臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
糖尿病のお薬・・・・DPP4阻害薬
今回はインスリン分泌促進薬の一つである、DPP4阻害薬です。
DPP4阻害薬はSGLT2阻害薬と同様に非常に多くの種類があり、かつ頻用されています。多くの利点がありますが、あわせて弱点も把握しておきましょう。
【機序】
・インスリン分泌を促進する消化管ホルモン(インクレチン)の一つにGLP1があります。このGLP1の分解酵素であるDPP4を選択的に阻害することで、GLP1の作用を増強させます。
【特徴】
・体重増加を来しにくい
・空腹時に低血糖を来しにくい(GLP1は腸管に食べ物が入る刺激で分泌され、空腹時は分泌されない)。
【禁忌】
特別なものはありませんが、同じDPP4阻害薬でも腎排泄や肝排泄など代謝経路が異なるので、腎機能低下や肝機能低下例では減量が必要になります。
【副作用】
・消化器症状:嘔気、胃部不快感、便秘、下痢、腸閉塞
(消化管ホルモンの作用を増強し、腸管蠕動を抑制する方向に作用します)
・膵外副作用:有名なDPP4関連膵炎、水疱性類天疱瘡は覚えておきましょう
DPP4は種類も多く、合剤や週1回だけ服用の薬剤もあります。使いやすい薬剤ですので、自分が処方する薬剤はある程度絞って、排泄経路や副作用は良く把握しておくと良いと思います。編集長は特に高齢者で腎機能が問題になるので、腎機能に影響を受けない薬剤を多く使っています。
(編集長)
看護師さんと議論中!
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糖尿病のお薬・・・・グリニド薬
今回はインスリン分泌促進薬の一つである、グリニド薬を紹介します。
【機序】
・SU剤と同様に膵β細胞に作用して、インスリン分泌を促進
【特徴】
・SU剤と比べて、吸収も消失も速く、食後高血糖の是正に向く
・毎食前に服用する必要があるので、無理な人には無理
【禁忌】
・重症感染症などの経口摂取ができないような全身状態不良時
【副作用】
・低血糖
・肝機能障害(稀)
効果発現までが速いので、「いただきます」と言う時に服用しないと効果が発揮されません。逆に、服用してから何も食べないと低血糖を起こします。食前服用の薬なので、真面目にお薬を飲んでくれる患者さんに向いています。また、SU剤ほどではないものの、肝機能や腎機能が悪い人では効果が遷延します。禁忌とはなっていないものの、減量するなど慎重に用います。
(編集長)
J2となると慣れた手つきです!
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糖尿病のお薬・・・・スルホニル尿素(SU)薬
今回からインスリン分泌促進系の薬剤を紹介していきます。
インスリン分泌促進系の薬剤には、SU剤とグリニド薬とDPP4阻害薬、GLP1作動薬の4つがあります。まずはSU剤についてです。
【機序】
・膵β細胞に作用して、インスリン分泌を促進
【特徴】
・作用は強力だが、高齢者や腎機能低下例では、重症の低血糖が遷延しやすい
・同じインスリン分泌促進系の薬剤と併用は、より低血糖を起こしやすくする
【禁忌】
・腎機能障害(eGFR<30)は禁忌(当然、透析患者さんはダメです)
【副作用】
・重症・遷延性低血糖
・肝機能障害(稀)
・無顆粒球症(稀)
以前は糖尿病治療薬の種類も少なく、SU剤を極量まで増やして、それでだめならインスリンという流れで使っていた時期がありました。その頃は遷延性低血糖が問題で、編集長は5日間も低血糖が遷延した症例を経験したことがあります。薬剤の影響と分かっていても、さすがに心配になりました。もしあなたが、SU剤を服用中の低血糖症例に遭遇したら、入院のうえ経過観察してください!
