臨床研修ブログ

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救命救急センターだより「ロード アンド ゴー」

2023.01.05
カテゴリー: 救命救急センター

空飛ぶ消化器内科を目指すNaoです。本年も宜しくお願い致します。

 

「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ。」

 

最近はドクターヘリよりドクターカーの出勤が多くて飛べていません。冬は、空気が澄んでいるのと、暑くないので空が楽しいんですけどね。ただの豚じゃなくなりたいものです。

 

さて、僕たち救命に携わる医師および看護師が現場進出の上で、病院外で患者さんに一刻も早い治療を届けるべく働いたりしますが、これを病院前診療と言います。現場進出の手段によりドクターカーやトクターヘリと呼んでいます(最近はドクタージェットというものもありますが、これはどちらかというと搬送が目的ですかね)。医師や看護師が現場進出するのも大切ですが、現場でできることには限りがありますので、やはり一刻も早い「搬送」が大切になります。

 

僕が現場に行った事案ではありませんが、このことを示す一つ良い事例がありました。交通外傷により大動脈損傷、横隔膜損傷および腹腔臓器損傷をきたした症例です。胸部大動脈損傷に対してTEVARを行い、その後緊急開腹して救命したというものになりますが、この時現場進出した救急医は、当然ながら超重症であることを一目で判断しました。

 

そこからがポイントなのですが、現場でできることは少ないと判断し、必要最小限の治療を行い一刻も早く搬送することを優先したのです。ともすると、僕のようなひよっこは、現場で色々細かく評価したり、できる検査や処置全部やりたくなってしまったりしますが、患者さんの救命には、早く病院に連れていき、より正確に診断し治療介入することのほうが重要なこともあります。重症だからこそ、です。

 

医師の介入なしでも現場の救急隊でこれを判断して行えるようにした仕組みが、「Load and Go(ロード アンド ゴー)」です。Load and Goは収容してすぐに現場離脱するものですが、生命の危険が少しでも疑われる傷病者への対応方針を言います。状況評価で高エネルギー事故に該当するもの、初期評価ででABCに異常がみられるもの、全身評価でJPTECが定める損傷(フレイルチェストや頭頚部および体幹部の穿通性外傷、骨盤骨折、両側大腿骨骨折など)がある場合などに適応とされます。

 

この場合、救急隊はLoad and Goを宣言し、救命救急センターである我々は必要最小限の情報だけを受け取り、受け入れの準備を行います。病院選定時に不必要に情報のやり取りで時間をかけないための方策で、これにより収容から搬入までに少なくとも数分以上の時間短縮が見込まれます。

 

数分、数秒が命の時間を左右することは、救命センターでは少なからず経験されます。消防および救命センターの強い連携のもとで引き続き地域医療を守っていきたいと思います。

 

実際そこまでシビアな症例は多くありませんが、当院で2年の研修を積むと経験することになります。救命センターでの仕事は、大きなやりがいがあります。

 

皆さんと当院で一緒に働けるのを楽しみにしています。ぜひ見学にいらしてください!

(Nao)

慌ただしいERの一コマ

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救命救急センターだより「当センターでの救急医の役割分担」

2022.12.24
カテゴリー: 救命救急センター

みなさんこんにちは、空飛ぶ消化器内科医を目指すNaoです。

 

以前の記事で次のチャンスでは「外傷外科医を目指したい」とうっかり書いてしまったために、記事を読んでくれた当院の外科のセンセイから「今後はぜひ一緒に」と声をかけてもらいました。最初は「うわ、やってしまった」と思いましたが、これはまたとないチャンスだと思いましたので、「是非呼んでください」と返事しました。今のところ実際には呼ばれていないのですが、この記事も読んでいただいていると思いますので、必ず、忘れずにぜひ呼んでくださいね!

