臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。

新型コロナウイルス感染から身を守る(7) エアロゾル感染

2020.05.19

このシリーズの最後に、エアロゾル

感染について取り上げてみます。

 

今回の新型コロナウイルス感染症

では、エアロゾル感染が心配されて

おり、それを予防するためのN95

マスクが足りない!という報道を

目にしたことがあると思います。

 

このような報道を見ると、N95

マスクがないと新型コロナに感染

してしまう、と思ってしまいますよね。

 

ところで、そもそもエアロゾルとは

何でしょう?

 

エアロゾルとは空気中に存在する

細かい粒子のことを指すそうです。

でもその大きさについては、定義が

ありません。

 

患者さんの咳やくしゃみから、空気

中に病原体を含んだ粒子が放出

されますが、一般的に粒子が大きく、

水分量が多いものほど、重たい

ために速く落下します。一方で、

小さい粒子はいつまでも空気中に

漂っていますが、これらを全部

ひっくるめてエアロゾルと呼んで

いるようです。

 

結核や麻疹など、空気中を

いつまでも漂っている小さい

粒子(<5μm)では、肺胞まで

到達して感染するので空気感染

と呼ばれます。

 

しかし新型コロナウイルスでは

空気感染ではなく、飛沫感染と

考えられています。

 

ただし、エアロゾル感染が原因

と考えられる事例が報告されて

おり、十分な注意が必要なのは

間違いなさそうです。

レストラン内での感染事例(中国)

コーラスの練習での事例(米国)

 

NEJMに、新型コロナウイルスは

エアロゾルの状態で3時間後まで

感染力を持続していたという記事

がありましたが、現時点では

どの程度の頻度で起こっているとか、

どのくらいのリスクがあるのか、

はっきりしたデータはないようです。

NEJMの記事

 

この記事では、いわゆる三密

(密閉、密集、密接)状態を実験的

に再現して感染力を確認したもの

です。

 

やはり、三密状態が続くことで

エアロゾルが空気中を漂って

しまうので、病院内であっても、

それ以外の場所であっても、

こまめに換気をすることで

防ぐことができると言える

でしょう。

 

病院内でエアロゾルを大量に発生

させるものとしては、挿管、気管内

吸引、ネブライザーなど、いろいろ

ありますが、このようなハイリスクの

処置の際はN95マスクを着用する

ことがWHOなどでも勧告されています。

 

逆に、それ以外の状況ではN95

マスクが必須とは言えず、サージ

カルマスク対応でよいようです。

 WHOの感染管理推奨から

ちなみにN95マスクは、きちんと

着用しないと効果がありません。

きちんと着用すると、普通に会話して

いてもちょっと息苦しく感じます。

 

最近、N95マスクをつけて体育の

授業を受けた中学生が死亡した

という中国の報道がありましたが、

編集長の感覚ではN95をつけたまま

走るなんて、絶対無理ですね。

 

さて、新型コロナウイルスの予防策

について紹介してきました。幸い、

茨城県内では新たな感染者も出て

いない状況ですが、必ず第2波、

第3波が来ます。

 

その時に身を守りながら、落ち着いて

患者さんの対応をできるように、

あなたも準備しておきましょう。

(編集長)

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新型コロナウイルス感染から身を守る(6) 靴底から感染拡大?

2020.05.12

今回は靴底からの感染拡大に

ついて取り上げてみます。

 

そもそも、靴底からの感染

拡大の可能性については、

ICUの床からもコロナウイルスが

検出されたという中国からの

報告がもとになっています。

Emerging Infectious Diseaseのページへ

 

確かに、靴底にくっついた

ウイルスで院内だけでなく、

自宅などに持ち込んだらイヤ

ですよね。

 

Web上では、中国で子どもが

登校時に靴の裏を消毒して

から校内に入る動画をみつけ

ましたが、ホントに必要なので

しょうか?

