臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
治療可能な認知症・・・山中克郎先生のレクチャーより
2月6日に開催した山中克郎先生のレクチャーからです。
今回のレクチャーでは「危険な精神症状」がテーマでした。その中で取り上げられていた治療可能な認知症をシェアします。
71歳の女性が食欲低下を主訴に受診しました。ご本人の話では、1ヶ⽉前から⾷欲がなくなり、かかりつけのクリニックに5⽇間⼊院したら元気になった。でも 2週間前から再び⾷欲がなくなったとのこと。ところが看護師の記録では「朝⾷は全部⾷べました」とか、「⺟と同居しています。母は81歳です(本人は71歳!)。」
ご家族に話を聞いてみると、2週間前から⾷欲がなくなり、 1週間前からもうろうとしている。今⽇は何⽇と聞いたり、会ってもいない友達と会ってきたというようになった。幻視はない。⺟親は18年前に亡くなっているとのこと。
どうも1~2週間の経過で認知症の症状が悪化してきているようです。さらに身体診察では眼球運動障害も認めました。さて診断は?
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診断はビタミンB1欠乏症(Wernicke脳症+Korsakoff症候群)でした。
Wernicke脳症は
・リスクファクターとして、アルコール多飲、がん、AIDSなど
・原因はビタミンB1⽋乏(1-2週間で⽋乏)
・症状は ①錯乱、②運動失調、③眼筋⿇痺が有名ですが、3徴がそろうのはたった30%のみで多くの患者は錯乱のみ
・治療をしないとKorsakoff症候群へ移⾏
Korsakoff症候群は
Wernicke脳症の後遺症として発症する認知症のことで、記銘力障害、失見当識、作話が有名です。治療法はありません。
そして、治療可能な認知症には以下のようなものがあるので、これらは是非とも覚えておきましょう。
・甲状腺機能低下症
・正常圧⽔頭症
・慢性硬膜下⾎腫
・ビタミンB1/B12⽋乏症
・肝性脳症
・尿毒症
・神経梅毒
・うつ病
・⾼齢者てんかん
・薬物依存
(編集長)

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市民公開講座のご報告
こんにちは、水戸済生会 脳神経内科のKiです。
普段は神経内科の一般診療を中心に行っていますが、その他には急性期脳梗塞に対する脳血管内治療(脳血栓回収療法)や、1-2週に1回のドクターヘリ乗務(フライトドクター)をしており、三刀流のつもりで頑張っています。
先日2月8日の土曜日の午後に私と脳神経外科のKo先生と認知症ケアナースともに、水戸市の内原イオンで市民公開講座を行ってきました。実は当院は内原イオンと提携して、年に3-4回市民公開講座を行っており、今回は脳神経系としては初めて市民の皆様の関心の高い、脳卒中と認知症についての講演会を行いました。

最初にKo先生から脳卒中の予防について、2番目にAさんから認知症患者さんとの向き合い方、最後に私から認知症の診断や最新の治療についてお話をしました。
脳卒中予防についてのKo先生の講演では、脳卒中は日本人の死因第4位、介護を必要とする疾患では第1位となっているため、予防が非常に重要性だとのお話がありました。予防としては生活習慣の改善が中心になります。脳卒中であれば高血圧の予防のために、塩分制限や適切な運動、毎日の過剰な飲酒は控えるべきですし、糖尿病の予防のために過剰な炭水化物接種を控えることも大事です。
また、特に急性期脳梗塞では、血栓溶解療法、血栓回収療法という、発症間もない時間に病院に来てもらわないとできない治療があり、発症したらすぐに病院を受診する、もしくは救急車を呼ぶことが重要です。ちなみにKo先生は脳血管障害の手術のスペシャリストで、特に脳血管のバイパス術を得意としており、実際に手術を行った症例についても紹介もされました。
認知症の人との接し方についての認知症ケアナースからの講演では、認知症患者さんの徘徊や、突然怒り出すことについても、本人なりの理由があり、それを尊重することが大事だというお話をされました。患者さんの意思を尊重することは、認知症患者さんの人権を尊重することにもつながります。
また、認知症のケアにおいては、患者さんのみではなく、介護する周りの家族の方の心と体の健康も非常に重要であり、どちらも保たれてこそ認知症のケアがうまくいきます。現在は水戸近辺にも認知症治療を中心に行う医療機関が何個かあり、それらを積極的に活用していくことが大事です。
最後に私からは、軽度認知機能障害や初期アルツハイマー型認知症に対する治療薬である、レケンビ®(レカネマブ)、ケサンラ®(ドナネマブ)についてお話をしました。
どちらの薬でも適応になるのは、かなり早期の段階であり、そのときの症状に気づくには、周りの家族がしっかり注意している必要があります。また、アルツハイマー型認知症では糖尿病がアルツハイマー型認知症のリスクであることが明らかになっており、こちらもやはり脳卒中と同様に生活習慣の改善が予防につながります。
その他には、講演会以外にもブースを設けて医師・看護師・栄養士の相談コーナーを用意して、リハビリからは高齢者の疑似体験、当院に併設する健診センターで用意している「のうKnow」という認知機能チェックのコーナーも用意しました。

