臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
結節性紅斑 その1
肺炎で入院していた70歳台男性。
抗菌薬の治療も終了し、そろそろ退院
という状態でした。ところが、数日前から
両側下腿の痛みを訴えるようになりました。
診察すると、下腿前面にわずかに隆起した
圧痛を伴う紅斑を3か所ほど認めました。
皮膚科に診てもらうと、結節性紅斑
(Erythema Nodosum:EN)の診断でした。
感染に伴うものとの診断で、サワシリンを
1週間服用し、痛みもなくなりました。
このENですが、
皮下結節と圧痛を伴う境界不明瞭な紅斑を
特徴とする、炎症性の脂肪織炎です。
慢性炎症や悪性腫瘍、感染、薬剤などで
見られることは聞いたことがあるはず。
20~40歳代の女性に多く、典型的には
下腿前面か側面に生じますが、他の
部位に認めることもあります。
たぶん、サルコイドーシスとか悪性腫瘍との
関連があることは、あなたも国試的な知識
として知っていると思いますが、半数以上
(文献によっては55%程度)は特発性
なんだそうです。
逆に言うと、4割以上で基礎疾患が隠れて
いるので、原因検索が必要です。
例えば、感染に伴うものであれば、
A群β溶連菌や結核が有名ですが、
結核によるものは非常にまれになって
いるようです。
炎症性疾患ではサルコイドーシス、
潰瘍性大腸炎やクローン病といった
炎症性腸疾患、ベーチェット病、
スウィート病などで関連があります。
悪性腫瘍であれば、急性骨髄性白血病、
カルチノイド腫瘍、膵臓癌が関連する
そうです。
(編集長)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有する
スペシャリスト
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なんで、このタイミングなの?
あなたは、高齢の肺炎患者さんを
担当しています。
入院時は低酸素血症も認めて
いましたが、徐々に酸素も減らせて
昨日から終了できました。
食事も摂れていて、むせ込みも
ありません。WBCもCRPもだいぶ
改善してきました。
明日には抗菌薬も投与終了の予定
で、家族と退院の日程調整も
終えたばかりです。
ところが、夕方の申し送りの時間帯に
看護師さんから
「先生、○○〇さんが、38℃と熱発
していますよ。どうしますか?」
と言われました。
なんで、このタイミングなの?
と、がっかりする状況ですが、
こんな時、あなたはどう対応する
でしょう?考えてみてください。
↓
↓
↓
あなたが、
「ホントは明日で抗菌薬は終了予定
だったけど、そのままもう少し継続
しよう」と考えたのなら、
賢明な選択とは言えません。
発熱の原因は、肺炎なのでしょうか?
例えば、尿道カテーテルが入って
いて、尿路感染症かもしれません。
点滴刺入部のところが発赤して
いて、点滴ラインからの感染かも
してません。
もしかしたら、患者さんの膝が
発赤して、熱感を持っていて、
偽痛風の発作かもしれません。
つまり、他の感染巣を検索する
必要があるのです。
最低でも、患者さんを診察して、
血液培養をとって、新たな異常
所見がないか確認しましょう。
そして、こんな時に、熱源検索に
役立つのが、「8つのD」です。
・Device(デバイス)
・CD(CD腸炎)
・Pseudogout(偽痛風)
・DVT(深部静脈血栓症)
・Drug(薬剤)
・Decuvitus(褥瘡)
・Debris(絶食による無石性胆泥)
・Deep abscess(深在性膿瘍)
以前に、徳田先生カンファレンスで
7Dと教わりましたが、
当院では最後のDeep abscessを
加えて、「8つのD」で覚えるように
しています。
もう少しで治療が終わる、とか
退院目前、といった患者さんの
発熱を見たら、「8つのD」を
思い浮かべながら診察を
していきましょう。
(編集長)
ERの一コマ
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下部尿路障害 その1
日常臨床では、頻尿や尿閉など
排尿に関わる問題に非常に多く
遭遇します。
そのたびに泌尿器科に相談できる
のであればいいですが、そうとも
限りません。
今回から、当院泌尿器科の
アラレちゃんが下部尿路障害に
ついて解説してくれます。
アラレちゃんは以前に当院で
