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水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
ショックの定義
ERでも病棟でもショック状態の患者さんにしばしば遭遇します。先日も病棟で、そろそろ退院という患者さんの具合が悪くなったのですが、J1の先生が速やかに敗血症性ショックと診断して対応して事なきを得ました。
あなたもいろいろな場面で敗血症性ショックとか、心源性ショックとか使っているはずですが、研修医に「ショックの定義は?」と尋ねると意外と答えられません。血圧が低い=ショック と考えている人も多いのですが、これは本当でしょうか?
UpToDateではショックの定義を以下のように記載しています。
Shock is defined as a state of cellular and tissue hypoxia due to reduced oxygen delivery and/or increased oxygen consumption or inadequate oxygen utilization.
This most commonly occurs when there is circulatory failure manifested as hypotension
(ie, reduced tissue perfusion).
Shock is initially reversible, but must be recognized and treated immediately to prevent progression to irreversible organ dysfunction.
つまりショックとは、細胞や組織の低酸素状態から臓器不全に至るものです。ここで血圧低下とは書いてありますが、具体的な血圧の値は書いてある訳ではありません。
ちなみに循環器外来では収縮期血圧が100mmHgを下回っている人が普通に歩いて来ますが、ショックではありません。
何を言いたいかと言うと 血圧が低い≠ショック ということです。
また、ショックは以下の4つに分類されています。
・心源性ショック(Cardiogenic shock)
・循環血液量減少性ショック((Hypovolemic shock)
・分布性ショック(Distributed shock)
・閉塞性ショック(Obstructive shock)
次回から、これらショックの分類について紹介していきます。
(編集長)
慣れた手つきでPICC挿入
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
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けいれんの原因は?
ある日のER当直の話です。救急隊から受け入れ要請の連絡がありました。
70歳台の男性、突然の全身性のけいれんがあり、その後尿失禁と冷汗あり。救急隊が接触した際にはけいれんは止まっていて、麻痺無し、共同偏視なし、顔面蒼白あり。
さて、これだけの情報で、あなたは鑑別疾患をいくつ挙げられますか?
ちょっと考えてみてください。
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いろいろあると思いますが、当然ながらてんかんをはじめとした頭蓋内疾患が鑑別に挙がりますよね。
ではここに、下記のような救急隊からバイタル情報が加わるとどうでしょう?
脈拍104bpm、血圧69/56mmHg、体温34.8度、呼吸数21回
やはり、頭蓋内疾患でよいでしょうか? 他に鑑別疾患を挙げられますか?
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この症例の診断は腹部大動脈瘤破裂でした。
けいれんは頭蓋内疾患で起こりますが、通常血圧が上昇しています。一方で、頭蓋内疾患以外では血圧が低下して、脳血流が低下した時にけいれんを起こすことがあります。
循環器内科医でもある編集長的は、STEMIのPCI中に徐脈や心室細動を起こして、カテ台の上でけいれんされて慌てる経験は何度もあります。この症例も、腹部大動脈瘤破裂で急激に血圧が低下した際にけいれんを起こしたと考えられます。
けいれんと聞くと、すぐに頭部CTやMRIを取りたくなる気持ちは良く分かりますが、バイタルを確認して、血圧が高くない場合には頭蓋内疾患以外の検索を忘れないようにしましょう。
ちなみにこの症例は、お隣の日赤から救急科ローテで来てくれているY先生が、おなかにエコーを当てて見つけてくれました。実に素晴らしいナイスプレーでした!
(編集長)
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基本的臨床能力評価試験2024
初期研修医の客観的な臨床能力の実力を知ることができる基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)というものがあります。日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)というNPOが行っている研修医向けのテストです。
毎年この時期に各病院で行われるのですが、昨日当院のマッチング研修医にも受けてもらいました。数年前からCBT方式になり研修医室の自分の机で受験してもらうので、あまりテストという雰囲気ではないのですが、さすがに真剣に臨んでいました。
試験の内容は、基本的臨床能力と言っても幅広い分野から出題され、総合診療をやっている病院には有利な印象を受けましたが、毎日の臨床で経験したことをこまめに振り返っておけば、そこそこできる問題と思います。英文の問題もボリュームがあって、早く終わる人はおらず、全員が試験時間が終わるまで取り組んでいました。
編集長も経験がありますが、初期研修中はホントに自分は実力がついているのか?と不安になることがあります。自分の実力を知る方法としては、他の研修病院に行った同期の研修医と会話するとか、合同セミナーのような時のちょっとした発言などから、「スゲーやつかも」とか、「自分の方が結構できてるかも」と勝手に判断するくらいしかありませんでした。でも、このテストを受ければ自分の実力が全国でどのあたりなのかが分かるので、とても良い機会だと思っています。
近年では多くの研修病院で受験するようになっていますが、当院の偏差値はずっと50以上をキープしているので編集長的には安心しています。さて、今年の結果はどうでしょうか?
