臨床研修ブログ

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骨粗鬆症の治療薬(2)

2025.11.06
カテゴリー: カンファレンス 内科

J2のオバタリアンが書いてくれた骨粗鬆症の治療薬について、前回からの続きです。

 

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アレンドロネート、リセドロネート、ゾレドロン酸は骨吸収抑制薬のビスホスホネート(BP)製剤です。BP製剤は連日~年1回まで様々な使用方法がありますが、いちど吸収されたBP製剤が骨に沈着し有効性を発揮するため、特に理由がなければ内服回数が少ない薬剤で問題ないとされています。

 

というのも経口製剤は吸収率が非常に悪いため「早朝空腹時、コップ1杯の水道水180mlで噛まずに内服、内服後30分は臥位禁止、30分後以降に食事摂取」が必要なのです。正直言ってかなり面倒です。したがって内服が困難な場合は静注製剤がお勧めとなります。副作用には国試的にも有名な顎骨壊死のほか、急性期反応という投与後のインフルエンザ様症状、腎機能障害があります。

 

今回のガイドラインに追加されたゾレドロン酸は、椎体骨折発生を70%低下させたという報告があり、主なBP製剤4剤のなかで椎体骨折の骨折予防効果が最も強いとされています。年1回の投与で効果が持続することから頻回の受診が不要という利点もあります。

 

デノスマブは骨吸収を抑制する抗RANKL抗体薬で、骨密度上昇、骨折予防のいずれについても強力なエビデンスが存在します。骨粗鬆症に適応があるのはプラリア®で、6カ月に1回の皮下注なのでアドヒアランスという点でメリットが大きいです。ただし、やや高価です(約5万円/年、10割)。

 

デノスマブは休薬するとすぐに多発椎体骨折が引き起こされると報告されており、休薬時には必ずほかの骨粗鬆症治療薬による逐次療法(別の薬への切り替え)が必要となります。もし入院した患者さんに「半年に一回、骨粗鬆症の薬を皮膚に注射しています」とか言われたら、お薬手帳をさかのぼって確認した方がよさそうですね。

 

ロモソズマブ(イベニティ®)は「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」が適応となる抗スクレロスチン抗体薬です。アレンドロネートとの比較試験で、アレンドロネートよりも有意に骨折を抑制したと報告されています。注意点として1年以内の脳血管、心血管系の既往がある場合は投与を避けるとなっています。毎月の皮下注射が必要で、非常に高価であり(約60万円/年、10割)使用する際には患者背景なども考慮する必要がありそうです。

 

最後になりますが、どの製剤を使うにしても、骨粗鬆症治療薬はビタミンDが充足していることで効果を発揮します。そのためほとんどの症例で、活性型ビタミンD製剤(エディロール®、アルファロール®)が処方されますが、高齢、腎機能低下、脱水などで高Ca血症のリスクがあり適宜血中/尿中Caのモニタリングが必要です。

 

逆に、高齢者の食欲低下や倦怠感、多尿などがみられた場合、これらの薬剤による高Ca血症を考慮して内服薬の確認をすることが大切です(最近もエルデカルシトールによる食思不振、高Ca血症、急性腎前性腎不全をきたした症例がありました。エルデカルシトールを中止することで改善したそうです)。

 

かなり長くなってしまいましたが、ひとつだけ強調するとしたら「骨粗鬆症薬を使用している患者さんがいたら、Caに注意しましょう」です。

 

薬はいろいろありますが、いずれの場合もCa補充のため活性型ビタミンD製剤を併用していることがほとんどです。そのため副作用としての低Ca血症もあれば、活性型ビタミンD製剤による高Ca血症もありえます。

 

骨折予防はその人の健康寿命を大きく左右します。このブログを見て少しでも骨粗鬆症というものに関心を持っていただければ嬉しいです。

                               

(参考文献)

・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成員会,編.ライフサイエンス出版 2025.

・もう迷わない!骨粗鬆症診療 改訂第2版 竹内靖博,著.日本医事新報社 2025.

・シリーズGノート 骨粗鬆症の薬の使いかたと治療の続けかた 小川純人,編.羊土社 2023.