脳神経系のイベントとしては初めての試みで、どのくらいの人が集まってくれるか心配でしたが、事前の予約だけで40人以上の予約があり、当日は全てのコーナーを含めて、のべ200人弱の方々に集まっていただき大変盛況でした。来ていただいた方々、当日のイベントのお手伝いをしてくれた当院スタッフの皆様にはただただ感謝です。
脳卒中と認知症は、現在の高齢化社会において非常に重要な疾患でもあり、今後も定期的にこのようなイベントを開催していこうと思っています。
(Ki)
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一過性全健忘・・・山中克郎先生のレクチャーより
2月6日に山中克郎先生をお迎えして、今年度2回目のレクチャーを開催しました。
山中先生は藤田医科大学の教授を務めた後、諏訪中央病院の総合診療科、福島県立医大会津医療センター総合内科の教授として活躍され、退官後の現在は諏訪中央病院に戻られて診療を続けている総合内科の大御所の一人です。著書もたくさんあります。
当院とは2018年からのお付き合いでコロナ期間中もZoomでのレクチャーをお願いしていました。今年度は10月にもお越しいただきましたが、今回もリアルでのレクチャーをお願いしました。
最初にJ1の川並先生から症例提示を行って、後半は「危険な精神症状」のテーマでレクチャーをしていただきました。

いくつかの疾患の典型例を教えていただいたのですが、今回は一過性全健忘についてシェアします。
症例は48歳⼥性。現病歴はご主人の話によると、22︓30頃に突然話が通じなくなったとのこと。具体的には「ここはどこ︖」と聞いたり、⾃分で作ったおかずを⾒て、「これ何︖」と突然⾔い出した。話をしている相⼿が夫ということは分かっているようだ。既往は特になし。内服もなし。
経過観察のため⼀泊⼊院を勧め、本⼈も同意されたが、10分後「どうして⼊院することになったの︖もう帰る︕」と患者は夫と喧嘩を始めた。
こんな症状で画像検査でも何も所見がなければ、一過性全健忘(Transient Global Amnesia)を思い出してください。
一過性全健忘(TGA)とは
<症状>
・数⽇〜数年の記憶が喪失(逆⾏健忘)
→「ここはどこ?」「これ何?」
・発作中は新たな記憶ができない(前向健忘)
→本人も同意したが「どうして入院することになったの?」
・患者は不安になり、何度も同じ質問を繰り返す
・昔の記憶は障害されていない
→話をしている相⼿が夫ということは分かっている
・記憶以外の⾼次機能は障害されない
・24時間以内に症状は改善する
<原因>
・不明、中年に多い
・MRIでは海⾺の神経脱落や虚⾎が⽰唆されている
・疼痛、ストレス、息こらえがtriggerとなることがある
編集長もTGA症例に遭遇した経験がありますが、知っていれば一発診断できるものなので、ご家族を安心させることができますよ。
(編集長)
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透析患者の糖尿病にはHbA1cを用いて良いのか?
糖尿病で維持透析中の患者さんが入院してきました。採血データをみると、HbA1cが5.9%と正常範囲内でした。ところが、内服薬を確認するとDPP4阻害薬を服用していました。コントロールは非常によいのに、なぜDPP4阻害薬を継続しているのでしょうか?
糖尿病のコントロール目標としてHbA1cが使用されるのはご存じの通りです。過去1~2か月の平均血糖値を反映する便利な指標です。ところが、一般的に透析患者さんはHbA1cが低くなって、平均血糖値と解離することが知られています。ですから糖尿病のコントロール指標としては不適とされています。
HbA1cは、すごく単純に言うと砂糖漬けのヘモグロビンの割合のことですが、これは平均血糖だけでなく赤血球寿命にも関連があります。具体的には出血や溶血性疾患、肝硬変のときには低値になります。
透析患者は透析による失血(回路内の残血など)や出血、エリスロポエチン製剤による幼弱赤血球の増加などの影響でHbA1cが低値、つまり過小評価になるのです。

