臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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糖尿病の検査 CVRR

2021.07.08
カテゴリー: カンファレンス 内科

糖尿病は、無症状の期間が非常に長く、その間に合併症が進行してしまいます。症状が出た時には既に手遅れという状況になってしまうので、少なくとも診療する側は合併症の程度を把握しておかないといけません。ところが、腎症とか網膜症は比較的把握しやすいのですが、神経障害は典型的な症状を来すまで、把握されていないことも多く見受けられます。

 

そこで今回は糖尿病性神経障害を評価法の一つであるCVRRについて、筑波大学の森本君がまとめてくれました。彼は総合内科で2週間実習をしてくれたのですが、その間に糖尿病症例を経験した中で調べてくれたものをシェアします。

(編集長)

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糖尿病神経障害は、腎症や網膜症と並ぶ、3大合併症の1つで、最も早期に発症、最も頻度が高い合併症です。長年の高血糖により、全身の臓器を支配する交感・副交感神経線維を傷害し、多彩な症状を来します。特に、起立性低血圧などの心血管系自律神経障害は、無痛性心筋梗塞や致死性不整脈を引き起こし、生命に重大な影響を与えるため、早期診断と治療はとても重要です。心血管系自律神経障害の評価方法として、心電図のR-R間隔変動を利用する評価(CVR-R)が用いられます。

 

健常人では、吸気時にR-R間隔は短縮し、呼気時にR-R間隔は延長します。これは、吸気時に迷走神経反射が抑制され、心拍数が上昇し、呼気時に迷走神経反射の抑制が解除され、心拍数が低下することに由来します。心血管系の自律神経障害が生じると、このようなR-R間隔変動が起こらなくなってきます。

 

日本では、R-R間隔変動の評価を変動係数 (Coefficient of Variation of R-R interval  / CVR-R ) を算出することで行います。安静時と深呼吸時に100心拍を十二誘導心電図で記録して、R-R間隔の平均値と標準偏差を算出し、「CVR-R = 標準偏差 / 平均値 × 100 (%)」で求めます。

 

健常人でも加齢によりCVR-Rが低下しますが、安静時のCVR-R < 2.0 % の場合は、心血管系自律神経障害の存在を考えます。また、心血管系自律神経障害によって、深呼吸時と安静時のCVR-Rの差が小さくなることも知られています。

 

(参考文献)

https://www.igaku.co.jp/pdf/1608_tonyobyo-04.pdf

https://www.uptodate.com/contents/normal-sinus-rhythm-and-sinus-arrhythmia

 

森本君と総合内科の研修医2人

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見逃すとまずい失神・・・・山中先生のZoomレクチャー

2021.07.06
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回も山中先生のZoomレクチャーからです。

前回は「失神3兄弟」を紹介しました。そう、心血管性、神経調整性、起立性低血圧でした。

 

そして頻度は少ないものの、見逃すと致死的になる失神を3つを覚えておきましょうとのことでした

あなたは分かりましたか?

 

答えは、

・肺塞栓

・くも膜下出血

・急性大動脈解離

 

これらを疑って、ERで全例造影CTを取る必要はありませんが、「攻めの問診」で疑わしいかどうかを判断しましょう。

 

具体的に

肺塞栓なら、最近息切れはなかったか? 手術や長時間臥床するようなことがなかったか?既往にDVTはなかったか?などを聞いてみます。

くも膜下出血の中には、頭痛を覚えていない人がいます。発症時の強い頭痛が引き金で、迷走神経反射になるのかもしれないそうですが、失神3兄弟にしっくり合致しない時は鑑別に残しましょう。

 

急性大動脈解離では、頸動脈に解離が進展すると脳虚血から失神を来すことがあります。もちろん、痛みによって迷走神経反射という機序もあり得ます。ちなみに片麻痺などの脳梗塞症状で来院する急性大動脈解離もあるので、注意が必要なことは覚えておきましょう。患者さんには意識を失う前に、胸や背中が痛くなかったか聞くだけでも診断のきっかけになります。

(編集長)

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ものの見方・・・ローテーションはなぜ必要か?

2021.07.05
カテゴリー: 専門研修ブログ ブログ

編集長が先日読んだある記事にこんなことが書いてありました。

 

「もしあなたが金槌しか持っていなけれ全ての問題は釘に見えるだろう」

(欲求階層説で有名な心理学者アブラハム・マズロー)

 

いきなり何の事だか分からないかもしれませんが、この言葉の意味はこんなことだと思います。

患者さんのことで、何かの問題を解決する必要に迫られた時、

・消化器内科医は消化器内科の観点で

・消化器外科医は消化器外科の見地で
・循環器内科なら循環器内科の視点で

・看護師なら看護師の視点で

解決策を考えます。

 

つまり、人は自分の持っている「最も使いやすく手近な道具」を使って解決しようとする、ということです。

 

「自分が最も使いやすく手近な道具」を使って問題を解決するということは、もちろん悪いことではありません。これは言い換えれば「長所発揮」であり、強みを生かして課題や困難にチャレンジすることは重要です。

 

しかし、当然ながら全ての問題が「自分が最も使いやすく手近な道具」で解決できる訳ではありません。ところが、無意識に「手近な道具」を使って考えているので、そのことに気づくのに時間がかかります。

