臨床研修ブログ

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頭頚部感染症・・・松永先生の感染症レクチャー

2021.10.19

松永先生の感染症レクチャー@Zoomからです。

 

今回は感染症Emergencyの一つとして頭頚部感染症について紹介します。頭頚部感染症は、部位的に気道閉塞を来す可能性があるので、頭に入れておく必要があります。

 

松永先生が取り上げたのは以下の4つ

 

・Ludwig’s Angina(ルードヴィッヒ アンギーナ)

口腔底蜂窩織炎のことで、扁桃炎や齲歯を契機に舌下間隙~顎下間隙に波及したもの。口が閉じられなくなり、舌の突出を認めます。

 

・扁桃周囲膿瘍

側咽頭スペースの感染、開口障害を来すことがあります。

 

・咽後膿瘍

後咽頭スペースの感染、気道閉塞の危険があり

*下の解剖図ではオレンジのスペースです

 

・急性喉頭蓋炎

インフルエンザ杆菌が原因として多い。気道閉塞の危険あり。

 

何となくでも、下図のような解剖のイメージも持っておくとイイですよ。

(編集長)

オレンジのスペースが咽後膿瘍の部位

グリーンのスペースは縦隔につながる部位

左が軸位 右が矢状断 Radiographics 2011;31:1141-1160

 

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壊死性筋膜炎・・・松永先生の感染症レクチャー

2021.10.14

今回も松永先生の感染症レクチャー@Zoomからです。前回の記事で紫斑を生ずる感染症をまとめましたが、その中に壊死性筋膜炎が挙げられていました。

 

あなたが経験したことがあるなら分かると思いますが、壊死性筋膜炎は進行が非常に速くてビビります。そこであなたが慌てないように大事なポイントだけまとめてみました。

 

壊死性筋膜炎といっても起炎菌や病変の深さでいろいろ分類されていますが、臨床的に治療が大きく変わるわけではないので壊死性軟部組織感染症(NSTI)とう呼び方が提唱されています。

 

【症状】

Triadとして

・病変の様子に比べて疼痛が非常に強い

・進行が速い

・皮膚が非常に湿潤

この他に、水疱形成、皮膚の変色、出血、握雪感などが見られる

 

【細菌学的には】

・連鎖球菌:GAS、GCS、GGS

・クロストリジウム

・市中MRSA

・Polymicrobial

 

【診断】

・画像診断では判断困難

・外科に速やかにコンサルとして、病変部の切開のうえ皮下や筋膜などの状態を確認(一緒に培養も!)

 

【治療】

治療のメインは外科的デブリ

・抗菌薬は補助的な位置づけ

・培養で同定されないこともあるので、広範囲にカバーする

 

とにかく20~30分の単位で皮膚病変拡大していくので、画像検査に時間を取られることなく、速やかに外科に連絡して、すぐデブリすることが大事です。ためらってしまうのは分かりますが、ここは違っていて怒られても気にすることはありません。見逃すとヤバいことになります。

 

(編集長)



えーっと、次の救急車は何だっけ?

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紫斑を生ずる感染症・・・松永先生の感染症レクチャー

2021.10.12

9月に開催された松永先生の感染症レクチャー@Zoomからです。今回のテーマは「感染症Emergency」でしたが、その中で強調されていたポイントの一つを紹介します。

 

それは「所見が感染そのものによるとは限らない」

 

どういう事かというと、「感染による局所の所見なのか?全身の反応なのか?を考えながら対応する必要がある」ということです。

 

あまりピンとこないあなたに、具体的な例を挙げると、

  意識障害 ≠ 中枢神経系感染症

  嘔吐・下痢 ≠ 消化器感染症

これは何となく分かりますよね?

