臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
P(リン)のお話・3
今回は低P血症に関してです。
前々回のPの体内動態から考えて
わかるように、低P血症の原因も
①腎臓からの排泄増加
②腸管からの吸収低下
③細胞内への移行
に分けて考えることができます。
①腎臓からの排泄増加
副甲状腺機能亢進症
先天性疾患(骨軟化症、X連鎖性低P血症性くる病など)
腎移植後
薬剤(利尿剤、抗がん剤、グルココルチコイド、
アセトアミノフェン、フェジン®)
Fanconi症候群
②腸管からの吸収低下
経口摂取低下
ビタミンD不足
慢性下痢
P吸着剤
慢性飲酒
③細胞内への移行
呼吸性アルカローシス
Hungry bone syndrome
糖尿病性ケトアシドーシスの治療中
栄養失調やアルコール依存者への栄養補給
白血病
テオフィリン
などが挙げられます。
薬剤性のものとしてアセトアミノフェン
とありますが、こちらは中毒の際に
起こる可能性がある程度です。
フェジンでの低P血症に関してはPTHの
活性型ビタミンD産生作用の低下や
尿細管での再吸収の抑制が考えられて
います。
糖尿病性ケトアシドーシスの場合、
細胞内からPが細胞外へ移動して
いるため、濃度は正常に見えるが
体内のPが減少しています。その状態で
治療することにより低P血症を起こす
ことがあります。
急激なPの低下は横紋筋融解などを
引き起こす可能性もあるため、Pを補充
しながら治療することが必要です。
また外来で見かける軽度の低P血症の
中には、食後採血で細胞内にPが取り
込まれているだけのものもあるので
正確なPの値としては、空腹時が望ましい
とされています。
治療としては経口での摂取になります、
その際、乳製品などを積極的に摂取して
もらうように指導を行うこととなります。
1.0㎎/dl未満の高度の低P血症の場合には
リン酸Naなどを使用して経静脈的に
補正することになります。
ICUなどで高カロリー輸液などを行う際に
低P血症に気づかず行ってしまうと
肝機能障害などを起こすことがあるため
注意が必要です。
(腎臓内科のベイマックス)
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