 

さて前回の記事で紹介しましたが、当院の救急外来では一般日当直(walk in担当)、ER日当直(救急車対応)、ドクターカー番、ドクターヘリ番と4人の医師がおり、このうちER、ドクターカー、ドクターヘリを救急科が担当しています。ちなみにほかに、ICU当直、麻酔科当直、産婦人科当直がおり、研修医当直が2名おりますので、常時院内には最低でも研修医を含めて9名の医師がいます。

 

私はドクターカーだけ独り立ちさせてもらっているのですが、ER やドクターヘリはOJT(On the job training:上級医について仕事をしながら学ぶ)立場です。なぜドクターカーは独り立ちできて、ERとヘリは独り立ちできないのか、についてお話させていただこうと思います。私の個人的な意見も入る回ですのでその点よろしくお願いいたします。

 

まずは既に独り立ちしているドクターカー医師の役割について説明します。ドクターカーは水戸市からの委託事業であり、日中のみの運用となっています。カバー範囲はざっくりと水戸消防の管轄地域になります。ただし当院は水戸市の西のはずれの方にありますので、東のはずれに向かうと救急車でも30分以上かかります。

 

ドクターカーの場合は車で移動していますので、基本的にいざとなったら自分の病院へU-turnしてくれば良いということになります。とにかくABCを安定させることを考え、その後、純粋に患者さんの状態からどこに搬送すればよいかを考えるということになります。水戸市内ですので近隣病院の事情も頭に何となく入っていますし、医療機関の選定も比較的スムーズに行えます。

 

一方でドクターヘリはカバー範囲が県内全域、状況によっては隣県も含まれます。ドクターヘリの場合は、医療者の現場出動の他にヘリコプターによる高速搬送という役割もあります。「適当な医療機関」の選定範囲が陸送に比較し広くなりますので検討すべき事情が大きくなります。患者さんの状態、来院する家族の事情、交通事情や土地の状況・天候を踏まえた搬送手段および搬送先の選択、空中での急変に備えた準備(AMI疑いの患者さんにはあらかじめ除細動パッドを貼っておくなど)と考慮すべき事情が増えます。また多重事故や災害などドクターカーより大きな現場へ投入される可能性も大きくなります。そのため、ドクターカー医師より多くのことを考え対応できる必要があるのです。

 

最後はER番です。ER番は、おそらく救急科の先生たちは一番好きじゃないと思います。ER番は20名程度の救急科入院患者の対応と救急車、ドクターカーやヘリの搬送患者すべてに対応する必要があります。カーやヘリが出動していない時は、その担当医も手伝ってくれますが、ER処置中に呼ばれていなくなってしまうと、ER番の先生が全部自分でやらなければならなくなります。また、院内急変があった場合の対応もER番の医師がリーダーとなり対応することになるため、その肩に乗る責任は非常に大きくなります。

 

いつの日かERを任せてもらえる日が来るかもしれません。あまり望んではいませんが・・・(笑)

 

全然関係ないですが、最後に皆さんに一言。

 

いつも書いていますが、人生に無駄なことはないです。医学生の皆さんはこの後、初期研修、後期研修の中でやりたくもないことをやらされたり、経験させられたりすることがあることと思います。そのすべてとは言いませんが、でも多くの経験が何らかの形で役に立つ日が来ます。卒業試験や国家試験のために覚えるマイナーな病気も、役に立つ日が来ます。今与えられた役割をしっかりこなして、将来の研修・勤務先に当院を選んでいただけた日には、一緒に空を目指しましょう!(笑)

(Nao)

ICUでの処置中の一コマ

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アナフィラキシー

2022.12.17
カテゴリー: 救命救急センター

小児科医を目指しているJ1のminimumが記事を書いてくれました。今回がブログのデビュー記事になります♪

少し前にニュースになったワクチン接種後のアナフィラキシーについてまとめてくれましたので、ぜひご覧ください。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最近、新型コロナウイルスのワクチン接種によるアナフィラキシーショックのニュースがありましたが、世間の関心も高く、自分自身もう一度勉強し直したいと思いまとめてみました。

 

•アナフィラキシーとは?
<アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応>をアナフィラキシーといい、血圧低下や意識障害を伴うものをアナフィラキシーショックという。

(日本アレルギー学会)

 

診断基準は以下の通りです。

急速(数分〜数時間)に発現する以下の症状を①〜③いずれかを満たす

 

①皮膚粘膜症状+呼吸器症状、循環器症状どちらか
②皮膚粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状、持続する消化器症状
③アレルゲン暴露後の急速な血圧低下 平常時血圧の70%以下 またはsBP90以下(11歳から成人)

 


皮膚粘膜症状:全身の発疹、掻痒、紅潮、浮腫
呼吸器症状:呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症
循環器症状:血圧低下、意識障害
消化器症状:腹部疝痛、嘔吐

