臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
ステロイドの副作用
みなさんこんにちは。研修医のSatominです。
今年度から総合内科に血液内科と膠原病内科の先生が加わってくださり、総合内科での研修がますますパワーアップしています。今日はそんな血液内科でも膠原病内科でもよく使われるステロイドのお話です。
ステロイドは強い抗炎症作用をもつ薬であり自己免疫性疾患やアレルギー疾患、最近ではCOVID19感染症など幅広く使用されています。剤形も錠剤から注射剤、塗り薬まで数多く展開されています。
様々な診療科で使う機会が多く、私たち医療職にとっては身近な薬ですが副作用も多いため投与には注意が必要です。主な副作用を下記に挙げていきます。
・高血糖
肝臓からの糖の放出を亢進させインスリン抵抗性を高めるため高血糖をきたします。特に食後の血糖値が上昇しやすくなります。対応としてはインスリン療法が基本ですが、もともと2型糖尿病を患っている方は経口血糖降下薬を用いる場合もあります。
・消化管潰瘍
薬剤性の消化管潰瘍といえばNSIADsが有名ですがステロイドでも起こります。ステロイドによる胃粘膜防御作用の低下と胃酸分泌促進作用などにより胃潰瘍や十二指腸潰瘍が生じやすくなります。消化管潰瘍の既往があったりNSAIDsを服用していたりと潰瘍リスクの高い方にはPPI投与が望ましいとされています。
・感染症
免疫を抑制させる働きを持つため感染症にかかりやすくなります。細菌やウイルス感染はもちろん、真菌といういわゆるカビに感染することもあります。また、結核やB型肝炎ウイルスなど一度感染すると体内に潜伏し続ける病原体が、ステロイドによる免疫力の低下のために再活性化し感染症を引き起こすこともあります。治療は各感染症に応じたものを行います。手洗いうがい、マスク、人込みを避けるなどの基本的な感染対策や、過去に結核やウイルス性肝炎に感染していないかの検査も重要になります。
・精神症状
不眠や抑うつ、不安感、焦燥感などをきたす場合がありステロイド誘発性精神病と呼ばれています。原因ははっきりとはわかっていませんが脳内のホルモンと関係していると考えられています。治療はステロイドが減量可能なら減量を、不可なら睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬などで対応しますが確固とした治療法はまだないのが現状です。
・骨粗しょう症
骨強度を低下させるため軽い動作でも骨折しやすくなります。長期のステロイド投与が見込まれる場合は、予防のために投与前から投与開始直後に骨密度の検査を行います。骨密度の低下や脆弱性骨折の既往、ステロイドの投与量が多いなど、骨折を生じやすいと思われる時はビスホスホネート製剤や副甲状腺ホルモン製剤、活性型ビタミンD3製剤などで予防を行っていきます。
これまで挙げてきた副作用はほんの一部で他にも食欲亢進、皮膚萎縮、白内障、骨頭壊死など数多くの副作用があります。
ステロイド製剤は幅広い疾患に使われるため困ったらステロイドというような使い方をされがちですが、同時に副作用も多い薬になります。また投与量や期間にもよりますが突然中止すると副腎不全をきたすため、一度始めるとやめるまで時間のかかる薬です。適応をしっかり考えて使いこなせるようになりましょう。
(Satomin)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
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◆レジナビFair2024 東京 ~臨床・専門研修プログラム~
6月16日(日)東京ビックサイトで直接お会いしましょう!
レジナビ東京に水戸済生会も出展します。
当院の初期研修から専門研修まで包み隠さずお話しします♪
しかも、当日は茨城県立こども病院と隣り合わせのブースで出展しますので、
小児科のことも聞けちゃいます。当院の研修医も多数参加予定ですので、
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臨床実習報告・・・歩行障害の一例③
りんご先生の最後の記事になります。ALSの鑑別についても、とても良く考察できています。そして最後にりんご先生からのコメントもありますので、ぜひお読みください!
