臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
「できない」を「できる」に変える方法
例えば、あなたがCVやPICCを入れるとき、またはERで挿管するとき、指導医やすでに経験済の同期から教えてもらったり、YouTube動画を確認したり、時間があるならシュミレーターでやってみてから臨むかと思います。
実際やってみると、イメージ通りには上手くいかない。。。もちろん初めから上手くできる人はいませんが、何度か失敗すると「自分には向いていない」「できない」と思ってしまい、ついついやらなくなりませんか?せっかく指導医から「やってみる?」と言われても、些細な理由をつけてチャンスを同期に譲っていたり・・・。
我々の脳は一度「できない」と思うと、「できない」記憶の連鎖がループのように回り始め、なかなかそこから抜け出せなるクセがあるそうです。それをそのままにしておくと、ホントに「できない自分」が作られてしまいます。今回はそんな「できない」から「できる」に変える方法を紹介します。
1.「できなかった」記憶を「できた」記憶に変える
失敗の記憶は、少し見方をズラしてあげると「できた」記憶に変えることができます。たとえば、過去の失敗から「できた」を探すことで記憶をポジティブなものに変えることができます。
例えば、エコーガイドでPICCの挿入を例にすると、「PICCを挿入できなかった」という失敗があったとして、その記憶をあらためて見直して「できた」ところを振り返ってみましょう。
例えば
・患者さんの体位はよかった
・エコーで目的の血管はきれいに描出できていた
・患者さんに上手く声掛けできていた
など、いろいろ出てくると思います。我々は何か失敗して、不快な感情、恥ずかしかったという感情がわくと、「全然ダメだった…」と一般化してしまうクセがあるのですが、100%ダメってことはまずありません。些細なことでOKなので、「できた」と思えることを1つずつ思い出してみると、「できなかった」が「できた」という記憶に変わってきます。
2.「何ができていないか」を具体化してみる
これとは逆に「何ができていないか」をできるだけ具体化していく作業も重要です。前述のとおり「全然できなかった」と一般化して認識してしまいがちですが、これではどう改善したらいいかわからないから「できなかった」という自分が強化されるだけです。なので、「何ができていなかったか」を具体的にすることが重要です。
先ほどのPICC挿入での失敗を分析してみると
・左手で持っていたエコーが動いてしまい、針先を見失った。
・消毒前にエコーで確認した時の体位と消毒して覆布をかけた時の体位が少し変わってしまい、見えにくくなった。
・穿刺は上手くいったけど、左手で持っていた外套を動かしてしまった。
ということが出てくるかもしれません。何ができたのか?何ができなかったのか?を具体的に分けることで次の改善案やアクションが生まれて、「できた」「乗り越えた」という記憶に変えることができます。
ただし、できなかった記憶と向き合うことは辛いので、みんなやりたがりません。でも、みんなやらないからこそ、これをやることで大きな差がつきます。プロフェッショナルは、「できなかった」体験と向き合うプロでもあります。ぜひ失敗と向き合って、「できる」を少しずつ増やしてみてください。
(編集長)
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言葉の重み
だいぶ以前のことですが、開業医の先生から紹介されて編集長が担当した患者さんの話です。その患者さんは治療の甲斐なく亡くなられてしまったのですが、少したってから患者さんの奥様がわざわざ編集長の外来にやってきました。
奥様との話の中で、「(紹介してくれた)先生もお葬式に来てくれて、主人の顔を眺めながら『とってもきれいにしてもらいましたね』、『あの病院にお願いすると、亡くなった時もとても良く対応してくれるんです』と言ってもらいました。どうか看護師さん達にもお礼を言っていただけますか」と言われました。
編集長は患者さんのお葬式に参列したことはなかったので、その先生が患者さんのお葬式に参列したことも驚いたのですが、ご家族にこのように声をかけていたのには、もっと驚きました。そして、この先生の一言でご家族がすごく安心されたので、わざわざ病院までお礼を言いに来てくれたのではないかと思いました。
もちろん亡くなった患者さんの対応してくれた看護師さんも丁寧にやってくれたと思いますが、この先生の言葉は家族が亡くなったという悲しみの中に、ホッとした気持ちにさせる力があったのだと思いました。当時の編集長にとって、我々ドクターが発する一言が、こんなに家族のこころに深く残るのだなと、すごく印象に残ったエピソードでした。
病院で亡くなりそうな時や死亡確認をする状況にはいろいろあるので一概には言えませんが、ドクターのちょっとした一言で、家族もホッとした表情を見せてくれます。逆に、かえって不安をあおってしまうこともありえるので、十分心して対応しないといけません。
当院でも、担当の患者さんが亡くなった時には、研修医に死亡確認をしてもらいます。もちろん指導医がそばについているのですが、実際その場になると、うまく言葉が出てこないものです。
こんな時のために、指導医たちのセリフだけでなく、立ち居振る舞いをよく観察しておくと良いと思います。そして、自分がその立場になったときに、どんなセリフ言うのか、どんな立ち居振る舞いに気を付けるべきかをシュミレーションしておくと良いと思います。最初から完璧にできる訳ではありませんが、丁寧に対応すればご家族にも気持ちが伝わるものだと思います。
(編集長)
ICUの一コマ
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救命救急センターだより「熱中症の初期治療」
お久しぶりです。空を夢見る消化器内科医Naoです。
非常に暑い日と雨降りの日が続いておりますが皆様はいかがお過ごしでしょうか。またしても間が空いてしまいまして申し訳ありませんでした。
意外と救命センターだよりを読んでくださっている方がおられるようで、「最近滞ってるけど忙しいのか?」とお声がけいただけてうれしい限りです。
さて、今年もこの季節がやってまいりました!みんな大好き、熱中症です!
