臨床研修ブログ

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アトピー咳嗽 その2

2024.08.13
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回もアトピー咳嗽の続きです。

 

アトピー咳嗽の診断基準は以下のようになっています。

 

 

アトピー咳嗽は、特にCVAとの鑑別が重要になります。その理由としてCVAではICSの維持療法が重要になりますが、アトピー咳嗽は咳症状が軽快すれば治療は中止可能で、ICSの維持療法が必要ありません。つまりしっかり鑑別しておかないと、不要な治療を長期に継続させてしまうことになるのです。

 

治療としてはヒスタミンH1受容体拮抗薬が第一選択となりますが、その有効率は60%程度とされています。ヒスタミンH1受容体拮抗薬を2週間継続しても効果が不良な時は、ICSの追加を試みます。吸入できない状況であれば内服薬を1~2週間試します。それでも改善しない場合は別の疾患の可能性があるので専門医に紹介することを考えましょう。

 

アトピー咳嗽の予後としては良好で、長期的に喘息や閉塞性換気障害への進行は認めません。症状が改善すれば治療中止は可能ですが、再燃する場合は原因抗原の追及などアレルギー疾患として予防に努めることが重要になります。

 

参考文献:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019

           (編集長)

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アトピー咳嗽 その1

2024.08.10
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回はアトピー咳嗽についてです。アトピー咳嗽は遷延性・慢性咳嗽の原因として咳喘息に続いて比較的多い疾患とされています。

 

病態としては、中枢気道を炎症の主座とする非喘息性好酸球性気道炎症です。好酸球性気道炎症が中枢気道に限局しているため、FeNO濃度は正常範囲内となります。

 

臨床像としては、アトピー素因を有する中年の女性に多く、咽喉頭のイガイガ感を伴い、気管支拡張薬が無効な遷延性・慢性咳嗽です。

 

ガイドラインにはアトピー咳嗽の臨床像として以下の13個が記載されています。これを記憶しておくだけでも、咳嗽患者さん対応のストレスが減ります。

 

・8週以上の喉のイガイガ感をともなう持続性乾性咳嗽(喀痰はあったとしても少量)

・喘鳴、呼吸困難発作を認めたことがない

・咳嗽は就寝時、深夜から早朝、起床時に多い

・咳嗽はエアコン、タバコの煙(受動喫煙)、会話(電話)、運動、精神的緊張などによって誘発されやすい

・強制呼出時にも乾性ラ音を聴取しない

・アトピー素因を認めることが多い

 1)末梢血好酸球増多、2)血清IgE高値、3)血清特異的IgE抗体陽性、

 4)アレルゲン皮内テスト陽性、5)喘息以外のアトピー疾患の合併または既往

・呼吸機能は正常

・気道過敏性亢進は見られない(気道過敏性亢進はCVAを示唆する)

・咳受容体感受性の亢進

・誘発喀痰中に好酸球が見られる

・気管あるいは気管支生検にて大部分の患者で好酸球性気管支炎が見られる

・BALF中に好酸球増多は見られない

・治療ではヒスタミンH1受容体拮抗薬、ステロイド薬(吸入、内服)が有効だが、鎮咳薬、抗菌薬、気管支拡張薬(β刺激薬、テオフィリン)、LTRAは無効

 

参考文献:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019

           (編集長)

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咳喘息(CVA)その2

2024.08.08
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回は咳喘息(CVA)の治療についてです。

 

CVAの診断がついたら、治療は基本的に典型的喘息と同じで吸入ステロイド(ICS)が中心になります。下記のように重症度を判断して、治療を開始します。

 

 

この表からは、病院を受診する患者さんはほとんど中等症以上に該当すると思いますので、吸入ステロイド+長時間作用型β刺激薬の合剤(ICS+LABA)で開始し、症状が落ち着いてきたらICS単独に変更していきます。その他に長時間作用型抗コリン薬(LAMA)やロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、テオフィリン徐放性剤を使用する場合があります。悪化時には典型的喘息と同様に短時間作用型β刺激薬(SABA)の屯用や経口ステロイドの短期間併用を行います。


