臨床研修ブログ

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栄養の評価方法 GLIM・SGA・MUST

2023.01.19
カテゴリー: カンファレンス 内科

当院の消化器外科で専門研修中のMeguが、初期研修医時代に書いてくれた記事から、栄養評価についての続きです。

 

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GLIM criteria(Global Leadership Initiative on Malnutrition )

2018年に提唱された、全世界統一の低栄養の診断基準。評価方法は2段階に分かれており、1段階めでは、MUST等の現在使用されている評価項目を用いて評価を行う。1段階めで問題ありと評価されると2段階めに移り、現症(体重減少、BMI低値、筋肉量減少)と病因(摂食量低下or吸収能低下、疾患・炎症の程度)のそれぞれ一つ以上に該当すれば低栄養の診断となる。診断後は現象に基づいて

重症度を判定する。

 

SGA(subjective global assessment)

主観的包括的栄養評価ともいう。簡便であり、適応範囲が広いことから、栄養評価スクリーニングによく使用される全世界共通の栄養評価法である。病歴(体重変化、食事摂取状況、基礎疾患と必要カロリーのバランス等)と身体所見(浮腫、腹水等)の2項目についてチェックし、それらをふまえて観察者が主観により患者の栄養状態を判定する。
 

MUST(Malnutrition Universal Screening Tool )

化学療法中の患者さんの栄養評価。 BMI、体重減少、急性疾患と栄養摂取不足(5日以上の摂食なし)の3項目からリスク評価を行う。元々は在宅の患者向けに推奨されていたが、近年では急性期の予後予測因子としても有効であるとの報告があり、入院時の栄養評価スクリーニングにも使用されている。

(Megu)

心外Ope中の一コマ

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栄養の評価方法 CONUT・GPS・PNI

2023.01.17
カテゴリー: カンファレンス 内科

前回の記事で、特に高齢の入院患者では栄養とADLが大事だと紹介しました。実際のところ、栄養状態の評価方法については下記のようにいろいろあります。

 

・CONUT

・GPS

・PNI

・GLIM

・SGA

・MUST

 

これらの多くは外科の患者の評価、特にがん患者の予後評価に用いられますが、内科患者の評価にも使われるものもあります。それぞれ特徴があるのですが、もしあなたがこれらのいくつかでも知っているなら、かなり勉強している人に間違いありませんね。

 

現在は当院の消化器外科で専門研修中のMeguが、初期研修医時代に書いてくれた記事に、それぞれの評価方法の要点が良くまとまっているので再度紹介します。

 

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患者さんの栄養評価の指標となる検査値はいくつかあるが、その一つにCONUT score (Controlling Nutrition Status) がある。

 

2003年に欧州の学会で提唱された指標であるが、CONUT scoreは、日常よく測定される採血項目であるアルブミン値、総リンパ球数、総コレステロール値を用いた、簡便に栄養状態のスクリーニングを行えるスコアリングシステムである。

 

総リンパ球は、低栄養状態や異化亢進状態では、免疫細胞の産生低下が起こる事が知られていることから、免疫能の指標としてこのスコアリングに組み込まれている。

 

CONUT scoreは膵臓癌、消化器癌術後の予後予測因子として有用とされているが、心不全の予後予測因子としても有効という報告もある。

 

CONUT score以外にも、以下に紹介するような栄養評価指標は、特にがん治療の際にがんのステージ分類と組み合わせて使用すると、より正確な予後の評価が可能となる。

 

GPS(Glasgow Prognostic Score)

血清アルブミン値とCRPを用いた指標。非小細胞肺癌等の悪液質の評価に有用。

 

PNI(Prognostic Nutritional Index)

古くはBuzbyらが提唱した指標があるが、現在はより簡便化されたOnoderaらが提唱したものが使われている。血清アルブミンと総リンパ球数を用いて評価し、術前の予後予測因子に使う。この数値が低い(PNI≦40)と吻合不全が起きる可能性が高く、手術は難しいことが多い。

(Megu)

 

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入院中から忘れず評価すべきこと・・・栄養とADL

2023.01.10
カテゴリー: カンファレンス 内科

80歳代の男性でADLは自立、敷地内の別棟に息子さん家族がんでいる(茨城はこのパターンが多いんです)方が、肺炎で入院しました。幸い、順調に経過し、血ガスも胸部レントゲンも、WBCやCRPも改善しています。

 

では、そろそろ退院してもらおうと家族に話をしたら、「こんなんじゃ、おじいちゃんを連れて帰れません!」と言われてしまいました。

 

なぜだか分かりますか?

