臨床研修ブログ
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水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
糖尿病のお薬・・・ビグアナイド
糖尿病薬については、細かくなくて良いので主な作用機序と禁忌や有名な副作用、そして適した症例や避けた方がいい症例という感じにイメージを掴んで覚えるのが効率的だと思います。
今回は、インスリン分泌非促進系薬剤の代表格であるビグアナイドについてまとめてみます。
【機序】
・肝臓での糖新生抑制
・他に消化管からの糖吸収抑制
・末梢組織でのインスリン感受性改善など
【特徴】
・体重が増加しにくい
・心血管イベントを低下させる
・安い
【禁忌】
・肝硬変・肝不全
・腎機能低下例では注意、特にeGFR<30では禁忌
造影CTなどのヨード造影剤を使用する際は休薬することは良く知っていると思いますが、造影剤に限らず、脱水やショック、心筋梗塞、重症感染症など、eGFRが急激に低下する可能性のある病態では中止しましょう。
【副作用】
・乳酸アシドーシスが有名
・臨床的には、消化器症状(軟便、下痢、心窩部不快感など)
・ビタミンB12の吸収阻害による大球性貧血を来すことがある
以上のことから、ビグアナイドが向くのは、心血管イベントリスクが高そうな、比較的若めの肥満のある2型糖尿病が良いでしょう。こういった患者さんは腎機能も肝機能も問題ないことが多いです。逆に、痩せている高齢で腎機能がちょっと低下気味の人には避けた方がいいでしょう。
用量は1日500㎎~2250㎎を2~3回に分けて服用となっていますが、お昼の服用は忘れる人が多いので編集長は朝と夕の2回で処方しています。効く人は500㎎程度でもA1cが低下してきますが、1000㎎まで増やしてから他の薬剤追加を検討しています。
(編集長)

インスリン勉強会での一コマ
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糖尿病のお薬・・・・内服薬の分類
どの診療科に行っても糖尿病の患者さんがいます。当然、手術や検査の時に食事を止める場合は糖尿病薬を中止したり、減量したりする必要があります。また高齢者では、今までずっと服用していた糖尿病薬だとしても、入院を契機に減量や中止など、処方を見直す必要が出てくる場面にも良く遭遇します。
ですので、糖尿病が苦手と思っているあなたでも糖尿病薬について全く知らない訳には行きません。そんな時にあなたが知っておくべき最低限のクスリの知識を紹介していきます。
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糖尿病薬には内服薬が9種類、インスリンを含めて注射薬が2種類あります。多くて覚えにくいかもしれませんが、まずは大きく内服薬の分類を把握してみましょう。
内服薬には
【インスリン分泌非促進系】
・ビグアナイド薬
・チアゾリジリン薬
・αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)
・SGLT2阻害薬
【インスリン分泌促進系】
<血糖非依存性>
・スルホニル尿素薬(SU薬)
・速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
<血糖依存性>
・DPP4阻害薬
・GLP1受容体作動薬(内服薬、注射薬)
・イメグリミン
【インスリン製剤】
インスリン各種
インスリン+GLP1受容体作動薬の配合剤
それぞれの機序や副作用、禁忌などを把握して、1剤から開始するのが原則です。薬剤名と一般名を覚えるのはちょっと大変ですが、まずは院内に採用されているものを覚えていきましょう。
ここでは取り扱いませんが、現在は合剤も多く発売されており、錠数も少なくて服薬アドヒアランスが向上するなど、慣れてくるとメリットは大きいものがあります。慣れてきたらぜひ使ってみてください。
次回はビグアナイドについて紹介します。
(編集長)
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CPCを開催しました♪
先週のことですが、院内でCPCが開催されました。