治療開始により症状が軽快し、薬剤を減量することができますが、治療中止によりしばしば再燃します。症状が軽快・消失した患者さんの治療をいつまで続けるべきかのエビデンスはないそうですが、1年以上治療を継続しICSが低用量まで減量しても無症状であれば、ICSの中止を考慮してもよいとされています。また呼吸器の専門施設で喘息で推奨される客観的指標(呼吸機能や気道炎症マーカー)に基づく長期治療も推奨されています。

 

予後については、CVA患者さんの30~40%がいずれ典型的喘息に移行すると言われており、患者さんに良く説明しておく必要があります。ICSを用いることで典型的喘息への移行率が低下するとされています。

 

参考文献:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019

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咳喘息(Cough Variant asthma:CVA)その1

2024.08.06
カテゴリー: カンファレンス 内科

外来研修をやっていると、咳嗽を主訴に受診する患者さんに多く遭遇します。鎮咳剤を処方して経過を見てもらいますが、翌週の外来に「まだ良くなりません」と言って再び受診してきます。別の鎮咳薬を試してみるけど、次の週も「まだ良くならない」と言って受診されると、次の手をどうしたらよいか困ってしまいます。そんな時の対処法を今回から紹介していきます。

 

咳嗽については、3週間までの咳嗽を急性咳嗽、3週間以上8週間未満のものを遷延性咳嗽、8週間以上持続するものを慢性咳嗽と区別しますが、遷延性・慢性咳嗽の原因疾患の鑑別のなかに咳喘息があります。今回はこの咳喘息(CVA)について確認してみます。

 

まずCVAとは喘息の亜型ですが、喘鳴や呼吸困難を伴わなず、慢性咳嗽が唯一の症状で、呼吸機能はほぼ正常、気道過敏性は軽度更新、気管支拡張役が有効で定義されます。慢性咳嗽の原因疾患として本邦では最も頻度が高いものです。

 

臨床像としては、咳嗽は夜間から早朝に悪化しやすいものの、日中のみ咳を認める患者も存在し、しばしば季節性を示すとされます。喘鳴は自覚的にも他覚的にも認めません。成人では女性に多く、上気道炎や冷気、運動、受動喫煙を含む喫煙、雨天、湿度の上昇、花粉や黄砂の飛散などが増悪因子です。特に冷気と会話による咳嗽の誘発がCVAに特徴的とされています。

 

診断基準は以下の通りです。

 

CVAは吸入β2刺激薬が咳嗽に有効であることが特異的な所見であるため、気管支拡張薬の効果を確認しておくことが重要です。具体的には短時間作用型β刺激薬(SABA)吸入を試します。夜間の咳嗽が続く場合はβ刺激薬の貼付薬を1~2週間用いると良いそうです。

 

参考文献:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019

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カテコラミンを使う時は・・・γ(ガンマ)計算

2024.07.30
カテゴリー: カンファレンス 内科

この記事は2年前のものなのですが、「γ計算」とグーグルで検索すると3番目に登場するほど検索された記事です(一時は検索順位が1位になっていました)。

 