その患者さんは、食事は食べれるけどむせ込まないように誰かがついてないといけません。摂取量も十分とは言えない。ADLも歩けているけど歩行器を使用していて自宅で一人での移動は無理。

 

家族からすれば、今まで全く手がかからなかったのに、常にだれか家にいなくてはいけないなんて、家族みんな仕事しているから無理! となる訳です。こんなことは、あなたもこの先必ず経験するハズです。

 

特に高齢者では、入院を契機に急速にADLの低下を来します。脳梗塞を起こしたわけでもないのに、嚥下機能が落ちたり、食事量も激減することはしばしば日常で遭遇します。

 

なので、すべての入院患者さんについて「栄養とADL」を忘れずに評価しておきましょう。

 

入院前の生活に戻れるのか? 転院や施設を考慮した方がいいのか? 早い段階で家族に見通しを伝えて、退院に向けての準備を始めておかないと、退院直前になって冒頭のようなことになってしまいます。

 

疾患のことばかりでなく、いろいろ目配せが大事ですが、特に「栄養とADL」はキモになることを覚えておきましょう。

(編集長)

 

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鑑別疾患のあげ方(解剖学的アプローチ)

2023.01.07
カテゴリー: カンファレンス 内科

あなたがたとえどの診療科に進むとしても、初期研修医のうちに必ず身に着けてもらいたいことの一つに、「鑑別疾患のあげ方」があります。

 

鑑別疾患は、星の数ほどあるので全部覚えることは無理ですが、鑑別疾患のあげ方(フレームワーク)をおさえておくと、考えやすくなるだけでなく、抜けがなくなるので、ぜひ覚えて下さい。

 

編集長が勧める鑑別疾患のあげ方には2つあって、前回は1つ目のVINDICATE!!!Pを紹介しました。今回は2つ目の、解剖学的アプローチを紹介します。

 

この方法は具体例を出した方が分かりやすいので、やってみましょう。

では、「胸痛」の鑑別をできるだけたくさんあげてみてください

いくつ鑑別をあげられましたか?

 

狭心症、心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓、気胸・・・・、多くの研修医は、ERで見落とすとヤバい疾患はすぐに言えても、あまり

ヤバくない(生命にすぐにかかわらない)疾患は、なかなか挙げられません。ヤバい疾患ではなくとも、患者の不安は一向に解消されないので、下手をするとトラブルのもとになることもあります。



こんな
時に、解剖学的に近い臓器や組織を考えていくと鑑別疾患を挙げやすくなります。

 

具体的に、胸に近い臓器は・・・・

皮膚:

 帯状疱疹

乳房:

 乳癌、乳腺炎

骨:

 肋骨骨折、圧迫骨折、骨転移

筋肉:

 筋肉炎

肺(さらに胸膜、肺胞、間質、気管支、気管と分けて考えましょう):

 気胸、胸膜炎、肺癌、肺炎、気管支炎、肺塞栓

心臓(冠動脈、心外膜、心筋、弁):

 狭心症、心筋梗塞、急性心外膜炎、心筋炎、肥大型心筋症、大動脈弁狭窄症、

大血管(大動脈とその分枝、大静脈):

 大動脈解離(特に上行解離)、大動脈瘤破裂

縦隔:

 縦隔炎、縦隔気腫、縦隔腫瘍

食道:

 逆流性食道炎、食道破裂、食道腫瘍

胃:

 胃炎、胃潰瘍、胃癌

肝臓:

 肝膿瘍、肝腫瘍

胆嚢・胆道:

 胆石、胆嚢炎、胆管炎

甲状腺:

 甲状腺炎

神経:

