臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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Toxic Shock Syndrome(TSS)
松永先生の感染症レクチャーからです。今回のテーマは「感染症Emergency」でしたが、取り上げられた疾患は、壊死性菌膜炎、ガス壊疽、TSS(Toxic Shock Syndrome)、MSSAの感染性心内膜炎、髄膜炎性菌血症、PSS(Postsplenectomy sepsis)、Ludwing angina、接合菌症、髄膜炎の9つがありました。
その中から、今回はTSS(Toxic Shock Syndrome)を紹介します。
症例は55歳の男性。3日前に胃がんの手術を行いましたが、術中・術後には特に合併症なく経過しました。ところが突然39度の発熱、水様性下痢をきたし、血圧70台のショックバイタルに。輸液に反応せず、全身性の発赤が見られました。検査データはWBC18000、Plt7.8万、BUN52、Cr1.8、CPK4200、AST231、ALT248、T.Bil2.1
こんな時に鑑別に挙げるのがTSSです。TSSは連鎖球菌またはブドウ球菌が原因で毒素による病態を呈します。
診断基準は、下記の6項目すべてを満たす場合にConfirmed、5項目でProbableとなります(本症例は、この時点で赤字の4項目が該当することになります)。
1. 体温38.9度以上
2. びまん性紅斑状発疹
3. 発症1~2週後の落屑(特に手掌・足底)
4. 血圧低下 SBP≦90mmHg(成人)、起立性低血圧症状・兆候
5. 陰性所見
①培養(血液・咽頭・髄液)*ただしS.aureusは可 ②抗体価(ロッキー山紅斑熱、麻疹など)
6. 多臓器不全(3臓器以上)
①消化管:嘔吐・下痢
②筋・骨格系:激しい筋痛、CK上昇(基準値の2倍以上)
③粘膜:膣、口腔、咽頭あるいは粘膜充血
④腎臓:BUNまたはCrの上昇(基準値の2倍以上)、膿尿(UTIなし)
⑤肝臓:T.Bil、AST、ALTが基準値の2倍以上
⑥血液 血小板≦10万
⑦中枢神経系:発熱、血圧低下がない時に意識障害かつ巣症状なし
治療としては、輸液などの対症療法に加えて、
・感染の原因の同定と除去
タンポン、鼻パッキング、外傷、膿瘍などをチェックしますが、原因が同定できないことも多くあります。
・抗菌薬
菌不明の場合:セファゾリン
連鎖球菌の場合:ペニシリンG 400万単位を4時間ごと
ペニシリンアレルギーの場合はバンコマイシン
毒素産生抑制:クリンダマイシン 900㎎を8時間ごと
・免疫グロブリン(IVIg)が有効とする報告もあり
有名なのは皮膚の落屑ですが、これは1~2週間後に見られるものなので、急性期には役に立ちません。TSSを鑑別に挙げて対処し、1~2週間後に答え合わせをするという感じでしょうか。
術後などで、発熱とびまん性の紅斑を認めた時には、忘れずにTSSも鑑別に挙げるようにしてください。
(編集長)

レクチャー後はベッドサイドへ
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