臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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低ナトリウム血症の対処5
今までずっと外来でフォローしてきた
70歳代の患者さん。症状はないけど、
いきなり低Na血症になってしまいました。
当初はフロセミドの影響を考えて中止
したものの低Na血症は改善せず、
SIADHの診断に至りました。
ここでSIADHをまとめてみましょう。
SIADH(Syndrome of inappropriate
antidiuresis hormone)とは
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群と
訳されていますが、尿量を減少させる
作用を持つホルモンである
バソプレッシンが血漿浸透圧に
対して不適切に分泌、または作用する
ことによっておこる症候群です。
診断は
<必須所見>
① 血漿浸透圧<275mOsm/kg
② 尿浸透圧>100mOsm/L
③ 体液量が正常
④ 通常の塩分摂取状態で
尿Na排泄>40mmol/L
⑤ 副腎、甲状腺機能が正常
⑥ 利尿剤の使用がない
<参考所見>
・血清尿酸値<4 mg/dL
・血清尿素窒素< 10 mg/dL
・FENa >1 % ;FEUN > 55%
・生理食塩水投与で改善しない
・水制限にて低Na血症が補正
・水負荷試験で異常結果
・体液量正常な低Na血症における
バソプレッシン値の上昇
(NEJM 2007; 356;2064-72)
ここで不思議に思うかもしれませんが、
バソプレッシン値の上昇が参考所見に
なっていることです。
そもそもバソプレッシンは低浸透圧時
には分泌されないはずのものです。
測定出来てしまうこと自体が異常です。
しかし(古典的)SIADHを調べていくと、
バソプレッシン値が必ずしも上昇している
訳ではないので、最近はSIAD
(Syndrome of inappropriate antidiuresis)と
いうことが提唱されているようです。
そして重要なこととして、SIADHは
あくまで二次性に起こるものです。
つまりSIADHになったきっかけがあるので
それを探しに行く必要があります。
SIADHの原因には
肺疾患:肺炎、肺結核、肺腫瘍、気管支喘息、
陽圧換気、肺アスペルギルス症
脳疾患:髄膜炎、脳炎、くも膜下出血、脳梗塞、
脳出血、脳腫瘍、外傷
悪性腫瘍:肺癌(特に小細胞癌)、膵癌
薬剤:カルバマゼピン、ビンクリスチン、
アミトリプチン、イミプラミン、SSRI、NSAIDs
などがあります。
(他にもたくさんあるので、成書をご覧ください)
次回はSIADHの治療について
紹介します。
(編集長)
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