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3週間、水戸済生会総合病院総合内科で臨床実習させていただいております、医学部6年のりんごです。ALSについて最後の記事になります。よろしくお願いいたします。
<筋萎縮性側索硬化症(ALS)について③>
【鑑別疾患】
今回は鑑別疾患として、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)、頸椎症性筋萎縮症(頚椎症の一つ)が挙げられました。各疾患の概要と否定された根拠を書いていきます。
・慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)
緩徐進行性または再発性の自己免疫性脱髄性末梢神経疾患。神経障害のパターンはポリニューロパチー(多発神経障害)であり、左右対称性の四肢の弛緩性運動麻痺と感覚障害(手袋靴下型)を主徴とする。末梢神経伝導検査にて髄鞘障害(伝導速度低下や伝導ブロック、時間的分散など)、脳脊髄液検査にて蛋白細胞解離を認める。副腎皮質ステロイド、免疫グロブリン静注療法、血液浄化療法が治療のファーストラインとなるが、3つの治療の間で優劣はない。
・多巣性運動ニューロパチー(MMN)
緩徐進行性の自己免疫性脱髄性末梢神経疾患。左右非対称性・多巣性であること、下位運動ニューロン障害をきたすが感覚障害は認められないことがCIDPと異なる点である。CIDPと同様に末梢神経伝導検査にて髄鞘障害、脳脊髄液検査にて蛋白細胞解離を認める。免疫グロブリン静注療法のみが治療効果を有する。
・頸椎症性筋萎縮症
加齢変性によって頸椎の形状が変化して脊髄が圧迫され、神経支配領域に一致した筋萎縮・筋力低下をきたす。感覚障害はない、もしくは軽微である。緩徐進行性であるが持続的な増悪は見られず、無治療であっても早期に完全回復する例も存在する。また、症状の発現が姿勢と関連することも特徴である。上位運動ニューロン障害や球麻痺症状は見られず、運動障害は上肢に限局する。治療法としては保存的治療と手術がある。
★否定の根拠★
→末梢神経伝導検査で髄鞘障害を示唆する所見を認めなかったこと、脳脊髄液検査で異常を認めず、筋力低下も両上肢にびまん性に生じていたことからCIDPとMMNは否定的であると考えられました。CIDPとMMNは治療可能な疾患ですが、ALSは根本的治療が確立されておらず、告知によって患者さんの今後の人生が一変するため、診断・告知には細心の注意を払わなければなりません。
→慢性進行性の経過や神経支配領域に一致しない筋萎縮と筋力低下を認めたこと、脊椎MRI検査で脊髄圧迫所見を認めなかったことから頸椎症性筋萎縮症は否定的であると考えられました。運動障害と感覚障害を共に認めた場合、主に脊椎疾患が疑われますが、ALSに脊椎疾患が合併しても同じような所見になります。ALSの症状が手術侵襲や麻酔によって急速に進行したと報告する論文もあるため、ALSに特異的な症候を早期に見出して正確に診断することが重要となります。
(余談)
もし、今回の症例のMRI検査で脊髄圧迫所見を認めた場合、どのするべきでしょう…。「MRI検査の脊髄圧迫所見=脊椎疾患有」ではなく、加齢性変化の可能性もあることを念頭に置いて診断を進める必要があると思います。国試では画像を見たらすぐに回答に辿り着ける問題もありますが、実臨床はそう簡単ではないということを今回の実習で痛感しました。多くの疾患を画像検査で診断できる時代になりつつありますが、診断の主役はやはり詳細な問診と身体診察であると改めて学びました。
(最後に)
総合内科の指導医の先生方、初期研修医の先生方のご指導のおかげで充実した日々を過ごすことができました。3週間、本当にありがとうございました。そして、学外実習をするか悩んでいる方、自大学以外の病院に実習申込をするのは本当に緊張すると思います。しかし、慣れ親しんだ環境から離れることは自分を見つめ直す絶好の機会になる(本当になります)ので、勇気を振り絞って挑戦してみてください。
(りんご)
(参考文献)
(1)辻 省次・祖父江 元. アクチュアル脳・神経疾患の臨床 すべてがわかるALS・運動ニューロン疾患. 株式会社中山書店
(2)安藤 哲朗.頸椎症の診療. 臨床神経学. 2012. Vol.52, No.7, p.469-479
「https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/052070469.pdf」
回診の一コマ
