臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
抗菌薬の投与期間
松永先生の感染症レクチャーからのシェアです。前回までに診断の2つの軸、治療の2つの軸、経過観察の2つの軸を紹介してきましたが、今回は抗菌薬の投与期間の決定についてです。
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80歳台の女性が発熱と意識障害で入院してきました。ADLは車いす生活で施設入所中。排泄はオムツを使用しています。心不全で入院歴があり、心不全に対してSGLT2阻害剤を服用していました。胸部レントゲンでは明らかな肺炎像はなく、尿検査でWBCと細菌が多数認めたことから、尿路感染症の診断で第3世代セフェムのCTRXを開始しました。入院翌日には血液培養からグラム陰性桿菌(GNR)が4/4本で検出、その翌日にはE.coliと判明しました。幸い解熱傾向で、患者さんも意識がはっきりしてきて食事も摂っています。
ご家族に経過報告の電話をして、「今のところ抗菌薬が効いているので、順調に経過しています」と報告したところ、「いつ退院になりますか? 施設にも伝えておかないと。」と言われました。
こんな時、あなたは何と答えますか?
抗菌薬をどのくらいの期間投与してから退院すればよいでしょうか?
結論から言うと、投与期間の判断は「各疾患の一般的な目安+個々の患者の状態」で決めることになります。
血液培養でE.coloが検出されていれば、抗菌薬は10~14日間投与を考えます。でも、ずっと点滴ではなく、経口薬に切り替えて早めに退院させることもアリかもしれません。
ということで、「決まり」ではなく、「目安」をもとに、培養結果や感染局所の指標を見ながら判断することになります。
「抗菌剤投与の目安」には以下のようなものがあります。近年は投与期間を短くして大丈夫というような研究結果も出てきていますので、おおよその日数を頭に入れておき、その都度ガイドラインなどで確認するのが良いでしょう。
【髄膜炎】
髄膜炎菌、インフルエンザ菌 ・・・・7日間
肺炎球菌 ・・・・・・・・・・・・・14日間
リステリア菌 ・・・・・・・・・・・21日間
【肺炎】
肺炎球菌 ・・・・・・・・・・・・・解熱後3~5日(最短5日)
レジオネラ・非定型 ・・・・・・・・5~7日
腸内細菌科、緑膿菌 ・・・・・・・・14日以上も考慮
【心内膜炎】
緑色連鎖球菌 ・・・・・・・・・・・14日(GM使用下)
腸球菌 ・・・・・・・・・・・・・・28日~42日
黄色ブドウ球菌 ・・・・・・・・・・28日~42日
【腎盂腎炎】
一般的に・・・・・・・・・・・・・・14日
CPFX、LVFX使用 ・・・それぞれ7日、5日
【菌血症】
感染源除去可能 ・・・・・・・・・・10~14日
(編集長)
さて、投与期間をどうするか?
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