(編集長)
テスト中の一コマ
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「先生、酸素始めなくていいですか?」
あなたがER当直をしている時でした。ようやくERの患者が途切れた夜中に病棟からあなたのPHSにコールが来ました。
「先生、肺炎と心不全で入院中の87歳の○○さんですが、SpO2が80台に下がっています。酸素始めなくていいですか?」と言われました。
確か、この患者さんは先週入院して、今はだいぶ改善していたはず。そろそろ退院について家族に話をしていた患者さんです。調子がよかったはずなのに・・・
さて、何が起こったのでしょう? そして何を確認すればいいのか? ちょっと考えてみて下さい。
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編集長なら、まず看護さんにこう尋ねます。
「SpO2下がっているけど、本人の様子はスヤスヤ寝ていますか?」
苦しそうなら、まず心不全の悪化を考えて、すぐに病棟に向かい、本人の呼吸状態やバイタルを確認します。必要なら夜中でも胸部レントゲンや血ガスをチェックします。
でも、スヤスヤと寝ていたら何を考えればいいでしょう?
ここで編集長が真っ先に考えたのはチェーンストークス(Cheyne-Stokes)呼吸です。
チェーンストークス呼吸とは呼吸が段々と深くなり、また段々と浅くなり、最後には無呼吸になる。そしてまた浅い呼吸が始まり段々と深くなる、という周期を繰り返す呼吸です。
1周期はだいたい1~2分くらいで、繰り返すため「交代性無呼吸」とも呼ばれています。睡眠時など覚醒レベルが低下している時に出現し、脳梗塞後や心不全、肺炎の時などによく見られます。
冒頭の患者さんは、高齢で心不全の方ですからチェーンストークス呼吸があってもおかしくありません。無呼吸や呼吸が浅い時にSpO2を測れば、当然低下しています。
対応の基本は原疾患の治療なので、この場合
「スヤスヤ眠っている」=「心不全の悪化は来していない」
と考えて、そのまま経過観察でOKです。
ところで、看護師さんに「・・・・しなくてイイですか?」と言われると、何かしないとマズい気になってしまいますよね。
なのでつい、あまり根拠もないのに「じゃ、お願いします」と言ってしまいがちです。もちろん編集長も何度もやったことがありますが、看護師さん達に分かってもらえるように説明して、必要のないことは「必要がない」と言えるようにするとイイですね。
(編集長)
ベッドサイドで診察中
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「先生!レート走ってます」と言われた時は
あなたのところに病棟から「先生!レート走ってます。どうしますか?」とコールが来ました。行ってみるとモニターはこんな波形。
↓
これは頻脈性心房細動のモニター波形です。たとえ循環器疾患で入院していなくとも、発作性心房細動の既往があったり、既往がなくとも
状態が悪い時は、よくこんな状況に遭遇します。
こんな時どうしたら良いのでしょう?あなたは準備が出来ていますか?
まず最初にすべきことは・・・・、
・バイタルの確認と
・患者さんの様子を見に行く
この2つです。
頻脈でも患者さんはケロッとしていることもあれば、苦しそうにしていることもあります。必ず見に行くことが大事です。血圧が下がっているとか、具合が悪そうなら、急いで対応しなければいけないのは当然ですが、血圧もOKで元気そうなら慌てないで対応を考えます。
では、その次はどうしましょう?