前回のCPCは12月に臨時で朝に開催しましたが、通常は毎月開催されている水戸市医師会病棟検討会という地域の先生方にも参加いただく症例検討会の場を利用して年に数回開催しています。コロナの最中からZoomを用いて開催していますが、今回も同様にハイブリッドで行いました。
今回は2症例で、肝硬変患者の敗血症と急性心筋心膜炎疑いの症例でした。2症例とも来院されてから亡くなるまでの時間経過が早く、診断も死因もすっきりしない点がある症例でした。

結論を言うと、肝硬変症例では肝硬変の原因はNASHを疑っていましたが、病理学的にはそれを裏付ける所見はありませんでした。ただ、肝硬変もかなり進んでしまうと、特徴的な所見も分からなくなるそうですので、臨床的にNASHと診断しました。
もう一例は、心室頻拍や心室細動を繰り返した症例でしたが、病理学的には心筋炎や心膜炎の所見は無く、急性心筋梗塞という診断でした。冠動脈造影所見と合致しない点もあり、モヤモヤが残りましたが、臨床経過と良く突き合わせる必要があることを改めて認識しました。
いくら画像診断が進んだとはいえ、剖検や病理と臨床経過を突き合わせると新たな発見があります。当院では剖検の際に研修医にも助手として参加してもらいますが、たとえ直接の担当患者でなくとも剖検に参加することで学びがあり、また、似たような状況に遭遇した時次はどう対応すべきかをじっくり考えるきっかけとなります。そういった点で、剖検やCPCは非常に貴重な学びの場になっています。
(編集長)

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患者さんはホントのことを言わない
研修医外来で少し前にあったエピソードからです。
70才台の女性が受診しました。主訴は右肩の疼痛。でも、右上肢の可動制限や筋症状、神経症状も無く、すでに整形外科を受診して治療も開始されていました。
研修医が一通り話を聞き終えてから、隣で外来をやっている指導医のところに相談に来ました。
「特に問題なさそうで、整形外科でも痛み止めを処方されています」
「何もすることもないと思うんですけど・・・、どうやって帰したらいいでしょう?」
確かに肩の痛みは問題なさそうです。でも、こんな時あなたならどうしますか?考えてみてください。
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この時、指導医は「何かほかに受診した理由があるはずだから、もっと家庭の状況とか、最近の状況とかを聞き出してごらん」とアドバイスしました。
研修医がもう一度話を聞き出したところ・・・・、
・患者さんの知人が最近ガンで亡くなった。
・その知人が元気な時に、「肩が痛い」と言っていたので、自分も心配になってしまった。
・整形外科では痛み止めで治ると言われたけど、今のところあまり変わりない。
・もしかしたら内臓の病気?ガンかもしれないと思って内科を受診した。
ということが分かりました。
ここで大事なことは、「患者さんの言葉を(そのまま)信じてはいけない」ということです。
どういう事かと言うと、患者さんからすれば病院を受診するのは、なんだかんだ言ってもハードルが高いものです。ドクターや看護師に「そんなことで受診するなんて」と言われたらどうしようと、ちょっとビクビクしながら受診しているのです。ですから、初めからホントのことを言ってくれません。何となくもっともらしい「建前」の理由を話すのです。
患者さんが話していることは基本的に建て前。
患者さんは(最初から)ホントのことを言わない。
患者さんの言葉を(そのまま)信じてはいけない。
このことをよく理解すると、あなたは患者さんから格段に良い情報(本音)を聞き出せるようになります。そして、その本音の部分を理解して、不安や疑問を解決してあげることが大事です。ぜひこれから患者さんの話を聞く時は、これを意識してみてください。
(編集長)

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心不全患者でおさえるべきポイント3(誘因への介入)
前回までは心不全患者さんの問診や指導医へのプレゼンの際に押さえるべき2つのポイントのうち「基礎疾患」と「誘因」について紹介しました。
「基礎疾患」を押さえることで治療の方針がある程度決まることはご紹介しました。では、なぜ「誘因」を押さえることが重要なのでしょうか?