 肋間神経痛、帯状疱疹後神経痛

横隔膜:

 横隔膜下膿瘍

 

まだまだあると思いますが、このように解剖学的に近いものを順に頭に浮かべて、それに関する疾患をあげていくと意外とたくさん出てきます。臨床の現場では、前回紹介したVINDICATE!!!+Pと、この解剖学的に攻める方法を無意識に組み合わせて鑑別疾患を考えていると思います。

 

医学生や研修医のうちは、鑑別疾患をたくさんあげるトレーニングを意識しましょう。同時に、鑑別疾患を広げるだけでなく、目の前の患者さんの診断に至るように鑑別を絞り込むトレーニングも大事です。こちらはまた別の機会で紹介します。

(編集長)

回診中に鑑別疾患を聞かれているところ♪

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鑑別疾患のあげ方(VINDICATE!!!P)

2022.12.29
カテゴリー: カンファレンス 内科

早いもので、もう年末ですね。J1のあなたはだいぶ仕事に慣れて、余裕も出て年末年始の当直に臨んでいるはずです。J2のあなたも、春からの研修先が決まり、それに向けてモチベーションをあげてる時期だと思います。

 

さて、あなたがたとえどの診療科に進むとしても、初期研修医のうちに必ず身に着けてもらいたいことの一つに、「鑑別疾患のあげ方」があります。

 

鑑別疾患は、星の数ほどあるので全部覚えることは無理です。でも、鑑別疾患のあげ方(フレームワーク)をおさえておくと、考えやすくなるだけでなく、抜けがなくなるのでお勧めですので、ぜひ覚えて下さい。

 

編集長が勧める鑑別疾患のあげ方には2つあります。1つ目は病因から攻める方法で有名な VINDICATE!!! + P(ヴインディケイト+P)です。2つ目は解剖学的に攻める方法です。

 

今回はVINDIVATE!!!+P(ちなみに!!!にも意味があります)を紹介します。

V:Vascular (血管系)
I:Infection (感染症)
N:Neoplasm (良性・悪性新生物)
D:Degenerative (変性疾患)
I:Intoxication (薬物・毒物中毒)
C:Congenital (先天性)
A:Auto-immune (自己免疫・膠原病)
T:Trauma (外傷)
E:Endocrinopathy (内分泌系)
!:Iatrogenic (医原性)
!:Idiopathic (特発性)
!:Inheritance (遺伝性)
P:Psychogenic (精神・心因性)

 

これは鑑別診断の神様として有名なティアニー先生が紹介していたものですが、すごいところは全ての疾患が網羅されているところです。もともとティアニー先生が病理学をやっていたので、こんなフレームワークに至ったと聞いたことがあります。

 

この鑑別方法は、一見すると関係なさそうな症状や検査データを俯瞰的に考える時に役立つと思います。原因が良く分からない、もしかしたら他の疾患を考える必要があるかもしれないと思った時に、これを見ながら鑑別疾患を考えてみて下さい。

(編集長)

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敗血症  徳田先生のカンファより

2022.11.15
カテゴリー: カンファレンス 内科

先週のことですが、6月に引き続いて徳田安春先生にお越しいただき、今年度2回目の症例検討会を開催しました。

 

この企画は茨城県が主催しているもので、徳田先生が県内の各臨床研修病院をまわって症例検討会を行うものです。徳田先生は超有名で著書も多数あります。当院とは徳田先生が水戸協同病院に赴任した時からの、かれこれ15年のお付き合いです。

 

今回はその症例検討会でJ1の内田先生が大腸憩室炎から腸腰筋膿瘍となった症例を提示しながら、敗血症についてまとめてくれたものをシェアします。

 

<敗血症>

【定義】

感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態

 

【診断】

➀感染症もしくは感染症の疑いがあり、かつ②SOFAスコアの合計2点以上の急上昇、として行う。

集中治療室、あるいはそれに準ずる環境における場合はSOFAスコアを、一般病棟、救急外来、病院前救護における場合はqSOFAスコアを使う。qSOFAの2項目以上が満たされる場合に敗血症を疑い、早期治療開始や集中治療医への紹介のきっかけとする。

