臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
低ナトリウム血症の対処7
前回までで低Na血症の鑑別の進め方
そしてSIADHの診断、原因疾患、
治療についてまとめてきました。
今回は最初に提示した症例に
戻ってみましょう。
陳旧性心筋梗塞と心不全でずっと
外来でフォローしてきた70歳代の患者さん。
症状はないけど、いきなり低Na血症に
なってしまいました。
当初はフロセミドの影響を考えて中止
したものの低Na血症は改善せず、
SIADHの診断に至りました。
症状はなかったので、外来で飲水制限を
指示し、さらに塩分摂取を促しました。
しかし約2週間後に倦怠感とボーっとする
という主訴で外来を受診しました。
この時の血清Naはなんと102mmol/l。
有症状の著明な低Na血症のため即日
入院とし、高張食塩水の点滴を開始して
意識もクリアになりました。
しかし食塩換算で18g/日の塩分摂取を
してもNa128mmol/l前後で推移。
さらに下腿浮腫や胸水も見られるように
なったため、やむなくトルパプタンを追加
して、何とかNa130mmol/l前後の
コントロールが得られました。
同時に原因検索もあわせて進めました。
頭蓋内病変はありませんでした。
胸部CTでこんな所見が。
腫瘍マーカーはPro-GRPが298と高値で
気管支鏡で得た細胞診から小細胞癌と判明し
最終的に肺小細胞癌によるSIADHと
診断されました。
低Na血症は入院患者で最も遭遇する
頻度の高い電解質異常です。
スムーズに鑑別を進められるように、
低Na血症を見つけたら、自分で
やってみて下さい。
(編集長)
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