半年ほど初期研修を行っていた
こともあり、初期研修医が
間違いに陥りやすいところも
よくわかっています♡
今回は、下部尿路機能のまとめです。
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<下部尿路機能>
泌尿器は腎臓でろ過した血中の
老廃物を、尿管から膀胱へ貯留し、
尿道を通して体外へ排泄する器官
である。
これに加え、男性は前立腺が
膀胱の下にあり、中を尿道が
通っている。
腎臓は絶えず尿をつくり、尿管から
流れ出るため、常に尿が体外へ
出ないように膀胱に尿を貯留する
ことで日常生活を送ることができる。
この機構は、膀胱排尿筋と
尿道括約筋が、収縮と弛緩の
協調運動を行うことで管理している。
・正常の蓄尿とは
十分な尿量を低圧状態で膀胱内に
ためられ(300-400ml)、適切な量が
たまると尿意を感じる。また、尿意を
感じても我慢でき、漏れない。
排尿筋 :弛緩 (コンプライアンス良好)
尿道括約筋:収縮
・正常の排尿とは
膀胱内にたまった尿を、低い尿道
抵抗で、残尿のない状態で、随意的
かつ速やかに排出できる。
排尿筋 :収縮
尿道括約筋:弛緩
(アラレちゃん)
深夜のER 重症患者さんをICUに移送中
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キャンセル発生のため、
2名の追加募集を行っています。
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嚥下障害 その6・・・VEとVF
こんにちは!研修医のおもちです☻
前回までは摂食嚥下障害の診察で
簡易検査までを紹介しました。
今回は嚥下内視鏡(VE)と
嚥下造影(VF)です。
VEはベッドサイドで繰り返し
評価できること、被ばくがない
ことなど利点が多くあり、VEの
所見に基づいた食事選択や、
嚥下法の指導が誤嚥性肺炎の
発症率低下に役立つことが
検証されています。
また、経口不能な嚥下状況
(つまり、胃瘻などを作らないと
ダメかどうかの判断な人)の
多くがVEで判断できることも
利点です。弱点は咽頭期の
観察ができない(ホワイトアウト
と呼ばれます)ことです。
一方、VFはX線透視装置が
必要で、被ばくに加えて患者の
移動が必要で、造影剤の誤嚥
による気道感染のリスクも
あります。しかし、咽頭期を
含めた嚥下のプロセス全体を
観察することが可能です。
このためVFの適応としては
・VEで咽頭残留が多い、
・誤嚥の有無やその重症度を
判断できない
・外科治療の適応や術式の選択
など詳細な病態評価が必要な時
などで考慮されます。
ちなみにVEの評価では
「兵頭スコア」が用いられており、
以下のような項目になっています。
摂食嚥下障害の患者さんは
大勢いますので、私たちも
VEで評価できるように修行中です。
(おもち)
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◆11月のカンファレンス
・バーネット先生の教育回診
医療コミュニケーションレクチャー
11月21日(木)
・松永先生の感染症カンファ
11月28日(木)
いずれも、院外からの参加を
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嚥下障害 その5・・・EAT-10
こんにちは!研修医のおもちです☻
嚥下障害の5回目です。
前回は摂食嚥下障害患者の問診に
ついて紹介しましたが、その補足です。
嚥下評価ツールとしてEAT-10という
ものがあります。
↓
https://nestle.jp/nutrition/swallow_chew/eat-10.html
いろいろなスクリーニングのための
質問票がありますが、このEAT-10は
国際的に摂食嚥下障害の臨床研究で
使われているものだそうです。
ちなみに日本ではネスレ日本(株)が
使用権を有しています。
このEAT-10が3点以上であれば、
誤嚥の感度0.758、特異度0.749と
なっています。
弱点としては、嚥下障害の自覚が
全くない人では0点になってしまうことです。
例えば、身近に誤嚥性肺炎の既往が
ある方がいると、患者さん自身も、家族も
不安になっている時があります。
こういった時に、患者さん自身に
使ってもらうのもイイですし、
家族に教えておいて、自宅である程度
