臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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HIT その3

2020.10.17
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回はこのシリーズ最後になります。

HITの治療についてです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

HITの治療としては、病態の中心となる

トロンビンの産生抑制と、すでに産生

されたトロンビン不活性化が目標となる。
 

つまりヘパリンの速やかな中止と、

抗トロンビン剤の使用を行う。
代替の抗凝固剤としては、選択的かつ

直接的抗トロンビン剤であるアルガトロ

バンが推奨される。

 

これはヘパリンと構造上相同性がない

こと、分子量が小さいため抗原性に

乏しいことが理由である。

 

アルガトロバンはトロンビンによる

血小板凝集を強力に阻害するが、

血小板刺激作用はない。ワーファリンや

血小板の輸血はtype 2の急性期治療には

原則禁忌である(むしろ増悪させる)。
 

血小板数が回復した時点で,抗トロン

ビン薬と併用する形で投与を開始し,

臨床症状が落ち着いた時点でワーファリン

単独治療への切り替えを行う.
 

抗血小板剤はHIT抗体によって活性化

された血小板を抑制する作用は強くない

ので通常使用されない。

 

アルガトロバンは高価な薬ではあるが、

これを使用するしかないのが現状である。

(Suzu)

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カルテを書くのに、ちょっと飽きてきたところ♪

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HIT その2

2020.10.13
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回もHITの続きです。

今回は病型についてです。

 

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HITはtypeⅠと typeⅡの2つの病型に

分類される。

 

TypeⅠは、ヘパリンによる血小板への

直接刺激により血小板数減少が引き

起こされる。投与2~3日後に10~30%

の血小板減少が生じる。

 

通常、血小板数が10万以下になる

ことは少ない。頻度は使用例の約10%、

使用量依存性に発症すると言われる。

一般にヘパリンを中止することなく、

血小板数は自然に回復する。

一方、重篤な合併症が問題となるのは

TypeⅡである。このタイプでは

ヘパリンと血小板第4 因子(PF4)から

なる複合体に対する抗体(HIT抗体)が

血小板に結合し、血小板を活性化し、

血小板数減少と血栓形成を引き起こす。

 

免疫学的機序を介するため、ヘパリン

使用量が少量でも発症する。発生頻度は

0.5~5%という欧米からの報告がある。
 

HIT抗体は、ヘパリン開始後5~14日

以内に出現するが、ヘパリン投与開始後

急速に発症するタイプがあることも知られ

ている(もともとHIT抗体を持っている人と

考えられている)。
 

血小板板が2万/μL程度にまで急激に

減少する。検査としては、ELISAによる

HIT抗体の検出や、ヘパリン惹起血小板

凝集能の測定が有用である。

 

Type Ⅱは免疫疾患なのでヘパリンの

再使用は避ける。点滴のヘパロックも

禁忌である。

(Suzu)

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ICUで指導医と議論中

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HIT その1

2020.10.10
カテゴリー: カンファレンス 内科

入院中の患者さんで、採血フォローを

していると、血小板数が微妙に低下

していることに気づくことがあります。

 

例えば15万→11万→9万という

感じで、急激に低下するとは限らない

ので、見落としている時もあります。

 

血小板数が低下する理由は色々と

ありますが、意外と隠れているのが

HITです。

 

今回もSuzuがHITについてまとめて

くれたのでシェアします。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT:

(Heparin-induced thrombocytopenia)は、

出血に次ぐ、ヘパリンの重大な副作用の

一つである。欧米からの報告が多いが、

本邦ではその認識は案外十分ではない。

 

HITの病態としては、

①(未分画、低分子分画を問わない)

ヘパリン投与中に発症し、急激に

血小板数が減少すること

②ヘパリン投与中止により血小板数が

速やかに回復すること

③動静脈塞栓症をしばしば合併すること、

が挙げられる。
 

ハイリスク群が知られていて、重度の

冠動脈硬化症の患者、糖尿病腎症、

悪性腫瘍、血管合併症を認める透析患者

(導入期)、手術後などが報告されている。
(次回に続きます)

   (Suzu)

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ちゃんと力入れてる?

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中葉(舌区)症候群

2020.10.08
カテゴリー: カンファレンス 内科

数か月の間に3回も右中葉の肺炎に

罹患した症例を経験しました。その際に

Meguが調べてくれたことをシェアします。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中葉(舌区)症候群とは、右中葉や

左舌区に反復して起こる無気肺や

慢性炎症のことをいう。
 

これらの部位は構造上閉塞しやすく、

リンパ節の腫大等でも気管支が圧迫

され、拡張不全をきたすことがある。

また、構造上発育も不十分なことが

あり、生体防御力が他の肺の部位に

比較して低いことも要因の一つである。
 

臨床症状は繰り返す肺炎、咳嗽、

胸膜の刺激による胸痛等がある。

診断は、胸部レントゲンにて中肺野の

透過性低下、単純CTにて中葉や

舌区の含気不良や萎縮像と、その中に

拡張した気管支を認める。

気管支鏡では腫瘍等による物理的な

閉塞がある場合を除き、気管支は拡張

していることが多い。感染が加わると、

粘膜の発赤・腫脹や膿性分泌物、

病巣部からの出血がみられることもある。
 

治療は、感染がある場合は病原体を

同定し抗菌薬加療を行う。気管支拡張

については去痰薬、体位ドレナージ等

気管支拡張症に準じた治療を行う。

 

