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水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
せん妄の対処2
今回はせん妄に対する各薬剤の特徴についてです。
【各薬剤の特徴など】
<第二世代>
リスペリドン(リスパダール®)
液剤の頓服での使用が多い。錐体外路症状(EPS)や誤嚥性肺炎に注意。腎代謝。
クエチアピン(セロクエル®)
食欲増進。耐糖能異常・起立性低血圧に注意。DMには禁忌。QT延長しやすい。
オランザピン(ジプレキサ®)
DMには禁忌。体重増加しやすい。EPSは起こりにくい。抑うつ・双極性障のうつ病相にも適応あり。
アリピプラゾール(エビリファイ®)
ドパミン部分アゴニスト。副作用が起こりにくい。他の抗精神病薬内服下や、切り替え時は精神病症状増悪に注意。抑うつ・双極性障害の躁状態に使用できる。
ペロスピロン(ルーラン®)
抗不安作用が強い。抗幻覚・妄想と鎮静作用は弱い。
<第一世代>
チアプリド(グラマリール®)
せん妄に対し保険適応あり。夕方に処方量を徐々に増量(25→50→75mg)することが多い。腎代謝。遷延注意。脳梗塞後遺症に伴う攻撃的行為、精神興奮、徘徊、せん妄が適応症。
スルピリド(ドグマチール®)
150mgまでの低用量で胃潰瘍などに使用し、600mgまででは抗鬱薬、1200mgで抗精神病薬としての適応。
<そのほか>
トラゾドン(デジレル®、レスリン®)
睡眠―覚醒リズムの適性が必要なせん妄に使用。
抑肝散
元来は小児の夜泣きなどに使用されていた。高齢者の易刺激性によく使用される。
*睡眠薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、抗うつ薬をジャンル毎に記憶したあと、各薬剤の他の疾患適応を考慮に入れて、実際の現場に役に立てればと思います。
(ヒロキ)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
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せん妄の対処1
入院した初日からせん妄のためソワソワする患者さんがいます。特に高齢者ではびっくりするほど豹変することがあるのは、あなたも実感していると思います。
出来るな環境調整をしてせん妄を落ち着かせたいところですが、なかなか上手くいかずに薬剤を使用せざるを得ないのも事実です。
以前に先輩研修医のヒロキが書いてくれたせん妄の記事がこんな時に役立ちますので、再度紹介します。合わせて、関連記事もご覧ください。
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【せん妄とは】
せん妄は急性発症の意識混濁に錯覚・幻覚や不穏・興奮・不安が加わった意識変容状態を指す。
様々な原因から発症するが、いずれの場合も同様の症状を示す。認知症に合併することも多い。
病態としては大脳辺縁系や脳幹を中心とする毛様体賦活系の障害によって引き起こされる。
【せん妄治療】
せん妄の原因や発症要因となっている身体的な問題を治療することである。第二に環境調整を行う。家族や親しい人に付き添いをしてもらい、患者の周辺になじみのあるものを置くなども有効である。
薬物療法は第三の手段であるが、幻覚、不穏、焦燥が強く、しかも早急に改善を図る場合はこれが第一選択となる。最後の手段として、四肢や体幹の抑制による身体拘束がある。
【せん妄の薬物療法】
薬物使用の第一選択薬は抗精神病薬である。意識レベルを落とさずに鎮静をかける作用があるためである。
現在は第二世代が第一世代よりも副作用が少ないため、リスパダール、セロクエル、ジプレキサ、ルーラン、エビリファイが中心に用いられる。
各薬剤の特徴は次回に続きます。
(ヒロキ)
回診のメンバーが代わりました♪
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救命救急センターだより「脳死と植物状態」
長い長い長い夏も終わりを告げ、だいぶ涼しくなってきましたね!来年は涼しい夏であることを期待しますが、期待だけに終わるでしょうね…
さて、本日も空を夢見る消化器内科医ことNaoです。こんにちは。この間の当番日は雨で飛べず、不完全燃焼中です。
今日のお話しは「脳死」と「植物状態」の違いです。