そんな透析患者さんの血糖コントロールに役立つ指標がグリコアルブミン(GA)です。
グリコアルブミンは血清アルブミンの糖化産物のことで、半減期約17日。つまり約2週間の平均血糖を反映しています。基準値は11~16%。血糖の管理目標としては20%未満が目標とされています。
冒頭の患者さんに戻ると、HbA1cは5.9%でしたが、GAは20.1%とやや高めでしたので、DPP4阻害薬の継続が必要なことが理解できました。
(参考文献:糖尿病治療ガイド2022ー2023)
(編集長)
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抗NMDA受容体脳炎(2)
平E先生の抗NMDA受容体脳炎の記事の続きです。今回は予後と鎮静についてシェアします。
【予後】
ほぼ回復した症例が75%、死亡が4%、再発率が20−25%と報告されています。身体機能の予後は良い一方で、年単位で高次脳機能障害が残存する例が多いようです。発症から2年後および5年後の認知機能予後を評価した研究(Josephine Heinekenら、2021年)では、2年後時点では85%、5年後時点では65%にmoderate-severeの高次脳機能障害を認めました。
一方で全例で認知機能の改善を認めており、これは患者にとっては良い情報でしょう。飯塚らは、半年以上の挿管・鎮静管理を要しほとんど植物状態であった患者が、リハビリを年単位で継続することで会話や書字機能が戻ったり、仕事復帰することができた2例を報告しています。
この2例については頭部MRIおよび脳血流SPECTが撮影されており、発症初期には脳萎縮および血流低下の所見が明らかでしたが、5年以上経ってから撮影した画像では、上記所見の改善を認めています。このことは、画像上器質的な変化が見られていたとしても、長期的予後の改善を見込める可能性があることを示唆しています。
【鎮静】
最も重症度の高い不随意運動期には、不随意運動による管理困難や難治性てんかん、中枢性低換気の管理目的に、集中治療室における挿管・鎮静管理を要する場合があります。鎮静にはベンゾジアゼピン系、フェンタニル、プロポフォールが使用されることが多いですが、使用期間が長期化することにより各鎮静薬に対する耐性形成が問題になります。
特にプロポフォールは長期使用によってPRIS (Propofol Infusion Syndrome)をきたしアシドーシスや致死性不整脈から致命的になる可能性があるため、長期に使用する際には注意が必要です。
以上、抗NMDA受容体脳炎の診療にあたって自分が学んだ情報をまとめました。厳しい経過を辿ることもあるこの疾患ですが、このブログが診療の一助になれば幸いです。
(平E)