少し慣れてきたあなたは「ベラパミル(ワソラン®)」とか、「ランジオロール(コアベータ®、オノアクト®」など、指導医が使っていたのを見ていたかもしれません。でも、これは編集長的にはNGです。状況によっては危険だからです。
次にやるべきことは・・・・、
「なぜレートが速くなったのか?なぜ心房細動になったのか?その原因を考えること」です。
*心房細動は一般的に頻脈になるので、ここからは頻脈性心房細動のことを心房細動と書くことにします。
心房細動になる原因には、たとえば
・心不全
・発熱
・低酸素
・貧血
・甲状腺
・疼痛
・脱水
・薬剤(β刺激薬など)
など、いろいろあります。
今まで大丈夫だった患者さんが急に心房細動になったのですから、何かしら原因はないか?と考えましょう。
心不全が悪化しているのにβ遮断薬を静注しては、かえってヤバいことになります。
肺炎が悪化して低酸素が原因になっているのなら、NPPVや挿管を先にしないと、薬剤だけでは良くなりません。
脱水が原因で心房細動になってしまうことは、特に高齢者でしばしば経験します。こんな状況でワソランの静注をしてしまうと、びっくりするほど血圧が下がることがあります。(編集長は研修医時代に経験済みです)
もちろん、心房細動でも早い段階で電気的除細動をしなければいけないこともあり得ますが、そんなに多い状況ではありません。
繰り返しますが、心房細動などの頻脈を見たらすぐにレート下げる薬剤を使おうとせず、まずはその原因を考えてみましょう。
(編集長)
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エコーガイド穿刺の注意点
CVやPICC、透析用のカテーテルなどを挿入する時に、あなたもエコーガイドで穿刺していると思います。今はエコーガイドが当たり前で、エコーガイドでやれば安全という風潮ですが、エコーガイド穿刺にも大事な注意点があるのを知っていますか?
実はエコーガイド穿刺でも、重大な合併症を生じた事案が多く報告されており、昨年も日本医療安全調査機構というところから、再発防止のための提言も出ています。
中心静脈カテーテル挿入・抜去に係る 死亡事例の分析 ― 第 2 報(改訂版)―
もちろんエコーガイド穿刺は有用な手法ですから、あなたも習得しておかないといけません。同時にこの注意点についてもよく理解して、トレーニングしておく必要があります。
エコーガイド穿刺の最大の落とし穴は、「エコーで見えているところよりも、針は先に進んでいることが多い」ことです。
どういうことかというと、下の図のようにエコーの断面に真の針先が入っていないと誤って認識してしまうのです。
これはエコーを実際に持って、真の針先をしっかり同定できるように繰り返し練習する必要があります。消化器内科の先生方は、エコーガイド穿刺が上手な人が多いですから、よくその手元を見て真似してみてください。
(編集長)
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国家試験までの過ごし方
年が明けて、国家試験まで1か月を切りました。受験するあなたも、トップギアに入っていると思います。今のところ例年に比べれば寒さはそれほど厳しくありませんが、体調管理に気を付けて過ごしてください。
また、能登半島地震で直接被災された方も、直接被災されていなくとも、ご家族や親せき、友人や知人などが被災されている方もいると思います。心配だとは思いますが、あなたが国試に合格して、1日でも早く災害時にも活躍できるようになることは、大きなインパクトがあることだと思います。ぜひ頑張ってください。
さて、今回は昨年紹介した記事の再掲になります。新潟大のローテで当院に来てくれていた新潟県産もやし先生が、国試前のあなたにアドバイスをくれた記事です。
もやし先生は新潟でも活躍してくれているようで、4月からは呼吸器・感染症内科に進むそうです。当院での総合内科研修が楽しくて、それが進路を決める際の決め手になったとのこと。嬉しいですねえ。
(編集長)
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受験生のみなさんへ。
国試まで一ヶ月を切り、不安と焦りでいっぱいになっているかもしれません。
国試を受けてまだ一年たってない私から、昨年の経験を踏まえ少しでもアドバイスできればと思い、この記事を記載しました。参考程度に読んでいただければと思います。
① あれもこれも手を出さない
各予備校から様々な直前講座が開設され、まわりの友達がやっていると、自分もやらなければいけないのかという気持ちになりますが、惑わされてはいけません。自分がこれまでやってきた勉強を繰り返す方が良いです。自分の場合は回数別5年分を解き直したり、まとめノートを見返したりしていました。直前講座ひとつもやらなくても合格すると思いますが、お守り的な感じで一つくらいは受けてもいいかもしれません。以下にそれぞれの特徴を簡単にまとめます(主観的です)
