臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
救命救急センターだより「大動脈疾患の診断」
ようやくなんとか無線従事者免許を取得し、着々と空飛ぶ消化器内科を目指しているNaoです、こんにちは。
わたしは初期研修中、必修のほかは興味のある科だけを回り、研修医の中でも最も履修診療科が少ないのではないか、というほど他科経験が少ないです。加えて、後期研修制度は現在のような制度ではなかったので消化器内科をいきなり専門にしました。そこで何が言いたいかというと、救急医としてはあまりに他科の知識がないことが足かせになっているわけです。今となっては整形外科とか皮膚科とか精神科とか眼科とか、もっといろいろ経験しておくべきだったなと思います。
さて本題に入りますが、そんなわたしが最近課題にしているのは大動脈疾患の診断をいかに早く行うか、ということです。救急外来では大動脈疾患の患者さんが検査までの間に容体が急変するということが経験されますが、三次救急病院である当院ではそれを一例でも減らし救命に結び付けるために努力しています。
先日、転倒し頭部打撲し、大きな裂創をきたした患者さんの救急要請が入りました。「はいはい、運んできてくださいー」と返事した後に、よく話を聞いたところ足がもつれたわけでなく突然倒れ、受傷。神経学的異常はなさそうだが、収縮期血圧が2桁と血圧低下が認められる。しかも過去に胸部大動脈瘤および腹部大動脈瘤で治療歴がある。これは…!
その日ER番だった救命の先生の指示で、瘤破裂の他いくつかの鑑別を念頭に最速の診断に向けて動き始めました。
患者さんが運び込まれるとすぐに両側上肢で血圧測定し、顕著な左右差あり。ライン確保、採血をしつつエコーを。心タンポはないが、左胸腔にecho free space出現、腹水は認めず。胸部レントゲンで縦郭拡大あり、ただしこれは以前からの所見。でもここまででほとんど胸部大動脈瘤の破裂+おそらく解離を確信。そのままCT室に行き、診断するという病院到着から10分以内に診断および心臓血管外科callまでを行いました。
大血管疾患は、特に胸部大動脈はエコーなどで直接観察することが難しいので、個人的には苦手に感じています。でも、救急科での修行を通じて、これはほかの疾患にも共通することではありますが、大血管疾患の早期診断にはまず疑うことが大切。疑って初療を行いながらその検査前確率を評価していく。検査前確率が高ければまず単純でいいのでCTを撮りに行く、という姿勢が大切であると感じました。優れた内科医は挙げられる鑑別疾患の数が多いと先輩に言われてきましたが、救急医もそうだな、と感じます。
そんなわけで本日のtake home messageは二つあります。
一つ目は、どんな経験が役に立つかわからないので、とにかく一つでも多くのことを経験してほしい。
二つ目は、鑑別を一つでも多く挙げられるように、今のうちに希少疾患を含めた多くの疾患について知識を蓄えてほしい。
この二点です。
たくさん勉強して、たくさん経験して、わたしより優秀な医者になってください。負けないようにわたしも頑張りますが。
(Nao)
救急車到着前の準備中
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