医者なら即答できなければいけない質問かもしれません。が、恥ずかしながら、医者を10年以上やっておりましたが、今までその違いを明確に区別できていませんでした。いや、ほんとに恥ずかしながら、ですね。
植物状態と脳死、これは実は厳密には同じ土俵で語る内容ではありません。植物状態というのは患者さんの状態を表す言葉で、脳死(本来は全脳死)は生理学・解剖学的な障害部位を指す言葉であり、本来対比されるべきではありません。
細かいことを話し始めると、とてもとてもブログにまとめられないので…(神経内科の師匠に話を聞いたら、難しくて途中から全く理解できませんでした) なので、これから脳神経を専門にしていく学生さんにとっては、ちょっとおかしいぞ、っていう内容もあるかもしれません。ごめんなさい。とりあえず、皆さんが考えるきっかけづくりになれればと思い、記事を書いてみます!ちょっと長くなりますが、記事を分けずに書き切ります。
さていわゆる「植物状態」については明確な定義はありませんが、一般的には
「大脳半球の機能障害により、覚醒状態が欠如した状態であり、自律神経反射や運動反射を維持できるだけの還納および脳幹機能は保たれている状態。」
つまるところ、「栄養さえ与えられ続ければ、人工呼吸器などの助けなしに生命機能の持続がなされる状態」を指します。
脳の機能部位で言うと、大脳の機能は失われているが、生命維持のために必要な脳幹部の機能はある程度保たれている状態です。そして植物状態は非常にわずかな可能性ながら、機能が回復する可能性は否定されない、と言えると思います。
一般的に言われる「脳死」は「全脳死」を指し、「脳幹を含む全脳髄が不可逆的に機能を失った状態」となります。
脳の機能はすべて失われ、機械のサポートなしには呼吸をすることもできなくなっており、もちろん体を動かす、言葉をしゃべる、そもそも感情などの人間的活動はすべて失われています。自律神経のコントロールもありませんので、レートコントロールすらされないため、一般的には10日程度で致死的な経過は免れないと考えられます。
更なる脳死の話の前に、私たちが一般的に死亡診断を行うときに何をするかを考えてみましょう。
この記事を読んでくださっているほとんどの方は学生さんだと思いますので、死亡診断の場面にまだ立ち会ったことがないかもしれませんが、僕は以下の手順で死亡診断を行います。
①聴診器を用いて心音が聴取されないことを確認(心拍動の確認)、装着している場合は心電図モニターの確認。
②(人工呼吸器を用いている場合は接続を外して)呼吸音が聴取されないことを確認(自発呼吸の停止の確認)
③ペンライトを用いて瞳孔の診察(対光反射の消失および瞳孔散大の確認)
この3つの徴候をもって死亡診断を行い、時刻を確認の上で死亡宣告と患者さんへの挨拶および礼。この診断法で確認されるのは心臓死です。
脳死は、心臓死の前の、まだ各臓器が血流を得ていて臓器死に至る前の段階で死亡を確定し、臓器は生きた状態で取り出し他の生命の維持のために用いる診断法になります。したがって、大前提として、患者さん本人に臓器移植の意思がある必要があります。
脳死には国で定めた判定基準があります。
①深昏睡(JCS 300, GCS 3)
②瞳孔の固定、瞳孔径が左右とも4mm以上
③脳幹反射の消失(対光反射、角膜反射、毛様脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳反射)
④平坦脳波(少なくとも4導出で30分間以上)
⑤自発呼吸の消失(無呼吸テスト)
これを臓器移植に関わらない、脳死判定に豊富な経験を有する医師2名以上で、6時間以上の時間をあけて2回行って初めて診断とされています。
そういえば国家試験対策で覚えた気がしましたが、実臨床で脳死と植物状態がごっちゃになっていました。
僕のアメリカ人の知人がアメリカで心臓移植を受けて、コントロール困難な心不全から立ち直り数年家族との時間を過ごせたという経験もありますので、自分自身はその時には僕の体で使える部分はいくらでも使ってもらいたいなと思っています。
日本は臓器移植が非常に少ない国ですが、まず医療者が臓器移植までのステップを理解していないことには、患者さんの想いを汲み取ることができずに終わってしまう可能性があります。
ですので、皆さんは是非脳死判定の手順を理解しつつ、いざというときに患者さんの意思を確認して言葉を伝えられない患者さんの想いを汲み取ってあげていただければと思います。
では、また次の記事で!
(Nao)
ERの一コマ
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1200回達成♪ ありがとうございます!