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臨床実習報告・・・歩行障害の一例②
3週間、水戸済生会総合病院総合内科で臨床実習させていただいております、医学部6年のりんごです。ALSについての2回目の記事になります。よろしくお願いいたします。
<筋萎縮性側索硬化症(ALS)について②>
【病型】
ALSの臨床症候は①上位運動ニューロン障害、②下位運動ニューロン障害、③球麻痺の3つの症状から成る。①のみ認めるものを原発性側索硬化症(PLS)、②のみ認めるものを進行性筋萎縮症(PMA)、③のみ認めるものを進行性球麻痺(PBP)、①・②・③全てを認めるものを古典型ALSと分類されることが多かった。
近年は、病変が運動系を超えて広範な部位に見られる多系統病変型、両上肢近位部と肩甲帯に筋萎縮が限局するflail arm syndrome、両下肢に筋萎縮が限局するflail leg syndrome、認知症を伴うALSなど、様々な病型が報告されている。
★ここまで多くの病型があるとは知りませんでした。認知症を伴うALSは前頭側頭型認知症(国試でも頻繁に出題されますね…)を呈し、日本では湯浅・三山型ALSとよばれることもあるそうです。
【検査所見】
様々な検査を実施しましたが、針筋電図検査と神経伝導検査が特に印象に残りました。
〇針筋電図検査:神経原性変化が見られる。
★重要事項★
・線維自発電位は一つの筋線維由来の異常興奮であるため筋原性変化でも見られます。一方、線維束性電位は下位運動ニューロン軸索起源の自発電位であるため神経原性変化でのみ認められます。
・強収縮時に評価する干渉波は、複数の運動単位の動員状況を評価できる指標です。筋収縮力を強めると収縮する筋線維の運動単位数が増加し、一つ一つの運動単位電位(MUP)を判別することが困難になります。これを完全干渉といいます。逆に、筋収縮力を増加させても運動単位数が増加しない場合は一つ一つのMUPを判別することができ、これを不完全干渉といいます。
・医師国家試験対策では、神経原性変化といえば安静時の脱神経電位(線維自発電位と陽性鋭波)と線維束電位、弱収縮時の高振幅・長持続・多相性のMUP、強収縮時の不完全干渉が特徴と習ったのですが、今回の症例では見られなかったので調べてみたところ、下位運動ニューロン障害の進行具合によって所見が異なるそうです。
初期:脱神経電位はまだ出現せず、不完全干渉のみ認められます。
脱神経早期:脱神経電位が出現し始めます。不完全干渉も認められます。
神経再支配早期と神経再支配完成期:運動ニューロン障害に伴う筋線維萎縮をきたしていない筋内部からの神経発芽による神経再支配か、もとの運動ニューロンからの神経再支配かによって所見が異なります。弱収縮時の高振幅・長持続・多相性のMUP、強収縮時の不完全干渉が見られるのは神経発芽による神経再支配です。詳細は本記事最後に添付した参考文献(2)をご覧ください。
・ALSでは肉眼的に筋の線維束性収縮が見られることがあります(今回の症例でも見ることができました)。これは、安静時に見られる線維束電位に相当します。
〇神経伝導検査
運動及び感覚神経伝導速度は基本的に保たれる。筋萎縮に伴い、運動神経の複合筋活動電位(CMAP)の低下を認めることがある。
★重要事項★
・脊髄前角細胞の障害によって伝導速度の速い神経線維が変性脱落すると、運動神経伝導速度が低下することがあります。今回の症例でもごく軽度の伝導速度低下を認めました。
今回はここまでとさせていただきます。次回は鑑別疾患についてまとめようと思います。それでは失礼します。
(参考文献)
(1)辻 省次・祖父江 元. アクチュアル脳・神経疾患の臨床 すべてがわかるALS・運動ニューロン疾患. 株式会社中山書店
(2)赤星 和人.針筋電図における運動単位活動電位(MUAP)の生理と臨床. リハビリテーション医学. 1999. Vol.36, No.10, p.669-677(最終閲覧日:2024/5/17)
「https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/36/10/36_10_669/_pdf/-char/ja」
(りんご)
PICCでの一コマ
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◆次はレジナビです!
5月27日(月) 18:30~18:50
レジナビFairオンライン2024 西日本Weekに当院も登壇します。
当院の研修医がどんなふうに仕事しているのか?
