臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
せん妄の対処1
入院した初日からせん妄のためソワソワする患者さんがいます。特に高齢者ではびっくりするほど豹変することがあるのは、あなたも実感していると思います。
出来るな環境調整をしてせん妄を落ち着かせたいところですが、なかなか上手くいかずに薬剤を使用せざるを得ないのも事実です。
以前に先輩研修医のヒロキが書いてくれたせん妄の記事がこんな時に役立ちますので、再度紹介します。合わせて、関連記事もご覧ください。
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【せん妄とは】
せん妄は急性発症の意識混濁に錯覚・幻覚や不穏・興奮・不安が加わった意識変容状態を指す。
様々な原因から発症するが、いずれの場合も同様の症状を示す。認知症に合併することも多い。
病態としては大脳辺縁系や脳幹を中心とする毛様体賦活系の障害によって引き起こされる。
【せん妄治療】
せん妄の原因や発症要因となっている身体的な問題を治療することである。第二に環境調整を行う。家族や親しい人に付き添いをしてもらい、患者の周辺になじみのあるものを置くなども有効である。
薬物療法は第三の手段であるが、幻覚、不穏、焦燥が強く、しかも早急に改善を図る場合はこれが第一選択となる。最後の手段として、四肢や体幹の抑制による身体拘束がある。
【せん妄の薬物療法】
薬物使用の第一選択薬は抗精神病薬である。意識レベルを落とさずに鎮静をかける作用があるためである。
現在は第二世代が第一世代よりも副作用が少ないため、リスパダール、セロクエル、ジプレキサ、ルーラン、エビリファイが中心に用いられる。
各薬剤の特徴は次回に続きます。
(ヒロキ)
回診のメンバーが代わりました♪
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進行性核上性麻痺(PSP)はhummig birdだけじゃない! その2
前回に引き続き、J1のホナミンのPSPのまとめです。今回はPSPの診断基準を紹介します。
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③PSPの診断基準
前回の記事で紹介した鑑別疾患を踏まえた厚労省作成の診断基準が以下になります。
1.主要項目
(1)40歳以降で発症することが多く、また緩徐進行性である。
(2)主要症候
①垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性衝動性眼球運動の緩徐化であるが、進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる。)
②発症早期(おおむね1~2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足、立直り反射障害、突進現象)が目立つ。
③無動あるいは筋強剛があり、四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ。
(3) 除外項目
①レボドパが著効(パーキンソン病の除外)
②初期から高度の自律神経障害の存在(多系統萎縮症の除外)
③顕著な多発ニューロパチー(末梢神経障害による運動障害や眼球運動障害の除外)
④肢節運動失行、皮質性感覚障害、他人の手徴候、神経症状の著しい左右差の存在(大脳皮質基底核変性症の除外)
⑤脳血管障害、脳炎、外傷など明らかな原因による疾患
(4) 診断のカテゴリー
次の3条件を満たすものを進行性核上性麻痺と診断する。
①(1)を満たす。
②(2)の2項目以上がある。
③(3)を満たす(他の疾患を除外できる。)
私が今回経験した症例は、元々Parkinson病と近医で診断されレボドパを内服されていましたが、発症3年にして歩行不可とPDにしては進行が速い点、入院時にレボドパを数日中止しても症状の増悪がなかった点(レボドパは半減期が非常に短いため、1日飲まなかっただけでも症状悪くなるそう)、身体所見として上肢の筋強剛は左右差なくごく軽度だが体幹の無動が高度(瞬きや表情筋の動きが全くない)である点から、PSPかもしれない!と臨床的に診断。MIBGシンチを施行したところ、取り込みの低下陰性であり、PDの除外ができました。
(ホナミン)
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進行性核上性麻痺(PSP)はhummig birdだけじゃない!
J1のホナミンのブログデビュー記事です。Parkinson病と他院で診断されていた入院患者さんの臨床経過に違和感を感じて、いろいろ調べてくれたことをまとめてくれました。良くまとまっているので、あなたも是非参考にしてみてください♪
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皆さんこんにちは。今日は私と一緒に『進行性核上性麻痺(PSP)』について勉強しましょう。国試受験のときは、PSP=humming bird signという一対一のキーワードしか覚える余裕がなかった私ですが、総合内科をローテーションしている際にParkinson病とPSPの鑑別について学ばせていただきました。拙い文章ですが、私のアウトプットのためにも勉強したことを共有させていただきます。
①PSPってなに?