以前も熱中症のブログを書きましたが、熱中症は初期治療がとても大切な疾患です。そして適切な初期治療により予後を大幅に改善させることが見込める、逆に適切な初期治療が遅れると、重篤化してしまい生命に危機を及ぼすことのある疾患です。
この記事を読んでいただいている皆様は、これをきっかけに改めて熱中症の初療を思い出していただき、レジャー中にこのような方に遭遇したら適切な治療をしてあげてください。
熱中症の重症度を見分ける簡単な方法は
軽症 水分の自力摂取が可能
中等症 ぐったりし水分摂取ができない、嘔気などのために水分摂取ができない。
重症 呼びかけに応じない。
中等症は適切な対応で現場対応可能な可能性もありますが、基本的には中等症~重症はためらわずに医療機関へ収容しましょう。特に重症は救急車を呼びましょう。
軽症の対応は、
①日陰やできれば冷房のかかった部屋に移動します。
②厚手の衣服を着ている場合、汗の気化を阻害してしまいますので、なるべく薄い格好にします。仰いで汗の気化を促進させるのも効果的です。
③冷たい電解質を含む飲料水(経口補水液やスポーツドリンク)を摂取させます。細かい説明は省きますが水やお茶は最適解ではありません。熱中症の場合は塩分の喪失を起こしておりますので、電解質を含む飲料水が望ましいです。
中等症以上の場合であっても、救急車を待つ間や医療機関へ運ぶ間に上記対応を行いましょう。冷却したペットボトルがあれば首や腋下、股の間にあてて冷却するのも効果的です。
なお、経口補水液として有名なOS-1ですが、カリウムを比較的多く含んでおりますので透析患者さんには要注意です。また塩分濃度も高いので、予防的に常用するのは望ましくありません。経口摂取不良がある高齢者や運動などで水分の喪失が多いときに補助的に使用しましょう。
(Nao)
慌ただしいER
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低血糖の鑑別
今回はJ1の小D先生がまとめてくれた記事をシェアします。
入院中の患者さんで、糖尿病の既往もなく、血糖降下薬も服用していないのに低血糖を来した場面に遭遇しました。実は低血糖の原因は非常に多く、キノロン系抗菌薬(ガチフロキサシン)、抗不整脈薬(シベンゾリン、ジソピラミド)、アルコールなどの薬剤の確認は必須です。他に肝硬変や末期腎不全、心不全も原因となります。さらに入院患者では敗血症や副腎不全も忘れてはならない鑑別疾患です。
そんな経験から、今回は鑑別の進め方についてまとめてあります。ぜひご覧ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
糖尿病の治療中は低血糖に注意するという話はよく聞きますが、他に低血糖をきたす原因としてどんなものがあるのか調べてみました。
一般的に血糖値70mg/dl未満が低血糖とされており、動悸や発汗、振戦といった交感神経症状がみられます。さらに進むとけいれんや頭痛、意識障害といった中枢神経症状が出現します。
低血糖の原因検索として、①→④の順番に考えていきます。
①糖尿病治療薬(インスリン、経口血糖降下薬)の使用
②食後低血糖の有無
③アルコール摂取、他の薬剤の使用
④低血糖時の血中インスリン、Cペプチド(CPR)を測定
①糖尿病治療薬(インスリン、経口血糖効果薬)の使用
使用がある場合は治療に伴う低血糖と考え、使用していない場合は②に移ります。
②食後低血糖の有無
食後低血糖がある場合は反応性低血糖を考え、胃切除の既往があれば後期ダンピング症候群を考えます。後期ダンピング症候群は腸管で糖が急速に吸収されてインスリン分泌が亢進して血糖値が下がりすぎてしまうもので、一般的に食後2~3時間後に起こります。他に特発性や境界型・軽症2型糖尿病でも反応性低血糖がみられることがあります。
食後低血糖がない場合は③に移ります。
③アルコール摂取、他の薬剤の使用
アルコールを多量に摂取すると肝臓での糖産生が低下することにより低血糖をきたすことがあります。特に糖尿病治療を行っている方は低血糖になるリスクが高いため注意が必要です。
また、副作用として低血糖をきたす薬剤にβ遮断薬やジソピラミド(Naチャネル抑制薬)などがあるそうです。
③に該当しない場合は④に移ります。
④低血糖時の血中インスリン、Cペプチド(CPR)を測定
