臨床研修ブログ

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何に注目するべきか?  経過観察の2つの軸

2019.07.04

だいぶ間が空いてしまいましたが、

4月末に開催された松永先生の

感染症カンファからです。

 

実は来週7月9日に、今年度2回目の

感染症カンファが開催されます。

その前に、感染症診療の基本を

おさえておきましょう。

 

前回までは感染症診療の流れとして

①感染症?それとも感染症以外?

②診断の2つの軸

③治療の2つの軸

④抗菌薬

を順に紹介してきました。

 

今回は⑤経過観察の2つの軸

ついて紹介します。

 

例えば、肺炎の患者さんに抗菌薬を

開始したけど、一向に熱が下がらない、

WBCやCRPが下がらない。

抗菌剤を代えた方がいいか?

 

なんて不安になることは

しばしば経験しますよね。

 

あなたはそんな時はどうしますか?

 

まず、抗菌剤を変更する前に、

感染症治療が上手くいっているかの

判断をする必要がありますが、

あなたは何を根拠に治療が

上手くいっているかを判断して

いますか?

 

たいていの人は

「発熱」が続いている、

「WBC」や「CRP」が下がらない、

と答えてくれます。

 

確かに、分かりやすく有用な指標

ですが、その特徴と限界を把握

しておく必要がありますね。

 

松永先生は「2つの指標」

よく理解する必要性を強調

しています。

 

それは

「身体全体の総体を表す指標」

「感染局所の病態を表す指標」

です。

 

「身体全体の総体を表す指標」とは、

体温、WBCやCRP、プロカルシトニン

などの炎症マーカー、そして

敗血症性ショックの治療に用いられる

ノルアドレナリンの用量、インスリンの

用量、乳酸値などを指します。

 

「感染局所の病態を表す指標」とは、

感染局所の症状、徴候、グラム染色

などの検査所見を指します。

 

例えば、肺炎の患者さんなら、

呼吸回数や酸素飽和度(吸入酸素量)

喀痰量などが感染局所の指標に

なります。

 

つまり、CRPが上昇していても、

呼吸回数や酸素飽和度(吸入酸素量)が

改善傾向なら抗菌薬を変更する必要は

ありません。

 

「検査値を治しているんじゃない!

患者を治しているんだ!」

というのが、松永先生のメッセージです。

 

具体的な感染局所の指標には・・・、

 

肺炎

症状(咳、痰、呼吸困難感)、

徴候(呼吸数、呼吸器の設定、痰の量・質)

検査(血液ガス、喀痰のグラム染色)  

 

尿路感染

症状(排尿困難、頻尿など)

徴候(腹部の圧痛、背部の叩打痛)

検査(尿中白血球数、尿グラム染色)

 

蜂窩織炎

症状(疼痛)、

徴候(発赤、腫脹、熱感、浸出液の量・質)

検査(浸出液のグラム染色)

 

心内膜炎

血液培養が検出されるまでの日数

血液培養の陰性化

 

 

感染症治療では発熱やCRPだけでなく、

感染局所の指標に注目して、

それを追いかけることが重要です。

 

これらの指標は診断する時点、治療を

開始する時点で、経過を見る指標を

決めていくことが大事です。

 

発熱とCRPに惑わされないで

頑張ってみてください。

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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抗菌薬では三角形を考える 松永先生の感染症カンファ

2019.06.13

少し間が空いてしまいましたが、

松永先生の感染症カンファからです。

 

「感染症診療の流れ」のうち、前回まで

①感染症? 感染症以外?

②診断の2つの軸

③治療の2つの軸

を紹介しました。

今回は④抗菌薬についてです。

 

個々の抗菌薬については、6月下旬に

予定されている次回のカンファで

取り上げられるはずですが、

ここでは抗菌薬を使うときの考え方を

まとめています。

 

キーワードは

「三角形を考える」

そして、

「抗菌薬は二度選ぶ」

です。

 

「三角形を考える」とは

図のように感染部位、微生物、抗菌薬の

関係を考えることです。

大腸菌による膀胱炎を例にしてみましょう。

「感染部位」は膀胱、

「微生物」は大腸菌。

「抗菌剤」は・・・、

 