 

<敗血症と敗血症性ショックの診断の流れ>

qSOFA≧2点では、集中治療室またはそれに準じた環境におけるSOFAスコアの評価に移行する。血液・生化学検査、動脈血ガス分析などよりSOFAスコアを時系列で評価する。SOFA スコアの合計点数が 2 点以上の急上昇となる場合に敗血症の確定診断とする。

 

輸液蘇生だけでは平均血圧≧ 65mmHgを維持できずノルアドレナリンなどの血管収縮薬を併用し、さらに血中乳酸値>2mmol/L (18mg/dL)の場合に敗血症性ショックと確定診断する。

 

 

内田先生が提示した症例では、憩室炎の腹痛症状は軽減していたものの、血液培養でEscherichia coli、ESBL産生Escherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Bacillus speciesといった腸管内の菌が複数陽性となり、外科的処置が行われて改善したという経過でした。

 

敗血症では血液培養の所見が重要になりますが、ガイドラインでもクリニカルクエスチョン(CQ)として血液培養と画像検査について記載されています。

 

CQ2-1 : 血液培養はいつ採取するか? 

→ 抗菌薬投与前に2セット以上採取する。

 

CQ2-2 : 血液培養以外の培養検体は、いつ採取するか?

→ 抗菌薬投与前に必要に応じて血液培養以外の各種培養検体を採取する。

 

CQ3-1 : 敗血症を疑う患者に対して、感染源検索のために画像検査を行うか?

→ 感染源が明らかでない場合は、感染源検索のために画像検査を行う。画像検査は、最適な治療法の選択を可能にするという観点で有 益である。一方、X線被爆・造影剤使用のリスク、特に重症患者の場合は検査室への移動中に急変のリスクなどの害があることも十分に認識する必要がある。

日本版 敗血症診療ガイドライン2020 https://www.jsicm.org/pdf/jjsicm28Suppl.pdfより

(編集長)

徳田先生カンファの一コマ

グループごとに相談中

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◆エムスリーの研修病院ナビ座談会にご参加ください!

研修病院ナビのフルマッチ病院特集に当院が参加します。

編集長と研修医があなたの質問にお答えします。ぜひご参加ください

 

2022年11月29日(火)18:30~19:00

 

*下記エムスリーのページからお申し込みが必要です

エムスリーのページはこちら

 

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成人Still病

2022.11.03
カテゴリー: カンファレンス 内科

県央レジデントセミナーで行った症例提示からのシェアです。前回は皮疹を伴う発熱患者を診察する時のポイントをシェアしましたが、その患者さんの診断は成人Still病でした。そこで今回は成人Still病についてのまとめをシェアします。

 

Still病とは関係ないですが、10月30日に水戸漫遊マラソンが開催され、研修医もランナーとして、また救護ボランティアとして参加しました。インスタにありますのでぜひご覧ください。

インスタはこちら♪

看護部のブログにも記事があります♪

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どうもこんにちは。新潟県産もやしです。10月20日にレジデントセミナーが開催され、症例発表させていただきました。とても緊張して、早口になったり、視聴者の質問に上手く答えられなかったりと反省点が多々ある発表でしたが、良い経験になったと思います。

 

さて、今回症例提示した患者さんは成人Still病でしたので、成人Still病について少しまとめたいと思います。成人Still病は全身性の炎症疾患で病因は不明です。比較的若年成人女性に多いですが(平均年齢38.1歳)高齢者の発症例も報告されています。

 

【臨床徴候】

T細胞やマクロファージの活性化に伴う高サイトカイン血症によって引き起こされる多彩な臨床徴候を呈します。頻度が多いものとして高熱、関節痛、皮疹がありますが、咽頭痛、筋痛、眼球症状、神経症状、心筋炎などもきたします。多くは敗血症を思わせる臨床像で来院されるため、発熱+皮疹やリンパ節腫脹、関節痛の鑑別疾患として成人Still病を挙げましょう。

 

