臨床研修ブログ

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低血糖の鑑別

2023.07.22
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回はJ1の小D先生がまとめてくれた記事をシェアします。

 

入院中の患者さんで、糖尿病の既往もなく、血糖降下薬も服用していないのに低血糖を来した場面に遭遇しました。実は低血糖の原因は非常に多く、キノロン系抗菌薬(ガチフロキサシン)、抗不整脈薬(シベンゾリン、ジソピラミド)、アルコールなどの薬剤の確認は必須です。他に肝硬変や末期腎不全、心不全も原因となります。さらに入院患者では敗血症や副腎不全も忘れてはならない鑑別疾患です。

 

そんな経験から、今回は鑑別の進め方についてまとめてあります。ぜひご覧ください。

 

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糖尿病の治療中は低血糖に注意するという話はよく聞きますが、他に低血糖をきたす原因としてどんなものがあるのか調べてみました。

 

一般的に血糖値70mg/dl未満が低血糖とされており、動悸や発汗、振戦といった交感神経症状がみられます。さらに進むとけいれんや頭痛、意識障害といった中枢神経症状が出現します。

 

低血糖の原因検索として、①→④の順番に考えていきます。

①糖尿病治療薬(インスリン、経口血糖降下薬)の使用

②食後低血糖の有無

③アルコール摂取、他の薬剤の使用

④低血糖時の血中インスリン、Cペプチド(CPR)を測定

 

 

①糖尿病治療薬(インスリン、経口血糖効果薬)の使用

使用がある場合は治療に伴う低血糖と考え、使用していない場合は②に移ります。

 

②食後低血糖の有無

食後低血糖がある場合は反応性低血糖を考え、胃切除の既往があれば後期ダンピング症候群を考えます。後期ダンピング症候群は腸管で糖が急速に吸収されてインスリン分泌が亢進して血糖値が下がりすぎてしまうもので、一般的に食後2~3時間後に起こります。他に特発性や境界型・軽症2型糖尿病でも反応性低血糖がみられることがあります。

 

食後低血糖がない場合は③に移ります。

 

③アルコール摂取、他の薬剤の使用

アルコールを多量に摂取すると肝臓での糖産生が低下することにより低血糖をきたすことがあります。特に糖尿病治療を行っている方は低血糖になるリスクが高いため注意が必要です。

また、副作用として低血糖をきたす薬剤にβ遮断薬やジソピラミド(Naチャネル抑制薬)などがあるそうです。

 

③に該当しない場合は④に移ります。

 

④低血糖時の血中インスリン、Cペプチド(CPR)を測定

(ちなみにCPRはプロインスリン(インスリン前駆物質)が分解されるときに発生する物質のことで、内因性インスリン分泌能を推定します。)

 

・血中インスリン↑、血中CPR↑

→血中インスリン抗体を検査し、上昇していればインスリン自己免疫症候群となります。上昇していなければインスリノーマを考え造影CTを考慮します。

 

・血中インスリン↑、血中CPR↓

→隠れてインスリンを注射していることを考えます。

 

・血中インスリン↓、血中CPR↓

→副腎皮質機能検査(ACTH、コルチゾール)を行います。副腎皮質機能が低下している場合は下垂体前葉機能低下(下垂体腺腫、Sheehan症候群、ACTH単独欠損症など)や副腎不全を考えます。

 

副腎皮質機能が低下していない場合は肝硬変や敗血症、糖原病、膵外腫瘍を考えます。

(小D)

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