J1のあなたも重症患者さんを担当することが出てきますし、J2のあなたにとっては再確認の意味で再度掲載します。

 

~~~~~~~~~~~

先日のことですが、糖尿病性腎症で維持透析中の方の敗血症性ショックの症例を担当しました。その時にノルアドレナリンの持続点滴をしたのですが、指導医から「ノルアドレナリンは何γ(ガンマ)で開始する?」と質問されて、固まってしまいました(笑)。

 

なので、今回はγ計算について勉強したことをシェアします。

 

ノルアドレナリンを投与する際、投与量は非常に大切です。例えば5ml/hrのノルアドレナリンをお相撲さんと赤ちゃんに投与したとします。同じ5ml/hrでも体重が違えば、必要な量は変わってきます。そこで体重1kgあたり、1分間でどのくらいの量を投与すればいいのかを表すγ(ガンマ)を用います。

 

まず、1γ=1μg/kg/min表されます。

→ minをhrに変換すると、1γ=60μg/kg/hr

→μgをmgに変換(1mg=1000μg)すると、1γ=0.06mg/kg/hr

→単位を並び替えると、1γ=体重(㎏)×0.06㎎/hr ということになります。

 

ノルアドレナリンは生理食塩水で希釈し用います。当院のICUなどでよく使う組成はノルアドレナリン5㎎+生食45㎖で計50㎖にするので、濃度は0.1㎎/㎖ですが、開始時は0.05γからとなっています。

 

この組成の場合、患者さんの体重が50㎏だとすると 0.05γ=0.05×50㎏×0.06mg/hr=0.15㎎/hr となります。

 

でも、看護師さんに指示を出すときは【㎎/hr】ではなく【㎖/hr】にしないと間違いのもとになるので、薬剤の濃度で割ると 0.15㎎/hr÷0.1㎎/㎖=1.5㎖/hr となります。

 

つまり体重50㎏の患者さんなら、ノルアドレナリンは開始時には1.5㎖/hr(=0.05γ)で開始すればよいということになります。

 

γをml/hrに変換する式は 1γ=体重×0.06÷濃度(㎎/㎖) で求めることができるので、これを覚えておくといいと思います。

 

なお、良く使う薬剤としては
・ノルアドレナリン 0.05γ〜0.3γ
・ドブタミン 1γ〜20γ
・ランジオロール  心機能低下例では1〜20γ

 

この3つは覚えておいた方がイイです。そして、病院や病棟によってルーチンで使う組成があるので、必ずそれを確認しておきましょう。

           (ミッフィー)

 

手際よくPICC挿入

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骨髄異形成症候群 その3

2024.07.27
カテゴリー: カンファレンス 内科

医学生のしかまる先生が書いてくれたレポートの最終回です。今回は治療に関してです。

 

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MDSの根治が期待できる治療法は造血幹細胞移植のみである。全てのリスクのMDSが対象となるが、年齢、心臓や肝臓などの臓器機能、ドナーとのHLA適合性という基本条件を基に検討される。

 

低リスク群では急性白血病への移行リスクは低い。したがって、血球減少に対する保存的治療が中心となり、必要に応じた輸血や、細胞産生を促進するサイトカイン療法が選択される。鉄キレート療法は、頻回の赤血球輸血による鉄過剰症に対して行われる。5q−がある低リスクMDSには免疫調整薬レナリドミドが使用される。

 

高リスク群は保存的治療のみでは予後不良であり、造血幹細胞移植が施行可能であれば速やかな実施が求められる。予後を改善することが示されている薬物治療としては現在DNAメチル化阻害薬のアザシチジンのみが保険適応であり、移植の適応とならない症例や移植までのつなぎとして選択される。アザシチジンに不応・不耐用の場合は化学療法が検討される。

 

本例は高リスクのためアザシチジンによる治療が行われ、今後は移植も検討する予定である。

 

<症例の感想>

本例の患者さんは、自覚症状がほとんどないお元気そうな方である。しかし前述の通りIPSS-RではHighリスク群、予後は生存期間中央値1.6年とのことであり、患者さんにとってこの診断は非常に唐突で受け入れがたいものなのではないかと思った。治療にも少なからず副作用のリスクを伴うため、丁寧なインフォームドコンセントや入院後の日々のコミュニケーションの重要性を改めて実感した。今回の実習では入院時のインフォームドコンセントと毎日朝夕の回診に参加し、先生方がどのように患者さんとコミュニケーションをとっているかを学び、自分でも毎日患者さんにお会いして話を伺うことができた。今後も疾患ではなく患者さんを診るという基本姿勢を忘れずにいたい。

参考文献:骨髄異形成症候群診療の参照ガイド 令和 4 年度改訂版

(しかまる)

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骨髄異形成症候群 その2

2024.07.25
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回も医学生のしかまる先生が書いてくれたレポートからの続きです。