(ちなみにCPRはプロインスリン(インスリン前駆物質)が分解されるときに発生する物質のことで、内因性インスリン分泌能を推定します。)
・血中インスリン↑、血中CPR↑
→血中インスリン抗体を検査し、上昇していればインスリン自己免疫症候群となります。上昇していなければインスリノーマを考え造影CTを考慮します。
・血中インスリン↑、血中CPR↓
→隠れてインスリンを注射していることを考えます。
・血中インスリン↓、血中CPR↓
→副腎皮質機能検査(ACTH、コルチゾール)を行います。副腎皮質機能が低下している場合は下垂体前葉機能低下(下垂体腺腫、Sheehan症候群、ACTH単独欠損症など)や副腎不全を考えます。
副腎皮質機能が低下していない場合は肝硬変や敗血症、糖原病、膵外腫瘍を考えます。
(小D)
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心電図 渡されて、なに見るの? その2
さて、今回は心電図を見ていく順番を確認してみます。
1. 調律はどうか
2. 心拍数は
3. P波は正常か
4. P Q時間は正常か
5. Q R Sは正常か
6. S T-TとT波は正常か
7. Q T時間は正常か
8. U波は正常か
1.調律はどうか
P波が捉えやすい第II誘導またはV1において正しくP波とQRSが対応しており、P波が一貫して同じ形である事を確認する。整、不整も確認。
2.心拍数は
正常の心拍数は60/分以上、100/分未満である。心電図上で濃い線(5mmごとに濃い線)に重なっているQRSを探し、次のQRSまで5mmごとに300、150、100、75、60、50と数えれば心拍数を大まかに数える事ができる。
3.P波は正常か
P波はI、II、aVfで陽性。aVrで陰性が正常。V2-V6で陽性。これ以外の誘導ではP波は陽性、陰性、二相性などどれでも良い。実際にはI、IIで陽性で事足りる。また、第II誘導で幅3mm未満、高さ2.5mm未満をチェック
4.PQ時間は正常か
PQ時間の正常は3mm(0.12秒)以上5mm(0.22秒)未満である
5.QRSは正常か
【1】肢誘導において
- IとII誘導でQRSの振幅和(上向きの振れを陽性、下向きの振れを陰性とし【R波の高さ】-【q波の高さ】-【s波の高さ】として計算)がともに0以上である事
- 異常Q波の確認。異常Q波はaVr以外の誘導の幅が1mm(04秒)以上、深さがR波の高さの1/4以上であるQ波の事。IIIとaVlには単独で異常Q波があっても良い。
- QRS時間5mm(0.10秒)未満である事
【2】胸部誘導において
- R波がV1からV6と左側にいくにつれて大きくなるR波の増高がある事
- V1以外に異常Q波がない
6.ST-TとT波は正常か
連続するP波の立ち上がり部分を結んだ線を等電位線という。STはこの等電位線に一致し、上昇も下降もしてないのが原則。しかし、V1-V3などの右側胸部誘導では正常でも1-3mm程度ST上昇していることが多い。
T波はaVrで陰性であり、I、II、V2-V6で陽性で、高さは12mm未満かつR波の1/10であるのが正常。若年成人だと正常でもV2、V3で陰性T波が見られうる
7.QT時間は正常か
T波の終点がRR間隔の1/2を超えていれば明らかにQT延長
8.U波は正常か
陽性でありT波の高さの5-50%の範囲が正常。T波より高いU波や陰性U波は異常
参考書やGoogleに書かれてある事を書かせて頂きました。各々の波がどういう意味をなのか、異常ならどういう病態が考えれるのか。なぜその場所で陽性(or陰性)が正常(or異常)なのか、例外はどういう時か。などを考えたら、心電図理解への道のりは長いです。
とりあえず基本的な正常の形を頭に叩き込もうと思います。「理由は分かりませんが〇〇という理由でこの心電図は異常です。」と言える事を最初の目標に頑張ります。
学生の頃心電図の実習ありましたが、何をしていたのでしょうか。あの頃は出来ていたのになあと思う事が最近増えてきています。そういう年頃なのでしょうか。
(パイナップル頭)
プレゼンを終えてホッとしているところ
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心電図 渡されて、なに見るの? その1
初めまして。本年度から研修医になりました、パイナップル頭です。