現在はまずは他剤で開始して、2剤目以降に少量併用するのが主流だと思います。とにかく低血糖を避けることが重要です。となると、高齢者や腎機能が悪い人には避けて、太っていない(インスリン抵抗性のない)比較的若い患者さんに少量追加するのが良いように思います。
(編集長)
今日もワクチン接種♪
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糖尿病のお薬・・・・チアゾリジリン
今回は、インスリン抵抗性改善系薬剤のうちチアゾリジリンについてまとめてみます。一般名はピオグリタゾン(先発品はアクトス)です。
【機序】
・肥満細胞に作用して、インスリン抵抗性を改善
【特徴】
・インスリン分泌に関与しないので、単独では低血糖を起こしにくい
・体重増加がみられる
【禁忌】
・心不全患者
【副作用】
・水分貯留傾向があり、浮腫や心不全の増悪に注意
・女性で骨折のリスク上昇が報告されている
一時期は抗動脈硬化作用もあると、もてはやされた薬剤です。その後は膀胱がんのリスクが上がるのではないかとのデータが出され、これを契機にあまり処方されなくなりました。現在は膀胱がんのリスク上昇は否定されています。
体液貯留傾向があるので心機能が悪い人高齢者には避けた方がイイですが、肥満で心機能に問題ない人には良い適応となります。現在はあまり処方されることもない薬剤になってしまいましたが、編集長の個人的な意見としては、HbA1cがリバンウンドすることなく長期に安定して低下するので良い印象をもっています。
(編集長)
縫合結紮セミナーの一コマ
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糖尿病のお薬・・・・ビグアナイド
糖尿病薬については、主な作用機序と禁忌と副作用、そして向く症例や避けた方がいい症例を覚えておくのが良いと思います。今回は、インスリン抵抗性改善系薬剤であるビグアナイドについてまとめてみます。
【機序】
・肝臓での糖新生抑制
・他に消化管からの糖吸収抑制末梢組織でのインスリン感受性改善など
【特徴】
・体重が増加しにくい
・海外のガイドラインでは第一選択薬
・心血管イベントを低下させる
・安い
【禁忌】
・肝硬変・肝不全
・腎機能低下例では注意、特にeGFR<30では禁忌
造影CTなどのヨード造影剤を使用する際は休薬することは良く知っていると思いますが、造影剤に限らず、脱水やショック、心筋梗塞、重症感染症など、eGFRが急激に低下する可能性のある病態では中止しましょう。
【副作用】
・乳酸アシドーシスが有名
・臨床的には、消化器症状(軟便、下痢、心窩部不快感など)
・ビタミンB12の吸収阻害による大球性貧血を来すことがある
以上のことから、ビグアナイドが向くのは肥満のある2型糖尿病で、若くて腎機能も肝機能も問題な人にビグアナイドが向きます。逆に、痩せている高齢で腎機能がちょっと低下気味の人には避けた方がいいでしょう。
(編集長)
看護師さんと一緒に看護ケア
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糖尿病のお薬・・・・内服薬の全体像
どの診療科に行っても糖尿病の患者さんがいます。当然、手術や検査の時に食事を止める場合は糖尿病薬を中止したり、減量したりする必要があります。また高齢者では、今までずっと服用していた糖尿病薬だとしても、入院を契機に減量や中止など、処方を見直す必要が出てくる場面にも良く遭遇します。
ですので、糖尿病が苦手と思っているあなたでも糖尿病薬について全く知らない訳には行きません。そんな時にあなたが知っておくべき最低限のクスリの知識を、今回から紹介していきます。
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糖尿病薬には内服薬と注射薬があります。内服薬には8種類、注射薬には2種類あります。まずは内服薬の全体像を見てみましょう。
内服薬には
【インスリン抵抗性改善系】
・ビグアナイド薬
・チアゾリジリン薬
【インスリン分泌促進系】
・スルホニル尿素薬(SU薬)
・速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
・DPP4阻害薬
・GLP1受容体作動薬
【糖吸収・排泄調整系】
・αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)
・SGLT2阻害薬
それぞれの機序や副作用、禁忌などを把握して、1剤から開始するのが原則です。薬剤名と一般名を覚えるのはちょっと大変ですが、院内に採用されているものをまずは覚えてください。現在は合剤も多く発売されており、錠数も少なくて服薬アドヒアランスが向上するなど、慣れてくるとメリットは大きいものがあります。しかし最初のうちは頭が混乱するだけなので、ここでは取り扱わないことにします。
次回はビグアナイドについて紹介します。
