臨床研修ブログ

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感染性心内膜炎(IE)を疑う時

2022.09.22

こんにちは。研修医1年目のチャリンコです。研修が始まって半年たちますが、感染性心内膜炎(IE)や、その疑いがある患者さんは思っていた以上に多いなと感じたので、いつ疑わなくてはいけないのかや合併症について簡単にまとめてみました。

【感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)を疑うとき】
感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドラインには『IEとは、弁膜や心内膜、大血管内膜に疣贅を形成し、菌血症、血管塞栓、心障害などをおこす全身性敗血症性疾患である。』と書いてあります。これを読むだけで、IEはとても恐ろしい疾患であることが分かります。

 

IEの主な症状には発熱、心雑音、体重減少、Osler結節やJaneway病変などがありますが、患者さんの主訴は多彩です。不明熱のエピソードや塞栓症の症状を主訴に来院することも多く、疑っていないと見逃してしまう疾患として有名です。たとえば、腰痛を主訴に来院した患者さんで発熱があったため精査したところ、腰痛の原因は化膿性椎体炎で、背景にIEが隠れていたなんていうことがあります。

 

では、どんな時にIEを疑えばよいのでしょうか?それは原因不明の発熱や炎症が続いている時、血液培養でブドウ球菌やレンサ球菌などのグラム陽性球菌になった時、その他の菌でも血液培養が陽性になり続ける時です。こんな時は積極的にIEを疑う必要があります。

 

また、IEの診断をして治療を開始しても油断はできません。多彩なIEの合併症に注意して治療を進めていかなければなりません。

 

以下にIEの合併症を挙げます。
・心不全: 合併症の中で最も多い。感染による大動脈弁、僧帽弁の弁破壊でおきることが多い。
・塞栓症: 脳梗塞が最も多い。脾臓がそれに次ぐ。その他に化膿性椎体炎、敗血症性肺塞栓症など。
・中枢神経合併症: 脳梗塞が最も多い。その他にTIA、髄膜炎、脳膿瘍など。
・腎障害: 腎梗塞、腎膿瘍、腎炎、抗菌薬による腎障害など。

 

IEは合併症も多彩であり、特に中枢神経合併症に関しては、明らかな神経症状がなく、頭痛、めまいなどの非特異的な症状のみであっても、場合によってはIEによる合併症を疑ってMRIや造影CT撮影を行う必要があります。反対にIEが疑わしい患者さんで塞栓症や中枢神経の症状をみたら、もしかしたら背景にIEがあるかも!と考えなければなりません。

 

以上のようにIEは主訴や症状、合併症が多彩で見逃されやすい疾患ですが、疑わしい場合は常に鑑別に入れていれば、もしかしたら…と気づくことができ、早期診断ができるかもしれません。疑わしい時はIEを鑑別からもらさないよう注意したいですね!

(チャリンコ)

松永先生のレクチャー

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