カンファ中の一コマ
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抗NMDA受容体脳炎(1)
はじめまして、平Eです。
今回は自己免疫性脳炎のひとつ、抗NMDA受容体脳炎の症例を経験したので、その際に得た知識を共有します。
自分が診ることはないだろうと思うかもしれませんが、脳炎のうち最も多いのが感染性脳炎で、次いで多いのが自己免疫性脳炎です。抗NMDA受容体脳炎は自己免疫性脳炎の中で最も多いため、意外と接する機会は多いかもしれません。臨床像としては次第に増悪する妄想・幻覚などの精神症状で発症し、1−2週間ほどの経過で不随意運動・自律神経障害・中枢性低換気・けいれんなどの神経学的症状が出現します。重症例では神経学的症状のコントロールを目的に鎮静・気管挿管による管理を要する場合があります。
ここでは診断・治療・経過・予後と、特に重症例で問題になる鎮静について項ごとにまとめます。
【診断】
3ヶ月以内に進行する精神症状や新規発症のてんかん発作、神経局所症状を認めた場合、自己免疫性脳炎を鑑別に挙げる必要があります。基本的には除外診断で、感染性髄膜炎の除外→中枢神経症状を呈する可能性のある全身性自己免疫性疾患(SLE、ベーチェット病、血管炎等)の除外を行った上でどれにも当てはまらない場合、自己免疫性脳炎の可能性を考慮します。
診断には特異的自己抗体のスクリーニングに加え、悪性腫瘍のスクリーニングが必要です。自己免疫性脳炎は発症機序に悪性腫瘍が関連するものが多く、傍腫瘍性脳炎であれば治療に早期の腫瘍切除が必要になるためです。若年女性では卵巣奇形種との関連も指摘されているようです。
【治療】
治療は自己抗体陽性を待たずに開始することが多いです。理由としては検査可能な自己抗体が限られている点、結果が出るまで時間を要する点、抗体陰性の例も多い点などがあげられます。
治療は免疫抑制療法が基本で、1st lineとしてステロイドパルスや免疫グロブリン静注療法(IVIG療法)、血漿交換療法単独もしくは併用を行います。腫瘍性病変を合併する場合は免疫抑制療法への反応性が乏しいため、早期の腫瘍切除を考慮する必要があります。治療に対する反応性に乏しい場合、2nd lineとして保険適応外ではあるもののリツキシマブやシクロホスファミドが奏功するケースもあるようです。
【経過】
風邪様の前駆症状期が数日から2週間程度見られた後、精神症状が出現します。精神症状は不安や恐怖、幻覚など多岐にわたり、統合失調症の急性期を思わせる場合もあり、本症例も当初は精神科病院に医療保護入院していた経過があります。
数週の精神症状ののち、不随意運動や痙攣発作、自律神経障害が出現します。口腔・舌・顔面の不随意運動が特徴的と言われますが、実際には全身性に不随意運動が出現します。
治療反応性にもよりますが、数週から数ヶ月かけて不随意運動期を脱すると緩徐回復期に入り、数ヶ月から数年かけてもとの意識状態に戻る疾患です。
(平E)
<編集長追記>
映画の「エクソシスト」や「ブレイン・オン・ファイア」、邦画では「8年越しの花嫁 奇跡の実話」がこの抗MDA受容体脳炎をモチーフにしていますので、ご覧いただくとイメージがつきやすくなります。

ICUでの一コマ
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◆第23回水戸医学生セミナー
~復活!メディカルラリーで救急のエッセンスを体験しよう~
2025年3月15日(土)、16日(日)に開催します。
定員まで残り1名となりました!
JATEC,MCLSなどの内容を盛り込んだメディカルラリーに挑戦してください!
井上純人先生によるリアルレクチャー開催!
昨日のことですが、山形大学の井上純人先生に当院にお越しいただき、レクチャーを開催しました。
今年度もZoomでのレクチャーを行っていただいているものの改めて紹介すると、井上先生は山形大学の第一内科講師、附属病院教授で、編集長と大学の同級生です。山形大学では、ベストティーチャー賞を何度も受賞しており、今では殿堂入りを果たしていて医学部学生はもちろんですが、学内では知らない人はいないほど教え上手で面倒見のいい先生です。専門はCOPDで吸入療法の重要性を普段から発信していて、吸入療法アカデミーやまがたの代表も務めています。
今までのZoomレクチャーでも吸入療法の重要性を繰り返していたので、今回は無理を言って水戸済生会までお越しいただき、リアルでのレクチャー開催となりました。

今回のタイトルは「吸入指導のエキスパートを目指そう」ということで、さまざまな種類のある吸入薬のデモ機を準備して、実際にやりながら指導法や各デバイスのピットホールを教えていただきました。
今回は研修医はもちろんですが、看護師や薬剤師も参加してもらいました。実際のところ、病棟では吸入器を処方すると看護師さんや薬剤師さんに丸投げしてしまい、どんなデバイスなのかすら把握していないことが多かったと思います。今回は様々な吸入デバイスが一通りそろっていたので、比べて特徴を把握することができました。終了後も質問が多くでるなど、学びの多いレクチャーになったようです。
(編集長)