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参加にはレジナビのサイトから申し込みが必要です。
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臨床実習報告・・・歩行障害の一例①
今回の記事は3週間ほど当院で臨床実習をしてくれた医学生が書いてくれました。総合内科ではJ1,J2と同様に病棟を回って、患者さんも何人か担当して、朝夕の回診ではプレゼンもやってもらいました。実習のまとめ的な感じで書いてもらいましたので、ぜひご覧ください。
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3週間、水戸済生会総合病院総合内科で臨床実習させていただいております、医学部6年のりんごです。実習中に出会った症例のまとめがブログに載るという非常に貴重な機会をいただいたので、頑張って書いていきます。よろしくお願いいたします。
症例は70代の男性の方です。主訴は歩行障害です。現病歴についてですが、腰痛と両下肢痛を主訴に当院整形外科を受診したところ、手指振戦や姿勢保持困難などが認められ、Parkinson症候群が疑われたため当院脳神経内科に紹介されました。
外来受診時、両下肢のびまん性筋萎縮が認められたこと、数カ月程前から慢性進行性に症状が増悪していることから「●●●」が疑われ、精査目的に入院となりました。
さて、「●●●」には何が入ると思いますか?
↓
↓
答えは筋萎縮性側索硬化症(ALS)が入ります。ALSは報道番組などでも頻繁に取り上げられるため、ポピュラーな疾患になりつつありますが、医師国家試験での出題頻度はそこまで高くない印象です。そこで教科書に書かれている基本事項と実習中に新たに学んだことを織り交ぜながら、3回に分けて書かせていただきます。
<筋萎縮性側索硬化症(ALS)について①>
【概要】
上位運動ニューロン及び下位運動ニューロンが選択的にかつ進行性に変性・消失し、全身の筋萎縮と筋力低下を来たす原因不明の指定難病である。
【症状・身体所見】
主な症状・身体所見は以下の3つである。
①上位運動ニューロン障害:皮質脊髄路(錐体路)の障害による。下肢に強く出現することが多い。
②下位運動ニューロン障害:脊髄前角細胞の障害による。上肢に強く出現することが多い。
③球麻痺:延髄の運動核(Ⅸ、Ⅹ、Ⅻ)の変性による。
★重要事項★
・筋萎縮の強い筋でも腱反射が保たれている、もしくは腱反射亢進を認めることは、上位運動ニューロン障害を示唆する重要な所見になります。
・前面に出るのが上位運動ニューロン障害か下位運動ニューロン障害かは、障害の程度によって変わります。
・糖尿病などの末梢神経障害をきたす疾患併発例では腱反射が減弱するため、上位運動ニューロン障害の有無を正確に把握することが難しくなります。
・母指球筋は萎縮し、小指球筋は保たれる解離性小手筋萎縮(split hand)がALSに特徴的な所見です。余談ですが、母指球筋は短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋、母指内転筋の4つの筋肉から成ります。手掌では、母指から環指の撓側半分までを主に正中神経が支配しているため、母指球筋は正中神経支配では?と思いがちですが、母指内転筋のみ尺骨神経支配になっています。母指を外転、屈曲、対立させた場合はいずれも母指球筋が固くなりますが、母指を内転させた場合のみ母指球筋は柔らかいままです。この点に着目すると母指の運動を支配する神経支配の覚え方は簡単になります。ちなみに母指の伸展は橈骨神経支配ですが、その際には全く母指球筋は固くなりません。指導医の先生が教えてくださったのですが、ここまで記憶に定着しやすい覚え方があるのかと感動しました。
・末梢神経や髄節の分布に沿わない上位運動ニューロン障害または下位運動ニューロン障害が見られることが特徴で、鑑別の際にも重要になります。鑑別疾患については3個目の記事に書かせていただきます。