よく処方されているのがキノロンです。

しかし、キノロン耐性の大腸菌が多いため、

キノロンは第1選択にはなりません。

当院のアンチバイオグラムでも、

約40%の大腸菌がキノロン耐性です。

これではいくら膀胱炎であっても、

第一選択にはなりません。

 

このように、抗菌薬を選択するときに

感受性を意識することは重要です。

しかし感受性だけで判断するのは間違いです。

もう一つ、病変部への移行性も考慮します。

 

例えば、髄膜炎を例にしてみましょう。

感染部位は髄膜(中枢神経系)、

微生物は肺炎球菌とします。

抗菌剤は、いくら肺炎球菌をカバー

しているといっても、第2世代セフェム

であるセフォチアムは髄液移行性が

悪いので使いません。

セフトリアキソン(CTRX)などの

第3世代セフェムを選択します。

 

感染部位に抗菌剤が到達するために

投与経路(静注、経口)や用量は

どうしたら良いのか?

その他に、ドレナージなど

物理的治療は必要ないか?

人工物を除去する必要はないか?

 

このように三角形の関係性を常に

意識しましょう。

 

といっても、臨床では原因微生物が

判明しないうちに抗菌剤の投与を

決めなくてはいけませんよね。

 

ここは経験的(empirical)に感染部位から

よくある原因微生物を考えて抗菌薬を

選択します。

しかし、その後に原因微生物が判明

したら、それにあわせて標的治療

(definitive therapy)に切り替えます。

これがde-escalation(デ・エスカレーション)で

「抗菌剤は二度選ぶ」ということです。

 

この2度目の抗菌薬の選択は、

十分な抗菌力があること、なるべく

カバーする範囲が狭いもの、を基準に

選択します。

 

経験的治療で上手くいっている治療を、

あえて抗菌薬を変える訳ですから

なんとなく抵抗がありますが、

「de-escalationは未来の患者さんため」

と、松永先生は強調しています。

 

AMR対策が国を挙げて進められている

今こそ、肝に銘じるべき言葉ですね。

 (編集長)

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すると、あなたはもう一度ベッドサイドに

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麻疹に注意

2019.06.04

当院のHPでもお知らせしていますが、

先月、麻疹患者が当院のERを受診した

ので、注意喚起を行っています。

 

麻疹は一度診察すれば忘れませんが、

とにかく患者さんがぐったりして、

とても辛そうで、重症感が半端

ありません。

 

いろいろとニュースになっていますが、

国内各地で麻疹患者の報告が相次いで

いるので、国立感染症研究所のHPを

時々チェックすることをお勧めします。

国立感染症研究所の麻疹情報

 

麻疹に関して覚えておくことは

・空気感染、飛沫感染、接触感染など

 様々な感染経路を持ち、感染力が

 非常に強い(すれ違っただけでも

 感染します)。

・潜伏期間は10~12日

・治療法は予防接種のみ。発症して

 からは対症療法しかない

・二大死因は肺炎と脳炎

・罹患後平均7年の経過で発症する

 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)

 は国試でも出ますね。

 

さらに修飾麻疹というものがあります。

これは麻疹に対する免疫が不十分な

人が麻疹を発症すると、症状は一般的に

軽く、発疹も非定型的になり診断が

困難となります。感染力も通常より

弱いとされていますが、麻疹患者との

接触歴が重要になります。

 

ワクチン接種歴や渡航歴に加えて、

麻疹患者との接触歴がないかを

詳細に聞き出すことが重要になって

きます。

 

最近は海外からの持ち帰り例が多い

ので、患者さんの職業や渡航歴の

聴取を忘れないだけでなく、

ニュースなどの報道にも関心を持って

おきましょう。

 

ちなみに、先月の麻疹患者を診断した

のはJ1の研修医です。休日のERでしたが、

本人曰く「麻疹だったらヤダナー」と

初めから鑑別に挙げて診察を始めて、

すぐにコプリック斑を見つけたそうです。

 

それを受けて、当日の後期研修医が

すぐにICT(感染対策チーム)に連絡をして、

患者を隔離、保健所への連絡を行いました。

 

ICTのメンバーからは、かなり迅速な

対応ができたとお褒めの言葉をいただき

ました。

 

あなたが当直しているときに

麻疹患者が来るかもしれません。

まさか遭遇しないだろうと

油断しないようにしてください。

(編集長)

ERの一コマ

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化学的と物理的  松永先生の感染症カンファから

2019.05.21

60歳代の女性が発熱で入院。

CVA叩打痛と尿所見から

尿路感染症と診断しました。

 

尿培養と血液培養を採取後に

抗菌薬(CTRX)を開始。

 

培養結果は、尿も血液も素直な

E.Coliでした。感受性をみても

抗菌薬は当たっているはず。

 

なのに、解熱しないし、CRPも

良くならない。あなたには

こんな経験はありませんか?