ブログ読者のみなさま
日頃からこのブログをご覧いただき有難うございます。2016年5月からこのブログを始めて、今回でついに1200回目となりました。
スタートした当初は何を記事にしたら良いのかも分からず、やみくもに記事を書いてはみたものの、1日のページ閲覧(PV)は20PV程度でした。それが、今では最低でも200~300PVになります。
さらに、2021年夏からはアメブロ単体でのブログ発信から、水戸済生会総合病院の採用サイトにブログを載せて、アメブロからのリンクを貼るように変更しました。これによって採用サイトの閲覧数がびっくりするほど伸びました。
もともと医学生と初期研修医向けに始めたブログですから、多くの方に読んでいただいているのはうれしい限りですが、実はこのPV数の伸びの一番の要因が、研修医らに書いてもらっている記事なのです。
例えば、グーグルで「ACT 凝固」で検索してみると、2020年9月にMegu先生が書いてくれた記事が検索の2位に出てきます。他にも、「ガンマ計算」で検索すると2番目に出てきます。これは1年半前にミッフィー先生が書いてくれた記事。他にも検索で上位に来る記事が増えてきていて、研修医自身がちょっと疑問に思って、調べて書いてくれた記事を、医学生や研修医が同じように検索して読んでくれるので、検索順位があがってサイトのPV増加につながっているようです。ブログを始めた当初はこんなことまで想像もしていなかったのですが、ますます研修医の先生達に記事を書いてもらおうと思っています。
そしてこれからも、当院の研修をもっと知ってもらい、なおかつ、あなたに役立つ内容をお伝えできるように、このブログを続けていますので引き続きご愛読をお願いいたします。
(編集長)
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床頭台の上にあるもの
医学生や研修医のあなたは、入院患者さんのベッドサイドに行っても、病気のことを聞きだすのに精いっぱいで、どうしても職務質問のようになってしまいますよね。
でも、会話が弾まなくて患者さんがあまり話をしてくれない・・・、ということはあなたも経験があるはずです。患者さんに話をしてもらうヒントとして、以前にこんな記事を紹介したことが
あります。
今回はその応用編を紹介しましょう。
あなたが今日患者さんのところに行った時、患者さんの床頭台に何があったか見ましたか?
患者さんの床頭台にはいろいろなものがのっています。例えばご家族の写真、特にカワイイお孫さんの写真とか、飼っているイヌやネコの写真はよく見かけます。他にもコーラとかスポーツドリンクなどのジュース類。最近はご年配の患者さんでもスマホやタブレットもよく見かけますし、数独とかクロスワードの本があったり。強者だと、循環器病棟とか腎臓内科病棟でも梅干しが入った瓶とか小さい醤油のボトルが置いてあったりします(笑)。
以前の記事(患者さんとの会話がはずむネタ)でFORMというのを紹介しましたが、患者さんのベッドサイドに行った時に床頭台の上にあるものからFORMにつなげていくと会話の導入がスムーズになります。
例えば「かわいいお孫さんですね、何歳ですか?」とか、「このネコ何て言う種類でしたっけ?」という感じで編集長は多用しています(ちなみに編集長はイヌ派です)。
患者さんの家族のことから始まって、昔の職業とか上手くいくとご主人(奥さん)とのなれそめまで話してくれたことがありました。患者さんとの会話に困ったら、あなたもぜひ試してみてください。
(編集長)
これからベッドサイドへ
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仕事の進め方(2023年版)
明日から10月ですね。今年は残暑が長すぎますが、いかがお過ごしでしょうか?
J1のあなたも仕事を始めて半年になります。仕事を始めて半年もたつと、病棟や当直の仕事にもだいぶ慣れてきて、少し余裕もでてきたと思います。
でも、そうは言っても仕事が無くなるわけはなく、PHSがかかってきて仕事がたびたび中断されてしまいます。またカンファの準備や地方会での発表など、病棟以外の業務も振られるようになります。忙しいですが、成長するチャンスと捉えて前向きに取り組んでもらい
たいです。
そんな毎日ですが、どの仕事から先に片付けるべきか? 生産性を上げて、できるだけ早く帰るにはどうしたらいいか? あなたは意識したことがあるでしょうか?
仕事の進め方をどう考えるのかはすごく大事で、このブログでも過去にたびたび取り上げてきました。その元ネタは「7つの習慣」という本の中の「時間管理のマトリックス」というものですが、少し前に読んだ本に、このマトリックスを少し発展させた考え方が書いてあり、なるほどと思ったのでシェアしたいと思います。
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まずは、7つの習慣の中にある「時間管理のマトリックス」について説明します。
やらなければいけない仕事を、下の図のように4つのカテゴリーに分けた時、あなたは最初にどのカテゴリーの仕事に取り組みますか?