・医師国家試験で出題頻度が高いのはALSの陽性所見よりも陰性所見です。四大陰性所見としては感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡があり、さらに小脳症状と錐体外路症状が加わることもあります。今回の症例でも感覚障害や眼球運動障害などは見られませんでした。
今回はここまでとさせていただきます。次回は病型と検査所見についてまとめようと思います。それでは失礼します。
(参考文献)
(1)辻 省次・祖父江 元. アクチュアル脳・神経疾患の臨床 すべてがわかるALS・運動ニューロン疾患. 株式会社中山書店
(りんご)
回診の一コマ
(りんご先生も写っています)
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5月27日(月) 18:30~18:50
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病棟での問診のコツ(1)
4月も半分を過ぎましたが、病棟では患者さんを担当して、問診やオーダー、カルテ記載など、毎日の仕事が忙しいと思います。
そして、担当患者さんのことを全然把握できない・・・・、そう思っているあなたは心配いりません。最初からできる人はいませんから、焦らずにやっていきましょう。
さて、病棟では担当患者さんのところに行って話を聞きますよね。指導医が外来などで記載しているカルテの内容を確認するのはもちろんですが、それを鵜呑みにせず直接患者さんに確認することが大事です。
そうは言っても、患者さんと何となく話しにくい、うまく聞き出せないなんてことがありますよね。家族だとなおさらかもしれません。患者さんや家族から話を聞きだすには、どんなことに注意したら良いでしょう?ここでは病棟での問診のコツを紹介します。
1.挨拶と自己紹介
病棟に入院してきた患者さんのところへ行ったら、まずは挨拶です。「こんにちは。入院中に□□先生と一緒に担当します研修医の○○です。」
この時に患者さんの名前を確認を忘れないように。編集長も話していたら、じつは全然別の患者さんだった、という経験があります。特に慣れていない時ほど注意です。
また、もし家族がいれば家族にも挨拶すると同時に、患者さんとの関係を聞いておきます。「失礼ですが、ご関係は?」と言えばOKです。
これも編集長の経験談ですが、明らかに奥さんと思われる女性が入院に付き添ってきたので、「奥さまですね。今回の入院では・・・」などと話し始めたら、、奥さんは亡くなっていて、年の近い妹さんが一緒に来ていたなんてこともあります。
家族のことは後になるほど聞き出しにくくなるので、最初の時点で聞き出しておくのがコツです。家族がいない時は、誰に電話など連絡をとるのが良いのか患者さん自身に確認しておきましょう
2.患者さんの状態を尋ねる
病棟には、基本的に具合の悪い患者さんが入院してきます。そこで、いろいろ問診する前に「今のお加減はいかがですか?」「少し話を伺ってもいいですか?」と患者さんを労わる一言から始めましょう。
もちろん検査入院などでは体調も悪くない場合もありますが、外来受診から入院までの間に状態の変化がないかを、最初に聞きましょう。その後で「今日はどうしましたか?」など、患者さんが自由に話せるいわゆるOpen Questionから始めて、最初の数分間だけでも、こちらから言葉を挟まずに聞くことに徹すると、患者さんや家族のあなたに対する印象がすごく良くなります。
(編集長)
回診の一コマ
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
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◆レジナビでお会いしましょう!
4月23日(火)18:00~18:20
「レジナビFairオンライン2024 6年生Week」に当院が登壇します。
当日は研修医も登場しますので、ぜひとも直接質問して下さい!!