パーキンソニズム(安静時振戦、筋強剛、無動、姿勢保持障害)をきたす疾患の中でParkinson病についで頻度が高い、中年以降に追好発する神経変性疾患。パーキンソニズムのうち、安静時振戦はマレ。
これがあったらPSPかも?と考える特徴的な所見は、眼球運動障害(垂直性核上性注視麻痺=注視できない、特に下方視、発症3年程度で出現)、頸部後屈(四肢<体幹に目立つ筋強剛)、早期から転倒しやすい(姿勢保持障害のため)皮質下認知症、偽性球麻痺(構音障害や嚥下障害)など。
進行例では、頭部MRIで第3脳室の拡大や中脳被蓋の萎縮(←矢状断でhumming bird signがみられる理由)がみられる。大脳基底核と脳幹を中心にタウ蛋白が異常蓄積するが、その機序は明らかでなく、現時点で有効な治療法はないため対象療法を行う。
予後としては4~5年で寝たきりとなり、5~9年で衰弱で死亡と、進行が速いのも特徴。
②鑑別ってなにがあるの?
鑑別のポイントは様々あり、例えばParkinson病は一側の手の振りが減少するのが特徴らしいのですが、患者さんを観察しても、うーんよく分からない…。そのため、今回はそんな私でも鑑別ができたポイントをまとめてみました!
・Parkinson病(PD)
-頭部MRIで異常所見は見られない。
-心筋シンチグラフィー(MIBG)で後期相での取り込み低下がみられる。
-レボドパがよく効く(十分量投与しても反応性が乏しかったり、逆に薬剤を中止しても症状増悪しなければPDじゃないかも⁉というヒントに。)
-PSPは頸部後屈がみられるが、PDは頸部を前に突き出す姿勢がみられる。
-寝たきりになるまで進行するのに大体15年以上かかる。
・多系統萎縮症(MSA)
-小脳失調(ふらつき、四肢の協調運動障害)、自律神経症状(起立性低血圧、便秘)が特徴。
-頭部MRI T2強調画像で被殻外縁にスリット上の高信号を認める。
・大脳皮質基底核変性症(CBD)
-大脳萎縮や四肢の症状(肢節運動失行、筋強剛、ジストニア)に左右差が見られる
-他人の手徴候(aline hand signとも言う、自分の腕が勝手に動き自分で制御できない)が特徴的
-しかしPSPとCBDの臨床診断は困難なことも多く、基本的に病理診断らしい。
次回は診断基準を紹介します。
(ホナミン)
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入院患者の発熱 ~膝の痛み~
今回はJ1のどんぐり坊やのデビュー記事です。最後まで診断をつける経験は非常に貴重なものです。さらに経験してすぐに、カンファでの発表でも、このブログでも、何でも良いのでアウトプットすると記憶に残りますので、ぜひ実践してみてください。
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こんにちは、どんぐり坊やです。今回は経験した症例を1つ紹介します。
入院中の患者さんに突然39度の発熱がありました。みなさんまず何を考えますか?
天下の「内科レジデントの鉄則」には入院患者の発熱原因7Dなんてものもありますね。
Drug 薬剤熱
Device デバイス
DVT 深部静脈血栓症
CDトキシン CD腸炎
Decubitus 褥瘡
CPPD 偽痛風
Debris 胆泥:胆嚢炎/胆管炎
恥ずかしながら「やばいやばい、採血・血培・尿倍!抗生剤どうしよう⁉
入院中だしタゾピペかな?」とか考えていたのですが、、、
よくよく診察してみると膝を痛がる様子。触ってみると熱感と腫脹が!よしよし、7Dにも入っているし、偽痛風だ!と決めつけてはいけません。
ここで必ず鑑別にあげなければならないのが化膿性関節炎。こればっかりは関節液を見てみないとわからない。
というわけで、整形外科の先生に見守っていただきながらちゃんと関節穿刺もしました。性状や細胞数からも化膿性関節炎というよりは偽痛風でよさそう。そして見事ピロリン酸カルシウムも検出!