・発熱:39度以上に上昇し、解熱する弛張熱の熱型をとります。感染症とは異なり、消耗性が少なく解熱時には比較的元気で食欲もあります。

・関節痛:膝、手首、足首、肘、肩などの比較的大きな関節の関節痛や関節炎が多いです。関節炎の程度は体温と並行することが多く、高熱時に疼痛や熱感は著明となりますが、解熱時は症状改善します。

・皮膚症状:サーモンピンク疹と表現される紅斑性丘疹で直径は数mm程度です。特に初期には発熱時にのみ出現しやすく、解熱時に消褪します。掻痒感が少ないのも特徴です。

 

【診断】

感度・特異度ともに高い山口らの成人Still病の分類基準が用いられます。合計5項目以上(大項目は少なくとも2項目以上)で成人Still病と分類されます。

 

 

【治療】

NSAIDsとステロイドが基本的な治療です。

・軽症例(発熱と関節症状が主体で臓器病変を伴わない):NSAIDsのみで寛解にいたります。

・多くの症例:中等量のステロイド(プレドニン20-40mg)を用います。

・重篤な臓器病変(間質性肺炎、漿膜炎、中枢神経症状)を伴う重症例:ステロイドパルス。トシリズマブ(IL-6阻害薬)を使用することもあります。

 

成人Still病はなかなか遭遇する疾患ではないかもしれませんが、成人Still病を疑った際は参考にしてみてください。疾患特異的な徴候や所見はなく、特に病初期には典型的な所見が揃わないことが多く、診断が難しいです。診断するときに大切なことは、盲目的にならず除外すべき疾患(悪性腫瘍、感染症、膠原病)をしっかりと鑑別にあげることです。

(新潟県産もやし)

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皮疹を伴う発熱患者を診たときは

2022.10.27
カテゴリー: カンファレンス 内科

10月20日のことですが、第33回目となる県央レジデントセミナーがハイブリッドで開催されました。

 

このセミナーは水戸地区の4つの研修病院(水戸済生会総合病院、水戸協同病院、ひたちなか総合病院、水戸医療センター)の研修医が集まって、研修医同士の勉強や交流を目的に年に2回のペースで開催しているものです。

 

今回は水戸医療センターが当番病院として総合司会を、症例提示を水戸協同病院と当院とが担当し、当院からは司会をJ1の逆井先生、症例提示をJ1の井原先生が務めてくれました。今回は井原先生のスライドからシェアさせてもらいます。

 

当院の症例は、「症例は50歳台の女性、約2週間前からの発熱で、四肢から体幹に拡大する皮疹を認め、近医で抗菌薬を処方されましたが改善なく当院に入院となりました。」

 

特徴的な皮疹であれば一発で診断できる疾患もありますが、実際には私たちが見ても良く分からないというのが大半です。ただ、この病歴からは発熱期間が少し長いので、感染症以外の疾患も鑑別に挙げておく必要があります。

 

では、鑑別を進めていくうえで、どんな病歴や身体所見を聴取したら良いかを井原先生がまとめてくれています。

 

<皮疹を伴う発熱患者で聴取すべき情報>

 

 

旅行歴や動物・植物との接触歴にあるレプトスピラ症は感染経路がネズミや犬などの野生動物からで、野外活動(レジャー、研究活動、農作業)、都市部のネズミから感染することがあります。

 

また、ツツガムシやマダニなどの流行地域に行っていないかも確認しましょう(茨城県はツツガムシ発生ありです)。

 

Sick contactでは家族構成も重要で、茨城県は敷地内同居が多いので、夫婦二人暮らしといいつつも、同一敷地内に息子さん家族の家があって、幼稚園のお孫さんと毎日接触している、なんてことがあります。

 

ぜひチェックリスト代わりに使ってみてください♪

(編集長)

発表風景

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高齢者の診察でおさえるポイント DEEP-IN

2022.09.27
カテゴリー: カンファレンス 内科

入院患者さんはご高齢の方がもともと多いものですが、最近はホントに高齢の入院患者が多くて、担当患者のなかで一番若い方の年齢が88歳ということも稀ではありません。ERでも外来でも同様で、ご高齢の患者さんの対応は欠かせないものになっていることに、あなたも何となく気づいているはずです。

