臨床研修ブログ

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アルドステロン症の見つけ方  その6

2018.01.09
カテゴリー: カンファレンス循環器

今回は副腎静脈サンプリング(AVS)について

紹介します。

 

AVSはアルドステロン症の局在診断に

必要な検査ですが、前提として手術を

考えている場合に施行します。

逆に、手術を考えていない場合や何らかの

理由で手術できない場合にはAVSをする

必要はありません。

 

AVSのことは知っていても、実際にAVSを

見たことがある人や、具体的にどうやる

のかを知っている人はほとんど見かけ

ませんので、細かいですが解説します。

 

当院ではほとんどの場合は外来検査

として行っています。

 

精度を上げるためにACTH負荷を行い、

検査時間は平均90分程度です。

このため、朝に来てもらい準備をして

10時ころから開始し、昼頃には検査終了。

1時間弱の安静で穿刺部出血がないかを

確認して昼過ぎに帰宅という流れです。

検査結果はその日にはでないので、

1週間後に外来で結果説明となります。

 

手技について具体的に説明すると

・右大腿静脈から5Frシースを挿入。

・左副腎静脈用カテーテルを進めて

 IVCでサンプリング

・次に左腎静脈に還流する左下横隔膜静脈

 にエンゲージ。

・さらにマイクロカテーテルを左副腎静脈に

 進めてサンプリング

・同じカテーテルのまま、右副腎静脈を

 探します。

・右副腎静脈を同定できても、カテーテル

 が安定しない時は右副腎静脈用カテーテル

 に交換してエンゲージさせます。

・マイクロカテーテルを右副腎静脈内に

 進めてサンプリング。

・左右のサンプリングを終えたら、点滴から

 コートロシン0.25μgを静注

・静注後20~30分の間に右副腎静脈、

 左副腎静脈から負荷後のサンプリングを

 行います。

・最後にIVCのサンプリングも行って終了。

 

右副腎静脈へのエンゲージが困難で、

せっかくエンゲージさせたカテーテルを

動かしたくない時は、もう1本右大腿静脈

からシースを挿入して、同時に2本の

カテーテルを入れてサンプリングを行う

こともあります。

 

AVSの最大の難所は右副腎静脈からの

サンプリングです。

 

右副腎静脈は非常に細い静脈で、

カテーテルがエンゲージしにくいし、

小児の採血のようにポタポタとゆっくりしか

血液が引けません。呼吸などでエンゲージ

が外れたりと、非常に気を使います。

そして上手くサンプリングできたか、

その場では分からないのです。

 

ちなみに当院では、今までに30例の

AVS施行例がありますが、平成18年から

平成23年末までの初期の20例だけを

見てみると、左副腎静脈のサンプリング

成功率は95%でしたが、右副腎静脈の

成功率はなんと40%しかありませんでした。

 

幸い、その後の連続10例については

右副腎静脈の成功率は90%まで改善

しています。

 

成功率が改善したのは、造影CTで右副腎静脈

を同定しておくことと、マイクロカテーテル

の使用ですが、造影CTもルーチンには

行っていません。きちんとサンプリング

できているかをコルチゾール迅速測定キット

で判定する手もあるのですが、

まだ利用したことはありません。

 

たぶん経験値が改善に一番寄与している

気がします。ちなみに失敗理由を探ると、

右副腎静脈をそもそも間違っていたことが

しばしばありました。

 

というのも、IVCにはあんまり腎静脈と

肝静脈以外はあんまり流入する枝が

ないようなイメージですが、じつは色々と

細かい枝が入っています。

写真のように、初期は右下肝静脈や肝小葉

から直接IVCに還流する短肝静脈を間違って

認識していました。もしこれから取り組む人

がいたら気を付けてください。

 

ハッキリ言ってAVSは見ていても、

全く面白くない検査です(笑)。

 

術者としても達成感がないのですが、

1週間後にきれいなデータが出ていると、

一人でガッツポーズをしています(笑)。

 

次回はAVSの結果判定についてです。

           (編集長)

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