診断基準としては以下のRyanとMcCartyらの診断基準が用いられています。
(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?page=2&id=19130 参照)
幸いNSAIDs投与で速やかに解熱し、痛みも改善していきました。無駄に抗菌薬を投与することを免れた症例であり、診察の重要性を改めて実感させられました。
ちなみに治療としては他に、ステロイド関節内注射・内服・静注、コルヒチンなどが挙げられていました(UpToDateより)。 単関節なのか多関節なのか、腎機能や肝機能によって薬剤選択は行っていくようです。
皆さんも入院患者の発熱では偽痛風を忘れずに、ぜひ関節穿刺までトライしてみてください。
(どんぐり坊や)
回診でプレゼン中♪
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低血糖の鑑別
今回はJ1の小D先生がまとめてくれた記事をシェアします。
入院中の患者さんで、糖尿病の既往もなく、血糖降下薬も服用していないのに低血糖を来した場面に遭遇しました。実は低血糖の原因は非常に多く、キノロン系抗菌薬(ガチフロキサシン)、抗不整脈薬(シベンゾリン、ジソピラミド)、アルコールなどの薬剤の確認は必須です。他に肝硬変や末期腎不全、心不全も原因となります。さらに入院患者では敗血症や副腎不全も忘れてはならない鑑別疾患です。
そんな経験から、今回は鑑別の進め方についてまとめてあります。ぜひご覧ください。
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糖尿病の治療中は低血糖に注意するという話はよく聞きますが、他に低血糖をきたす原因としてどんなものがあるのか調べてみました。
一般的に血糖値70mg/dl未満が低血糖とされており、動悸や発汗、振戦といった交感神経症状がみられます。さらに進むとけいれんや頭痛、意識障害といった中枢神経症状が出現します。
低血糖の原因検索として、①→④の順番に考えていきます。
①糖尿病治療薬(インスリン、経口血糖降下薬)の使用
②食後低血糖の有無
③アルコール摂取、他の薬剤の使用
④低血糖時の血中インスリン、Cペプチド(CPR)を測定
①糖尿病治療薬(インスリン、経口血糖効果薬)の使用
使用がある場合は治療に伴う低血糖と考え、使用していない場合は②に移ります。
②食後低血糖の有無
食後低血糖がある場合は反応性低血糖を考え、胃切除の既往があれば後期ダンピング症候群を考えます。後期ダンピング症候群は腸管で糖が急速に吸収されてインスリン分泌が亢進して血糖値が下がりすぎてしまうもので、一般的に食後2~3時間後に起こります。他に特発性や境界型・軽症2型糖尿病でも反応性低血糖がみられることがあります。
食後低血糖がない場合は③に移ります。
③アルコール摂取、他の薬剤の使用
アルコールを多量に摂取すると肝臓での糖産生が低下することにより低血糖をきたすことがあります。特に糖尿病治療を行っている方は低血糖になるリスクが高いため注意が必要です。
また、副作用として低血糖をきたす薬剤にβ遮断薬やジソピラミド(Naチャネル抑制薬)などがあるそうです。
③に該当しない場合は④に移ります。
④低血糖時の血中インスリン、Cペプチド(CPR)を測定
(ちなみにCPRはプロインスリン(インスリン前駆物質)が分解されるときに発生する物質のことで、内因性インスリン分泌能を推定します。)
・血中インスリン↑、血中CPR↑
→血中インスリン抗体を検査し、上昇していればインスリン自己免疫症候群となります。上昇していなければインスリノーマを考え造影CTを考慮します。
・血中インスリン↑、血中CPR↓
→隠れてインスリンを注射していることを考えます。
・血中インスリン↓、血中CPR↓
→副腎皮質機能検査(ACTH、コルチゾール)を行います。副腎皮質機能が低下している場合は下垂体前葉機能低下(下垂体腺腫、Sheehan症候群、ACTH単独欠損症など)や副腎不全を考えます。
副腎皮質機能が低下していない場合は肝硬変や敗血症、糖原病、膵外腫瘍を考えます。
(小D)
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肺炎患者の対応・・・誤嚥のリスク
今回もNHCAPの続きで、誤嚥のリスクについてです。
誤嚥と言うと、「誤嚥性肺炎」とほぼ同義に用いられているのが、実情だと思います。あなたも、聞いたり、使ったことがあると思います。
では、誤嚥性肺炎の定義がどうなっているのかあなたは知っていますか?