 

その中で皮膚所見、特に紫斑の出現は、局所感染としても全身状態の表出としても重要なのでまとめておきます。

 

<紫斑を生ずる感染症>・・・・部位から

局所・・・皮膚軟部組織感染

 ・壊死性筋膜炎

 ・ガス壊疽

全身状態の表出として

 ・感染性心内膜炎 

 ・電撃性紫斑病:肺炎球菌、髄膜炎菌、ロッキー山脈紅斑熱など

 ・DIC

 

<点状出血/紫斑を生ずる微生物>

・細菌 

  GPC:肺炎球菌、黄色ブドウ球菌

  GNC:髄膜炎菌、淋菌

  GNR:敗血症からのDICとして、カプノサイトファーガ

  非定型:リケッチア

・ウイルス   

  デング熱

  ヘルペス属(EBV、CMV)

・寄生虫 

  マラリア

 

紫斑の広がりはRed flag signです!

感染による局所の所見なのか?全身の反応なのか?を意識しながら、病歴や身体所見を取るようにしてください。

(編集長)



これからPICC2件♪

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感染は今みえるところだけ?・・・松永先生の感染症カンファ

2021.10.02

維持透析中の患者さんが、腰痛と発熱でER受診しました。発熱以外のバイタルは問題なく、MRIで化膿性脊椎炎と診断され、血培を取って抗菌薬治療目的に入院となりました。血液培養の結果はMSSA。抗菌薬の感受性も当たっているので安心していましたが、数日して脳出血を起こしてしまいました。

 

何が起こったのでしょうか?考えてみてください。

当院の研修医には繰り返していますが、化膿性脊椎炎や椎間板炎を見た時はその背後に感染性心内膜炎(IE)が隠れていないか探しに行く必要があります。この症例はIEがあって、IEの合併症の一つである細菌性動脈瘤が頭蓋内にできてしまい、それが破裂しての脳出血でした。

 

9月に開催された松永先生の感染症レクチャー@Zoomでも、感染は今見えるところだけ?と立ち止まって考える必要性を教えてもらいました。以下は、松永先生のスライドからです。

 

感染症を見たら

1. 原発性・・・例えば肺炎

2. 二次性

  a)近傍:解剖学的に隣接しているところからの波及

     縦隔炎 ← 傍咽頭間隙 ← 齲歯

   頸部リンパ節炎 ← 齲歯

   眼窩蜂窩織炎 ← 副鼻腔炎(←齲歯)

   髄膜炎 ← 副鼻腔炎(←齲歯)

   腹腔内膿瘍 ← 虫垂炎穿孔、憩室炎、PIDなど

   膿胸 ← 肺炎

  b)遠隔 血流にのって生着

   脊椎炎 椎間板炎 ← IE、カテ感染、シャント部感染

   腸腰筋膿瘍 ← IE

 

あなたも、何か背後に隠れていないか、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

(編集長)

こちらは髄膜炎のスライド

これも大事ですよ♪

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常陸大宮済生会病院でツツガムシ病の症例に出会いました

2021.08.19

地域研修で常陸大宮済生会病院の内科で研修中のNくんからのレポートです。常陸大宮済生会に行って早々にツツガムシ病を経験したそうです。ツツガムシ病は国試でも良く出題されますが、本文中にもあるとおり頻度は少なく、実際に自分で経験できることはほとんどないはずですから、非常に貴重な経験ですね(編集長も自分で診断した経験はありません)。

 

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60代男性,7月に川釣りにいき,テントで寝転がり休憩していた.その後間欠熱をきたし常陸大宮済生会病院外来にて精査をされていたが,熱源がはっきりせず,不明熱であった.8月上旬の再診で頸部に痂皮化した刺し口(写真1)ができていることに気づき,虫刺症を疑われた.発熱,刺し口の2つがあり,熱型からツツガムシ病を疑われた.