チェックしてもらうのも有用です。
(おもち)
バーネット先生のレクチャー
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◆11月のカンファレンス
・バーネット先生の教育回診
医療コミュニケーションレクチャー
11月21日(木)
・松永先生の感染症カンファ
11月28日(木)
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嚥下障害 その4・・・診察手順
こんにちは!研修医のおもちです☻
嚥下障害の4回目です。
今回は摂食嚥下障害患者の
診察についてです。
ここでは嚥下機能のみでなく、
患者さんの背景や全身状態を
総合的に評価することが大事です。
診察手順は以下の通りです。
【問診】
関連する様々な症状、食事中の様子、
既往歴、薬剤歴、生活環境などを
本人だけでなく、家族や介護者、
医療スタッフから聞き出します。
【精神・身体機能評価】
安全かつ確実な経口摂取のためには、
一定以上の精神・身体機能が必要で、
それを評価する必要があります。
意識レベルはJCS1桁以上が必要
とされます。また体感、頸部、上肢の
運動機能および呼吸機能を評価します。
【口腔・咽頭・喉頭などの診察】
器質的・機能的異常の評価を行います
【簡易検査】
誤嚥のスクリーニングや経過観察に
有用です。
・反復唾液飲みテスト
(RSST: Repetitive Saliva Swallowing Test)
随意的な嚥下の繰り返し能力を
評価します。嚥下を繰り返すように
指示をして、30秒で3回以上の嚥下を
正常と判定します。
・水飲みテスト
水は最も誤嚥しやすい形態なので、
潜在的な誤嚥リスクの検出に有用です。
誤嚥リスクが高い患者さんでは冷水を
1~3ml飲ませてみます。
潜在的な誤嚥をスクリーニングする時は
1回で30~100ml飲ませて評価します。
・頸部聴診法
嚥下時や嚥下後の肺野と頸部の聴診で
誤嚥や咽頭残留の有無を評価します。
(おもち)
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◆11月のカンファレンス予定
・バーネット先生の教育回診
医療コミュニケーションレクチャー
11月12日(火)、21日(木)
・松永先生の感染症カンファ
11月28日(木)
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嚥下障害 その3
こんにちは!研修医のおもちです☻
嚥下障害の3回目です。
今回は摂食・嚥下のメカニズムの
復習です。
摂食・嚥下の流れは以下のように
なります。細かいですが、ある程度
知っておかないと、これ以降の話が
分からなくなってしまいますので
載せておきます。
【先行期】
食べ物を認識する
【準備期】
嚥下しやすいように咀嚼し、のみ込み
やすい一回嚥下量に食塊を形成する
【口腔期】
舌背部を口蓋に押し付けて食塊を
咽頭に送り込む
【咽頭期】
鼻咽腔閉鎖、喉頭前庭閉鎖、声門の
閉鎖、舌根部の後方移動と収縮、
咽頭管の蠕動的収縮、食道入口部の
弛緩、逆流防止のための輪状咽頭筋
の強収縮という一連の運動が
500msecという短時間で起こる
(イメージとしては食道以外の出入り口
をすべて塞いで、食道に送り込む)
【食道期】
蠕動運動で食塊が胃に運ばれる
覚えておいた方が良いことは、
随意的にコントロールできるのは
先行期から口腔期開始まで。
嚥下リハなどでは、ここに介入します。
そして、咽頭期は延髄に存在する
パターン形成器(CPG)によって
コントロールされており、ここに
サブスタンスPが関与しているそうです。
と言うことは、薬剤も摂食・嚥下機能に
影響します。下の表を参考にしてください。
(おもち)
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◆11月のカンファレンス予定
・バーネット先生の
医療コミュニケーションレクチャー
11月12日(火)、21日(木)
・松永先生の感染症カンファ
11月28日(木)
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嚥下障害 その2
こんにちは!研修医のおもちです☻
嚥下障害の続きです。
突然質問です。
人間は誤嚥しますが、他の動物は
誤嚥することがあるでしょうか?
