコントロールすらされないため、一般的には10日程度で致死的な経過は免れないと考えられます。
更なる脳死の話の前に、私たちが一般的に死亡診断を行うときに何をするかを考えてみましょう。
この記事を読んでくださっているほとんどの方は学生さんだと思いますので、死亡診断の場面にまだ立ち会ったことがないかもしれませんが、僕は以下の手順で死亡診断を行います。
①聴診器を用いて心音が聴取されないことを確認(心拍動の確認)、装着している場合は心電図モニターの確認。
②(人工呼吸器を用いている場合は接続を外して)呼吸音が聴取されないことを確認(自発呼吸の停止の確認)
③ペンライトを用いて瞳孔の診察(対光反射の消失および瞳孔散大の確認)
この3つの徴候をもって死亡診断を行い、時刻を確認の上で死亡宣告と患者さんへの挨拶および礼。この診断法で確認されるのは心臓死です。
脳死は、心臓死の前の、まだ各臓器が血流を得ていて臓器死に至る前の段階で死亡を確定し、臓器は生きた状態で取り出し他の生命の維持のために用いる診断法になります。したがって、大前提として、患者さん本人に臓器移植の意思がある必要があります。
脳死には国で定めた判定基準があります。
①深昏睡(JCS 300, GCS 3)
②瞳孔の固定、瞳孔径が左右とも4mm以上
③脳幹反射の消失(対光反射、角膜反射、毛様脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳反射)
④平坦脳波(少なくとも4導出で30分間以上)
⑤自発呼吸の消失(無呼吸テスト)
これを臓器移植に関わらない、脳死判定に豊富な経験を有する医師2名以上で、6時間以上の時間をあけて2回行って初めて診断とされています。
そういえば国家試験対策で覚えた気がしましたが、実臨床で脳死と植物状態がごっちゃになっていました。
僕のアメリカ人の知人がアメリカで心臓移植を受けて、コントロール困難な心不全から立ち直り数年家族との時間を過ごせたという経験もありますので、自分自身はその時には僕の体で使える部分はいくらでも使ってもらいたいなと思っています。
日本は臓器移植が非常に少ない国ですが、まず医療者が臓器移植までのステップを理解していないことには、患者さんの想いを汲み取ることができずに終わってしまう可能性があります。
ですので、皆さんは是非脳死判定の手順を理解しつつ、いざというときに患者さんの意思を確認して言葉を伝えられない患者さんの想いを汲み取ってあげていただければと思います。
では、また次の記事で!
(Nao)
ERの一コマ
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1200回達成♪ ありがとうございます!
ブログ読者のみなさま
日頃からこのブログをご覧いただき有難うございます。2016年5月からこのブログを始めて、今回でついに1200回目となりました。
スタートした当初は何を記事にしたら良いのかも分からず、やみくもに記事を書いてはみたものの、1日のページ閲覧(PV)は20PV程度でした。それが、今では最低でも200~300PVになります。
さらに、2021年夏からはアメブロ単体でのブログ発信から、水戸済生会総合病院の採用サイトにブログを載せて、アメブロからのリンクを貼るように変更しました。これによって採用サイトの閲覧数がびっくりするほど伸びました。
もともと医学生と初期研修医向けに始めたブログですから、多くの方に読んでいただいているのはうれしい限りですが、実はこのPV数の伸びの一番の要因が、研修医らに書いてもらっている記事なのです。
例えば、グーグルで「ACT 凝固」で検索してみると、2020年9月にMegu先生が書いてくれた記事が検索の2位に出てきます。他にも、「ガンマ計算」で検索すると2番目に出てきます。これは1年半前にミッフィー先生が書いてくれた記事。他にも検索で上位に来る記事が増えてきていて、研修医自身がちょっと疑問に思って、調べて書いてくれた記事を、医学生や研修医が同じように検索して読んでくれるので、検索順位があがってサイトのPV増加につながっているようです。ブログを始めた当初はこんなことまで想像もしていなかったのですが、ますます研修医の先生達に記事を書いてもらおうと思っています。
そしてこれからも、当院の研修をもっと知ってもらい、なおかつ、あなたに役立つ内容をお伝えできるように、このブログを続けていますので引き続きご愛読をお願いいたします。
(編集長)
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床頭台の上にあるもの
医学生や研修医のあなたは、入院患者さんのベッドサイドに行っても、病気のことを聞きだすのに精いっぱいで、どうしても職務質問のようになってしまいますよね。
でも、会話が弾まなくて患者さんがあまり話をしてくれない・・・、ということはあなたも経験があるはずです。患者さんに話をしてもらうヒントとして、以前にこんな記事を紹介したことが
あります。
今回はその応用編を紹介しましょう。
あなたが今日患者さんのところに行った時、患者さんの床頭台に何があったか見ましたか?