 

結論から言うと、床からウイルスが

検出されたものの、それが感染拡大に

つながったという報告はありません。

また、靴裏の消毒も効果不明です。

 

証明されていないだけで、靴底の

消毒もやった方がイイのでは?

という意見もあると思います。

(実際にやるとなると、次亜塩素酸

の濃度管理など、結構面倒です)

 

ですが、ちょっと考えてみてください。

前回の記事でも書きましたが、

ウイルスが体内に侵入する門戸は

目、口、鼻の粘膜です。足の裏から

ではありません。

 

もし、あなたが病院の床で腕立て

伏せをした後に、手をなめることは

ないと思いますが、手指衛生をせずに

髪を触ったり、キーボードやPHSを

触れば、感染するかもしれません。

 

でも、それは手指衛生でクリアできます。

 

それでも心配で、靴を交換したり、

シューズカバーをするのは構いません

が、履き替えた後やカバーを外した

後に手指衛生をしなければ、せっかく

靴を気にした意味がありません。

 

靴底消毒は、かなり以前(編集長が

研修医のころ)には、手術室などに

入室する際、クリーンマットと言われ

るものの上を歩いて、靴底をきれい

にする習慣がありました。しかし、

効果不明ということで、今はやら

なくなりました。

 

ただし、「荷物の床置き」には

気を付けておく必要があります。

 

例えば、カバンなどを床置きした後に

机に載せれば、机が汚染されます。

 

床置きしたカバンを机に載せない、

カバンの底を触らない、触ったら

手を洗うのを忘れないようにしましょう。

(編集長)

さて、これから患者さんの診察

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新型コロナウイルス感染から身を守る(5) やはり手指衛生

2020.05.09

前回までは標準予防策、飛沫感染

予防策、接触感染予防策について、

主に教科書的な話を紹介してきました。

 

どれも大事なことは理解できますが、

でも一方で、新型コロナウイルスでは

エアロゾル感染とか、靴底から感染

拡大の可能性も指摘されており、

何を、どこまでやるのが正解なのか

分からない、という状況だと思います。

 

ここで話を戻しますが、そもそも

感染が成立するためには、ウイルスが

体内に侵入しないといけません。

健常人であれば、その侵入門戸は、

目、口、鼻の粘膜からです。

 

目はフェイスガードやゴーグルで、

口と鼻は、サージカルマスクや

N95マスクで守ることができます。

(ちなみに本来N95マスクは、空気

感染の予防に用いられるもの

と考えて下さい)

 

しかし、いくらマスクやガウン、

手袋をつけていても、外すときに

汚染したガウンやマスクに手が触れて

しまい、その汚染された手で顔や

口元に触れてしまったら感染して

しまいます。

 

手指衛生をしていない汚染された

手で、つい目をこすってしまっては

何にもなりません。

 

ポイントは、顔や髪を触る前に、

手指衛生をすることです。

WHOの感染管理推奨から

 

また、ナースステーションも

油断できません。ドアノブや

パソコンのキーボード、マウスも

接触感染経路になりうることが

指摘されていますし、スマホや

PHSも通話する時に顔や口もとに

触れれば危ないですよね。

 

パソコン操作の前後で手指衛生

PHSは、よくアルコール綿などで

拭いて、スマホはスピーカーホンで

話すなど、顔に近づけない工夫が

必要です。

 

基本中の基本である手指衛生を

おろそかにしては、予防策の

意味がなくなってしまいます。

 

あなたの身を守るために、

もう一度手指衛生について

確認してください。

(編集長)

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新型コロナウイルス感染から身を守る(4) 接触感染予防策

2020.05.05

新型コロナウイルス感染症は

飛沫・接触感染で感染が拡大

することが分かっています。

 

感染から身を守るためには

標準予防策と経路別予防策

である飛沫感染予防と接触感染

予防を徹底することです。

 