 

今回は松永先生のカンファから

感染症治療の2つの軸を紹介します。

 

感染症治療=抗菌薬 

というイメージを持っている人は

多くいます。もちろん抗菌薬が

感染症治療の重要な位置を

占めているのは間違いありません。

 

そもそも、抗菌薬の役割は

微生物を「化学的に除去する」

ことですが、用量が少なすぎたり、

目的のところに十分到達しな

ければ効果は得られません。

 

こんな時に、二つ目の大事な

治療の軸があります。それは、

「物理的に除去する」ということです。

 

ドレナージや洗浄、切除(切断)、

人工物の除去など、外科医など他の

診療科とも協力して治療を行う必要が

あることを忘れてはいけません。

 

物理的に微生物を排除するのは

具体的に以下のようなものがあります。

 

-膿瘍

-「うっ滞性」感染症 

・胆石・腫瘍による胆道閉塞

 ⇒胆管炎

・尿路結石による尿路閉塞 

 ⇒尿路感染症

-人工物

・中心静脈ライン

・動脈ライン

・人工呼吸器    

・胃管

・尿カテ

・人工弁

・人工関節 など

-壊死組織

 

冒頭の症例は、腎周囲膿瘍を来して

いたため、単なる抗菌薬の点滴のみ

では改善に時間がかかった症例です。

幸いドレナージなどせずに、保存的

治療のみで治癒しました。

 

あなたも抗菌薬のオーダーをした

だけで安心してはいけません。

 

抗菌薬だけが感染症治療ではない

ことを忘れずに、化学的と物理的の

2つの治療の軸を忘れないように

しましょう。

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・

◆病院見学はもうお済みですか?

「どうやって研修病院を決めたら

いいのか分からない・・・。」

 

それには病院見学をするのが一番です。

さらに直接、研修医から話を聞くのが

ベストです。実際に見学に行くと、

想像以上に病院によって雰囲気が

違うことに気づくでしょう。

 

ぜひ当院へ見学に来て、あなたの目で

リアルな研修生活をのぞいてみて下さい。

 

病院見学や、その他のご質問・お問い

合わせはこちらからご連絡ください。

http://www.mito-saisei.jp/resident/contact.html 

 

 

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どこで? 何が? 松永先生のカンファより

2019.05.18

あなたがER当直をしていると

高齢の女性で、施設入所中の

患者さんが発熱を主訴に搬送されて

きました。血液検査ではWBCが1万、

CRPは18と炎症反応が上昇して

いましたが、それ以外は明らかな

異常はありません。尿所見は

白血球も細菌もなし、腹部は圧痛なし

でした。

 

胸部レントゲンは明らかな肺炎像は

ないけれど、施設のスタッフの話では

食事の際にむせこむこともあったらしい。

以前に肺炎で入院歴があるので、

今回もきっと肺炎だろう。

 

そう考えて、血液培養を2セット採取

後に抗菌薬(ABPC/SBT)を開始

しました。

 

よくありそうな症例ですよね。

 

ところが翌日に細菌検査室から

「4本中4本でグラム陽性球菌です」

と連絡がありました。

 

さらにその翌日には

「G群溶連菌(GGS)でした!」

こんな報告が届きました。

 

この症例の診断は、肺炎で良かった

でしょうか?

松永先生は「感染症診断の二つの軸」

を強調しています。

 

感染症を診断する時は、

同時に2つことを考えるということです。

 

その2つとは

感染巣(解剖学的診断)

起炎菌(微生物学的診断)

 

言い換えると、

どこで(Where?) 

なにが?(What?)

悪さをしているのかを考えましょう

ということです。

 

冒頭の症例は、血液培養からGGSが

検出されたら、「肺炎ではなさそうだぞ」

と違和感を持つ必要があります。

 

微生物学的診断(なにが?)はGGSと

判明しているので、どこを探すか?