デモ機で実際にやってみる
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◆第23回水戸医学生セミナー
~復活!メディカルラリーで救急のエッセンスを体験しよう~
2025年3月15日(土)、16日(日)に開催します。
定員まで残り2名です!
JATEC,MCLSなどの内容を盛り込んだメディカルラリーに挑戦してください!
高齢者にはDEEP-IN
ご高齢の患者さんがとても多いことにあなたも気づいていると思いますが、担当患者さんのなかで一番若い方の年齢が88歳とか、90歳以上の患者さんが5名いるということも珍しくありません。ERに搬送される患者さんも同様です。さらにご高齢の患者さんは合併疾患も非常に多く持っていることがほとんどなので、普段なら悩まずにやっていた点滴や薬剤の選択も悩んでしまいます。
高齢者の診療では患者さん全体を把握して、何を優先すべきかを考えることが大事で、逆に言えばあなたの腕の見せ所とも言えます。今回はそんな高齢者の診療に役立つDEEPーINについて紹介します。
DEEP-IN とは
D :Dementia,Depression,Delirium,Drug(認知機能、抑うつ、せん妄、薬剤)
EE:Eye & Ear(視力、聴力)
P :Fall&Physical function(転倒、身体機能やADL)
I :Incontinence(失禁)
N :Nutrition(栄養、体重減少)
これらのポイントを「すべての高齢者に」、「ファーストタッチの時に」把握することで、後の診療がが非常にラクになります。
一つずつ具体的に見ていきましょう。
D:認知機能は、家族のこと、服用している薬のことなどを質問して、あやふやな答えなら「認知症があるかもしれない」と把握しておくだけでOK。あとで改めてMMSEなどをやればよいでしょう。
D:抑うつは高齢者に高頻度に見られ、不眠を主訴にしている場合もよくあります。介入で改善する可能性があるものだという認識を持ちましょう。
D:せん妄は成書をみるといろいろ書いてありますが、「いつもと違う」状態と思えばOK。問題はその原因が何か?です。
D:薬剤については、高齢者のポリファーマシーが問題になっているのは聞いたことがあると思いますが、まず何を服用しているのか?どんな病名で処方されているのか?を把握すること。でもこれがかなり大変な作業になることがしばしばです。
E:視力についてはメガネの有無はもちろん、「目が見えにくくて、生活に支障ないですか?」と聞いてみましょう。
E:聴力も同様で、「聞こえにくくて、生活に支障ないですか?」と聞いてみましょう。
P:身体機能は杖や車いすの使用の有無、転倒歴(骨折歴)の確認をすればとりあえずOK
I:失禁については質問しにくいですが、大人用おむつを付けている人も多いので、聴診する時などにそっと確認します。
N:栄養は、おいしく食事を摂れているか? 体重が減っていないか?などの質問に加えて、ベルトやズボンのサイズが明らかに合っていないことなどを確認するのもいい手です。
お気づきと思いますが、このDEEP-INは疾患を診断するものではなく、高齢者の機能評価のツールです。検査や治療の計画を立てるときに、これらを把握しておくとスムーズに進みます。まずはざっくりで良いので把握してみてください。
(編集長)