飛沫感染予防策に続いて

今回は接触感染予防策

紹介します。

 

接触感染とは、患者との直接接触

または患者が使用した物品や

環境表面などの間接接触により

感染することです。

 

ということは、予防策として

・患者配置

原則として個室で、患者移動は

室内にとどめる。個室が無理なら、

同じ微生物による感染症患者と

同室は可

 

・個人防護具

患者や病室に触れる場合は

手袋着用。

患者に直接接する時や病室

環境に触れる場合ははビニール

エプロンかガウン着用。

退室前に個人防護具を外して、

ビニール袋で密封し破棄する。

個人防護具を外した後は、

室内環境や物品に触れない

ようにすることです。

 

・患者移送

排菌部位を被覆して搬送

十分な手洗い。

待ち時間がないように手配

 

・その他

食事やごみ、リネンやカーテン

の洗濯、部屋の清掃には、

特別な対応は必要なし

聴診器や血圧計などは

患者専用にする。

カルテや回診車を病室内に

持ち込まない

退院後に病室のカーテンは交換。

 

これらが教科書的な接触感染

予防策となります。

 

接触感染予防では、手袋や

エプロン(もしくはガウン)を

使用しますが、個人防護具を

外した後での手指衛生を

忘れては、個人防護具も

意味を成しませんので、

くれぐれもご注意ください。

 

参考文献:

感染対策まるごと覚書ノート

医療機関における新型コロナ

ウイルス感染症への対応ガイドVer2.1

(日本環境感染学会)

(編集長)

研修医のインタビュー動画がアップされています。

ぜひご覧ください!

インタビュー動画はこちら

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新型コロナウイルス感染から身を守る(3) 飛沫感染予防策

2020.04.30

前回までは標準予防策について

紹介しました。今回から経路別

予防策について紹介していきます。

 

経路別予防策とは、

病原微生物ごとに感染経路が

決まっており、その経路に応じて、

一歩踏み込んだ対策を行うこと。

あくまで標準予防策とセットで

行う必要があります。

 

感染経路には

・空気感染

  結核、麻疹、水痘

・飛沫感染

 インフルエンザ、風疹など

・接触感染

 MRSA、CDI、ノロウイルスなど

 

これら3つの経路がありますが、

新型コロナウイルス感染症は

飛沫・接触感染で拡大することが

分かっています。

 

今回は飛沫感染予防策に

ついてです。

 

飛沫感染は、咳、くしゃみ、

会話、気管吸引、気管支鏡

検査などに伴い発生する飛沫が、

目、鼻、口の粘膜に付着して

感染するものです。

 

教科書的には、飛沫直径は

5μmより大きく、飛散する

範囲は2m以内。床面に落下

するとともに感染性はなくなる

とされています。

 

ということは、予防策として

・患者配置

個室で、患者移動は室内にとどめる

個室が無理なら、同じ微生物による

感染患者は同室可

 

・個人防護具

患者に近づく、処置をする時は

サージカルマスクを着用

 

・患者移送

患者が室外に出るときは

患者にサージカルマスク

 

・その他

食事やごみ、リネンやカーテンの

洗濯、部屋の清掃には特別な

対応は必要なし。退室後は

通常の清掃に加えて、高頻度

接触表面の清拭、消毒を重点に

行う。病室のカーテンは交換。

 

これらが教科書的な飛沫感染

予防策となります。

 

新型コロナウイルス感染では、

N95マスクが不足しているとの

報道をよく見かけますが、

通常はサージカルマスクでOKです。

 

でも、気管挿管や抜管、心肺蘇生、

用手換気、気管支鏡検査、ネブライザー、

気管吸引などの、患者さんの

すぐそばでの処置は、飛沫が直接

かかる危険があるので、フェイス

ガードが追加されます。

 

さらに、これらの処置はエアロゾルが

発生しやすいので、エアロゾル

対策としてN95マスクと部屋の換気が

必要になります。

 