最初はⅠのカテゴリーを選びますよね。これには異論はないと思います。
では2番目に取り組む仕事は何でしょう? たいていの人はⅢのカテゴリーと答えます。
でも、具体的な仕事を想像してみてください。研修医の仕事でⅢのカテゴリーに入るのは・・・、例えば退院直前になって退院指示を書いてくれと看護師さんに言われるとか、夕方になって翌日の点滴の指示を出してくれと看護師さんから電話がかかってくるとか・・。よく考えると、前もって処理できそうなものがほとんどです。
では、カテゴリーⅡに入る具体的な仕事は・・・、例えば学会の発表とか抄読会の当番、専門医試験に向けてのお勉強が相当すると思います。ところが、学会発表の準備が前日まで終わっていないとか、明日の抄読会の準備が出来ていない、と言っても許してもらえませんよね。専門医試験も勉強していなければ落ちるだけです。
つまり、油断していると緊急度も重要度も高いⅠのカテゴリーに移ってしまいます。当たり前ですが、学会や抄読会、試験の準備をちゃんとしていれば、カテゴリーⅡからⅠの事案にならずに済むわけです。仕事を進めるコツは、カテゴリーⅡの仕事を上手く処理して、カテゴリーⅠの事案にならないようにしておくことなのです。
さらに、カテゴリーⅢの仕事を大きくしないように、効率よく片付けることです。Ⅱを大きくして、Ⅲを小さくするように優先順位を決めて取り組んでいくのが理想的です。
ところが、カテゴリーⅡの仕事は大事なことは分かっているけど、どうしても取り掛かりにくいという特徴があります。学会発表の準備をやらなくてはいけないのは分かっているけど、いざとなると後回し・・・。
こんな時に「時間投資思考(ロリー・バーデン著)」という本には、重要度(Important)と緊急度(Emergent)に加えて、「将来的意義(原著ではSignificant)」という3つ目の軸を加えて考えると良いことが書かれています。
将来的意義(Significant)のイメージ
例えばあなたのキャリア形成を考えてみるとイイと思います。将来、どの診療科に進むか?専門医資格などを、いつ取得するのか?といったキャリア形成から見た場合に重要なことがカテゴリーⅡに相当します。専門医資格取得には学会発表が条件となっていることが多いですから、学会発表ととらえるより、その先の専門医資格のための準備ととらえると、少しやる気がでませんか?。
「今」重要なのは何か?だけでなく、「後」に重要な効果を生むものは何か?ということまで考えて判断を下ことが必要なんだと思います。あなたもちょっと意識を変えて仕事に取り組んでみてください。
(編集長)
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救命救急センターだより「一酸化炭素中毒」
空に憧れている消化器内科医ことnaoです。こんにちは。ようやく涼しくなってきましたね。
いよいよ2024年から医師の働き方改革が本格化しますが、そのせいで時間外労働の厳しい制約があり救急科での診療にも制約が入ってしまっています。働きたいのに働けない、なんて嘆きも出てきますが、それくらい当院では時間外労働しっかり管理されておりますので、若手の先生はご心配なく当院で働いていただければと思います。
さて、意外と対応を慎重にしなければならない一酸化炭素中毒についてお話しさせていただきたいと思います。三次救急病院ですと、定期的に火事などで気道熱傷きたしたり、一酸化炭素中毒になったりという患者さんが搬送されてきます。
一酸化炭素中毒の症状ってどんな症状かご存じでしょうか。軽いと頭痛、めまい、嘔気、皮膚の紅潮程度で、重度になってくると呼吸困難に加えて呼吸抑制、意識障害、痙攣などをきたします。
症状だけを見たときに一酸化炭素中毒っぽいな、っていきなり思うことはないと思います。つまり、症状から鑑別に挙げる疾患ではなく、状況から鑑別にあげる必要があります。
では、一酸化炭素中毒をきたす状況ってどんなでしょう? 家事、練炭自殺、住居用でない地下施設での作業などが考えられます。そうです。わざわざ念を押されなくても最初から鑑別に上がりますよね。
でも、意外と鑑別に上がりにくいことがあります。
それは、特に自殺目的でもなんでもなく、日常のちょっとだけ特殊な事情で一酸化炭素中毒になることがあります。
最近は住宅が高気密化しています。それに伴い住宅の換気システムは向上していますが、換気シ
ステムが何らかの理由で作動していない状況で、家の中で焼き肉をした、とか。雪国ですと、寒い時期に車にエンジンをかけたまま仮眠をしていたら、マフラーの出口がふさがって、排気ガスが室内に逆流してきてというのは定期的にある事故です。また、ガレージで換気扇を回さずに車のエンジンをかけて作業していたなんて言う事例もあります。