繰り返す肺炎や喀血で、病変が限局

する場合には外科的切除を検討する。

(Megu)

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栄養評価の指標・・・・SGA・MUST

2020.09.24
カテゴリー: カンファレンス 内科

栄養評価の最後になります。

今回はSGAとMUST。たくさん

ありすぎて、とても覚えきれ

ませんね(苦笑)。このブログを

メモ代わりにご使用ください。

 

SGA(subjective global assessment)

主観的包括的栄養評価ともいう。

簡便であり、適応範囲が広いことから、

栄養評価スクリーニングによく使用

される全世界共通の栄養評価法である。

病歴(体重変化、食事摂取状況、

基礎疾患と必要カロリーのバランス等)と

身体所見(浮腫、腹水等)の2項目について

チェックし、それらをふまえて観察者が

主観により患者の栄養状態を判定する。
 

MUST(Malnutrition Universal Screening Tool )

化学療法中の患者さんの栄養評価。 

BMI、体重減少、急性疾患と栄養摂取

不足(5日以上の摂食なし)の3項目から

リスク評価を行う。元々は在宅の患者

向けに推奨されていたが、近年では

急性期の予後予測因子としても有効

であるとの報告があり、入院時の

栄養評価スクリーニングにも使用されている。

(Megu)

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先日のレジナビオンラインでの一コマ

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栄養評価の指標・・・・GPS・PNI・GLIM

2020.09.22
カテゴリー: カンファレンス 内科

栄養評価の続きです。

いろいろあるのですが、文献などで

見かけたときに「なんのこっちゃ?」

とならないように、ざっくりでいいので

覚えておくといいですよ。

 

 

GPS(Glasgow Prognostic Score)

血清アルブミン値とCRPを用いた指標。

非小細胞肺癌等の悪液質の評価に有用。

PNI(Prognostic Nutritional Index)

古くはBuzbyらが提唱した指標があるが、

現在はより簡便化されたOnoderaらが

提唱したものが使われている。

血清アルブミンと総リンパ球数を用いて

評価し、術前の予後予測因子に使う。

この数値が低い(PNI≦40)と吻合不全が

起きる可能性が高く、手術は難しいことが

多い。
 

GLIM criteria(Global Leadership 

Initiative on Malnutrition )

2018年に提唱された、全世界統一の

低栄養の診断基準。評価方法は2段階に

分かれており、1段階めでは、MUST等の

現在使用されている評価項目を用いて

評価を行う。1段階めで問題ありと評価

されると2段階めに移り、現症(体重減少、

BMI低値、筋肉量減少)と病因(摂食量低下

or吸収能低下、疾患・炎症の程度)の

それぞれ一つ以上に該当すれば低栄養の

診断となる。診断後は現象に基づいて

重症度を判定する。

(Megu)

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これから診察

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栄養評価の指標・・・・CONUT

2020.09.17
カテゴリー: カンファレンス 内科

前回の記事で、特に高齢の入院患者では

栄養とADLが大事だと紹介しました。

 

そこで栄養評価について、Meguが

まとめてくれました。なかなかの

ボリュームになったので、3回に分けて

シェアします。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
患者さんの栄養評価の指標となる

検査値はいくつかあるが、その一つに

CONUT score (Controlling Nutrition

Status) がある。
 

2003年に欧州の学会で提唱された指標

であるが、CONUT scoreは、日常よく

測定される採血項目であるアルブミン値、

総リンパ球数、総コレステロール値

用いた、簡便に栄養状態のスクリーニングを

行えるスコアリングシステムである。
 

総リンパ球は、低栄養状態や異化

亢進状態では、免疫細胞の産生低下が

起こる事が知られていることから、

免疫能の指標としてこのスコアリングに

組み込まれている。
 

CONUT scoreは膵臓癌、消化器癌術後の

予後予測因子として有用とされているが、

心不全の予後予測因子としても有効という

報告もある。
 

CONUT score以外にも、次回以降に

紹介するような栄養評価指標がある。

施設により使用される指標は様々だが、

特にがん治療の際、がんのステージ分類と

組み合わせて使用すると、より正確な

予後の評価が可能となる。

(Megu)

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【いよいよ明日です!】

レジナビFair オンライン

東日本Week 2020 に

参加します!

 

当院は9月18日(金)18:30から

ライブ配信です。

レジナビのページはこちら

 

病院説明と質疑応答がそれぞれ10分間の

計20分間です。

ぜひご参加ください!

