臨床研修ブログ

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肺炎患者の対応 その6

2019.09.05
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回は呼吸器関連肺炎(VAP)です。

 

VAPはHAPの一つですが、

「気管挿管下人工呼吸を開始して

48時間以降に発症した肺炎」

と定義されます。

 

ICUにおける主要な感染性合併症であり、

全挿管患者の9~27%に発生すると

されています。

 

起炎菌は緑膿菌が最多ですが、

エンテロバクターやセラチア、

マルトフィリアなど、治療に

難渋するグラム陰性桿菌も多く、

黄色ブドウ球菌やMRSAの割合も

高いようです。

 

さて、ここで質問です。

あなたはどうやって

VAPと診断していますか?

 

そもそも、挿管されるくらい

原疾患の状態が悪い、

抜管できないという状況な訳ですから、

CAPのようにレントゲンで肺炎像が

はっきり見えるとは限りません。

 

欧米のガイドラインなどでも

確立した診断基準はないようですが、

成人肺炎診療ガイドライン2017では

以下のようになっています。 

こうしてみると、もっともな

ことばかりですが、臨床では

はっきりしない、モヤモヤが

残ることも多いのが実際の

ところ。

 

挿管されている患者さんでは、

発熱の原因として、VAP以外に

尿路感染症やCLABSI(ライン感染)など

いくらでもあるので、VAPの診断は

簡単ではないのです。


VAPは早期の治療開始は大事ですが、

熱が出たからVAPと簡単に決めないで

他の熱源の検索も忘れないようにしましょう。

 

そして、治療もさることながら、

大事なのは予防です。

 

具体的には

①手指衛生

②仰臥位の回避

③呼吸器回路を頻回に交換しない

④過剰な鎮静を避ける

⑤人工呼吸器からの離脱

⑥声門下腔吸引孔付きチューブの使用

⑦口腔ケア

 

ちなみに、②のために頭部を

30~45度挙上するだけで、

VAPリスクが67%も減少します。

 

⑥はメタ解析でVAPの発症を低下

させることが示されているそうです。

 (編集長)

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