はじめにペンネームの由来を説明させてください。私の育った家庭はあまり裕福な方ではなく友達のおもちゃや自転車を羨ましがってばかりいました。そんな私は2-3000円もするような美容室には行けず、何をどう注文しても同じ髪型にする近所の目の細いおじさんが経営する怪しい床屋で、破格の800円で散髪をしていました。
そのおじさんが毎回、頭の中央のみを軽度ふさふさにする髪型にしか辿りつかないため、当時小学校の私はパイナップル頭やパイナップルマン、パイナップル坊やなどのあだ名が付与されていました。個人的にパイナップル頭が気に入っていたためこの度ペンネームとして使わせて頂くに至った次第です。
研修医生活も4ヶ月目に突入しました。薬の処方の仕方など基本的なカルテ操作に少しずつ慣れていく中で、今でも逃げ続けている事があります。それが心電図を判読することです。
入院患者や救急で運ばれてきた患者に対して行う事がある心電図ですが、オーダーだけ飛ばして、出てきた紙を先輩や上級医に見せる事で苦手なものから目を背け続けていました。しかし、自分が先輩や上級医になったときに、オーダーだけ飛ばして判読せず、紙を誰かに渡しに行く姿を想像したら悲しい気持ちになりました。
頼れる先輩・上級医になれるように苦手なもの覚えられないもの、新しい発見や疑問などをこれから発信していこうと思います。よろしくお願いいたします。
さて、本題に入ります。皆さんは心電図を渡されて何を見ますか。レントゲンやC Tでも同様ですが、いつも決まった順番通りに見ていく事が見逃し所見を少なくする1つのコツと教わったので私も参考書を開いて順番を確認してみます。
1. 調律はどうか
2. 心拍数は
3. P波は正常か
4. P Q時間は正常か
5. Q R Sは正常か
6. S T-TとT波は正常か
7. Q T時間は正常か
8. U波は正常か
次回から一つ一つを見ていこうと思います。
(パイナップル頭)
朝の回診中
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肺炎患者の対応・・・誤嚥のリスク
今回もNHCAPの続きで、誤嚥のリスクについてです。
誤嚥と言うと、「誤嚥性肺炎」とほぼ同義に用いられているのが、実情だと思います。あなたも、聞いたり、使ったことがあると思います。
では、誤嚥性肺炎の定義がどうなっているのかあなたは知っていますか?
実は誤嚥性肺炎の明確な定義はないのですが、一般的には、「ADLや全身機能の低下、特に脳血管障害を有する場合に認められやすい嚥下機能障害を背景に起きる肺炎で、高齢者の食事摂取に関連して発症する」と理解されています。
実際のところNHCAPの患者さんは、高齢でADLの低下を来しており、脳血管疾患の既往も多いなど、誤嚥性肺炎とかなりオーバーラップしているというのは、あなたも直感的に理解できると思います。
HAPでも、免疫能が低下した耐性菌リスクの高い肺炎と、脳血管障害を背景とする誤嚥が関与する肺炎との二面性を併せ持っているのも理解できます。
実際、誤嚥のリスクが多いほど急性期や慢性期の死亡率、さらに再入院率の上昇に関連しており、そのリスク因子を考慮することで急性期死亡率を低下させる可能性があります。
そこで、NHCAPでもHAPでも、最初に患者背景のアセスメントで誤嚥のリスク評価をしましょうと、ガイドラインでも推奨しています。
ただし、ここで注意点があります。誤嚥性肺炎の明確な定義はないと先述しましたが、誤嚥のリスクが多いから、誤嚥性肺炎を起こすという訳ではありません。つまり、誤嚥のリスクが多い≠誤嚥性肺炎ということです。
モヤモヤが解消されないかもしれませんが、高齢者の肺炎だから抗菌薬はABPC/SBTと、何も考えずに機械的に選択するのではなく、患者さんの状態をよく把握して、「どこで?何が?」を考えながら治療にあたることが大事だと思います。
*このシリーズは今回で終了します。
(編集長)
ペースメーカーの交換中
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肺炎患者の対応・・・医療介護関連肺炎(NHCAP)
今回は医療介護関連肺炎(NHCAP:Nursing and Health-Care Associated Pneumonia)です。
NHCAPの定義は、医療ケアや介護を受けている人に発症した肺炎で、