 

GGSが起炎菌となりそうな臓器、

例えば口腔内、皮膚軟部組織、

血液を思い浮かべて探しに行きます。

 

この症例は、背部や臀部も含めて

皮膚軟部組織には異常なく、

感染性心内膜炎も否定されました。

最終的に口腔内の所見から

化膿性耳下腺炎と診断されました。

 

診断は違っていましたが、当初の

抗菌薬でカバーされていたので、

結果は同じだったかもしれません。

 

でも、もし感染性心内膜炎だったら、

中途半端な治療になってしまうことも

十分あり得ます。感染性心内膜炎の

再燃で再入院なんて経験したく

ないですよね。

 

感染巣が分かれば、起炎菌も絞られます。

微生物が分かれば、感染巣も絞られます。

 

どこで?(=感染巣) 

なにが?(=微生物)

をおさえながら診療に取り組んで

いきましょう!

(編集長)

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「どうやって研修病院を決めたら

いいのか分からない・・・。」

 

それには病院見学をするのが一番です。

さらに直接、研修医から話を聞くのが

ベストです。実際に見学に行くと、

想像以上に病院によって雰囲気が

違うことに気づくでしょう。

 

ぜひ当院へ見学に来て、あなたの目で

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感染症診療で最初にすることは? 松永先生のカンファより

2019.05.07

病棟でもERでも、あなたが

発熱患者に遭遇した時に、

何か抗菌薬を処方しないといけない、

こんな風に考えて、つい深く考えずに

抗菌薬を処方していませんか?

 

感染症のよくある誤解に

発熱=感染症

発熱=抗菌薬

抗菌薬=解熱剤

といったものがありますが、

これらは全て間違いです。

 

例えば、リンパ腫などの悪性腫瘍

でも発熱を来します。

 

リンパ腫なのに、抗菌薬を投与しても

解熱しないことは容易に想像できます。

 

つまり、

発熱≠感染症

発熱≠抗菌薬

ですね。

 

また、「抗菌薬を開始したのに解熱

しません」と、開始してまだ1日目

なのに言われてしまうことが

あります。

 

そもそも、抗菌薬は細菌を

やっつけるための薬ですから、

適切な抗菌薬が投与されても、

疾患によって解熱してくるまで

ある程度の時間は必要です。

 

つまり、

抗菌薬≠解熱剤

これも分かってもらえると思います。

 

ということで、感染症診療で

最初にすることは

目の前にいる患者さんは

ホントに感染症なのか?

それとも感染症以外なのか?

を考えてみることです。

 

あなたも一瞬立ち止まって

考えてみてください。

 

ちなみに、先日のカンファで

松永先生が何度も繰り返した

ポイントは以下の6つです。

 

①感染症?それとも感染症以外?

②診断の2つの軸

③治療の2つの軸

④抗菌薬

⑤経過観察の2つの軸

⑥投与期間の決定

 

これは毎回繰り返し出てくる

重要ポイントですので、

次回も続きを紹介します。

(編集長)

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今年度も始まりました!・・・・松永先生の感染症カンファ

2019.05.02

平成最後の日となった4月30日に

本年度1回目の松永先生の感染症

カンファが開催されました。

 

ゴールデンウィークの谷間で

世間は10連休ですが、

当院は通常診療をしており

松永先生にもいつも通りに

お越しいただきました。

 

松永先生のカンファのことは

このブログでは何度も紹介していますが、

今年で11年目となる、当院にとって

無くてはならないカンファの一つです。

 

松永先生を知らないあなたに

先生のプロフィールはこちら

松永先生は帝京大学医学部付属病院の

感染制御部でお仕事をされていますが、

1999年に東京大学医学部を卒業され、

在沖縄米国海軍病院インターン、

東京大学医学部附属病院内科研修医、

そして茨城県立中央病院内科研修医を経て、

2002年から米国コロンビア大学関連病院

St.Luke’s-Roosevelt Hospital Center

内科レジデント、2005年からUCLA関連

フェローシッププログラム感染症科臨床

フェローを修了されています。帰国後は

三愛病院内科、東京医科大学病院感染

制御部を経て、2010年から現職を務めて

います。当院には平成21年から感染症

カンファや院内講演会などでお越し

いただいており、現在は年5回の研修医

向けの感染症カンファをお願いしています。

 

毎年恒例ですが、年度初めのテーマは

「感染症診療の基本」を話して

いただきました。

 

このテーマは非常に重要なので、

このブログでは開設当初から

ネタとして何度も紹介してきましたが、

松永先生が何度も強調したところや

印象に残ったところを次回から

紹介していきます。

 

さらに今回は10連休中ということも

あり、院外から医学生が4名もカンファ

に参加してくれました!