患者さんの床頭台にはいろいろなものがのっています。例えばご家族の写真、特にカワイイお孫さんの写真とか、飼っているイヌやネコの写真はよく見かけます。他にもコーラとかスポーツドリンクなどのジュース類。最近はご年配の患者さんでもスマホやタブレットもよく見かけますし、数独とかクロスワードの本があったり。強者だと、循環器病棟とか腎臓内科病棟でも梅干しが入った瓶とか小さい醤油のボトルが置いてあったりします(笑)。
以前の記事(患者さんとの会話がはずむネタ)でFORMというのを紹介しましたが、患者さんのベッドサイドに行った時に床頭台の上にあるものからFORMにつなげていくと会話の導入がスムーズになります。
例えば「かわいいお孫さんですね、何歳ですか?」とか、「このネコ何て言う種類でしたっけ?」という感じで編集長は多用しています(ちなみに編集長はイヌ派です)。
患者さんの家族のことから始まって、昔の職業とか上手くいくとご主人(奥さん)とのなれそめまで話してくれたことがありました。患者さんとの会話に困ったら、あなたもぜひ試してみてください。
(編集長)
これからベッドサイドへ
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仕事の進め方(2023年版)
明日から10月ですね。今年は残暑が長すぎますが、いかがお過ごしでしょうか?
J1のあなたも仕事を始めて半年になります。仕事を始めて半年もたつと、病棟や当直の仕事にもだいぶ慣れてきて、少し余裕もでてきたと思います。
でも、そうは言っても仕事が無くなるわけはなく、PHSがかかってきて仕事がたびたび中断されてしまいます。またカンファの準備や地方会での発表など、病棟以外の業務も振られるようになります。忙しいですが、成長するチャンスと捉えて前向きに取り組んでもらい
たいです。
そんな毎日ですが、どの仕事から先に片付けるべきか? 生産性を上げて、できるだけ早く帰るにはどうしたらいいか? あなたは意識したことがあるでしょうか?
仕事の進め方をどう考えるのかはすごく大事で、このブログでも過去にたびたび取り上げてきました。その元ネタは「7つの習慣」という本の中の「時間管理のマトリックス」というものですが、少し前に読んだ本に、このマトリックスを少し発展させた考え方が書いてあり、なるほどと思ったのでシェアしたいと思います。
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まずは、7つの習慣の中にある「時間管理のマトリックス」について説明します。
やらなければいけない仕事を、下の図のように4つのカテゴリーに分けた時、あなたは最初にどのカテゴリーの仕事に取り組みますか?
最初はⅠのカテゴリーを選びますよね。これには異論はないと思います。
では2番目に取り組む仕事は何でしょう? たいていの人はⅢのカテゴリーと答えます。
でも、具体的な仕事を想像してみてください。研修医の仕事でⅢのカテゴリーに入るのは・・・、例えば退院直前になって退院指示を書いてくれと看護師さんに言われるとか、夕方になって翌日の点滴の指示を出してくれと看護師さんから電話がかかってくるとか・・。よく考えると、前もって処理できそうなものがほとんどです。
では、カテゴリーⅡに入る具体的な仕事は・・・、例えば学会の発表とか抄読会の当番、専門医試験に向けてのお勉強が相当すると思います。ところが、学会発表の準備が前日まで終わっていないとか、明日の抄読会の準備が出来ていない、と言っても許してもらえませんよね。専門医試験も勉強していなければ落ちるだけです。
つまり、油断していると緊急度も重要度も高いⅠのカテゴリーに移ってしまいます。当たり前ですが、学会や抄読会、試験の準備をちゃんとしていれば、カテゴリーⅡからⅠの事案にならずに済むわけです。仕事を進めるコツは、カテゴリーⅡの仕事を上手く処理して、カテゴリーⅠの事案にならないようにしておくことなのです。
さらに、カテゴリーⅢの仕事を大きくしないように、効率よく片付けることです。Ⅱを大きくして、Ⅲを小さくするように優先順位を決めて取り組んでいくのが理想的です。
ところが、カテゴリーⅡの仕事は大事なことは分かっているけど、どうしても取り掛かりにくいという特徴があります。学会発表の準備をやらなくてはいけないのは分かっているけど、いざとなると後回し・・・。
こんな時に「時間投資思考(ロリー・バーデン著)」という本には、重要度(Important)と緊急度(Emergent)に加えて、「将来的意義(原著ではSignificant)」という3つ目の軸を加えて考えると良いことが書かれています。
将来的意義(Significant)のイメージ
例えばあなたのキャリア形成を考えてみるとイイと思います。将来、どの診療科に進むか?専門医資格などを、いつ取得するのか?といったキャリア形成から見た場合に重要なことがカテゴリーⅡに相当します。専門医資格取得には学会発表が条件となっていることが多いですから、学会発表ととらえるより、その先の専門医資格のための準備ととらえると、少しやる気がでませんか?。
「今」重要なのは何か?だけでなく、「後」に重要な効果を生むものは何か?ということまで考えて判断を下ことが必要なんだと思います。あなたもちょっと意識を変えて仕事に取り組んでみてください。
(編集長)
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