 

原因は薬剤、抗菌薬、造影剤、食物、蜂、蟻、ラテックスなど多岐にわたります。もちろん、コロナワクチンも含まれます。

 

アナフィラキシーの初期対応は次のようになります。

 

①バイタルサインの確認
  循環、気道、呼吸、意識状態、皮膚、体重を評価する

 

②助けを呼ぶ
  院内→蘇生チーム、院外→救急隊

 

③アドレナリン 

  0.01mg/kg 大腿外側 筋注  (最大量 成人0.5mg 小児0.3mg)
  (新型コロナワクチンのアナフィラキシー時の緊急対応ガイドでは0.3mg)

 

④体位変換
  (仰臥位、足を30cmほど高くする。 呼吸が苦しい場合は少し上体を起こす。嘔吐している時は顔を横向きにする。)

 

⑤酸素投与(6-8L フェイスマスクor経鼻エアウェイ)

 

⑥静脈ルート確保

 

⑦必要に応じて心肺蘇生

 

⑧バイタル測定

 

一番重要なのはアドレナリンの投与をためらわず速やかに行うことで、そのためには上記の診断基準を頭の中で整理しておく必要があります。また、アドレナリンについては、打つ部位、投与量、投与経路に関しても合わせて押さえておきたいところです。

 

私自身、まだそのような場に遭遇したことはありませんが、いざという時はすぐに体が動かせるよう準備したいと思っています。

(minimum)

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救命救急センターだより「ECPELLA」

2022.12.15
カテゴリー: 救命救急センター

空飛ぶ消化器内科医を目指して修行中(いつまで続くんだろう…)のNaoです、こんばんは。

 

当院の救急科Drs+研修医たちはメールでつながっており(slackやteamsではないところがポイント)、毎日情報交換が行われています。そこで救急対応や集中管理で必要な知識を適宜共有してくれます。先日の救急医学会に関する話題が出ていた中で、「ECPELLA(エクペラ)」という言葉が出てきました。

 

ECPELLAの話の前に皆さんはE-CPRというものをご存じでしょうか。心肺停止例に対して心臓マッサージは当然行うのですが、これにV-A ECMOを導入することで(E-CPR)救命を図る方法です。PCPS研究会からの報告では2015年度のE-CPRによる救命率は44.6%に達したとされています。E-CPR症例は多少症例が選別されているかと思いますので、何でもかんでもE-CPRすれば救命できるというものではありませんが、症例を選ぶと単に救命率の向上だけでなく、救命後の神経学的予後を含めた向上が期待されます。

 

しかし、救命のためにV-A ECMOには悪い点もあります。それは、心停止から回復直後の心臓は機能が落ちていることが多く(有効な血圧が出せない、EFが保たれていないなど)、どうしてもV-A ECMOによるサポート量が多くなります。それでも、心機能の改善とともに機会によるサポート量を減らしてECMO離脱可能な症例がほとんどです。しかしながら、ECMO依存度が高い心臓の場合、V-A ECMOによる後負荷の増大がかえって回復の妨げになるということがあります。

 

ここで登場するのがIMPELLA(インペラ)であり、IMPELLA(インペラ)とECMO(エクモ)の組み合わせが、ECPELLA(エクペラ)といい、今後大きく期待されている領域です。

 

さて皆さんはIMPELLAをご存じでしょうか。IMPELLAは左室負荷を直接軽減する補助人工心臓の一つです。実は当院は茨城県で2番目にIMPELLAが可能となった施設で、2019年に施設認定を受けています。

 

IMPELLAは・・・と話を続けようと思ったのですが、話が長くなるうえに、よく見てみたら当院の循環器内科のホームページでとても詳しく解説されていますのでそちらを診てもらったほうが良いでしょう。

 

IMPELLA、ECPELLAについて

 

3次救急の世界は、治療法があるだけではだめです。救命に携わる者が、その治療法があることを理解していないといけません。ECPELLAは医療コストはかかる治療ですので、乱発することは許されませんが、これにより職場復帰している症例が少なからず存在していることもまた事実ですので、いざというときの一つの治療手段として皆さんも覚えていてください。

 

研修医のうちに救急救命の世界を見ておきませんか?将来、救急医になるつもりがないあなたこそ、初期研修中に三次救急の世界で一緒に戦いましょう!待ってます!