(写真1)頸部の刺し口

 

ツツガムシ病は4類感染症で茨城県では年に10症例ほどしか出会わない稀な感染症で,Orientia tsutsugamushi を起因菌とするリケッチア症であり、ダニの一種ツツガムシによって媒介される。患者は、汚染地域の草むらなどで、有毒ダニの幼虫に吸着され感染する。発生 はダニの幼虫の活動時期と密接に関係するため、季節により消長がみられる。また、かつては山形県、秋田県、新潟県などで夏季に河川敷で感染する風土病であったが(古典型)、戦後新型ツツガ虫病の出現により北海道、沖縄など一部の地域を除いて全国で発生がみられるようになった.

 

潜伏期は5 ~14 日で、典型的な症例では39℃以上の高熱を伴って発症し、皮膚には特徴的なダニの刺し口(写真2)がみられ、その後数日で体幹部を中心に発疹(写真3)が見られる事がある.

(写真2)典型的な刺し口

 

(写真3)体幹の皮疹 

 

発熱、刺し口、発疹は主要3徴候とよばれ、およそ90%以上の患者にみられる。また、患者の多くは倦怠 感、頭痛を訴え、患者の半数には刺し口近傍の所属リンパ節、あるいは全身のリンパ節の腫脹がみられる。臨床検査ではCRP強陽性、ASTおよびASL などの肝酵素の上昇がおよそ90%の患者にみられる。また、治療が遅れると播種性血管内凝固(DIC)をおこすことがあり、致死率が高い。

 

確定診断は主に間接蛍光抗体法、および免疫ペルオキシダーゼ法による血清診断で行われている.また,痂皮のPCR検査により菌種同定に至る場合もある.

 

治療はテトラサイクリン系抗菌薬の投与である.ドキシサイクリン100mg内服7〜14日間投与して終了する.

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/436-tsutsugamushi.html

感染症プラチナマニュアル2018

  (Nくん)

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感染症【投与期間】・・・一般的な目安と個々の患者状態

2021.05.22

4月に開催された松永先生の感染症レクチャーから基本の復習です。前回までに【診断】の2つの軸、【治療】の2つの軸、【抗菌薬】、【経過観察】の2つの軸を紹介してきましたが、今回が最後のポイントとなる抗菌薬の投与期間の決定についてです。

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例えば、あなたが蜂窩織炎の患者さんを担当したとします。血液培養で黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出されました。第1世代セフェムのセファゾリン(CEZ)の投与で順調に改善しています。患者さんも元気になってきて「いつ退院できますか?」とか「点滴はいつまでやるの?」と聞いてきました。こんな時、あなたは何と答えますか?

 

結論から言うと、投与期間の判断は「各疾患の一般的な目安+個々の患者の状態」で決めることになります。

 

血液培養でMSSAが検出されていれば、抗菌薬の10~14日間投与を考えます。でも、人工血管などのデバイスがある患者さんだったら、かなり悩んでしまいます。血液培養の陰性化も確認しなくてはなりません。ということで、「決まり」ではなく、「目安」をもとに、培養結果や感染局所の指標を見ながら判断することになります。

 

「抗菌剤投与の目安」には以下のようなものがあります。近年は投与期間を短くして大丈夫というような研究結果も出てきていますので、おおよその日数を頭に入れておき、その都度ガイドラインなどで確認するのが良いでしょう。

 

【髄膜炎】

髄膜炎菌、インフルエンザ菌 ・・・・7日間

肺炎球菌 ・・・・・・・・・・・・・14日間

リステリア菌 ・・・・・・・・・・・21日間

 

【肺炎】

肺炎球菌 ・・・・・・・・・・・・・解熱後3~5日(最短5日)

レジオネラ・非定型 ・・・・・・・・5~7日

腸内細菌科、緑膿菌 ・・・・・・・・14日以上も考慮

 

【心内膜炎】

緑色連鎖球菌 ・・・・・・・・・・・14日(GM使用下)

腸球菌 ・・・・・・・・・・・・・・28日~42日

黄色ブドウ球菌 ・・・・・・・・・・28日~42日

 

【腎盂腎炎】

一般的に・・・・・・・・・・・・・・14日

CPFX、LVFX使用 ・・・それぞれ7日、5日

 

【菌血症】

感染源除去可能 ・・・・・・・・・・10~14日

(編集長)

RRS・院内急変対応中!