 

医学生の感想は・・・

・導入が非常に丁寧でした。症例や

 国試の問題をベースに進んでいた

 ことも分かりやすかったです。

 

・治療評価について、抗菌薬のやめ時を

 学ぶことは少なかったので、非常に

 勉強になりました。もう1回来て学び

 たいです。

 

・(新しく知ったこととして)

 感染症≠抗菌薬であること、抗菌薬

 投与後は全身の評価と局所の評価

 どちらも必要であること

 

などなど、医学生にも好評でした! 

ちなみに次回の松永先生のカンファは

6月27日(木)の予定です。

ご都合の付く方はぜひご参加ください!

(編集長)

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知っていますか? キノロンの注意点

2019.03.07

2月28日に行われた松永先生による

感染症カンファからです。

 

今回のテーマは

「医師も知っておきたい感染対策」

でしたが、感染対策を一言で言うと、

 

問題となる微生物を、

「作らない」 「広げない」 「治す」

ということです。

 

これに関連して、あなたも

薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)

対策という言葉くらいは聞いたことが

あると思います。

 

2016年にAMR対策アクションプランが

策定されていますが、その中に

成果指標の一つとして

 

ヒトの抗微生物剤の使用量を

2020年までに

・全体で33%減少、

・経口セファロスポリン、フルオロキノロン、

 マクロライド系薬を50%減少

・静注抗菌薬を20%減少

(いずれも対2013年比)

という目標が掲げられています。

 

ここでやり玉に挙がっている

キノロン系抗菌薬について

あなたはどの程度知っているでしょう?

 

ニューキノロン系薬は、尿路感染症や

肺炎に頻用されている薬剤ですね。

 

でも、耐性株は意外と存在することを

知っていますか?

 

例えば、尿路感染の代表的な起炎菌は

大腸菌(E.Coil)ですが、ある病院では

キノロン薬の感受性が73%しかない。

 

E.Coliだから何でも効きそうな印象ですが、

この値はキノロンの感受性は良好では

ない、キノロンを第一選択として用いる

ことができないレベルと言う意味です。

 

肺炎に対しても、成人肺炎診療

ガイドライン2017では

医療・介護関連肺炎に対して、

外来エンピリック治療としての

ニューキノロン系薬は弱い推奨

なっています。

 

理由としては、副作用、耐性化の可能性、

そして結核をカバーしてしまうために、

結果として肺結核の発見が遅れて、

予後の悪化につながってしまうという

問題があるからです。

 

特に外来診療の場で、安易に

尿路感染症・肺炎=キノロン系薬

と選択しないように気を付けて下さい。

(編集長)

 

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春のイベントのご案内

春休みに病院説明会が開催されます。

当院も参加しますので、ぜひブースに

お越しください!

 

 

レジナビフェアスプリング2019東京

日時:平成31年3月10日(日)午前10時~午後5時

場所:東京ビックサイト 東7・8ホール

詳細はこちら

https://www.residentnavi.com/rnfair/ts190310

 

茨城県臨床研修病院合同説明会

日時:平成31年3月17日(日) 午後1時~午後5時

場所:イーアスつくば 2Fイーアスホール

詳細はこちら

https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/jinzai/ishikakuho/isei/ishikakuho/mstudent/goudousetumeikai20190317.html

 

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今年度最終・松永先生の感染症カンファ報告

2019.03.02

このブログでもたびたび紹介している

帝京大学感染制御部の松永先生に

お越しいただき、今年度最終となる

カンファを2月28日に開催しました。

 

今回のタイトルは

「医師も知っておきたい感染対策」

 