①療養病床、介護施設、精神病床に入所している
②90日以内に病院を退院した
③介護を必要とする高齢者、身体障害者
④通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制剤等)を受けている
上記のうち、1つ以上を満たすものとなっています。
NHCAPの評価はHAPと同様にまず「患者背景のアセスメント」を行います。具体的には、誤嚥のリスクが高いか? 癌患者の終末期や老衰などの状況か? と言ったことを評価して、状況によっては肺炎の治療を行わないという選択肢も検討します。
続いて、①重症度の判断、②敗血症の有無の判断、③耐性菌リスクの判断を行うのは、他の肺炎の場合と同じです。
ちなみに重症度の判断には、院内肺炎(HAP)ではI-ROADを用いましたが、NHCAPでは市中肺炎(CAP)同様にA-Dropを用いて評価します。
耐性菌のリスク評価については以下のようになっています。
HAPと似ていますが、90日以内の入院歴や、胃酸分泌抑制薬、つまりPPIの使用が耐性菌のリスクに挙げられており、興味深いところです。
次回は誤嚥のリスクについて紹介します。
(編集長)
今回も徳田先生カンファの一コマ
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【再掲】令和6年度採用初期研修医の採用について
現在、令和6年度採用の募集を行っています。
昨年までは新型コロナウイルス対応として、直接面接とZoomを用いたWeb面接の併用を行っていましたが、遠方の方や他の病院の面接日と重ならずに調整できることが好評で、今年も直接面接とWeb面接の併用を継続します。また、応募はWebのみで完結するので、紙への印刷や郵送が不要です!
すでに直接面接は定員に達したのでWeb面接のみとなります。ご了承ください。Web面接では日程調整が必要ですので、できるだけ早めにお申し込みください。もちろん、いずれの方法を選択しても、選考基準に違いはありません。
締め切りが近くなると、希望の面接日で調整できなくなる場合が出てきますので、どうぞ早めにお申し込みください。あなたの応募をお待ちしています!
(編集長)
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肺炎患者の対応・・・人工呼吸器関連肺炎(VAP)
今回は人工呼吸器関連肺炎(VAP)です。
VAPはHAPの一つですが、「気管挿管下人工呼吸を開始して48時間以降に発症した肺炎」と定義されます。
ICUにおける主要な感染性合併症であり、全挿管患者の9~27%に発生するとされています。
起炎菌は緑膿菌が最多ですが、エンテロバクターやセラチア、マルトフィリアなど、治療に難渋するグラム陰性桿菌も多く、黄色ブドウ球菌やMRSAの割合も高いようです。
では、ここで質問です。あなたはどうやってVAPを診断していますか?
そもそも、挿管されるくらい原疾患の状態が悪い、抜管できないという状況な訳ですから、CAPのようにレントゲンで肺炎像がはっきり見えるとは限りません。でも、挿管されている患者が発熱すればVAPと診断してよいしょうか?
欧米のガイドラインなどでも確立した診断基準はないようですが、成人肺炎診療ガイドライン2017では以下のようになっています。
こうしてみると、もっともなことばかりですが、臨床でははっきりしない、モヤモヤが残ることも多いのが実際のところです。
挿管されている患者さんでは、発熱の原因として、VAP以外に尿路感染症やCLABSI(ライン感染)などいくらでもあるので、VAPの診断は簡単ではないのです。
VAPは早期の治療開始は大事ですが、熱が出たからVAPと簡単に決めないで他の熱源の検索も忘れないようにしましょう。
そして、治療もさることながら、大事なのは予防です。具体的には
①手指衛生
②仰臥位の回避
③呼吸器回路を頻回に交換しない
④過剰な鎮静を避ける
⑤人工呼吸器からの離脱
⑥声門下腔吸引孔付きチューブの使用
⑦口腔ケア
ちなみに、②のために頭部を30~45度挙上するだけで、VAPリスクが67%も減少します。⑥はメタ解析でVAPの発症を低下させることが示されているそうです。
(編集長)
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