(Nao)

ERの一コマ

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救命救急センターだより「腹部刺傷」

2022.12.10
カテゴリー: 救命救急センター

みなさんこんにちは、空飛ぶ消化器内科医を目指すnaoです。

 

当院の休日の救急外来は一般日直(walk in担当)、ER日直(救急車対応)、ドクターカー番、ドクターヘリ番と4人の医師がおり、このうちER、ドクターカー、ドクターヘリを救急科が担当します。

 

私はドクターカーだけ独り立ちさせてもらっているのですが、ER やドクターヘリはOJT(On the job training:上級医について仕事をしながら学ぶ)の立場です。ERやドクターヘリがなぜOJTでカーだけは独り立ちさせてもらえるのか、その差を話すと長くなりますので次回にでも書かせていただきます。

 

ところが、先日突然、独りER当番が割り当てられました。自分の判断でHotLineを受け、ドクターヘリやドクターカーも同時に搬入してくる患者をトリアージしながらマネージメントすることは非常に難しいことを身をもって体験しました(今までは言われたように動いていましたので、自分が指示を出すのは大変でした)。

 

当直明けの先生が長めに残ってくれて助けてくれたり、何より、当院の研修医は当院の救急で育ってますから、なんなら私よりよっぽど頼りになる!笑 救急担当医が自分以外院内にいない時間が何度か発生し、恐怖におびえましたが、なんとか無事に乗り越えられました。

 

さて、関係のない話が長くなりましたが、今回はナイフによる腹部刺傷に関するお話です。先日腹部に包丁を突き立てた患者さんが包丁と共に救急搬送されました。初めての経験で、当然救命救急センターでは対応できなければならない疾患ながら、どのように対応すればいいのかわかっていないので和文誌をあたってみました。

 

「刺された包丁は病院に行くまで抜いちゃダメ!」

 

これはみんな知っていると思います。でも、じゃあ受け入れた病院ではどうやって抜けばいいの?救急外来でぱっと抜いてしまっていいの? そんなことも知らなかったので調べてみました。

 

原則的には深く刺さったナイフはope室で抜くことになります。ナイフなどによる腹部刺傷は緊急手術を念頭に対応します。ただし、意味のない侵襲的処置を減らす取り組みもされていて、手術の必要のない症例を見極めながら対応することになります。

 

緊急手術の絶対的適応は

①    ショック、腹膜刺激症状がある(多量出血や腸管損傷を示唆)

②    多量の内臓脱出を認める(消化管損傷の可能性があるため検索が必要)

③    吐下血、血尿(消化管、腎尿管損傷を示唆)

④    凶器が体内深部に留置(包丁が深くまで入っている状態:抜去時の多量出血、内臓損傷のおそれのため)

 

上記のいずれでもない場合は、画像検査などを行いながら開腹以外の方法での加療を検討することになります(開腹手術をしなくとも、腹部ドレーン留置し腹腔洗浄を行うなどの治療をすることがあります)。

 

つまり、包丁が深く刺さった状態で来た時点で、緊急手術は確定です。外科にcallしながら、全身状態の安定および可能な限りの検索を行います。

 

凶器が取り除かれている状態で、かつ全身状態が安定している場合に限り慎重経過観察の手が取られます。初期治療で緊急開腹を選択しなかった症例でも4.7-20%で遅延手術を要したという報告もあるため慎重な経過観察が必要になります。

 

よく、「もう一度診療科を選択しなおす機会があったら何科を選択するか」を考えることがあります。できればすべてをできる医者になりたいのですが、知識的にも習得するべき技術的にも無理がありますのである程度分野を絞る必要がありますね。これまでは消化器外科医や心臓血管外科医など外科系へのあこがれがあったのですが、最近は外傷外科医になりたいなと思っています。

 

そういうことで、次の人生では内視鏡のできる外傷外科医を目指して頑張ろうと思いますが、この人生では空飛ぶ消化器内科医を引き続き目指して頑張ります。笑

(Nao)

ERでの処置中

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救命救急センターだより「大動脈疾患の診断」

2022.11.26
カテゴリー: 救命救急センター

ようやくなんとか無線従事者免許を取得し、着々と空飛ぶ消化器内科を目指しているNaoです、こんにちは。

 