(編集長)
最初のうちはサポートありで♪
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急性咳嗽の鑑別・・・井上純人先生のZoomレクチャーより
井上純人先生は山形大学の第一内科講師、病院教授で呼吸器内科のトップです。大学ではベストティーチャー賞を何度も受賞して、今では殿堂入りを果たしており、大学では知らない人はいないほど教え上手で、面倒見のいい先生です。
そんな井上先生に、編集長と同級生というご縁で今年度からZoomでのレクチャーをお願いしています。6月の第1回目に続いて、先週末に2回目のZoomレクチャーをお願いしました。
内容は下の写真の通りですが、さすが要点をおさえた分かりやすいレクチャーでした。
今回はその中から、急性咳嗽の鑑別についてシェアしたいと思います。
咳嗽は持続期間で
・急性咳嗽:3週間未満
・遷延性咳嗽:3週間以上持続
・慢性咳嗽:8週間以上持続
に分類されます。
急性咳嗽の鑑別の際は、まずは感染症か、感染症以外かを鑑別します。
具体的には、
・感冒様症状(鼻、のど、発熱など)が先行
・周囲に同様の症状の人がいる
・経過中に性状の変化する膿性痰がある
上記のどれかに当てはまれば、感染症による急性咳嗽を考えます。
そして、4 Killer Cough と呼ばれる、見逃すとヤバい急性咳嗽の原因疾患を教えてくれましたが、あなたは挙げられますか?ちょっと考えてみてください。
↓
↓
答えは
①肺塞栓 ②心不全 ③気胸 ④気道異物
バイタル(特にSpO2)の悪化や苦しくて動けないという訴えの時は、これらの疾患を鑑別しつつ、高次医療機関への搬送を考慮しましょう。
(編集長)
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糖尿病の検査 CVRR
糖尿病は、無症状の期間が非常に長く、その間に合併症が進行してしまいます。症状が出た時には既に手遅れという状況になってしまうので、少なくとも診療する側は合併症の程度を把握しておかないといけません。ところが、腎症とか網膜症は比較的把握しやすいのですが、神経障害は典型的な症状を来すまで、把握されていないことも多く見受けられます。
そこで今回は糖尿病性神経障害を評価法の一つであるCVRRについて、筑波大学の森本君がまとめてくれました。彼は総合内科で2週間実習をしてくれたのですが、その間に糖尿病症例を経験した中で調べてくれたものをシェアします。
(編集長)
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糖尿病神経障害は、腎症や網膜症と並ぶ、3大合併症の1つで、最も早期に発症、最も頻度が高い合併症です。長年の高血糖により、全身の臓器を支配する交感・副交感神経線維を傷害し、多彩な症状を来します。特に、起立性低血圧などの心血管系自律神経障害は、無痛性心筋梗塞や致死性不整脈を引き起こし、生命に重大な影響を与えるため、早期診断と治療はとても重要です。心血管系自律神経障害の評価方法として、心電図のR-R間隔変動を利用する評価(CVR-R)が用いられます。
健常人では、吸気時にR-R間隔は短縮し、呼気時にR-R間隔は延長します。これは、吸気時に迷走神経反射が抑制され、心拍数が上昇し、呼気時に迷走神経反射の抑制が解除され、心拍数が低下することに由来します。心血管系の自律神経障害が生じると、このようなR-R間隔変動が起こらなくなってきます。
日本では、R-R間隔変動の評価を変動係数 (Coefficient of Variation of R-R interval / CVR-R ) を算出することで行います。安静時と深呼吸時に100心拍を十二誘導心電図で記録して、R-R間隔の平均値と標準偏差を算出し、「CVR-R = 標準偏差 / 平均値 × 100 (%)」で求めます。
健常人でも加齢によりCVR-Rが低下しますが、安静時のCVR-R < 2.0 % の場合は、心血管系自律神経障害の存在を考えます。また、心血管系自律神経障害によって、深呼吸時と安静時のCVR-Rの差が小さくなることも知られています。
(参考文献)
https://www.igaku.co.jp/pdf/1608_tonyobyo-04.pdf
https://www.uptodate.com/contents/normal-sinus-rhythm-and-sinus-arrhythmia
森本君と総合内科の研修医2人
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見逃すとまずい失神・・・・山中先生のZoomレクチャー
今回も山中先生のZoomレクチャーからです。
前回は「失神3兄弟」を紹介しました。そう、心血管性、神経調整性、起立性低血圧でした。
そして頻度は少ないものの、見逃すと致死的になる失神を3つを覚えておきましょうとのことでした。
あなたは分かりましたか?