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1回目:10:00~10:45 病院紹介・質疑応答

    

2回目:11:00~11:45 病院紹介・質疑応答

    

3回目:12:00~12:45 病院紹介・質疑応答

 

4回目:13:00~13:45 病院紹介・質疑応答

 

5回目:14:30~15:15 病院紹介・質疑応答

*病院紹介は各回とも同一内容です。

 

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感染症【経過観察】の2つの軸・・・全身と局所のパラメータ

2021.05.20

4月に開催された松永先生の感染症レクチャーから、基本の復習です。前回までに、【診断】の2つの軸、【治療】の2つの軸、そして【抗菌薬】について紹介してきました。今回は治療を開始した後の【経過観察】の2つの軸を紹介します。

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例えば、肺炎の患者さんに抗菌薬を開始したけど、一向に熱が下がらない、WBCやCRPが下がらない。抗菌剤を代えた方がいいか?なんて不安になることはしばしば経験しますよね。あなたはそんな時はどうしますか?

 

こんな時はまず、抗菌剤を変更する前に感染症治療が上手くいっているかの判断をする必要があります。ところで、あなたは何を根拠に治療が上手くいっているかを判断していますか?

 

たいていの人は、「発熱」が続いている「WBC」や「CRP」が下がらない、と答えてくれます。確かに、分かりやすく有用な指標ですが、その特徴と限界を把握しておく必要があります。

 

松永先生は「2つのパラメータ」をよく理解する必要性を強調しています。それは、「身体全体の総体を表すパラメータ(全身のパラメータ」「感染局所の病態を表すパラメータ(局所のパラメータ)」です。

 

「全身のパラメータ」とは、体温、WBCやCRP、プロカルシトニンなどの炎症マーカー、そして敗血症性ショックの治療に用いられるノルアドレナリンの用量、インスリンの用量、乳酸値などを指します。

 

「局所のパラメータ」とは、感染局所の症状、徴候、グラム染色などの検査所見を指します。

 

例えば、肺炎の患者さんなら、呼吸回数や酸素飽和度(吸入酸素量)喀痰量などが感染局所の指標になります。全身のパラメータが改善していなくとも、局所のパラメータが改善していれば、治療は上手く行っていると考えることができます。この肺炎の場合なら、CRPが上昇していても、呼吸回数や酸素飽和度(吸入酸素量)が改善傾向なら抗菌薬を変更する必要はありません。「検査値を治しているんじゃない!患者を治しているんだ!」というのが、松永先生のメッセージです。

 

具体的な感染局所のパラメータには・・・、

【肺炎】

症状(咳、痰、呼吸困難感)、

徴候(呼吸数、呼吸器の設定、痰の量・質)

検査(血液ガス、喀痰のグラム染色)  

 

【尿路感染】

症状(排尿困難、頻尿など)

徴候(腹部の圧痛、背部の叩打痛)

検査(尿中白血球数、尿グラム染色)

 

【蜂窩織炎】

症状(疼痛)、

徴候(発赤、腫脹、熱感、浸出液の量・質)

検査(浸出液のグラム染色)

 

【心内膜炎】

血液培養が検出されるまでの日数

血液培養の陰性化

 

感染症治療では発熱やCRPだけでなく、感染局所のパラメータに注目して、それを追いかけることが重要です。そして、これらのパラメータは診断する時点、治療を開始する時点で、経過を見る指標を決めていくことが大事です。発熱とCRPに惑わされないで頑張ってみてください。

(編集長)

PICC挿入 

手際よくやっています♪

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感染症【抗菌薬】の考え方・・・三角形を考えながら2度選ぶ

2021.05.13

4月に開催された松永先生の感染症レクチャーから、基本の復習です。今回は抗菌薬の考え方についてです。

 

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抗菌薬を選択する時のキーワードは、「三角形を考える」そして、「抗菌薬は2度選ぶ」です。

 

「三角形を考える」とは図のように感染部位、微生物、抗菌薬の関係を考えるということです。

大腸菌による膀胱炎を例にしてみましょう。

「感染部位」は膀胱、「微生物」は大腸菌。「抗菌剤」は、あなたなら何を選択しますか?