わたしは初期研修中、必修のほかは興味のある科だけを回り、研修医の中でも最も履修診療科が少ないのではないか、というほど他科経験が少ないです。加えて、後期研修制度は現在のような制度ではなかったので消化器内科をいきなり専門にしました。そこで何が言いたいかというと、救急医としてはあまりに他科の知識がないことが足かせになっているわけです。今となっては整形外科とか皮膚科とか精神科とか眼科とか、もっといろいろ経験しておくべきだったなと思います。

 

さて本題に入りますが、そんなわたしが最近課題にしているのは大動脈疾患の診断をいかに早く行うか、ということです。救急外来では大動脈疾患の患者さんが検査までの間に容体が急変するということが経験されますが、三次救急病院である当院ではそれを一例でも減らし救命に結び付けるために努力しています。

 

先日、転倒し頭部打撲し、大きな裂創をきたした患者さんの救急要請が入りました。「はいはい、運んできてくださいー」と返事した後に、よく話を聞いたところ足がもつれたわけでなく突然倒れ、受傷。神経学的異常はなさそうだが、収縮期血圧が2桁と血圧低下が認められる。しかも過去に胸部大動脈瘤および腹部大動脈瘤で治療歴がある。これは…!

その日ER番だった救命の先生の指示で、瘤破裂の他いくつかの鑑別を念頭に最速の診断に向けて動き始めました。

 

患者さんが運び込まれるとすぐに両側上肢で血圧測定し、顕著な左右差あり。ライン確保、採血をしつつエコーを。心タンポはないが、左胸腔にecho free space出現、腹水は認めず。胸部レントゲンで縦郭拡大あり、ただしこれは以前からの所見。でもここまででほとんど胸部大動脈瘤の破裂+おそらく解離を確信。そのままCT室に行き、診断するという病院到着から10分以内に診断および心臓血管外科callまでを行いました。

 

大血管疾患は、特に胸部大動脈はエコーなどで直接観察することが難しいので、個人的には苦手に感じています。でも、救急科での修行を通じて、これはほかの疾患にも共通することではありますが、大血管疾患の早期診断にはまず疑うことが大切。疑って初療を行いながらその検査前確率を評価していく。検査前確率が高ければまず単純でいいのでCTを撮りに行く、という姿勢が大切であると感じました。優れた内科医は挙げられる鑑別疾患の数が多いと先輩に言われてきましたが、救急医もそうだな、と感じます。

 

そんなわけで本日のtake home messageは二つあります。

 

一つ目は、どんな経験が役に立つかわからないので、とにかく一つでも多くのことを経験してほしい。

二つ目は、鑑別を一つでも多く挙げられるように、今のうちに希少疾患を含めた多くの疾患について知識を蓄えてほしい。

この二点です。

 

たくさん勉強して、たくさん経験して、わたしより優秀な医者になってください。負けないようにわたしも頑張りますが。

(Nao)

救急車到着前の準備中

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救命救急センターだより「救急科にしか診れない症例」

2022.11.19
カテゴリー: 救命救急センター

医療者の働き方改革が求められており、2024年4月からは医師の時間外労働についても厳しく制限されることになっています。一部の病院ではサービス残業が発生するようになり、かえって苦しい状況になっているという噂も聞きますが、当院では実のある働き方改革を目指して各科努力しています。

 

救急科はシフト制で比較的働き方は守られておりますが、人数の増減に伴い、一人当たりの仕事量が増えてしまったりしている状況があるのも事実です。当院では常に5名前後の研修医が救急科を回っており、病棟管理に救急車対応にと駆け回ってくれて戦力として大活躍してくれています。ちなみに研修医も救急科研修中はドクターカーやドクターヘリの対応がありますので土日のシフトが組まれますが、代わりに平日に休むことができます。

 

さて、そんな中で救急科の入院を一般診療科で引き受けられないか、という案が出たり消えたりしていますが、なかなか実行に移せていません。では、救急科しか診れない症例とはどんな症例でしょう?