・究極マップ:広く浅く、抜けがないかの確認ができる
・直前アシスト:要点を絞っているが、近年的中している問題もある。
・サマライズ、ラスメ:量が多くて大変ですが、メックユーザーにはいいかもしれません。
② 最後の模試で落ち込まない
テコ4を受験した方は、おそらく偏差値が下がって、もしかしたら落ち込んでいるかもしれませんが気にしなくていいです。今年のテコ4は難易度が高かったようですし、国試前、最後の模試ということで、受験生が気合を入れて受験するので平均点が上がり、自分の偏差値が下がるのは当然です。結果は気にせず、間違えた問題だけを復習し、そのまま国試に出ればいいなーくらいの感覚がいいと思います。
③ 国試前日にやることを決めておく
国試前日は緊張で勉強に集中できませんし、あれもこれもやりたいと思ってしまいますが、ホテルまでの移動などを考えると自分のやろうと思っていたことはほとんどできません。この時期から予めやることを考えておき、それだけをやるようにしましょう。私は、公衆衛生の復習とコクタマの確認だけやりました。コクタマは近年ぜんぜん的中していませんが、多くの受験生が登録しているので、一応目を通しておくといいと思います。ちなみに国試前日の夜はなかなか眠れないそうです。(私は寝れましたが)一睡もせずに国試に臨み合格してる人もいるので、寝れなくても大丈夫です。あと検温検査を不安に思う人もいると思いますが想像以上にざるシステムなので心配しなくていいです。
国試に合格し、4月から水戸済生会病院で働いている自分の姿を想像し、気分をあげて日々過ごしてください。みなさんが合格できるよう心より願っております。
(新潟県産もやし)
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特発性気腹症
今回も修学生の集いで発表した内容からのシェアです。ネギトロ先生は外科研修中に経験した症例を発表しましたが、その内容をもとにブログ記事まで書いてくれました♪ 役に立つ内容ですので、ぜひ読んでみてください。
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救急外来で急性腹症の方が来院したとき、鑑別すべき疾患はさまざまですが、単純X線やCTで腹腔内遊離ガス(free air)をみたときにはまず消化管穿孔を第一に考えると思います。
腹腔内には通常空気は存在しないため、
腹腔内にairがある=腸管に穴が開いて腸管内容物が腹腔内に流出している
と考えられるわけです。
消化管穿孔とひとくちに言っても穿孔部位によって対応は異なり、上部消化管穿孔の場合には絶食・補液、胃管挿入、PPI投与で保存的に加療されることが多いです。一方で、下部消化管穿孔の場合には、汎発性腹膜炎をきたすため、基本的には緊急で手術の方針となります。
ですが、外科をローテーション中に部消化管穿孔が疑われたにもかかわらず、穿孔部位が同定できなかった症例を経験したので、それに関して調べたことについてご紹介したいと思います。
原因の同定できない腹腔内遊離ガス像のことを「特発性気腹症」と呼びます。
その原因は、ガスの流入経路から大きく5つに分類されます。(Gantt CB Jr et al: Am J Surg 1977; 134: 411-414)
- 胸腔内(気胸、縦隔気腫、閉塞性換気障害、肺炎、胸部外傷など)
- 腹腔内(空腸憩室症、呑気症など)
- 産婦人科的疾患(急性卵巣炎、卵管脱出、分娩後の運動など)
- 医原性(卵管通気法、開腹術、腹膜透析など)
- その他
特に、消化管由来の腹腔内遊離ガスの原因としては、
・腸管内圧の上昇に伴いガスのみが流出するような粘膜の脆弱性の存在
・ガスのみが流出するような微小穿孔の存在
などが考えられています。
特発性気腹症に関してはしばしば保存的治療を選択することもあり、その条件としては
① 腹膜刺激症状がない
② 意思疎通が良好で腹部症状の経時的変化を評価できる
③ 炎症反応が軽度
④ CTで腹膜炎、腹水等の所見、その他器質的疾患を認めない
などが考えられています(国友ら: 日腹部救急医会誌 2018; 38: 1163-1165)。
また、特発性気腹症と考えられた症例でも、腹痛があること、炎症反応が高いこと、腹水が存在していることなどが手術の選択に関与しているといった報告もあります(佐藤ら:日臨外会誌 2013; 74: 346-351)。
つまり、検査所見も重要ですが、身体所見を正確にとることが手術を選択するかどうかにおいて非常に重要ということです。緊急性を要する場面でも適切に必要な身体所見をとれるようにしていきましょう。
(ねぎとろ)
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なぜ3週間もかかったのか?