多くの場合、救急隊が優秀ですのでしっかり現場のアセスメントをして伝えてくれますが、プレホスピタルの場合は自分が最先着隊の時もあります。その場合は自分が現場でそのアセスメントができなければなりません。それができないと、自分がむしろ危険にさらされる可能性すらあります。ですので、現場の状況把握、情報収集というのは非常に大切です。
ちなみに、ご存じだと思いますが、SpO2では酸素化ヘモグロビンとCO-Hbを区別することができませんので、SpO2が保たれていることと一酸化炭素中毒の軽症、重症は基本的に関係ありません。ですので一酸化炭素中毒は血ガス分析装置でCO-Hbを測定して判断していきます。ただ、タバコ吸いの人は5から最大10%程度くらいまではCO-Hbが含まれていることがありますので、CO-Hbがちょっとくらい高いからと言って慌てず、生活歴の聴取も重要です。
治療は軽症の場合は酸素投与です。CO-Hbが20%を超えてくるような場合は高圧酸素療法を検討したり、挿管管理が必要になることがあります。
10年以上医者をやっていても、病歴聴取が甘かった!と振り返ることがあります。研修医の先生がしっかり問診をとっているので、先に気づいてくれたりすることすらあります。基本って大事です。ではまた!
(Nao)
朝からバタつくERの一コマ
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進行性核上性麻痺(PSP)はhummig birdだけじゃない! その2
前回に引き続き、J1のホナミンのPSPのまとめです。今回はPSPの診断基準を紹介します。
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③PSPの診断基準
前回の記事で紹介した鑑別疾患を踏まえた厚労省作成の診断基準が以下になります。
1.主要項目
(1)40歳以降で発症することが多く、また緩徐進行性である。
(2)主要症候
①垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性衝動性眼球運動の緩徐化であるが、進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる。)
②発症早期(おおむね1~2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足、立直り反射障害、突進現象)が目立つ。
③無動あるいは筋強剛があり、四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ。
(3) 除外項目
①レボドパが著効(パーキンソン病の除外)
②初期から高度の自律神経障害の存在(多系統萎縮症の除外)
③顕著な多発ニューロパチー(末梢神経障害による運動障害や眼球運動障害の除外)
④肢節運動失行、皮質性感覚障害、他人の手徴候、神経症状の著しい左右差の存在(大脳皮質基底核変性症の除外)
⑤脳血管障害、脳炎、外傷など明らかな原因による疾患
(4) 診断のカテゴリー
次の3条件を満たすものを進行性核上性麻痺と診断する。
①(1)を満たす。
②(2)の2項目以上がある。
③(3)を満たす(他の疾患を除外できる。)
私が今回経験した症例は、元々Parkinson病と近医で診断されレボドパを内服されていましたが、発症3年にして歩行不可とPDにしては進行が速い点、入院時にレボドパを数日中止しても症状の増悪がなかった点(レボドパは半減期が非常に短いため、1日飲まなかっただけでも症状悪くなるそう)、身体所見として上肢の筋強剛は左右差なくごく軽度だが体幹の無動が高度(瞬きや表情筋の動きが全くない)である点から、PSPかもしれない!と臨床的に診断。MIBGシンチを施行したところ、取り込みの低下陰性であり、PDの除外ができました。
(ホナミン)
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進行性核上性麻痺(PSP)はhummig birdだけじゃない!
J1のホナミンのブログデビュー記事です。Parkinson病と他院で診断されていた入院患者さんの臨床経過に違和感を感じて、いろいろ調べてくれたことをまとめてくれました。良くまとまっているので、あなたも是非参考にしてみてください♪
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皆さんこんにちは。今日は私と一緒に『進行性核上性麻痺(PSP)』について勉強しましょう。国試受験のときは、PSP=humming bird signという一対一のキーワードしか覚える余裕がなかった私ですが、総合内科をローテーションしている際にParkinson病とPSPの鑑別について学ばせていただきました。拙い文章ですが、私のアウトプットのためにも勉強したことを共有させていただきます。
①PSPってなに?