N95マスクがないと、新型コロナ

ウイルスの診療はできないと

誤解している人がいますが、

その状況で何が必要で、

何が必要ではないのかを

よく考えて対策を取りましょう。

 

参考文献:

感染対策まるごと覚書ノート

医療機関における新型コロナ

ウイルス感染症への対応ガイドVer2.1

(日本環境感染学会)

(編集長)

院内ですが、Zoomで夕方の

カンファをやってみました

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やってみました!初めてのZoom開催 ・・・・松永先生の感染症カンファ

2020.04.28

感染症の松永先生のカンファは

今年で12年目を迎えた、当院に

とって無くてはならないカンファの

一つです。

 

今年はCOVID19の影響を考え、

初めてZoomを用いて開催して

みました。

 

毎年のことですが、年度初めの

テーマは「感染症診療の基本」。

 

内容については改めて紹介する

として、今回はZoomについての

使用経験をシェアしておこうと

思います。

 

いわゆる三密を避けるために、

カンファレンス室ではなく、

研修医部屋で各自のPCを用いました。

カンファ中はこんな感じでした。

↓↓↓

当院は院内Wifiがないので、

LANケーブルが確保されている

というのも研修医部屋を選択した

理由です。

 

画面はこんな感じで、松永先生の

PCで表示したスライドを共有できます。

今回はやりませんでしたが、

同時に複数のスライドを画面で

共有できます。 

数日前に研修医たちでZoom試運転を

行っていたので、だいたい大丈夫

でしたが、数名ほどうまく入室できない

人が出ました。(原因は捜査中です)

 

また、途中で退室扱いになって、

再度招待状のURLから入りなおしたり

ホストPCで承認しなければならない

ケースが数件発生しました。

(こちらも原因を捜査中)

 

実際に始まると、ハウリングが生じて

うまく聞こえない時がありました。

 

原因としては、研修医部屋とはいえ、

比較的近い距離で、PCのマイクを

オンしながらやっていると、近くの

PCのマイクを拾ってしまうようです。

発言する人以外はミュートにしておくと

ハウリングがほぼ消失しました。

 

今後は研修医部屋以外にも場所を

確保して、より三密を避けると

イイのかもしれません。 

 

それからヘッドセットを使った方が

絶対にいいと思います。PCの

マイクでは、発言がうまく聞こえない

ことが多いですね。

 

今回は使わなかったのですが、

Zoomにはチャットとか、アンケート

機能があるので、それらを使うと

ただ話を聞くだけの一方通行から

双方向性になると思います。

 

今は大学の講義もほぼオンライン

ですし、学会発表や講演なんかも

この形式が確実に増えると思います。

 

当院でもいろいろ試してみようと

思っています。役立つ情報があれば、

ぜひ教えてください!

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新型コロナウイルス感染から身を守る(1) 標準予防策

2020.04.23

新型コロナウイルス感染症は

飛沫・接触感染で拡大することが

分かっています。

 

ということは、標準予防策に加えて、

経路別予防策である、飛沫予防

策と接触予防策をきっちり守れば

感染から身を守ることができる

ということです。

 

実際、ダイアモンドプリンセスでの

活動にかかわった自衛隊員に

感染者が出なかったことや

多数の新型コロナ患者を受け

入れている自衛隊中央病院では

院内感染が発生していない

という報道も目にしたことが

あるでしょう。

 

あなたも、他人に感染させない

ために、そして何より自分の身を

守るために、予防策をよく理解して、

実践できるようにする必要が

あります。

 

そこで、今回は標準予防策に

ついて紹介します。

 

最初にあなたに質問です。

標準予防策とは何ですか?