実は誤嚥性肺炎の明確な定義はないのですが、一般的には、「ADLや全身機能の低下、特に脳血管障害を有する場合に認められやすい嚥下機能障害を背景に起きる肺炎で、高齢者の食事摂取に関連して発症する」と理解されています。
実際のところNHCAPの患者さんは、高齢でADLの低下を来しており、脳血管疾患の既往も多いなど、誤嚥性肺炎とかなりオーバーラップしているというのは、あなたも直感的に理解できると思います。
HAPでも、免疫能が低下した耐性菌リスクの高い肺炎と、脳血管障害を背景とする誤嚥が関与する肺炎との二面性を併せ持っているのも理解できます。
実際、誤嚥のリスクが多いほど急性期や慢性期の死亡率、さらに再入院率の上昇に関連しており、そのリスク因子を考慮することで急性期死亡率を低下させる可能性があります。
そこで、NHCAPでもHAPでも、最初に患者背景のアセスメントで誤嚥のリスク評価をしましょうと、ガイドラインでも推奨しています。
ただし、ここで注意点があります。誤嚥性肺炎の明確な定義はないと先述しましたが、誤嚥のリスクが多いから、誤嚥性肺炎を起こすという訳ではありません。つまり、誤嚥のリスクが多い≠誤嚥性肺炎ということです。
モヤモヤが解消されないかもしれませんが、高齢者の肺炎だから抗菌薬はABPC/SBTと、何も考えずに機械的に選択するのではなく、患者さんの状態をよく把握して、「どこで?何が?」を考えながら治療にあたることが大事だと思います。
*このシリーズは今回で終了します。
(編集長)
ペースメーカーの交換中
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肺炎患者の対応・・・医療介護関連肺炎(NHCAP)
今回は医療介護関連肺炎(NHCAP:Nursing and Health-Care Associated Pneumonia)です。
NHCAPの定義は、医療ケアや介護を受けている人に発症した肺炎で、
①療養病床、介護施設、精神病床に入所している
②90日以内に病院を退院した
③介護を必要とする高齢者、身体障害者
④通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制剤等)を受けている
上記のうち、1つ以上を満たすものとなっています。
NHCAPの評価はHAPと同様にまず「患者背景のアセスメント」を行います。具体的には、誤嚥のリスクが高いか? 癌患者の終末期や老衰などの状況か? と言ったことを評価して、状況によっては肺炎の治療を行わないという選択肢も検討します。
続いて、①重症度の判断、②敗血症の有無の判断、③耐性菌リスクの判断を行うのは、他の肺炎の場合と同じです。
ちなみに重症度の判断には、院内肺炎(HAP)ではI-ROADを用いましたが、NHCAPでは市中肺炎(CAP)同様にA-Dropを用いて評価します。
耐性菌のリスク評価については以下のようになっています。
HAPと似ていますが、90日以内の入院歴や、胃酸分泌抑制薬、つまりPPIの使用が耐性菌のリスクに挙げられており、興味深いところです。
次回は誤嚥のリスクについて紹介します。
(編集長)
今回も徳田先生カンファの一コマ
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肺炎患者の対応・・・人工呼吸器関連肺炎(VAP)
今回は人工呼吸器関連肺炎(VAP)です。
VAPはHAPの一つですが、「気管挿管下人工呼吸を開始して48時間以降に発症した肺炎」と定義されます。
ICUにおける主要な感染性合併症であり、全挿管患者の9~27%に発生するとされています。
起炎菌は緑膿菌が最多ですが、エンテロバクターやセラチア、マルトフィリアなど、治療に難渋するグラム陰性桿菌も多く、黄色ブドウ球菌やMRSAの割合も高いようです。
では、ここで質問です。あなたはどうやってVAPを診断していますか?