ERの一コマ

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栄養とADL

2020.09.15
カテゴリー: カンファレンス 内科

例えば、80歳代の男性でADLは自立、

敷地内の別棟に息子さん家族が

住んでいる(茨城はこのパターンが

多いんです)方が、肺炎で入院しま

した。

 

幸い、順調に経過し、血ガスも

胸部レントゲンも、WBCやCRPも

改善しています。

 

では、そろそろ退院してもらおうと

家族に話をしたら、

「こんなんじゃ、おじいちゃんを

連れて帰れません!」

と言われてしまいました。

 

なぜだか分かりますか?

 

食事は食べれるけどむせ込まないように

誰かがついてないといけません。

摂取量も十分とは言えない。ADLも

歩けているけど歩行器を使用していて

自宅で一人での移動は無理。

 

家族からすれば、今まで全く手が

かからなかったのに、常にだれか

家にいなくてはいけないなんて、

家族みんな仕事しているから無理! 

となる訳です。

 

こんなことは、あなたもこの先必ず

経験するハズです。

 

特に高齢者では、入院を契機に急速に

ADLの低下を来します。脳梗塞を

起こしたわけでもないのに、嚥下機能が

落ちたり、食事量も激減することは

しばしば日常で遭遇します。

 

すべての入院患者さんについて

「栄養とADL」を意識しておきましょう。

 

入院前の生活に戻れるのか?

転院や施設を考慮した方がいいのか?

 

早い段階で、家族に見通しを伝え

退院に向けての準備を始めないと

退院直前になって、冒頭のような

ことになってしまいます。

 

疾患のことばかりでなく、いろいろ

目配せが大事ですが、特に

「栄養とADL」はキモになる

ことを覚えておくとイイですよ。

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

レジナビFair オンライン

東日本Week 2020 に

参加します!

 

当院は9月18日(金)18:30から

ライブ配信です。

レジナビのページはこちら

 

病院説明と質疑応答がそれぞれ10分間の

計20分間です。

ぜひご参加ください!

ちょっと慌ただしいERの一コマ

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Legionella肺炎

2020.09.03
カテゴリー: カンファレンス 内科

レジオネラは1976年に米国の

在郷軍人会にて肺炎の集団発生が

あったことから、かつては在郷軍人病

とも呼ばれていた。

 

レジオネラ菌は土壌、河川、湖沼等に

生息しているが、通常は感染の危険が

あるほどの菌数はない。しかし、24時間

風呂や循環式の給湯器やクーラー等で

爆発的にに増殖することがあり、集団

感染を引き起こす。

 

国内では例年7月を中心に報告が

増加しており、季節変動が比較的明確

である。高齢(50歳以上)、喫煙、大量飲酒、

肺疾患、免疫機能異常などが感染の

リスク因子となる。
 

レジオネラ肺炎の潜伏期は2-10日程度

であり、初期には湿性咳嗽の他に発熱、

食欲不振、頭痛、消化器症状など様々な

非特異的症状を呈するため、症状のみ

ではレジオネラ症の診断は困難なことが

ある。

 

診断にはイムノクロマト法による尿中抗原の

検出が最も簡便である。この他には遺伝子

検出、ペア血清による抗体価上昇等で

診断可能である。
 

レジオネラ肺炎は感染症法の4類に

指定されるため、診断後は直ちに保健所に

届け出が必要である。
 

治療は、レジオネラ菌は細胞内寄生細菌

のため、宿主細胞に浸透するニューキノロン、

マクロライドなどを使用する必要がある。

重症例ではこれらの併用も行われることが

あるが、議論のあるところである。

(Megu)

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メンデルソン症候群

2020.08.29
カテゴリー: カンファレンス 内科

メンデルソン症候群とは、胃内容物の

嘔吐に伴う誤嚥によって起こる重篤な

化学性肺炎(Chemical pneumonitis)

であり、胃液の気道内への吸引に

よって急激に発症する。酸性の液体は

肺に大きな障害を与えるため、少量

でも重篤な肺炎となりうる。

 

アメリカの産婦人科医Mendelson氏が、

マスク管理での全身麻酔による無痛

分娩後に生じた重篤な誤嚥性肺炎を

報告したことが名前の由来である。

そのため、狭義では産婦人科領域の

誤嚥性肺炎のことをいうが、現在は

誤嚥性肺炎の一型として考えられている。

 

全身麻酔に伴って発症する場合は、

術前の絶食管理、輪状甲状軟骨圧迫法

の導入によって頻度が減少している。

 

診断、治療は誤嚥性肺炎に準ずるが、

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症

する可能性があることも報告されている。

ARDSまで進行してしまうと、ガイド

ライン上で有効性が示された治療法は

低容量換気による呼吸管理法のみ

であり、基礎疾患ごとに層別化した

治療法が求められる。

(Megu)

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「医学生向け

Web版・個別病院説明会」

終了のお知らせ

 

新型コロナの影響を受けて、

今年度から開催していた

Web版個別病院説明会ですが、

8月31日で終了します。

 

予想をこえて多くの方にご参加

いただきました。対応した当院の

初期研修医たちも、一生懸命

対応してくれていました。

 

新型コロナの流行は当分続くと

予想されますので、時期を見て

企画したいと考えています。

 

また病院見学再開に向けて

準備中です。もう少しお待ちください。

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