元旦と2日と年が明けて立て続けに心痛む災害や事故が発生しています。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。1日でも早くもとの生活に戻れるようお祈りいたします。
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さて、先月開催された茨城県の修学生の集いで、当院のJ2が優秀賞を3名もいただきましたが、その発表からのシェアです。今回は内田先生の発表から。内田先生は地域研修として常陸大宮済生会病院で2か月間の研修を行った際に経験した症例からでした。
症例は70歳台の直腸がん患者。遠隔転移はないのですが、手術をすればストマ造設となる症例でした。診断もついて手術のはずが、実際に手術が行われたのは、入院してから3週間後でした。
なぜ3週間もかかったのでしょう?
実はこの患者さんは、障害者福祉施設に入所していました。手術後にストマを造設すると、術後のストマ管理は入所していた障害者福祉施設では対応できないため、新たな療養先は介護施設に移る必要がありました。
ご家族の居住地も施設から離れていたため、この患者さんの手術までに下記の手続きが必要だったそうです。
・障害者福祉施設の退所手続き
・住所変更 (現在の自治体からの転出続き+世話をするご家族の自治体への転入手続き)
・介護保険の申請、医療保険の手続き
・ストマ助成の手続き
ここで介護と福祉の違いをあなたは言えるでしょうか?(編集長も良く分かっていませんでした)
介護とは、日常生活を送るうえで歩行・排泄・食事・入浴など必要な便宜を供与すること。つまり、その人に「直接」働きかけること
社会福祉とは、社会生活を送るうえで児童、母子、心身障害者、高齢者などに公的な支援を行うことで、社会的制度や環境を整えることを意味するそうです。
単に「直腸がんだし、ストマ造設は仕方ないね」と思わずに、退院後の生活をイメージして患者さんの抱える課題を理解し、MSWなどの専門家と一緒に行動することはとても大事です。症例を通して、このような地域・社会資源の「課題」=「ニーズ」に気づいた内田先生は素晴らしいですね。あなたも、このような視点を意識できる医師になって欲しいと思います。
(編集長)
表彰式での内田先生
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新年のご挨拶
昨日発生した能登半島での大地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
被害の全貌はまだまだ分かっていない段階ですが、東日本大震災を経験した編集長としては、地震と津波で大変なことになっているのはリアルに想像できるので心が痛みます。当院としても、編集長個人としても、できることをやっていきたいと考えています。
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ブログ読者のみなさま
新年明けましておめでとうございます。本年もこのブログをどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年最初のブログでは、キャリアなどの将来計画に関するネタを紹介してきました(ちなみに昨年はキャリアのVSOP論でした)。
キャリアに関して紹介してきたポイントは2つあって、一つ目は自分が40~50歳になった時に、どこで、どんな仕事をしているかをイメージしてみる、つまり「到達目標の設定の必要性」。もう一つは、臨床のスキルを身に付けるだけでなく、医学以外のことにも関心をもって大きな変化に対応できるようになる、つまり「変化することを怖がらずに行動する」ことでした。
さて、今年はここからです。上記のことを意識して、あなたも目標を考えてみて欲しいのですが、その考えた目標を実行に移す方法について紹介します。
まず、考えた目標をノートに書いてみましょう。もちろんノートでなくとも手帳でもOKです。できればキーボードで入力よりも、自分で手書きで書くのがイイと思います。これは頭で考えただけでなく、文字に起こすことで、より目標が明確になり、あなたの意識に残りやすくなるからです。
そして大事なことは、実行することです。このコツは、最初の小さい一歩を決めること。Small stepとかBaby stepとも言いますが、目標をプロセスに分解して具体的なアクションをイメージしていくことが大事で、その最初の一歩は絶対にできることにしましょう。昨年よく取り上げられていた大谷選手の目標達成シートみたいな感じです。
大谷選手の目標達成シート
元プロアイスホッケー選手のウェイン・グレツキーの有名な言葉で
打たないシュートは100%外れる
というのがあります。あれこれ考えてばかり、コメンテーターみたなことばかり言わないで、ぜひ行動してみる。今年はあなたが実行する年になってください。
そして今年もこのブログでは、当院の魅力とや研修医たちの活躍や成長を発信していきたいと考えていますので、ぜひご期待ください。
改めまして、本年もよろしくお願い申し上げます。
(編集長)
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