安心してください。

たいていの研修医は、この質問に

答えられません。

 

なので、まずはここを確認して

おきましょう。

 

標準予防策とは、すべての人は

伝播する病原体を保有している

と考え、患者及び周囲の環境に

接触する前後には手指衛生を行い、

血液・体液・粘膜などに暴露する

恐れのある時は個人防護具を

用いることです。

 

この中で一番重要なのに、

一番できていないのが

手指衛生です。

 

ここは編集長も反省ばかりですが、

今回の新型コロナをきっかけに、

しっかり見直して、実施しています。

 

手指消毒用アルコールを扱って

いるサラヤ(株)の医療従事者向け

サイトは、分かりやすくて

おススメです♪

https://med.saraya.com/top.html

 

特に院内ではアルコールを用いた

手指消毒を行っているので、

今回は上記サイトから転載

させていただきます。 

(編集長)

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新型コロナウイルス感染対策

2020.02.13

ご承知の通り、新型コロナウイルス

感染症に関して、連日報道されて

います。

 

ちょっと過剰な報道に違和感を

抱えつつ、我々は冷静に対応

しなくてはいけませんね。

 

ネット上のデマに振り回されない

ように、厚労省とか国立感染症

研究所などの情報をチェックして

ください。

厚生労働省の関連サイト  

国立感染症研究所の関連サイト

 

 また、この原稿を書いている時に

見つけたのですが、WHOが今回の

新型コロナウイルス感染症を

COVID-19と名付けたとBBCが

報道していました。

BBCの報道(COVID-19)

 

 さて、このCOVID-19対策のために

先日当院でもシュミレーションが

開催されました。

 

外来やERに、感染が疑われる患者

さんが来た時の導線や防御法などの

確認を中心に行いました。

 

特にERでは研修医が、ファースト

タッチする可能性があるため、多くの

研修医が参加してくれました。 

現時点は感染が疑われる患者の

受診はありませんが、防御法として

N-95マスクとガウン、フェイスシールド、

長い手袋着用で対応する予定です。

(やや過剰気味な防御かもしれませんが、

今後の情報で変更されると思います。)

 

ただ、今回大事なことは、

飛沫接触感染だということ。

 

飛沫感染にはマスクはイイのかも

しれませんが、マスクを外す時に、

マスクの外側を触ってしまえば、

意味がありません。

 

このため、今回のシュミレーション

では、特にマスクやガウンの外し方を、

当院のICTから(厳しく)指導されて

いました。

 

今回に限らず、感染症の対応は

いつ必要になるか分かりません。

次の機会に生かせるように、何か

一つでも学んでおくといいですね。

(編集長) 

追記

編集長は不勉強で知らなかった

のですが、徳田安春先生らは、

2009年にマスクをしていても感染率の

低下には効果がないというランダム化

試験をしていました。是非ご覧ください。

Use of surgical face masks to reduce the incidence of the common cold among health care workers in Japan: A randomized controlled trial

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

『総合診断能力を有するスペシャリスト』

を目指します

 

病院見学のススメ

当院へ病院見学に来ませんか?

 

当院の研修医が

どんなふうに仕事しているのか?

どんな生活を送っているのか?

あなたの目で確かめてみてください!

 

病院見学をご希望の方は、

こちらからご連絡ください。

https://recruit-mito-saisei.jp/entry

 

◆感想やコメントはFacebookページから

お願いします!

https://www.facebook.com/mitosaiseikai/

—–

肺炎でE.coli??

2020.01.09

高齢の患者さんが発熱を主訴に

入院してきました。

 

脳梗塞の既往があって、ADLは

一応自立していたけど、ほとんど

自宅内というか、ベッドの上で

過ごしているようです。食事などで

むせこむこともしばしば。咳嗽もあって、

胸部レントゲンも右下肺野で怪しい。

 

よくありそうな、誤嚥性肺炎の

経過です。

 

抗菌薬の点滴を開始して、徐々に

解熱が得られ、全身状態も改善

傾向です。

 

ところが、数日後に判明した

入院時の血液培養では、

4本中4本からE.coliが検出されました。

 

何かおかしくないですか?

