臨床研修ブログ
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全身性毛細血管漏出症候群(SCLS)【ケースで学ぶ初期対応】
こんにちは。ドタバタ研修医のテラメガネです。
前回の「入院患者がショックバイタルを示したとき、現場でどう対応するか?」の続きです。
前回はバイタルや所見からは敗血症性ショック+循環血液量減少性ショックが考えられるものの、Covid19以外で感染示唆する所見なく、輸液も十分にしているにもかかわらず、尿量が得られないという症例を紹介しました。ひとまず輸液と昇圧薬でバイタルは落ち着いたものの、ショックの鑑別を絞り切れないままICUへ転床したところ、某ICU長の先生がこんなことをおっしゃっていました。
「これSCLSじゃない?」
当時は何もわかりませんでしたが、調べるとそれっぽく、最終的にその診断となったのでSCLSについて紹介したいと思います
【全身性毛細血管漏出症候群(Systemic Capillary Leaking Syndrome ;SCLS)について】
SCLSは血管内皮バリア機能の一過性破綻を本態とし、血管内皮細胞間接着分子の機能障害や、患者血清中の可溶性因子による内皮透過性亢進が関与すると考えられている致死的疾患です。
古典的三徴は
①Hypotension(低血圧)
②Hemoconcentration(血液濃縮)
③Hypoalbuminemia(低Alb血症)
とされており、いずれも急速に進行します。
その一方で臨床症状は、発熱、倦怠感、筋肉痛と非特異的なため、よく敗血症性ショックや循環血症量減少性ショックと間違われるそうです。
SCLSは以下のような二相性の臨床経過を辿る疾患です。
漏出期:血漿が血管外へ大量に漏出
回復期:血管透過性が急速に正常化し、血管内に再分布
主な死因としては
漏出期→ショックによる多臓器不全
回復期→Refillingによる肺水腫→呼吸不全
この疾患は再発を繰り返し、因果関係は不明ですが80%程度の方でM蛋白陽性となります。
この疾患の本質は血管内皮細胞そのものの破壊や炎症ではなく、可逆的な血管透過性亢進です。つまり、血管炎とは違い、内皮細胞は保たれたまま細胞間結合が一過性に機能不全となっています。その結果、Alb含む血漿成分がすべて漏れる一方で赤血球など大きい物質は血管内に残ります。そのため、上記三徴や臨床経過を辿ります。
特にVE-cadherinの機能低下や、RhoA/Rac1経路を介した細胞骨格再編成が示唆されているようですが、特定の自己抗体は同定されておらず、病態は未だ完全には解明されていないそうです。
僕が経験した症例もSCLSを疑って、免疫グロブリンの投与を行ったところ、びっくりするくらい速やかに改善して、独歩退院できました。後日、M蛋白も検出されてSCLSと診断しましたが、初期対応から含めて、非常に印象に残る症例でした。
参考文献
Idiopathic systemic capillary leak syndrome (Clarkson disease)
Druey KM, Parikh SM.J Allergy Clin Immunol. 2017より引用)
(ドタバタ研修医のテラメガネ)
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