内容は・・・、

問題となる微生物を

「作らない」、「広げない」、「治す」

ということに絡めて

AMR(薬剤耐性)対策や手指衛生など、

日常臨床ですぐに使える内容が

いっぱい詰まっていました。

その一部は次回以降に紹介します。

 

今年度最後でしたので、終了後に

初期研修を終える当院J2の3名から

松永先生にプレゼントが手渡されました。

 

そして松永先生から、その3人に本の

プレゼントがありました。

 

松永先生が今まで読んだ本から、

J2それぞれの進路に合わせてチョイス

してくれたものです。

 

プレゼントは皮の名刺入れ

 

初期研修を終えてそれぞれの専門に

進んだとしても、感染症と縁を切る

ことはできません。

 

2年間で計10回の松永先生カンファで

繰り返された「どこで? 何が?」

忘れることなく、それぞれの領域で

診療に当たってほしいと思います。

 

新年度も松永先生の感染症カンファが

開催されます。感染症に興味のある

あなたはぜひ参加してみて下さい!

(編集長)

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春のイベントのご案内

春休みに病院説明会が開催されます。

当院も参加しますので、ぜひブースに

お越しください!

 

 

レジナビフェアスプリング2019東京

日時:平成31年3月10日(日)午前10時~午後5時

場所:東京ビックサイト 東7・8ホール

詳細はこちら

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茨城県臨床研修病院合同説明会

日時:平成31年3月17日(日) 午後1時~午後5時

場所:イーアスつくば 2Fイーアスホール

詳細はこちら

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血培陽性です!

2019.01.26

80歳台の女性。

尿路感染症による発熱で、

体動困難となり入院しました。

 

入院時の血液培養は陰性で、

尿培養は素直な大腸菌(E.coli)。

点滴でセフェム系抗菌薬を選択して

順調に発熱も尿所見も改善して

いました。

 

ところが入院4日目に突然の

悪寒戦慄を伴う発熱を来しました。

再度血液培養を2セット採取したところ、

翌日の夕方に細菌検査室から、

「先生!血培陽性でした。4本中1本から

GPC(グラム陽性球菌)が出ました。」

 

こんな時、あなたは次にどうしますか?

このような状況で考えておくべきことは

点滴ラインからの血流感染です。

 

特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus 

aureus)による菌血症は感染性心内膜炎

や腸腰筋膿瘍など、厄介なことに

つながる可能性があり、決して甘く

見てはいけません。

 

患者さんの状態によっては、

菌が同定される前に適切な抗菌薬に

変更するなど、迅速な対応が必要と

なります。

 

一方で、血液培養を採取する際の

汚染(Contamination)の可能性も

考えられます。

具体的には表皮ブドウ球菌

(Staphylococcus epidermidis)の

場合です。

 

そこであなたは、

「菌の同定や感受性はどうですか?」

と聞いてみましたが、「明日にならないと

分かりません」と言われてしまいました。

 

でもあなたは、ここで引き下がっては

いけません。

 

「コアグラーゼはどうですか?」

聞いてみて下さい。

 

コアグラーゼ陽性か陰性かで、

菌がある程度推察できます。

 

もし、コアグラーゼ陽性(CPS:

Coagulase Positive Staphylococcus)

なら黄色ブドウ球菌

 

コアグラーゼ陰性(CNS: 

Coagulase Negative Staphylococcus)

なら表皮ブドウ球菌となります。

 

4本中1本でCNSなら、汚染菌の可能性

が高くなり、もう少し様子を見ても良い

かな?と判断できます。

 

一方、CPSなら点滴ラインからの

血流感染がより疑わしくなるので

ラインの抜去・差し替えと共に

抗菌薬の変更を検討します。

 

臨床的にヤバそうな患者さんなら、

MRSAの可能性を考えてバンコマイシン

(VCM)を考慮します。後日、MRSAでは

ないことが判明すれば第1世代セフェムの

セファゾリン(CEZ)を選択します。

 

状態のよい患者であれば、そう慌てる

ことはないかもしれません。しかし、

状態の悪い患者さんに血液培養で

GPCが検出されたら、速やかな対応が

必要となる場合があることは知って

おいて下さい。

 

こんな時、菌が同定されなくても、

ある程度がヤバいか、ヤバくないかの

判断ができることを知っておきましょう。

(編集長)

 

入院患者のカンファ中

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