実は、誤嚥する動物はヒトだけ
だそうです。これは、他の動物と
違って喉頭が下位にあり、
食道分岐と近いことから、誤嚥して
しまうのだそうです。
一方、誤嚥するリスクがありますが、
喉頭が下位にあることよって
多彩な発音が出来るというメリットが
あるそうです。
嚥下するには姿勢も重要です。
例えば、あなたも飲み物を口に
含んでみてください。
そのまま上を向いて・・・ごくん!
と飲み込むのは辛いですね。
嚥下する時は、頸部前屈位に
することで咽頭残留を減らしたり、
誤嚥を防ぐ手助けとなります。
食事中の患者さんに会いに行った
とき、頸の後ろに枕は置いてあるか
注意して見てください。何気なく
看護師さんがやってくれている
ことが多いと思います。
(おもち)
PICC挿入は独り立ち
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆11月のカンファレンス予定
・バーネット先生の
医療コミュニケーションレクチャー
11月12日(火)、21日(木)
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11月28日(木)
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嚥下障害 その1
こんにちは!研修医のおもちです☻
先日、編集長と一緒に嚥下内視鏡(VE)の
講習会に行ってきました。そこで、
今回は嚥下障害についてシェア
したいと思います。
誤嚥性肺炎に遭遇したことがない
研修医は恐らくいないと思いますが、
誤嚥しそうな人が入院してきた時、
あなたは、嚥下の評価、そして
嚥下リハビリを、どうしていますか?
実際のところ、言語療法士(ST)さん
にお願い(丸投げ)して、トロミを
つけておけばOK!!
・・・なんて思っていませんか?
そもそも、誤嚥とは食物の動きと
嚥下の動きが一致しない、もしくは
不十分なことで、食物が気管に入って
しまうと肺炎など生命の危機にも
つながります。
嚥下評価は病歴やら身体所見を
しっかりとっていく訳ですが、
初対面や回診時の短時間でも、
口に注目すれば、ある程度は評価
できます。
具体的には、
口は開いていないか?
口の中は汚くないか?
唾液は多くないか?
これらに注目してみましょう。
また、握力と嚥下の力は相関
するそうです。嚥下機能評価の
際に、「手を握ってもらう」
のもありかもしれません。
(おもち)
カルテ記載中
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆11月のカンファレンス予定
・バーネット先生の
医療コミュニケーションレクチャー
11月12日(火)、21日(木)
・松永先生の感染症カンファ
11月28日(木)
いずれも、院外からの参加を
歓迎します!
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見逃してはいけない咽頭痛・・・徳田先生のカンファより
咽頭痛はよくある症状ですが、
その中には見逃していけない疾患が
あります。
具体的には、下記の5つ覚えましょう。
・急性喉頭蓋炎
・後咽頭膿瘍
・扁桃周囲膿瘍
・Lemierre症候群
・Ludwig angina
これらは、上気道閉塞や縦隔炎を来す
ので、頻度は決して多くありませんが、
見逃してはいけません疾患です。
Lemierre(レミエール)症候群は、
咽頭感染が内頸静脈周囲に進展
することで内頸静脈の血栓性静脈炎を
来し、そこから敗血症性肺塞栓症など
経静脈的にの他臓器への感染を
引き起こす症候群です。
Ludwig anginaは口腔底蜂窩織炎のことです。
読み方は「ルードヴィッヒ」で、どこかで
聞いたことがあると思ったら、音楽家の
ベートーベンの本名も、ルードヴィッヒ・
ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van
Beethoven)でした。
(別に知ったかぶりではアリマセン)
多くは、下顎臼歯の齲歯から、舌下や
下顎に感染が波及したものです。
感染により舌が腫大し、上気道閉塞を
来すので、挿管管理が必要になります。
ちなみに、この場合のAnginaとは、
狭心症のことではなくて、局所の
激しい痛みのことを指しているそうです。
でも、感染が縦隔に波及すると、
ホントに胸痛を来します。
(編集長)
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◆当院へ病院見学に来ませんか?
11月はバーネット先生の教育回診や
松永先生の感染症カンファが開催
予定です。
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