そもそも、挿管されるくらい原疾患の状態が悪い、抜管できないという状況な訳ですから、CAPのようにレントゲンで肺炎像がはっきり見えるとは限りません。でも、挿管されている患者が発熱すればVAPと診断してよいしょうか?
欧米のガイドラインなどでも確立した診断基準はないようですが、成人肺炎診療ガイドライン2017では以下のようになっています。
こうしてみると、もっともなことばかりですが、臨床でははっきりしない、モヤモヤが残ることも多いのが実際のところです。
挿管されている患者さんでは、発熱の原因として、VAP以外に尿路感染症やCLABSI(ライン感染)などいくらでもあるので、VAPの診断は簡単ではないのです。
VAPは早期の治療開始は大事ですが、熱が出たからVAPと簡単に決めないで他の熱源の検索も忘れないようにしましょう。
そして、治療もさることながら、大事なのは予防です。具体的には
①手指衛生
②仰臥位の回避
③呼吸器回路を頻回に交換しない
④過剰な鎮静を避ける
⑤人工呼吸器からの離脱
⑥声門下腔吸引孔付きチューブの使用
⑦口腔ケア
ちなみに、②のために頭部を30~45度挙上するだけで、VAPリスクが67%も減少します。⑥はメタ解析でVAPの発症を低下させることが示されているそうです。
(編集長)
徳田先生カンファの一コマ
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肺炎患者の対応・・・院内肺炎(HAP)その2
院内肺炎(HAP)の続きです。
HAPの治療の流れは、①重症度の判断、②敗血症の有無の判断、③耐性菌リスクの判断を行っていきますが、特に重症度の判断では、A-DROPではなくI-ROADと2つの重症度規定因子を用いて評価します。
では、③耐性菌のリスクはどう考えればいいのでしょうか?
成人肺炎診療ガイドライン2017では、次のようなものを、耐性菌のリスク因子に挙げています。
さらに考慮すべき起炎菌はとして、下記のようなものを挙げています。
こう考えると、「HAPだから、緑膿菌もカバーしなければ」というのは、必ずしも正しくありません。
さらに、現実問題として、緑膿菌やESBLを考慮して、ペネム系抗菌薬を最初から使ってしまうと、次の手がなくなってしまい、非常に困ります。
「HAPだから緑膿菌も、ESBLもカバー」ではなく、起炎菌は何なのか?ホントにカバーする必要があるのか?この点を意識しながら抗菌薬を考えてみてください。
次回はVAPを紹介します。
(編集長)
回診で質問されて考え中
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肺炎患者の対応・・・院内肺炎(HAP)
今回から院内肺炎(HAP)です。
HAPの定義は入院48時間以上経過した患者に新たに発症した肺炎でした。また、HAPには人工呼吸器関連肺炎(VAP)も含まれます。
さて、HAPに遭遇した際にまず行うことは何でしょう?
成人肺炎診療ガイドライン2017によれば、まず「患者背景のアセスメント」を提唱しています。具体的には
・誤嚥のリスクが高いか?
・癌患者の終末期や老衰などの状況か?
などを評価して、状況によっては、肺炎の治療を行わないという選択肢も検討します。
では、治療をするなら、次にすることは何でしょう?
CAPと同様に、①重症度の判断、②敗血症の有無の判断 を行ったうえで、さらに③耐性菌リスクの判断 を行っていきます。
敗血症の有無についてはCAPと同様で、qSOFAとSOFAを用います。
重症度の判断は、CAPではA-DROPでしたが、HAPでは使えません。代わりにI-ROADと、2つの重症度規定因子を用いて評価を行います。
軽症群は、I-ROADが2項目以下+重症度規定因子なし
中等症群は、I-ROADが2項目以下+重症度規定因子あり
重症群は、I-ROAD3項目以上
となっています。
ちなみにI-ROADに含まれているFiO2>35%は、だいたいカヌラで4L以上の酸素流量に相当します。
(編集長)
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