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喘息の診断は?・・・井上先生の呼吸器レクチャーより
「喘息って、どうやって診断するの?」
研修医に質問すると、ほぼ全員が無言になります。
喘息の治療のことは覚えていても、診断となると自信をもって答える研修医はごくわずか。
それもそのはずです。
喘息の定義を確認してみると、「気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄による喘鳴、呼吸困難、胸苦しさや咳などの臨床症状で特徴づけられる多様性を有する疾患」とフワッとしたものになっていて、例えば、COPDのように「1秒率が70%未満」など、数値では定義されないのが喘息の難しいところだと言えます。
先日のことですが、そんな喘息に関して山形大学呼吸器内科の井上先生にレクチャーしていただきました。
喘息の特徴をまとめておくと、
・喘息は小児から高齢者まですべての年代において発症し得る疾患
・喘息の診断には臨床症状がより重要であるため、詳細な問診が必要
・喘息の診断には「ゴールデンスタンダード」となりうる客観的指標はない
・症状の中で最も特異性の高い症状が「喘鳴」、最も頻度が多いのが「咳嗽」
・喘息を疑う症状(喘鳴、咳嗽、喀痰、胸苦しさ、息苦しさ、胸痛)がある場合には下の問診チェックリストに従って問診を行う
喘息と診断するには問診が重要なのですが、見落としを防ぐために以下の問診チェックリストを利用してください。
<問診チェックリスト>
大項目
喘息を疑う症状(喘鳴、咳嗽、喀痰、胸苦しさ、息苦しさ、胸痛)がある
小項目
〔症状〕
①ステロイドを含む吸入薬もしくは経口ステロイド薬で呼吸器症状が改善したことがある
②喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を感じたことがある
③3週間以上持続する咳嗽を経験したことがある
④夜間を中心とした咳嗽を経験したことがある
⑤息苦しい感じを伴う咳嗽を経験したことがある
⑥症状は日内変動がある
⑦症状は季節性に変化する
⑧症状は香水や選考などの香りで誘発される
⑨冷気によって呼吸器症状が誘発される
〔背景〕
⑩喘息を指摘されたことがある(小児喘息も含む)
⑪両親もしくは兄弟に喘息がいる
⑫好酸球性副鼻腔炎がある
⑬アレルギー性鼻炎がある
⑭ペットを飼い始めて1年以内である
⑮末梢血好酸球が300/μl以上
⑯アレルギー検査(血液もしくは皮膚検査)にてダニ、真菌、動物に陽性を示す
「大項目+小項目のうちいずれか1つ以上」あれば喘息を疑います。
(喘息診療実践ガイドライン2024)
繰り返しになりますが、喘息の診断は問診から疑っていくことが重要です。あなたもチェックリストを使いながら、喘息を診断できるようになって下さい。
(編集長)

背景は山形の銀山温泉♪
いいところですよ!
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癌性髄膜炎
10月に開催された茨城県内科学会で、当院J1のちくわ先生が発表した症例からのシェアです。
70歳台男性が9日前から頭痛を自覚。さらに2日前から両側の難聴と全身の疼痛が出現し、入院となりました。意識はJCS I-3、GCS E4V4M6で項部硬直はなく、難聴以外の脳神経所見はなく、麻痺や病的反射もありませんでした。
頭部CTで出血や脳梗塞の所見はありませんでしたが、髄液検査で初圧の著しい上昇(>300mmH2O)と細胞数増多、糖低下を認めました。髄液の細胞診から印環細胞癌が、内視鏡で胃癌が見つかり、胃癌に伴う癌性髄膜炎の診断となった症例です。
癌性髄膜炎は遠隔部位の腫瘍から軟膜への癌細胞浸潤を指します。
発症機序としては
・脈絡叢や血管周囲腔への血行性拡散
・頚部リンパ節を介した直接伝達
・傍椎骨レベルでの神経根に沿った拡散
・神経周囲リンパ管や神経鞘に沿った逆行性播種
などが考えられています。
発症率はすべての癌患者のうちおおむね5%前後の報告が多く、疾患別に見ると固形癌では肺癌、メラノーマ、乳癌での発症が多く、それ以外ではALLで比較的高頻度に見られます。

消化管原発の癌ではがん性髄膜炎の発症は少なく、今回の患者と同じ胃癌からの発症は0.14%との報告がありました。全体としては診断精度の向上と癌治療進歩による余命延長から、発症率は増加傾向となっています。
この症例では急激に両側の難聴を来したことが特徴ですが、脳脊髄液は脳底槽や小脳橋角部に停滞しやすく、脳脊髄液中に浸潤した腫瘍細胞がその領域に広がりやすい特徴があるとされており、そこから内耳道に侵入した腫瘍細胞により蝸牛神経の軸索が破壊される説,蝸牛に到達した腫瘍細胞が、直接的に蝸牛の構造破壊を引き起こす説,内耳道に腫瘍が形成されることで内耳動脈が圧迫され、虚血性に蝸牛機能障害を生じる説などが考えられています。
(ちくわ)
なお、ちくわ先生は今回が初めての学会発表でしたが、落ち着いて聞き取りやすく話していたし、会場からの質問にも堂々と答えていて、なかなか立派でした♪
(編集長)

発表中のちくわ先生
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