 

まずは外傷です。

外傷は骨折だけ、頭部外傷だけというシンプルなものもありますが、当院に搬送されてくるような高エネルギー外傷では、四肢や体幹の骨折に加えて頭部外傷、気道損傷、腹部臓器損傷を合併している、などの合併症を多数抱えていることも多く、そのすべてをマネジメントするのは、やはり救急科ならでは、です。

 

また、数は多くありませんが、内因性疾患の発症をきっかけに外傷に至るケース、例えば心筋梗塞を運転中に発症して、交通事故を起こした、などのようなケースでも主科は救急科であることが多いです。

 

他には減らない過料服薬や服毒自殺の患者さんは、救急科が管理しています。高度の熱傷も形成外科の応援を受けつつ、全身管理をするのは救急科の役割です。このように救急科は救急車対応以外何しているのか、意外と実態が分かりにくい科ですが、病棟管理にも忙しくしています!

 

これを読んでくださっている皆さんの中で、将来救急科以外の専門を選ぶ方も多いと思いますが、是非、空飛ぶ消化器内科を目指す僕のように、救急診療に一緒に関わると新しい経験もたくさん積めますし、自分の専門診療の知識を救急科の先生と分かち合うチャンスにもなるのでお勧めです。医者たるもの、目の前で苦しむ患者から目を背けず、命をつなぎとめるための最低限の初期対応はしっかりできるようでありたいと思います。

 

ちなみに、当院の育てる研修医はみんなそのように育ってくれています。あなたも当院で初期研修をして、そのような医者になりませんか?

(Nao)

外傷患者のヘリ搬送

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救命救急センターだより「人工呼吸器の管理」

2022.11.12
カテゴリー: 救命救急センター

寒さが一段と厳しくなってきましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 

当院のICUはsemi closed型の運用となっており、術後などは主科で管理していますが、呼吸器やCHDFが必要になる症例など集学的治療を要する場合は救急科が管理を行っています。

 

長期呼吸管理をする場合は複雑な病態の患者さんが多く、なかなか研修医の先生が手出ししにくく、ショックや痙攣などBの異常以外の理由で挿管した場合の呼吸管理は短期間になることが多いことから、なかなか研修医の先生が人工呼吸器の管理を覚えるチャンスが少ないのが実情です。

 

そんな中でも、救急科のメーリングリスト(救急科はシフト制のため、その日の救急症例やICU症例の状態について毎日報告しあっています)では人工呼吸器の管理などについての情報もまわり、これは「研修医の先生が勉強になる症例」と位置付けるなどして研修医の先生に学んでもらうチャンスを作っています。研修医の先生たちも、難しい症例でも一生懸命勉強しながら管理を考えてくれていて頼もしいです。

 

人工呼吸器の管理は、自分がちゃんと勉強したのはコロナの管理のためで、当院はコロナの重症専用病棟を持っていたので、2020年4月から多数の呼吸器およびECMO患者さんを管理してきました。それまではショックや膵炎の患者さんの呼吸状態悪化したときの管理くらいしかやってこなかったのでまだまだ学ぶべきところがたくさんあります。

 

そんな中で今回研修医の先生向けに、指導医の先生方がいろいろな情報を流してくれているのですが、僕も勉強になった話を一つお伝えします。

 

人工呼吸管理をする場合、人工呼吸管理に至った理由をしっかり明確にしておくことが重要です。

 

心不全、肺炎、ショック、気道閉塞、手術・処置のための挿管、鎮静、意識障害、呼吸筋など理由は一つではないかもしれませんが、何のための呼吸管理なのか。何のための呼吸管理なのか明確にすることで、自動的に呼吸管理の予測期間、goalなどが定まってきます。

 

例えば、処置のための挿管であれば処置が終わればもう抜管してよいわけです。呼吸に問題があるわけではありませんので。呼吸筋の問題は神経難病によるものがほとんどでしょうが、呼吸器離脱できるとしても時間がかかる可能性が高いので、早期に気切し覚醒し呼吸リハを開始していく必要があります。

 

呼吸器だけにかかわらないですね。何のために何をしているのか、goalをどうするか、それを見定めることは医療だけでなく、日々の生活でも必要なことかもしれません。

(Nao)

重症患者搬送直後のER!