前回も少し触れましたが、今回はこの点を詳しく紹介したいと思います。
下の図は、心不全の経過についてです。ガイドラインに載っているものですが、あなたもいろいろなところで目にしているかもしれません。

(ガイドラインより 心不全とそのリスクの進展ステージ)
心不全は増悪・寛解を繰り返しながら、どんどん悪くなる症候群です。その心不全の重要な治療目標の一つに「心不全での入院を回避する」ことがあります。
心不全の治療では、利尿剤を静注すればサッと良くなって、すぐに退院できる人がいるのも事実ですが、よくなるから大丈夫という考えは間違いです。入院を繰り返す患者さんの予後は極めて不良なので、なんとか入院を回避したい。基礎疾患に介入できるものもありますが、例えば弁膜症だけど高齢で手術できない、冠動脈疾患だけどPCIもCABGもこれ以上できない、など実際には基礎疾患に介入できないことが多くあります。そうなると「誘因」に対して介入する必要があります。
具体的には、
・感染を契機に悪化した人には予防注射(コロナやインフルエンザや肺炎球菌)を勧めます。
・内服を自己中断して悪化した人には、内服するタイミングを変更する、薬剤の錠数が多くて嫌だという人には合剤などを組み合わせて錠数を減らすなど工夫してみます。薬剤師さんとの連携が重要になります。
・食事への介入は現実的には一番難しいのですが、週に何回かでも宅配のお弁当(減塩メニュー―があります)を利用したり、栄養指導を繰り返してみます。訪問看護師やデイサービス等の介護職にも声掛けをしてもらうことも有効です。
誘因を把握し、可能な部分に介入することで、心不全の入院を回避することはすごく重要です。
また、さまざまな誘因で心不全が悪化してくるということは、別の病気で入院していた患者さんに心不全が合併してくる、ということも当然あります。
あなたが循環器内科以外をローテーションしている時に、特に心疾患の既往がある人や高齢の患者さんを担当したら、入院中でも外来フォローであっても、「もしかしたら心不全を合併していないか?」と注意しておくことも大事です。
(編集長)
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心不全患者でおさえるべきポイント2(誘因はFailureで)
心不全患者さんを診る時に押さえるべき2つのポイントは「基礎疾患」と「誘因」ですが、今回は「誘因」についてです。
患者さんが心不全悪化で来院する時には、なにかしらの「誘因」が隠れているはずです。もちろん原疾患の進行(例えば大動脈弁狭窄症の進行)ということもありますが、なぜこの時期に悪化したのか? なぜこのタイミングなのか? と常に考えてみる必要があります。
どうして誘因をおさえることが重要なのかと言うと、基礎疾患の治療ができないことがあるため、心不全コントロールに誘因に介入する必要があるからです。
誘因の覚え方はFailureが有名です。
F:Fogot medicine
内服薬の中断・調節のことです。特に利尿薬の自己中断や自己調節は想像以上によくあることです。また医療機関でも熱中症対策と称して利尿剤が減量されていることもあります。β遮断薬が新たに追加された場合も誘因となることがありますが、循環器内科以外でβ遮断薬が処方されることはあまりないので、頻度は少ないかもしれません。
A:Anemia, Arrhythmia
貧血や発作性心房細動などの不整脈が心不全に誘因になることがあります。貧血は心不全だけでも進行してくることがありますが、消化管出血の有無は必ず確認が必要です。
I:Infection, Ischemia
感染と虚血は重要な誘因です。感染はこの時期に最も多いかもしれません。発熱→心臓の仕事量増加につながります。また急性冠症候群(ACS)などの虚血イベントの除外は、最初に行うべき最重要ポイントです。
L:Life style
生活習慣で心不全の誘因になるのは、労作や過労、寒冷、そして食事(塩分過多)が多いと思います。労作や過労は旅行に行った後やお葬式などがきっかけなることが多い印象があり、できるだけ具体的に質問しないと分からないことがありま。編集長のTipsとして、特にお葬式は時期によっては寒冷負荷も加わるので必ず聞くようにしています。
また、この時期は寒いところでの作業などや自宅の環境にも注意です。自宅でも居間でしか暖房を入れていないことがあり、台所や廊下、トイレは外と同じ気温ということもホントにあります。住宅環境を聞いておくのも大事です。
そして日本人は塩分好きですから、食事の影響は大きいです。塩分を控えるために味噌汁をやめた代わりに、うどんを食べていた(しかも汁まで飲んでいた)とか、ラーメンは良くないと言われ、そばを食べていたという笑えない話も実際にあります。
