臨床研修ブログ
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臨床実習報告・・・歩行障害の一例②
3週間、水戸済生会総合病院総合内科で臨床実習させていただいております、医学部6年のりんごです。ALSについての2回目の記事になります。よろしくお願いいたします。
<筋萎縮性側索硬化症(ALS)について②>
【病型】
ALSの臨床症候は①上位運動ニューロン障害、②下位運動ニューロン障害、③球麻痺の3つの症状から成る。①のみ認めるものを原発性側索硬化症(PLS)、②のみ認めるものを進行性筋萎縮症(PMA)、③のみ認めるものを進行性球麻痺(PBP)、①・②・③全てを認めるものを古典型ALSと分類されることが多かった。
近年は、病変が運動系を超えて広範な部位に見られる多系統病変型、両上肢近位部と肩甲帯に筋萎縮が限局するflail arm syndrome、両下肢に筋萎縮が限局するflail leg syndrome、認知症を伴うALSなど、様々な病型が報告されている。
★ここまで多くの病型があるとは知りませんでした。認知症を伴うALSは前頭側頭型認知症(国試でも頻繁に出題されますね…)を呈し、日本では湯浅・三山型ALSとよばれることもあるそうです。
【検査所見】
様々な検査を実施しましたが、針筋電図検査と神経伝導検査が特に印象に残りました。
〇針筋電図検査:神経原性変化が見られる。
★重要事項★
・線維自発電位は一つの筋線維由来の異常興奮であるため筋原性変化でも見られます。一方、線維束性電位は下位運動ニューロン軸索起源の自発電位であるため神経原性変化でのみ認められます。
・強収縮時に評価する干渉波は、複数の運動単位の動員状況を評価できる指標です。筋収縮力を強めると収縮する筋線維の運動単位数が増加し、一つ一つの運動単位電位(MUP)を判別することが困難になります。これを完全干渉といいます。逆に、筋収縮力を増加させても運動単位数が増加しない場合は一つ一つのMUPを判別することができ、これを不完全干渉といいます。
・医師国家試験対策では、神経原性変化といえば安静時の脱神経電位(線維自発電位と陽性鋭波)と線維束電位、弱収縮時の高振幅・長持続・多相性のMUP、強収縮時の不完全干渉が特徴と習ったのですが、今回の症例では見られなかったので調べてみたところ、下位運動ニューロン障害の進行具合によって所見が異なるそうです。
初期:脱神経電位はまだ出現せず、不完全干渉のみ認められます。
脱神経早期:脱神経電位が出現し始めます。不完全干渉も認められます。
神経再支配早期と神経再支配完成期:運動ニューロン障害に伴う筋線維萎縮をきたしていない筋内部からの神経発芽による神経再支配か、もとの運動ニューロンからの神経再支配かによって所見が異なります。弱収縮時の高振幅・長持続・多相性のMUP、強収縮時の不完全干渉が見られるのは神経発芽による神経再支配です。詳細は本記事最後に添付した参考文献(2)をご覧ください。
・ALSでは肉眼的に筋の線維束性収縮が見られることがあります(今回の症例でも見ることができました)。これは、安静時に見られる線維束電位に相当します。
〇神経伝導検査
運動及び感覚神経伝導速度は基本的に保たれる。筋萎縮に伴い、運動神経の複合筋活動電位(CMAP)の低下を認めることがある。
★重要事項★
・脊髄前角細胞の障害によって伝導速度の速い神経線維が変性脱落すると、運動神経伝導速度が低下することがあります。今回の症例でもごく軽度の伝導速度低下を認めました。
今回はここまでとさせていただきます。次回は鑑別疾患についてまとめようと思います。それでは失礼します。
(参考文献)
(1)辻 省次・祖父江 元. アクチュアル脳・神経疾患の臨床 すべてがわかるALS・運動ニューロン疾患. 株式会社中山書店
(2)赤星 和人.針筋電図における運動単位活動電位(MUAP)の生理と臨床. リハビリテーション医学. 1999. Vol.36, No.10, p.669-677(最終閲覧日:2024/5/17)
「https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/36/10/36_10_669/_pdf/-char/ja」
(りんご)
PICCでの一コマ
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