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救命救急センターだより「病院前診療における脳卒中診断2」

2022.11.08
カテゴリー: 救命救急センター

空飛ぶ消化器内科医を夢見て日々奮闘しておりますnaoです、こんにちは。

前回の記事が中途半端で終わってしまいましたので、続きです。

 

病院前の脳卒中診断のためには「シンシナティ病院前脳卒中スケール」というのが有名かと思います。これは

  1. 顔面筋の左右差
  2. Barre徴候
  3. 構音障害

で脳卒中の可能性を判断するものです。

 

最近の脳卒中の病院前診療では、血栓回収の適応があるLarge Vessel Occlusion(LVO)を的確に見抜くことも大切になります。そこで日本医科大学から提唱されたのが、ELVO screen (Emergent Large Vessel Occlusion screen)です。これは

  1. 眼球変異のチェック
  2. 眼鏡や時計を見せて、これは何ですか?と質問する
  3. 4本の指を見せて、指は何本ありますか?と質問する

2は失語、3は視野欠損や半側空間無視に焦点を当てた質問だそうです。LVO予測としての感度は85%、特異度は72%と報告されています。

 

LVO screeningについては現在研究が活発に行われているようで、兵庫医科大学からJapan Urgent Stroke Triage score(JUST score)というものも発表されています。これで脳卒中の可能性だけでなく、LVOなのか、脳出血かSAHかといった病型まで分類できるといわれています。発表時21項目でしたが、より簡便性を高めるためにJUST-7 scoreといって7項目まで減っています。

 

OJTとしてヘリミッションで救急科Drにくっついていくと、指導医の先生たちは現場でこれは出血っぽいとか梗塞っぽいとか判断しているのですが、自分には脳卒中だろうというところ止まり、正直なところ病型の分類ができないので、JUST scoreを使いこなして病型分類にたどり着けるようになりたいと思っています。

 

現場活動では、なにかと経験が大切に感じますが、足りない経験は専門家の知恵を借りて補いましょう!笑

(Nao)

ドクヘリの格納庫内

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救命救急センターだより「病院前診療における脳卒中診断」

2022.11.01
カテゴリー: 救命救急センター

空飛ぶ消化器内科医を夢見て日々奮闘しておりますNaoです、こんにちは。

 

病院前診療において、ドクターカーとドクターヘリに求められる役割に少し違いがあります。(これは多分に私の個人的な意見が含まれるため、一部当センターの基本姿勢と相反する部分があるかもしれません)

 

本来的には病院前診療というものは病院到着前に迅速に医療介入することが主目的です。当院が水戸市と共同運航するドクターカーは患者搬送能力を持つ、いわゆる救急車方式ですが、病院・地域によってはラピッドレスポンスカーという、単に医療従事者を搬送するためだけの方式もあります。どちらにもメリット・デメリットがあるわけですが、単純にラピッドレスポンスカーって見た目が非常にかっこいい車が多くて憧れますよね(注:個人の感想です)。

 

つまり、ドクターカーの場合、病院への搬送能力だけで言った場合、救急車を超えることは全くないため搬送手段としてはドクターカーは不要です。あくまで現場への医療スタッフ派遣、あるいは搬送途上での医療スタッフ接触です。

 

極論では、ABCDの異常に対してのみドクターカーは価値を持ちます(ABCDの異常があっても救命救急士に許される特定行為は非常に限定的です)。

 

一方で、ドクターヘリは少し意味合いが変わってきます。というのは、搬送能力が(条件によっては逆転することもありますが)救急車よりも高いという点です。この場合の能力はあくまで搬送に要する時間という意味になります。

 

ですので、脳梗塞、特にLarge Vessel Occlusionではドクターヘリの搬送能力が求められることになります。脳梗塞疑いに対してドクターカーが出動する意味合いは低いが、ドクターヘリでは意味がある(私個人の意見ですが)と考えます。

 

かといって、脳卒中疑いの患者を何でもかんでも血管内治療可能な医療機関に運んでしまってはキャパシティオーバーとなってしまいます。もちろん、アメリカの脳卒中センターのように1日何十件でもかかってこい、という状況なら別ですが、日本の医療事情はだいぶ異なります。つまり、現場で脳梗塞なのか、脳出血なのか、脳梗塞なら血栓回収の適応がありそうかどうかなどを判断していく必要があります。

 

そこで役に立つのがELVO screeningなわけですが、今日は長くなってしまったので来週に続きます。タイトル詐欺みたいになってすみません。

(Nao)

ドクヘリに患者収容

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