U:Up-regulator
甲状腺疾患や妊娠などが、いわゆる高拍出性心不全の誘因になります。
R:Rheumatic valve, Renal insufficiency
リウマチ性弁膜症の進行、そして腎不全の悪化で体液量の調節が甘くなって心不全に至ることがあります。腎不全の悪化の要因としてはNSAIDSなどの薬剤がないか聞き出すことも大事です(高齢者では腰痛や膝痛で痛み止めを処方されます)。
E:Embolism
肺塞栓なども心不全の誘因になるので、鑑別の中に入れておきましょう。
誘因については、1回の問診だけではわからないこともあります。でも、その後の患者さんや家族との会話の中にヒントが隠されていることがほとんどですから、注意してみてください。
(編集長)

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心不全患者でおさえるべきポイント1(基礎疾患)
このところ連日冷え込んでいる影響で、特に高齢者の心不全が毎日のように入院してきます。
もしかしたら、あなたも「心不全パンデミック」という言葉も聞いたことがあるかもしれませんが、今でも多い高齢者の心不全が今後はさらに激増すると予想されています。そうなると、循環器内科医だけでは到底対応できないので、たとえあなたが循環器に苦手意識があっても、ある程度は対応できないといけません。
そこで今回から心不全患者をみた時におさえておくべきポイントを紹介します。
心不全患者の問診や病歴でおさえるポイントは「基礎疾患」と「誘因」の2つです。
心不全の「基礎疾患」とは、例えば「陳旧性心筋梗塞」による心不全とか、「大動脈弁狭窄症」による心不全(心臓の構造的異常を伴う)、「甲状腺機能亢進症」による心不全(機能的異常による心不全)という感じです。
ここで話を少し戻してみますが、「心不全の定義は?」と研修医に質問すると、「EFが低下している」とか「胸水がある」とか、ハズレではありませんが正解とも言えません。
日本循環器学会の心不全ガイドラインが2021年版には心不全の定義は以下のようになっています。
「心不全」とは「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」
ここにはEFの値も書いていませんし、実際のところEFが低下していない心不全は6割以上とされています。そして症候群ということは、原因がいろいろあるということですので、基礎疾患を明らかにしておく必要があります。そして、基礎疾患が分かれば治療方針もある程度決まってきます。
具体的には・・・、
陳旧性心筋梗塞なら、新たな虚血が関与していないか?関与しているとすれば、その虚血を解除するために、冠動脈造影やPCIを考慮します。
弁膜症なら、内科的治療には限界があるので、手術適応がないのかを検討。
甲状腺機能亢進症なら、甲状腺に対する治療の効果が出るまでの間は内科的治療でねばる。
といった具合です。
あなたも患者さんから話を聞く時や、カルテから情報を探す時は、心不全の基礎疾患が何なのかに注意を払ってみてください。
次回は「誘因」について紹介します。
(編集長)

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入院することのデメリット
80歳台の男性が外来にやって来ました。主訴は両下肢の浮腫と労作時息切れです。診察室にはご家族と一緒に、杖を使いながらも、自分の足で歩いて入って来ました。
聞けば、1か月前から浮腫に気づいていたけど徐々に増悪。それに合わせて息切れも出現。最近は就寝中に咳も出るようになってきたと。食欲はあって、屋内ADLは自立していますが、家族の
話では、診断はされていないものの、認知症の症状もありそうす。
高血圧のため長年かかりつけで降圧剤を処方されていて、腎臓が悪くなってきたとかかりつけ医に言われているようでした。
心電図は心房細動、胸部レントゲンでは両側に胸水と軽度の肺うっ血を認めました。寒いこの時期によく遭遇する高齢者の心不全症例です。
では、あなたが外来で診察していたとしたら、この患者さんを入院して治療しますか?
心不全が悪化したらやばいので、入院して利尿剤の静注とか点滴をしたくなるかもしれません。でも、ここで考える必要があるポイントは、「入院することのメリットとデメリット」です。
入院することのメリットは何でしょうか?
速やかの症状改善が得られる、不整脈を監視できる、悪くなった時に挿管などすぐに対応できる、といったことでしょうか。
では入院することのデメリットは?
