臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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ERでSTMIに遭遇した時の対処法③
さて、PCIを行う方針が決まりました。PCIの準備ができるまで、少し時間が出来るかもしれません。こんな少しの時間でも、ドクターは少しでも患者さんの情報を得ようと色々と話を聞き出します。
この時に聞き出すポイントは何でしょう?
1.発症時間
発症からの時間を確認します。治療開始が早いほど心筋のダメージが小さくて済みますが、6時間以内がゴールデンタイムとされています。もちろん6時間を越えてもPCIを行いますが、12時間を越えると心筋のダメージが出来あがってしまいます。胸痛症状が残存する場合は心筋壊死が進行中とみなしてPCIを行うことも多いです。逆に24時間を越えて症状もなければ、急ぐ必要はなくなります。
またガイドラインでは発症からの時間だけでなく、ERに搬送されてからPCIで閉塞していた血管にバルーン拡張するまでの時間(Door to Balloon Timeと言います)を90分以内にするよう推奨されています。
先にも述べましたが、慌てる必要はありませんが常に時間を意識して行動する必要があります。
2.既往症や禁忌の確認
冠危険因子をチェックします。高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、家族歴は確実に聴取する必要があります。これからPCIを行うので腎機能障害を指摘されたことがないかも聞くようにします。
といっても、STEMIの場合はPCIなどの再潅流療法をしなければ死亡率が30%と非常に高いのですが、再潅流療法を行えば死亡率が5~6%と明らかに低下します。このため腎機能が悪かったとしても結局はPCIをやります。ですが、やはり術前の説明で透析導入の危険があることを良く話しておく必要がありますね。
同時に出血するような病気、具体的には脳出血、胃潰瘍や痔からの出血の既往、癌などの最近の手術歴を確認します。これはAMIの治療には抗凝固療法(ヘパリン)や抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル)など、出血しやすくなる薬が必須ですので、出血のトラブルを避けるために必要となります。
3.アクセス(カテーテルを挿入する部位)の決定
先ほども述べましたが、PCIについて各施設でルールがある場合にはそれに従いましょう。ちなみに当院ではSTEMIは術者の判断で橈骨動脈か大腿動脈かを決めていますが、STEMIではあらゆる状況に対応する必要があるため、少なくとも鼠径部の消毒だけはして、いつでも使えるようにしています。
アプローチ部位の選択については、編集長なら高齢者で不穏が予想され術後の安静が維持できなさそうな場合や閉塞性動脈硬化症などでソケイ部の動脈触知が微弱な場合などは橈骨動脈アプローチで行います。ところが橈骨動脈に関しても、以前にバイパス手術の既往がある場合や透析患者では橈骨動脈をグラフトに使用されていたり、シャントのためアクセスとして使用できない場合もあるので確認が必要です。
PCIの合併症では、実際のところ穿刺部に絡むトラブルが多くあり、ソケイ部から出血した場合は死に至ることもあり得ますから、せっかくPCIが上手くいっても何にもなりません。こういった判断は術者が患者と話をしながら短時間で決めています。次回も続きます。
(編集長)
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