パーキンソニズム(安静時振戦、筋強剛、無動、姿勢保持障害)をきたす疾患の中でParkinson病についで頻度が高い、中年以降に追好発する神経変性疾患。パーキンソニズムのうち、安静時振戦はマレ。
これがあったらPSPかも?と考える特徴的な所見は、眼球運動障害(垂直性核上性注視麻痺=注視できない、特に下方視、発症3年程度で出現)、頸部後屈(四肢<体幹に目立つ筋強剛)、早期から転倒しやすい(姿勢保持障害のため)皮質下認知症、偽性球麻痺(構音障害や嚥下障害)など。
進行例では、頭部MRIで第3脳室の拡大や中脳被蓋の萎縮(←矢状断でhumming bird signがみられる理由)がみられる。大脳基底核と脳幹を中心にタウ蛋白が異常蓄積するが、その機序は明らかでなく、現時点で有効な治療法はないため対象療法を行う。
予後としては4~5年で寝たきりとなり、5~9年で衰弱で死亡と、進行が速いのも特徴。
②鑑別ってなにがあるの?
鑑別のポイントは様々あり、例えばParkinson病は一側の手の振りが減少するのが特徴らしいのですが、患者さんを観察しても、うーんよく分からない…。そのため、今回はそんな私でも鑑別ができたポイントをまとめてみました!
・Parkinson病(PD)
-頭部MRIで異常所見は見られない。
-心筋シンチグラフィー(MIBG)で後期相での取り込み低下がみられる。
-レボドパがよく効く(十分量投与しても反応性が乏しかったり、逆に薬剤を中止しても症状増悪しなければPDじゃないかも⁉というヒントに。)
-PSPは頸部後屈がみられるが、PDは頸部を前に突き出す姿勢がみられる。
-寝たきりになるまで進行するのに大体15年以上かかる。
・多系統萎縮症(MSA)
-小脳失調(ふらつき、四肢の協調運動障害)、自律神経症状(起立性低血圧、便秘)が特徴。
-頭部MRI T2強調画像で被殻外縁にスリット上の高信号を認める。
・大脳皮質基底核変性症(CBD)
-大脳萎縮や四肢の症状(肢節運動失行、筋強剛、ジストニア)に左右差が見られる
-他人の手徴候(aline hand signとも言う、自分の腕が勝手に動き自分で制御できない)が特徴的
-しかしPSPとCBDの臨床診断は困難なことも多く、基本的に病理診断らしい。
次回は診断基準を紹介します。
(ホナミン)
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【2回目】田口先生の”皮膚科レジデントレクチャー”
今月初めのことですが、水戸協同病院皮膚科部長、筑波大学臨床教授の田口先生による、皮膚科レクチャーの2回目が開催されました。
前回のこの記事でもご説明した通り、以前は水戸済生会にも常勤の皮膚科医がいたのですが、現在は非常勤のみで、お隣の水戸協同病院の皮膚科の先生方に来ていただいています。このようなご縁で、当院のJ2が水戸協同病院の皮膚科をローテートさせてもらうことが増えてきました。
今回のレクチャーのテーマは「薬疹」でした。
入院中でもERでも、患者さんや看護師さんから「薬疹ではないか?」「クスリの影響は?」と聞かれることが良くあります。そうかもしれないけど、安易に薬疹と診断できない悩みは誰でも経験するはずです。そんな薬疹についての基本を非常に分かりやすく教えていただきました。
今回はレクチャーの中から「薬疹の基本」をシェアします。
・投与している間は、悪化・拡大・進行する
⇒原因薬剤を止めないといけない(基本は全部止める)。
⇒止めれば、改善する事例の方が多い。
・第1容疑者は、7日~1ヵ月前から始めた薬
⇒初回投与薬が感作されるのに5日以上かかる。
⇒長期間投与している薬で、薬疹は起こりにくい。
・治療は「ステロイド」
⇒外用はもちろん、重症ではPSL30~60mg/day。
・出現部位は、躯幹からが多い
⇒四肢末端や顔からの出現は稀。
・ウイルス性発疹症との鑑別に注意
⇒安易に、PSL投与とする前に、一度感染症除外を!
・随伴症状と既往歴(薬疹歴)の再チェック
⇒発熱肝機能障害好酸球増多粘膜診は?
・診療上遭遇する9割が播種状紅斑丘疹型を呈する
①躯幹から始まる
②左右対称・ほぼ均一
③個疹は「丘疹 紅斑」
④経過とともに「癒合」
これらを知っておくだけでも、薬疹を疑うことに自信がつきますね。
実は好評のため12月にも田口先生のレクチャーを開催してもらうことになりました。今から非常に楽しみです♪
(編集長)
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