参加にはレジナビから申し込みが必要です。
下記リンクからお申し込みください。
レジナビのページはこちら(申し込み締め切りは当日15時まで)
糖尿病のお薬・・・インスリン
今回はインスリンの紹介です。インスリンというと種類も多くて良く分からない、スライディングスケールしかやったことがないという人が多いかもしれませんが、今回は実践的な最低限の知識(と編集長が思っている)に絞って紹介します。
【機序】
血中のブドウ糖を肝臓や脂肪細動、骨格筋などの細胞内に取り込ませることで血糖値を低下させます。健常者では、主に肝糖産生を調節して空腹時血糖を制御する基礎インスリン分泌と食事による食後血糖を制御する追加インスリン分泌からなっています。
【適応】
<絶対的適応>
・インスリン依存状態
・高血糖性の昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧性高血糖状態)
・重症の肝障害、腎障害の合併
・重症感染症、外傷、中等症以上の外科手術
・糖尿病合併妊娠(コントロール不良の妊娠糖尿病を含む)
・静脈栄養時の血糖コントロール
<相対的適応>
・インスリン非依存状態でも著明な高血糖の場合
・経口糖尿病薬のみではコントロールが得られない場合
・やせ型で栄養状態が低下している場合
・ステロイド治療中の高血糖
・糖毒性を積極的に解除する場合
【禁忌】
特別なものはありません。
【副作用】
「インスリンの副作用はなに?」と質問すると多くの研修医が「低血糖」、「低カリウム血症」と答えてくれます。もちろんこれは正解ですが、これに加えて、「体重増加」もぜひ覚えてください。
インスリンは血糖を肝臓や脂肪細胞などに取り込ませるだけでなく、脂肪の分解を抑制する作用もあるため、体重増加につながります。入院中など急性期にインスリンでコントロールするのは問題ありませんが、外来での管理の時はできるだけインスリンを増やさない工夫が求められます。
インスリン療法の基本は、健常者に見られる血中インスリンの変動パターンをインスリン注射で模倣することです。当院の総合内科では、基礎インスリン分泌として眠前に持効型インスリンを、追加インスリン分泌として食前に超速効型インスリンを打つ4回打ちを基本とし、ダラダラとスライディングスケールをしないようにしています。
また、①経口糖尿病薬を使ってもコントロールが悪い時にインスリンに切り替える方法もありますが、②治療開始早期にインスリンを導入し、積極的に糖毒性を解除してコントロールを付けてから経口薬に切り替える方法もあります。患者さんにどのような方針なのかを良く説明しておくことが大事です。
インスリン療法の大事なことは、その患者さんの生活スタイルに合わせてアドヒアランスを向上させるように工夫することです。糖尿病の先生はいろいろな手を知っているので、困ったときは相談すると良いと思います。
(編集長)
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4月23日(火)18:00~18:20
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当日は研修医も登場しますので、ぜひとも直接質問して下さい!!
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糖尿病のお薬・・・イメグリミン
今回は血糖依存性のインスリン分泌促進系薬剤のうちイメグリミンについてです。この薬剤は登場してから日が浅く、まだ目にしたことがない人も多いと思いますが、慌てないように知っておきましょう。
【機序】
・ミトコンドリアに作用することで膵臓でのインスリン分泌促成作用や骨格筋でのインスリン抵抗性改善作用、さらに肝臓での糖新生抑制作用があります。
【特徴】
・ビグアナイドに構造や機序が似ているそうですが、違いはグルコース濃度依存的にインスリン分泌促進作用があることと、ビグアナイドで起こりうる乳酸アシドーシスが起きないとされているところです。
【禁忌】
禁忌ではないものの、腎機能低下例(eGFR<45)では投与は推奨されていません。また肝機能低下例にも慎重に投与が必要です。
【副作用】
・消化器症状:嘔気、胃部不快感、便秘、下痢
・特にビグアナイドとの併用で消化器症状が増えるようですので、避けた方がよいでしょう。
・他の糖尿病薬との併用の際は低血糖に注意です。
投与量としてイメグリミン(ツイミーグ®) 1回1000㎎を1日2回服用となっています。
今後、この薬剤の立ち位置がだんだんと定まってくると思いますので、適宜情報収集しておくと良いと思います。
(編集長)
J2からのご指導中
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糖尿病のお薬・・・GLP1受容体作動薬
年度の切り替わりでちょっと間が空いてしまいましたが、今回は血糖依存性のインスリン分泌促進系薬剤のうちGLP1受容体作動薬についてです。