 

これを日常臨床に当てはめると、患者さんの問題を解決するためにカンファレンスなどで他の診療科の先生と議論をしたり、看護師さんやリハビリ、ケースワーカーなどと患者さんについて意見を出し合う場が必要ということです。

 

内科専門研修プログラムでは、初期研修でローテーションした診療科であっても、改めて一通りローテーションすることが求められます。もちろん初期研修で担当するのと、専門プログラムで主治医として担当するのとでは意味合いが違いますが、内科の中でも自分の専門領域以外の見方を付けておくことは重要ですし、ローテーションは自分が気づかなかったアプローチを気づかせてくれる貴重な機会と言えます。

 

自分が手にしているのは、多くの場合金槌である

 

ということを自覚しておかないと、自分の知っている範囲でしか考えなくなり、こじつけて解釈したりと、手段が目的化してしまう危険性があります。内科専門プログラムでのローテーションを、自分の診療科以外の医師やスタッフに積極的に相談して、幅広い見方を出来るようなる時間と考えてみてはどうでしょうか?

(編集長)

消化器内科外科カンファの一コマ

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レジオネラ肺炎の肺外症状

2021.07.03
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回も3月まで当院で研修していたマナ先生の書いてくれた記事です。外来研修中に経験したレジオネラ肺炎についてです。

 

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50代男性、頭痛、発熱を主訴に内科初診外来を受診しました。身体所見上髄膜刺激徴候はなく、その他の部位にも明らかな感染徴候はありませんでした。採血をしてみるとCRP 45以上の著明な炎症反応上昇を認め、CTを撮像したところ著明な肺炎像を認めました。そして、検査の結果レジオネラ肺炎の診断になりました。

 

 

他の方がレジオネラ肺炎のことについてはまとめてくださっていたのですが、肺外症状から診断に至ったレジオネラ感染症を経験することができたので、今回はこの肺外症状について簡単にまとめたいと思います。

過去のレジオネラの記事はこちら

 

●症状

・潜伏期間は2-10日程度。

・全身倦怠感、頭痛、食欲不信、筋肉痛など全身症状から始まり、乾性咳嗽、悪寒、胸痛、呼吸苦が見られるようになる。

・傾眠、昏睡、幻覚、四肢振戦などの中枢神経系の症状や下痢が見られるのが特徴的である。

・適切な治療介入をされなかった場合、1週間以内の経過で急速に進行し、多臓器不全を呈することもある。

 

レジオネラ肺炎の肺外症状として見られることが知られているのは以下の症状である。

・意識障害、頭痛、腹痛、下痢、相対的徐脈、低ナトリウム血症、一過性トランスアミナーゼ上昇など

 

私はレジオネラ肺炎の肺外症状の知識が全くなく、外来で診察した当初は全くレジオネラ肺炎を疑うことはできませんでした。実際に頭部から骨盤までのCTを撮影して初めて肺炎に気づいた状況でした。

 

しかし本症例は入浴施設に行った10日後に頭痛、発熱で発症した、比較的経過としては典型的な症例であったことがわかりました。尿中レジオネラ抗原が陽性であったことからレジオネラ肺炎の診断に至り、抗菌薬治療を開始して経過は良好でしたが、診断が遅れると急速に呼吸障害が増悪することもある疾患であり、診断に至ることができ、よかったです。そして、自分が外来で担当させていただいた患者さんを入院中も担当し治療をさせていただけて心に残る症例となりました。

 

今後外来をするにあたって今回のように最初は診断が思いつかず難しい症例も多いと思います。研修医の間に、指導医の先生のご指導のもと内科初診外来を担当させていただける環境に感謝し、1人ひとりの患者さんから吸収し、たくさんのことを勉強させていただきたいと思います。

(マナ)

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【小児科から③】 こども病院のレジデントレクチャー継続開催中です

2021.07.01

こんにちは。小児科の貴達です。

 

前回の小児科からの記事でも書きましたが、水戸済生会総合病院の隣には茨城県立こども病院があり、小児科についてのレジデントレクチャーを週1-2回のペースで開催しています。小児科ローテーション中はもちろん、昼に開催しているため、どの科を回っているときにも小児科に興味があるレジデントは積極的に参加してくれています。

 

この1か月で小児アレルギー、小児感染症、心臓超音波、遺伝学、など様々な分野のレクチャーを開催できています。また、週1-2回のペースでレクチャーがあるため、網羅的に学習をすることが可能です。

 

例えば、私の専門分野は小児アレルギーなのですが、食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などカバーしている疾患は多岐に渡ります。また、救急外来の対応の仕方、入院管理の仕方など、学ぶべき項目はたくさんあります。今年度中に30回のレクチャーを開催し、小児アレルギー分野について自信をもって診療ができるようにレクチャーしていきます。

 

 

水戸済生会総合病院以外でも茨城県立こども病院をローテーションできる病院はありますが、初期研修中の2年間を通じて継続して小児科臨床のレクチャーを受けられるのは水戸済生会総合病院しかありませんので、小児科に興味があるレジデントには大きなメリットだと思います。

 

今後ともより魅力的なレジデントレクチャーを継続して開催していきます。

 (貴達)

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