 

ここで、「肺炎なのに血培からE.coli?」

と、違和感を感じたあなたは立派です。

 

多くの人は、「感受性もあってるし、

患者さんも元気になっているし、

抗菌薬はこのまま継続でいいね」

としか考えません。

 

でも、ちょっと考えてみてください。

そもそも、E.coliが肺炎の起炎菌に

なる得るのでしょうか?

 

松永先生のレクチャーで何度も

登場してきますが、感染症診断の

2つの軸は「どこで」、「何が」でした。

 

「どこで(=感染巣)」が分かると、

起炎菌が絞れます。

 

「何が(=起炎菌」」が分かると、

感染巣が絞れます。

 

E.coliが悪さをするのは、

肺ではなく、真っ先に尿路感染症が

思い浮かびますよね。

 

実は、尿検査の結果を確認していな

かったとか、実際に入院時に尿検査が

行われていなかったとか、オーダー

されていたけど、検体が取れて

いなかった、ということは十分ありえます。

 

入院当初に想定していたことと

最終的な診断が異なることは

よくあることですし、別に悪いことでは

ありません。

 

培養結果など、後日になって

結果が判明するものにも

必ず目を通しましょう。

 

そして、データだけではなく、

患者さんの経過と矛盾がないか

確認しながら治療を進めていくことが

とても重要です。

 (編集長)

 

お正月のERは大忙しでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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免疫能低下と感染症・・・・・松永先生の感染症カンファより

2019.12.28

少し間が空いてしまいましたが、

11月に開催された松永先生の

感染症カンファからです。

 

今回のテーマは「免疫能低下と感染症」

 

「免疫能低下」とか「免疫不全」と聞くと

あなたはどんなイメージを持つでしょうか?

 

化学療法中の白血球減少とか、

HIV感染とかをイメージするかも

しれません。

 

では、これらの患者さんが、発熱を主訴に

受診したら、対応は同じでいいのでしょうか?

 

松永先生が強調した重要点は以下の通りです。

 

 

そこで今回は、細胞性免疫液性免疫

そして好中球減少について整理します。

 

細胞性免疫の低下を来す背景

・悪性腫瘍・感染症

 急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、

 HIV感染症、HTLV-1関連疾患

・医療行為

 移植(造血幹細胞・固形臓器)、

 ステロイド投与、免疫抑制剤、

 生物学的製剤

 

関連微生物には

・細菌(細胞内寄生菌)

 サルモネラ、ノカルジア、リステリア

 Tb、MAC

・ウイルス

 ヘルペス属、インフルエンザ、

 アデノウイルス

・真菌

 Pneumocystis jiroveci

 Cryptococcus neoformans

・寄生虫

 トキソプラズマ、糞線虫

 

 

液性免疫が低下する背景として

・悪性腫瘍・感染症

 多発性骨髄腫、HIV感染症

・医療行為

 造血幹細胞移植後、脾臓摘出後

 

関連微生物としては

・細菌

 肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌

 

 

好中球減少を来す背景には

・血液疾患

・化学療法

・薬剤

・放射線

 

関連微生物として

5日未満の初期であれば

・細菌 緑膿菌、MRSA

 

5日以上の長期では

・細菌

・真菌 カンジダ、アスペルギルス

 

特に好中球減少時の発熱は

発熱性好中球減少症

(FN:Febrile Neutropenia)と呼びますが、

FNでは

・症状や所見がでにくい

・進行が速い

・通常みられない部位に感染症が起こる

・まれな微生物による感染症が起こる

といった特徴があります。

 

具体的な例を出すと

・膿尿がない腎盂腎炎

・髄膜刺激症状のない髄膜炎

・髄液で白血球上昇のない髄膜炎

・身体所見や胸部レントゲンが正常な肺炎

 

なので、想定しておかないと

診断・治療ができないのです。

(編集長)

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