GLP1受容体作動薬は注射薬として登場しましたが、2020年から内服薬も発売されています。最近では心血管イベント減らす糖尿病薬としてSGLT2阻害薬と同様に循環器内科で処方される場面が多くなりました。
【機序】
・インスリン分泌を促進する消化管ホルモン(インクレチン)の一つであるGLP1のアミノ酸配列を変化させて、DPP4で分解されにくくした薬剤。膵β細胞膜状のGLP1受容体に結合して血糖依存的にインスリン分泌を促進させる。さたにグルカゴン分泌抑制作用もある。
【特徴】
DPP4阻害薬同様に、
・体重増加を来しにくい。
・空腹時に低血糖を来しにくい(GLP1は腸管に食べ物が入る刺激で分泌され、空腹時は分泌されない)。
・心血管イベントを減らす。
さらに、
・長時間分解されなくても低血糖を起こさないので1日1回投与と週1回投与の注射薬がある。
・当初は注射薬だけでしたが、2020年に経口薬も登場(1日1回朝空腹時の服用です)。
【禁忌】
腎機能低下例でも使用可能ですが、エキセナチド(バイエッタ®、ビデュリオン®)は透析を含む重度腎機能低下例には禁忌です。
【副作用】
・消化器症状:嘔気、胃部不快感、便秘、下痢、腸閉塞
(DPP4阻害薬と同様に、消化管ホルモンの作用を増強し、腸管蠕動や食欲抑制する方向に作用します)
・急性膵炎の報告がある。特に膵炎の既往がある患者には慎重投与
週1回の注射で済むので、アドヒアランスが保てない患者に向きます。例えば高齢者なら、家族や訪問看護師さんが週1回打つだけになるので、コントロールが安定するケースを良く経験します。一方、食欲低下作用があるので、高齢者では脱水や低栄養、サルコペニアや骨量減少など、マイナスの面が出ることがあります。体重の推移に十分注意を払う必要があります。
なお、Webで検索するとダイエット目的のGLP1受容体作動薬の広告がたくさん出てきますが、ダイエット目的の使用は薬機法違反になります!!当たり前ですが、やったら捕まります。
(編集長)
あいにくの曇り空でしたが、
敷地内の桜は満開になっています
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糖尿病のお薬・・・DPP4阻害薬
今回からインスリン分泌促進系薬剤のうち、血糖依存性のものを紹介していきます。この血糖依存性に分類されるものには、DPP4阻害薬、GLP1受容体作動薬、イメグリミンの3種類があります。今回はDPP4阻害薬です。
【機序】
・インスリン分泌を促進する消化管ホルモン(インクレチン)の一つにGLP1があります。このGLP1の分解酵素であるDPP4を選択的に阻害することで、GLP1の作用を増強させます。
【特徴】
・体重増加を来しにくい
・空腹時に低血糖を来しにくい(GLP1は腸管に食べ物が入る刺激で分泌され、空腹時は分泌されない)。
【禁忌】
特別なものはありませんが、同じDPP4阻害薬でも腎排泄や肝排泄など代謝経路が異なるものがあるので、よく処方するものを確認しておきましょう。たとえばリナグリプチン(トラゼンタ®)とテネリグリプチン(テネリア®)は腎機能低下例でも減量は必要ありませんが、他の薬剤は減量が必要です。ビルダグリプチン(エクア®)は重度の肝機能障害では禁忌となっています。
【副作用】
・消化器症状:嘔気、胃部不快感、便秘、下痢、腸閉塞
(消化管ホルモンの作用を増強し、腸管蠕動を抑制する方向に作用します)
・膵外副作用:有名なDPP4関連膵炎、水疱性類天疱瘡は覚えておきましょう
DPP4は種類も多く、合剤や週1回だけ服用の薬剤もあります。使いやすい薬剤ですので、自分が処方する薬剤はある程度絞って、排泄経路や副作用は良く把握しておくと良いと思います。編集長は特に高齢者で腎機能が問題になるので、腎機能に影響を受けない薬剤を多く使っています。
(編集長)
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糖尿病のお薬・・・グリニド
今回はインスリン分泌促進系薬剤のうち、SU剤と共に血糖非依存性の薬剤であるグリニドを紹介します。
【機序】
・SU剤と同様に膵β細胞に作用して、インスリン分泌を促進
【特徴】
・SU剤と比べて、吸収も消失も速く、食後高血糖の是正に向く
・毎食前に服用する必要があるので、無理な人には無理
【禁忌】
・重症感染症などの経口摂取ができないような全身状態不良時
【副作用】
・低血糖
・肝機能障害(稀)
効果発現までが速いので、「いただきます」と言う時に服用しないと効果が発揮されません。逆に、服用してから何も食べないと低血糖を起こします。食前服用の薬なので、真面目にお薬を飲んでくれる患者さんに向いています。また、SU剤ほどではないものの、肝機能や腎機能が悪い人では効果が遷延します。禁忌とはなっていないものの、減量するなど慎重に用います。
(編集長)
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