 

尿路感染症と言えば、よく処方されているのがキノロンですが、これって正しいのでしょうか?

 

実はキノロン耐性の大腸菌が多く、施設によっては約40%がキノロン耐性の大腸菌だったりします。これでは第一選択として不適当(だって40%の症例で効かないってことです)。つまり、抗菌薬を選択するときに感受性を意識することは重要です。

 

さらに感受性だけでなく、もう一つ、病変部への移行性も考慮します。

 

良く例に出されるのが、髄膜炎の際の髄液移行性です。感染部位は髄膜(中枢神経系)、微生物は肺炎球菌とします。抗菌剤は、いくら肺炎球菌をカバーしているといっても、第2世代セフェムは髄液移行性が悪いので使いません。移行性の良いセフトリアキソン(CTRX)などの第3世代セフェムを選択します。

 

抗菌薬を選択する時に三角形を考えるとは、感染部位に抗菌剤が到達するために投与経路(静注、経口)や用量はどうしたら良いのか?その他に、ドレナージなど物理的治療は必要ないか?人工物を除去する必要はないか?といった、感染部位、微生物、抗菌薬の関係性を常に意識しましょうということです。

 

とは言っても、臨床では原因微生物が判明しないうちに抗菌剤の投与を決めなくてはいけませんよね。そこで、経験的(empirical)に感染部位からよくある原因微生物を考えて抗菌薬を選択します。

 

その後に原因微生物が判明したら、それにあわせて標的治療(definitive therapy)に切り替えます。これがde-escalation(デ・エスカレーション)と呼ばれるもので、すなわち「抗菌剤は2度選ぶ」ということです。

 

この2度目の抗菌薬の選択は、十分な抗菌力があること、なるべくカバーする範囲が狭いもの、を基準に選択します。経験的治療で上手くいっている治療を、あえて抗菌薬を変える訳ですからなんとなく抵抗がありますが、「de-escalationは未来の患者さんため」と、松永先生は強調しています。AMR対策が国を挙げて進められている今こそ、肝に銘じるべき言葉ですね。

(編集長)

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◆5月15日(土)マイナビ合同Webセミナー全国版に出展します!

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マイナビレジデントページはこちら

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1回目:13:00~13:40 病院紹介

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2回目:14:30~15:10 病院紹介

    15:15~15:45 Zoomでの個別質疑応答

3回目:16:00~16:40 病院紹介

    16:40~      Zoomでの個別質疑応答

*病院紹介は3回とも同一内容です。

 

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感染症【治療】の2つの軸・・・化学的と物理的

2021.05.08

4月に開催された松永先生の感染症レクチャーから、基本の復習です。

 

前回は感染症【診断】の2つの軸を紹介しましたが、今回も2年前のブログから感染症【治療】の2つの軸についてです。

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60歳代の女性が発熱で入院。CVA叩打痛と尿所見から尿路感染症と診断しました。尿培養と血液培養を採取後に抗菌薬(CTRX)を開始。培養結果は、尿も血液も素直なE.coliでした。感受性をみても抗菌薬は当たっているはず。なのに、解熱しないし、CRPも良くならない。あなたにはこんな経験はありませんか?今回は松永先生のカンファから感染症治療の2つの軸を紹介します。

 

感染症治療=抗菌薬 

 

というイメージを持っている人は多くいます。もちろん抗菌薬が感染症治療の重要な位置を占めているのは間違いありません。そもそも、抗菌薬の役割は微生物を「化学的に除去する」ことですが、用量が少なすぎたり、目的のところに十分到達しなければ効果は得られません。

 

こんな時に、二つ目の大事な治療の軸があります。それは、「物理的に除去する」ということです。

 