 

さらに年齢だけでなく、合併疾患も非常に多く持っているので、疾患ベースで考えようとすると思考停止になりがちです。でも、患者さん全体を把握して何を優先すべきかを考えることが高齢者診療では大事なことで、これにはコツがあります。

 

今回はそんな時に役立つ高齢者のアセスメント法のひとつ、DEEPーINについて紹介します。

 

DEEP-IN

D:Dementia,Depression,Delirium,Drug(認知機能、抑うつ、せん妄、薬剤)

EE:Eye & Ear(視力、聴力)

P:Fall&Physical function(転倒、身体機能やADL)

I:Incontinence(失禁)

N:Nutrition(栄養、体重減少)

 

これらのポイントを「すべての高齢者に」、「ファーストタッチの時に」行うことで、後の診療がが非常にラクになります。

 

具体的に見ていきましょう。

 

D:認知機能は、家族のこと、服用している薬のことなどを質問して、あやふやな答えなら「認知症があるかもしれない」と把握しておくだけでOK。あとで改めてMMSEなどをやればよいでしょう。

 

D:抑うつは高齢者に高頻度に見られ、不眠を主訴にしている場合もよくあります。介入で改善する可能性があるものだという認識を持ちましょう。

 

D:せん妄は成書をみるといろいろ書いてありますが、「いつもと違う」状態と思えばOK。問題はその原因が何か?です。

 

D:薬剤については、高齢者のポリファーマシーが問題になっているのは聞いたことがあると思いますが、まず何を服用しているのか?どんな病名で処方されているのか?を把握すること。でもこれがかなり大変な作業になることがしばしばです。

 

E:視力についてはメガネの有無はもちろん、「目が見えにくくて生活に支障ないですか?」と聞いてみましょう。

 

E:聴力も同様で、「聞こえにくくて生活に支障ないですか?」と聞いてみましょう。

 

P:身体機能は杖や車いすの使用の有無、転倒歴(骨折歴)の確認をすればとりあえずOK

 

I:失禁については質問しにくいですが、大人用おむつを付けている人も多いので、聴診する時などにそっと確認します。

 

N:栄養は、おいしく食事を摂れているか? 体重が減っていないか?などの質問に加えて、ベルトやズボンのサイズが明らかに合っていないことなどを確認するのもいい手です。

 

お気づきと思いますが、このDEEP-INは疾患を診断するものではなく、高齢者の機能評価のツールですからざっくりで良いので把握してみましょう。

(編集長)

PICC後の手技の振り返り

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呼吸器内科専門医と読む胸部X線写真8 井上先生のZoomレクチャーより

2022.09.13
カテゴリー: カンファレンス 内科

山形大学の井上純人先生による「呼吸器専門医と読む胸部X線写真」からのシェアです。今回がこのシリーズの最後になります。

 

胸部X線写真は日常で最も多く行う重要な検査の一つですが、初学者にありがちなこととして、
・目についたものしか見ない。
・一つの問題が発見されるとそれで満足。
・写っていても、読影していない。
・読影するルールが決まっていない。
・見る≠診る

 

こんな状況だと見落としをしてしまいます。それを防ぐため、読影をするときに大事なことは一つの所見にとらわれずに必ず全て読影することです。でも、全て読影って、どうすればいいのか?そんな時に役立つ読影の順番を紹介します。

 

井上先生は2つの読影法を教えてくれました。一つは「人のハイ」読影法、もう一つが「小三J」読影法です。当院の研修医たちは、覚えやすいということで「人のハイ」を覚えて使っています。そこで今回はこの「人のハイ」読影法を紹介します。

 

まず、「人」で気管→気管支→肺門部をチェックします。

 

「の」で大動脈弓→下行大動脈→心臓を追っていきます。

「ハ」で心臓の輪郭を確認。

「い」で胸膜→CPA→横隔膜→肺野の順にみていきます

 

あなたもこの順番で、紹介してきた17個のチェックポイントを思い出しながら胸部X線を読影してみてください!

(編集長)

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