答えは、
・肺塞栓
・くも膜下出血
・急性大動脈解離
これらを疑って、ERで全例造影CTを取る必要はありませんが、「攻めの問診」で疑わしいかどうかを判断しましょう。
具体的に
肺塞栓なら、最近息切れはなかったか? 手術や長時間臥床するようなことがなかったか?既往にDVTはなかったか?などを聞いてみます。
くも膜下出血の中には、頭痛を覚えていない人がいます。発症時の強い頭痛が引き金で、迷走神経反射になるのかもしれないそうですが、失神3兄弟にしっくり合致しない時は鑑別に残しましょう。
急性大動脈解離では、頸動脈に解離が進展すると脳虚血から失神を来すことがあります。もちろん、痛みによって迷走神経反射という機序もあり得ます。ちなみに片麻痺などの脳梗塞症状で来院する急性大動脈解離もあるので、注意が必要なことは覚えておきましょう。患者さんには意識を失う前に、胸や背中が痛くなかったか聞くだけでも診断のきっかけになります。
(編集長)
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レジオネラ肺炎の肺外症状
今回も3月まで当院で研修していたマナ先生の書いてくれた記事です。外来研修中に経験したレジオネラ肺炎についてです。
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50代男性、頭痛、発熱を主訴に内科初診外来を受診しました。身体所見上髄膜刺激徴候はなく、その他の部位にも明らかな感染徴候はありませんでした。採血をしてみるとCRP 45以上の著明な炎症反応上昇を認め、CTを撮像したところ著明な肺炎像を認めました。そして、検査の結果レジオネラ肺炎の診断になりました。
他の方がレジオネラ肺炎のことについてはまとめてくださっていたのですが、肺外症状から診断に至ったレジオネラ感染症を経験することができたので、今回はこの肺外症状について簡単にまとめたいと思います。
●症状
・潜伏期間は2-10日程度。
・全身倦怠感、頭痛、食欲不信、筋肉痛など全身症状から始まり、乾性咳嗽、悪寒、胸痛、呼吸苦が見られるようになる。
・傾眠、昏睡、幻覚、四肢振戦などの中枢神経系の症状や下痢が見られるのが特徴的である。
・適切な治療介入をされなかった場合、1週間以内の経過で急速に進行し、多臓器不全を呈することもある。
レジオネラ肺炎の肺外症状として見られることが知られているのは以下の症状である。
・意識障害、頭痛、腹痛、下痢、相対的徐脈、低ナトリウム血症、一過性トランスアミナーゼ上昇など
私はレジオネラ肺炎の肺外症状の知識が全くなく、外来で診察した当初は全くレジオネラ肺炎を疑うことはできませんでした。実際に頭部から骨盤までのCTを撮影して初めて肺炎に気づいた状況でした。
しかし本症例は入浴施設に行った10日後に頭痛、発熱で発症した、比較的経過としては典型的な症例であったことがわかりました。尿中レジオネラ抗原が陽性であったことからレジオネラ肺炎の診断に至り、抗菌薬治療を開始して経過は良好でしたが、診断が遅れると急速に呼吸障害が増悪することもある疾患であり、診断に至ることができ、よかったです。そして、自分が外来で担当させていただいた患者さんを入院中も担当し治療をさせていただけて心に残る症例となりました。
今後外来をするにあたって今回のように最初は診断が思いつかず難しい症例も多いと思います。研修医の間に、指導医の先生のご指導のもと内科初診外来を担当させていただける環境に感謝し、1人ひとりの患者さんから吸収し、たくさんのことを勉強させていただきたいと思います。
(マナ)
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