ドレナージや洗浄、切除(切断)、人工物の除去など、外科医など他の診療科とも協力して治療を行う必要があることを忘れてはいけません。

 

物理的に微生物を排除するのは具体的に以下のようなものがあります。

-膿瘍

-「うっ滞性」感染症 

 ・胆石・腫瘍による胆道閉塞 ⇒ 胆管炎

 ・尿路結石による尿路閉塞 ⇒ 尿路感染症

-人工物

 ・中心静脈ライン

 ・動脈ライン

 ・人工呼吸器    

 ・胃管

 ・尿カテ

 ・人工弁

 ・人工関節 など

-壊死組織

 

冒頭の症例は、腎周囲膿瘍を来していたため、単なる抗菌薬の点滴のみでは改善に時間がかかった症例です。幸いドレナージなどせずに、保存的治療のみで治癒しました。

 

あなたも抗菌薬のオーダーをしただけで安心してはいけません。化学的と物理的の2つの治療の軸を忘れないようにしましょう。

(編集長)

手際の良さが光ります♪

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感染症診断の2つの軸・・・どこで?なにが?

2021.05.06

4月にZoomで松永先生の感染症レクチャーがありましたが、感染症診療の基本は日常臨床において、とても大事です。編集長は、もう10回以上聴講しているのでだいぶ覚えてきたように思いますが、毎回何かしらの発見があります。そして、良く分からない時ほど基本に立ち返ることが必要です。

 

今回は2年前のブログの再掲になりますが、感染症診断の2つの軸について紹介しているので、ぜひご覧ください。

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あなたがER当直をしていると高齢の女性で、施設入所中の患者さんが発熱を主訴に搬送されてきました。血液検査ではWBCが1万、CRPは18と炎症反応が上昇していましたが、それ以外は明らかな異常はありません。尿所見は白血球も細菌もなし、腹部は圧痛なしでした。胸部レントゲンは明らかな肺炎像はないけれど、施設のスタッフの話では食事の際にむせこむこともあったらしい。

 

以前に肺炎で入院歴があるので、今回もきっと誤嚥性肺炎だろう。そう考えて、血液培養を2セット採取後に抗菌薬(ABPC/SBT)を開始しました。よくありそうな症例ですよね。

 

ところが翌日に細菌検査室から「4本中4本でグラム陽性球菌です」と連絡がありました。さらにその翌日には「G群溶連菌(GGS)でした!」こんな報告が届きました。

 

この症例の診断は、肺炎で良かったでしょうか?

松永先生は「感染症診断の二つの軸」を強調しています。感染症を診断する時は、同時に2つことを考えるということです。

 

その2つとは感染巣(解剖学的診断)起炎菌(微生物学的診断)。言い換えると、どこで(Where?) なにが?(What?)悪さをしているのかを考えましょうということです。

 

冒頭の症例は、血液培養からGGSが検出されたら、「肺炎ではなさそうだぞ」と違和感を持つ必要があります。

 

微生物学的診断(なにが?)はGGSと判明しているので、どこを探すか?

 

GGSが起炎菌となりそうな臓器、例えば口腔内、皮膚軟部組織、血液を思い浮かべて探しに行きます。この症例は、背部や臀部も含めて皮膚軟部組織には異常なく、感染性心内膜炎も否定されました。最終的に口腔内の所見から化膿性耳下腺炎と診断されました。

 

診断は違っていましたが、当初の抗菌薬でカバーされていたので、結果は同じだったかもしれません。でも、もし感染性心内膜炎だったら、中途半端な治療になってしまうことも十分あり得ます。感染性心内膜炎の再燃で再入院なんて経験したくないですよね。

 

感染巣が分かれば、起炎菌も絞られます。 微生物が分かれば、感染巣も絞られます。

どこで?(=感染巣) なにが?(=微生物)をおさえながら診療に取り組んでいきましょう!

(編集長)

カテの助手として奮闘中

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