せん妄の出現とかADLの低下、入院期間の延長などです。特に高齢者ではせん妄により認知機能が損なわれ、結果的に死亡率が上昇することが分かっています。
家族は「入院させてもらえれば安心」と良く口にするのですが、高齢者ほど入院が危ないということを繰り返し伝えていく努力が必要です。
編集長であれば心不全患者でも、①食事がとれている、②ある程度動ける(自宅のトイレに行ける)、③家族の協力がある(家族が通院に付き添える、独居ではない)、という3つの条件を満たしていれば外来でのコントロールを行います。
その際には入院することのデメリットをお伝えしつつ、外来加療が困難(つまり、食事がとれない、自宅のトイレにも行けないくらい症状が悪い、家族の協力が得られない)のときは入院に切り替える旨も説明して、外来加療としています。
高齢の患者さんほど、入院してからのADL低下やせん妄は急速に進みます。我々は日常臨床で良く遭遇するので驚きませんが、ご家族はびっくりしてしまいます。特に高齢の患者さんであれば、最初の診察の時から、入院させることのデメリットについてもご家族に良く伝えておくことが重要です。
(編集長)

ベッドサイドでPICC挿入の準備中
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ショックの分類・・・・閉塞性ショック
前回は分布性ショックについて紹介しました。今回はショックの分類の最後となる閉塞性ショックです。
閉塞性ショック(Obstructive shock)の代表格は肺血栓塞栓症(PTE)です。PTEでは体液量は減っていないのですが、肺動脈が閉塞してしまうことで左房、左室への還流が低下して、心拍出量が維持できない状態です。
他には緊張性気胸(血胸)や心タンポナーデ、挿管中のPEEPのかけすぎや外傷によるACS(Abdominal compartmentsyndrome)も閉塞性ショックに該当します。
循環動態のパラメーターは、収縮能はよいのですが、左室への還流が低下するので心拍出量(CO)と肺動脈楔入圧(PCWP)は低下します。でも、肺動脈圧(PA)、右室圧(RVP)、右房圧(RAP)、肺血管抵抗(PVR)は全て上昇します。PVRの明らかな上昇が特徴的です。
そして末梢血管抵抗(SVR)変わらないか、循環不全の影響で上昇し、末梢への酸素供給も悪化するのでSvO2は低下します。
表にすると下のようになります。
治療は、体液量は変わりませんが、左室への還流が低下しているので輸液をします。そして原因の除去です。
たとえばショックをともなうPTEならば血栓溶解療法や補助循環(PCPS)を行います。緊張性気胸なら胸腔ドレナージ。とにかく原因の除去が出来るものであれば、速やかに対応する必要があります。
ここまでショックの分類に関して紹介してきました。当たり前ですが、ショックといっても原因によって対応が変わります。どのタイプのショックなのか?今は何をすべきなのか?を考えながら行動してみてください。
(編集長)
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ショックの分類・・・・分布性ショック
今回は分布性ショックです。
分布性ショック(Distributive shock)の代表格は敗血症性ショックです。体液量は減っていないのですが、末梢血管が思い切り拡張してしまい、心臓まで静脈還流できなくなってしまった
状態です。末梢が温かいのでWarm shockともいいますね。
循環動態のパラメーターは、収縮能はよいので心拍出量(CO)は変わらないか上昇します。でも、静脈還流が減っているので、肺動脈楔入圧(PCWP)、肺動脈圧(PA)、右室圧(RVP)、右房圧(RAP)は正常から低下します。
そして末梢血管が拡張しているため末梢血管抵抗(SVR)の低下が特徴です。末梢への酸素供給は悪くないので混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は変わらないか上昇します。
表にすると下のようになります。
治療は、体液量は変わりませんが、分布が偏って静脈還流が得られない状態のため輸液をします。そして末梢血管を収縮させるようにカテコラミン(ノルアドレナリン)を使用します。もちろん敗血症性ショックなら抗菌薬や感染巣のドレナージも忘れてはいけません。
このタイプのショックには、他にアナフィラキシーショックや神経原性ショック(Neurogenic shock)があります。アナフィラキシーショックの治療は、とにかくアドレナリン(ボスミン®、エピペン®)の筋注ですね。
神経原性ショックは脳損傷や上位胸椎より高位の脊髄損傷によるショックで、自律神経系失調によって引きおこされる末梢血管弛緩が原因です。症状としては血圧低下なのに徐脈で末梢は温かいのですが、基本的に外傷にともなうショックなので、出血を否定することが前提です。
この神経原性ショックとよく混同されるのが脊髄ショック(Spinal shock)です。脊髄ショックは横断性の脊髄損傷にともなう神経症状のことで、傷害レベル以下の弛緩性麻痺,全感覚喪失,膀胱直腸障害からなります。混同しないようにしましょう。
(編集長)
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