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前述の通り、MDSは前白血病状態でありAMLへの進展を特徴とするが、MDSとAMLを区分するのは芽球の割合である。末梢血と骨髄の芽球比率が20%未満(WHO分類第5版)ではMDS、20%以上になるとAMLに分類される。本例は末梢血芽球18.5%、骨髄芽球17%と、発見時点でちょうどその境界域にあったと考えられる。異常造血幹細胞の遺伝子不安定性のため、遺伝子変異の蓄積が起こり、病期の進行や芽球の増殖に関与するとされる。

 

血液所見と骨髄所見に加え、骨髄染色体検査が診断・予後予測・治療方針決定のために重要である。MDS患者の約半数に染色体異常が認められ、代表的なものに第5染色体長腕欠失(5q−)が挙げられる。本例は正常核型であった。

 

MDSは、異形成のある系統数や芽球の割合、染色体異常などによって様々な病型に分類される。例えば、5q−症候群の場合はそれ自体でMDSの病型診断に直結する。ただし、同じ病型であっても予後を含む病態は症例間に差がある。

 

したがって、治療方針は予後予測によるリスク分類に基づく。予後予測システムとして、ここでは国際予後スコア化システム改訂版(Revised International Prognostic Scoring System, IPSS-R)を紹介する。

 

Very low と Low が低リスク、High と Very high が高リスクとなる。

 

本例は赤枠のようになり、5.5点のHighであった。

参考文献:骨髄異形成症候群診療の参照ガイド 令和 4 年度改訂版

(しかまる)

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骨髄異形成症候群 その1

2024.07.23
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回は医学生のしかまる先生が書いてくれたレポートからのシェアです。

 

しかまる先生は総合内科で実習してくれましたが、実習期間中に骨髄異形成症候群(MDS)の患者さんを担当してくれたので、まとめを作ってもらいました。MDSはまとめを作りにくい領域ですが、とても良い出来だと思います。ぜひ、ご覧ください。

だいぶにぎやかな

総合内科の朝カンファ

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症例は60歳台の男性。

主訴はなかったが、前医の血液検査でHb 10.9 g/dl、血小板5.6万/μl、好中球数1046/μlと汎血球減少が認められ、当院受診した。そこで再度行われた血液検査で末梢血中に芽球を18.5%認め、その後施行された骨髄検査で芽球を17%認めたため、加療目的に入院した。さらに、骨髄塗抹標本で芽球割合の増加に加え、微小巨核球や赤芽球の核辺縁不整といった異形成を認めたことから、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome: MDS)の診断となった。

 

MDSは造血幹細胞の腫瘍であり、未熟な造血細胞に生じた異常によって造血細胞の異常な増殖とアポトーシスが誘導され、その結果以下のような特徴を持つ。

 

1)無効造血(造血細胞が成熟途中で壊れてしまう)

2)造血細胞の形態学的な異形成

3)末梢における血球減少

しばしば急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia: AML)へ移行する点も重要である。

 

症状は血球減少に伴う慢性貧血、出血傾向、易感染性があるが、慢性の経過をたどるため本例のように血液検査で偶然発見されることも多い。

 

診断基準の詳細は省略するが、おおまかには1系統以上の持続的な血球減少と骨髄造血細胞における異形成の存在を鍵とし、血球減少と異形成をきたしうる他疾患の除外を必要とする。

 

鑑別疾患として、感染性疾患、自己免疫疾患、アルコール過剰摂取、薬剤性血球減少症、栄養障害、肝疾患のほか、先天性の造血異常、悪性貧血、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、血球貪食症候群などの造血器疾患が挙げられる。中でもMDSの類縁疾患として挙げられるAMLや骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasm: MPN)、再生不良性貧血(aplastic anemia: AA)との鑑別ポイントを表1に示す。

 

参考文献:骨髄異形成症候群診療の参照ガイド 令和 4 年度改訂版

(しかまる)

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多発性骨髄腫 その2

2024.07.06
カテゴリー: カンファレンス 内科

前回に引き続き医学生のなお先生が書いてくれたレポートからのシェアです。総合内科で実習期間中に多発性骨髄腫の患者さんを担当してくれたので、骨髄腫のまとめを作ってもらいました。今回は治療に関してです。