(オバタリアン)

これからPICC

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骨粗鬆症の治療薬(1)

2025.11.04
カテゴリー: カンファレンス 内科

冬の気配を感じ始める今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。研修医のオバタリアンです。編集長よりご指名いただいたので、今回は10年ぶりに改訂された「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」から、骨粗鬆症の治療薬についてのお話になります。

 

骨粗鬆症は一般の方々にも広く知られ、よく「骨がもろい」と表現されますが、以下のような明確な診断基準が存在します。

 

<原発性骨粗鬆症の診断基準>

(低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患、続発性骨粗鬆症の原因を認めないことが前提)

Ⅰ.脆弱性骨折あり

 1.椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり

 2.その他の脆弱性骨折あり、骨密度YAM80%未満

Ⅱ.脆弱性骨折なし

 骨密度がYAM70%以下またはー2.5SD以下

 

したがって、例えば骨密度を測っていなくても椎体骨折が一つでもあれば骨粗鬆症の診断となります。日々の診療の中でも高齢患者の既往に骨折歴をみることは決して少なくなく、お薬手帳には骨粗鬆症治療薬がしばしば登場します。今回はガイドラインにおいて推奨度が高く、今後も重要となりそうな薬物について簡単にまとめてみました。

 

改訂された2025ガイドラインでは、薬物の推奨は骨密度に対する効果と骨折抑制効果の2項目で評価されました。骨密度に関しては腰椎と大腿骨の両方に有効であれば「行うことを推奨する」、骨折抑制効果に関しては椎体、大腿骨近位部、非椎体の骨折すべてに有効であれば「行うことを推奨する」とされ、この2項目とも「推奨する」となっているのは、

 

・アレンドロネート(ボナロン®、フォサマック®)

・リセドロネート(アクトネル®、ベネット®)

・ゾレドロン酸(リクラスト®)←NEW!

・デノスマブ(プラリア®)

・ロモソズマブ(イベニティ®)←NEW! ☆骨密度上昇に対しては唯一「強く推奨」

 

の5種類でした。

 

ちなみに今回追加されたアバロパラチド(オスタバロ®)は、骨密度に対しては「推奨」となっていますが、骨折抑制については大腿骨近位部骨折に対する骨折抑制効果のエビデンスを認めなかったため「提案」となっています。

 

また、ロモソズマブは骨形成促進薬である副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド®、アバロパラチド®)同様に、適応は骨折の危険性が高い骨粗鬆症となっています。

次回に続きます。

(オバタリアン)

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高齢者の食欲低下には ”MEALS ON WHEELS”

2025.11.01
カテゴリー: カンファレンス 内科

誤嚥性肺炎で入院された患者さん。抗菌薬の治療で熱も下がって呼吸状態も良くなってきて、よし退院だと思っていたら、なんだかご飯を全然食べてくれなくて困り果ててしまったことはないでしょうか。

 

なにか介入できる原因はないか? 食欲低下や体重減少を鑑別する時に使えるゴロを紹介します!

 

それが、MEALS ON WHEELS(車輪の上に乗った食事、いわゆる配食サービスの意味)

 

M: Medication 薬剤

E: Emotional  特にうつ病

A: Alcoholism, Abuse, Anorexia アルコール依存、拒食症

L: Late life paranoia 老年期妄想

S: Swallowing problems 嚥下障害
O: Oral Problems  義歯が合っていない、虫歯、口内炎

N: Nosocomial infections, No money  院内感染、金欠
W: Wandering 認知症など行動異常

H: Hypothyroidism, Hyperglycemia 甲状腺機能低下症、高血糖

E: Enteral problems: 吸収障害など

E: Eating problems 自分で食べられない

L: Low salt, Low cholesterol カロリー不足など

S: Stones, Shopping problems, Social Problems, isolation 買物、社会的問題、孤独

 

これで原因を鑑別してみてください!

 

ちなみに、薬で食欲増やしてください!と言われたら、なかなか厳しいですが、、、食欲増やすと言われている薬はこちら↓↓↓

・副腎皮質ステロイド
・抗精神病薬(オランザピンなど)
・ヒスタミン受容体(H1受容体)拮抗薬(ザイザル、アレロック、ペリアクチンなど)

 

よければ参考にしてみてください!

(E.T)

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