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未治療の多発性骨髄腫に対する治療は、自家移植を行うかどうかで治療法が分かれる。自家移植を行えるのは、一般的に65〜70歳未満で重篤な感染症や肝・腎障害がなく、心肺機能も正常な人である。これらの患者に対しては、効果が迅速で深い奏功を期待でき、かつ自家造血幹細胞採取に悪影響を与えない導入療法を施行後、自家造血幹細胞移植を併用した大量MEL(メルラファン)療法を実施することが推奨される。

 

一方、自家移植を行えない場合には、化学療法が選択され、標準治療はDLd療法(DARA, LEN, 低容量DEX)またはD-MPB療法(DARA, MEL, PSL, BOR)である。今回の症例では、DLd療法を施行している。70歳以上であることから移植適応がないためである。

 

未治療で移植適応のある多発性骨髄腫の治療

(造血器腫瘍ガイドライン2023より)

 

 

未治療で移植適応のない多発性骨髄腫の治療

(造血器腫瘍ガイドライン2023より)

 

また、多発性骨髄腫では骨髄腫細胞が破骨細胞を活性化し、骨芽細胞を抑制しているために骨組織が破壊される。それによって骨病変や高カルシウム血症がみられているが、多発性骨髄腫に対する治療と並行して骨病変に対する支持療法も重要である。

 

治療薬としてはビスホスフォネート製剤(BP)が用いられ、中でもゾレドロン酸(第3世代BP)はクロドロネート(第1世代BP)に比べて骨関連事象の発生率を低下させるだけでなく、全生存期間の延長にも寄与すると報告されている。そのため、初発の多発性骨髄腫にはゾレドロン酸を併用することが重要だとされる。実際に、今回の症例では入院後、骨病変・高カルシウム血症への治療としてゾレドロン酸が使用された。

 

症例の感想

多発性骨髄腫の患者を目にしたことは今回が初めてであった。今回担当しはじめた時点では確定診断がついた上で治療も開始していた状態であった。実際に回診等でお話を聞き、カルテを記載し、治療に一部参加させていただけたことで、この疾患に対する理解が深まったように思う。また、Dara-Rd療法は通院でも可能であるとのことだったが、退院の際に自宅退院か施設退院とするかは決定していない。この症例に限らず、患者さんのゴールは必ずしも退院することにはないため、退院後どのような形で生活するのかなどの点に気を配ることは、今回の実習で学ぶことができた貴重な視点の一つであるように思う。

(なお)

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多発性骨髄腫 その1

2024.07.04
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回は医学生のなお先生が書いてくれたレポートからのシェアです。なお先生は総合内科で実習をしてくれましたが、実習期間中に多発性骨髄腫の患者さんを担当してくれたので、まとめを作ってもらいました。良くまとまっていますので、ぜひご覧ください。

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症例は80歳台の男性。数か月前までゴルフをしたり、庭木の剪定をするなど元気であったが、肋骨の痛みや腰痛で近医を受診したものの原因がはっきりせず経過観察となっていた。1か月前に腰椎圧迫骨折と診断され入院したものの症状の改善が乏しく、MRIでさらに他の椎体にも骨折を認めた。血液検査で高蛋白血症(8.6g/dl)と低アルブミン血症(3.1g/dl)を認め、血清蛋白分画でM-peakが検出され、多発性骨髄腫の診断となった。

 

多発性骨髄腫は血液の悪性腫瘍の一つで、多彩な症候を示す難治性の造血器悪性腫瘍である。異常増殖したクローナルな形質細胞により、異常ガンマグロブリン(Mタンパク)が産生され、総タンパクの上昇がみられる場合と、ガンマグロブリン軽鎖(κ鎖またはλ鎖)が異常産生され、総タンパクの上昇はみられないものの、ベンスジョーンズタンパクとして血中・尿中に検出される場合がある。

 

今回の症例では、現病歴にもあるようにMタンパクが検出されているほか、入院後の骨髄検査でCD19-CD56+の異常形質細胞表面に免疫グロブリン軽鎖のλが発現していた。よって、上記の両方の所見がみられていることになる。

 

多発性骨髄腫の典型的な症状として高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変があり、これらをまとめてCRABと呼ばれることが多い。今回の症例では高カルシウム血症が確認できたほか、頭部レントゲンでは有名な所見であるpunched out region、CTで胸腰椎・肋骨などに多発病的骨折を認めた(骨病変)。

 

多発性骨髄腫の診断や治療方針の決定のためには、骨髄検査が必須である。骨髄検査は血液やリンパのがんの診断や病系を決定するために必要な検査で、腸骨・もしくは胸骨から骨髄液を採取する検査である。

(次回は治療に関して紹介します)

(なお)

総合内科の朝カンファ

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