臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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アルドステロン症の見つけ方  その7

2018.01.13
カテゴリー: カンファレンス循環器

 前回は副腎静脈サンプリング(AVS)の

具体的なやり方について紹介しました。

 

AVSは右副腎静脈のサンプリングが

最大の難関ですが、うまくサンプリング

できたかどうかの判定はコルチゾールで

判定します(つまり、AVSでは

左右副腎静脈、IVCの3か所から

ACTH負荷前後でアルドステロン、

コルチゾールを測定します)。

 

具体的には副腎静脈とIVCのコルチゾール

濃度比(Selectivity Index:SI)または

コルチゾール濃度を用います。

 

日本内分泌学会のコンセンサス

ステートメントでは、

SIのカットオフ値を

ACTH負荷前のSIは2.0以上、

ACTH負荷後のSIは3.0または5.0以上

で適正なサンプリングと判断します。

 

コルチゾール濃度については

ACTH負荷前では40μg/dl以上、

ACTH負荷後は200μg/dl以上

で適正なサンプリングと判断します。

 

さて、コルチゾールでサンプリングが

適正に行われたことが確認されれば、

局在診断(片側性か両側性か)の判定に

移ります。

 

局在診断にはACTH負荷後の

Lateralized ratio(LR)と

Contralateral ratio(CR)を用います。

 

LRは左右副腎静脈で比較し、

(高値側のアルドステロン/コルチゾール)

÷(低値側のアルドステロン/コルチゾール)

で求めます。

 

CRは

(副腎静脈低値側のアルドステロン/コルチゾール)÷(IVCのアルドステロン/コルチゾール)

で求めます。

 

LR>4かつCR<1.0で片側性と診断し、

手術適応を決定するように推奨されて

います。

 

実際にはこれに当てはまらない

グレーゾーンがあるのですが、

総合的に判断するか、AVSをやり直して

みることになります。

 

明らかな結果であれば心配いりませんが、

判定に悩む時には内分泌専門医に

相談したほうが良いですね。

           (編集長)

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2月24日(土)、25日(日)

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アルドステロン症の見つけ方  その6

2018.01.09
カテゴリー: カンファレンス循環器

今回は副腎静脈サンプリング(AVS)について

紹介します。

 

AVSはアルドステロン症の局在診断に

必要な検査ですが、前提として手術を

考えている場合に施行します。

逆に、手術を考えていない場合や何らかの

理由で手術できない場合にはAVSをする

必要はありません。

 

AVSのことは知っていても、実際にAVSを

見たことがある人や、具体的にどうやる

のかを知っている人はほとんど見かけ

ませんので、細かいですが解説します。

 

当院ではほとんどの場合は外来検査

として行っています。

 

精度を上げるためにACTH負荷を行い、

検査時間は平均90分程度です。

このため、朝に来てもらい準備をして

10時ころから開始し、昼頃には検査終了。

1時間弱の安静で穿刺部出血がないかを

確認して昼過ぎに帰宅という流れです。

検査結果はその日にはでないので、

1週間後に外来で結果説明となります。

 

手技について具体的に説明すると

・右大腿静脈から5Frシースを挿入。

・左副腎静脈用カテーテルを進めて

 IVCでサンプリング

・次に左腎静脈に還流する左下横隔膜静脈

 にエンゲージ。

・さらにマイクロカテーテルを左副腎静脈に

 進めてサンプリング

・同じカテーテルのまま、右副腎静脈を

 探します。

・右副腎静脈を同定できても、カテーテル

 が安定しない時は右副腎静脈用カテーテル

 に交換してエンゲージさせます。

・マイクロカテーテルを右副腎静脈内に

 進めてサンプリング。

・左右のサンプリングを終えたら、点滴から

 コートロシン0.25μgを静注

・静注後20~30分の間に右副腎静脈、

 左副腎静脈から負荷後のサンプリングを

 行います。

・最後にIVCのサンプリングも行って終了。

 

右副腎静脈へのエンゲージが困難で、

せっかくエンゲージさせたカテーテルを

動かしたくない時は、もう1本右大腿静脈

からシースを挿入して、同時に2本の

カテーテルを入れてサンプリングを行う

こともあります。

 

AVSの最大の難所は右副腎静脈からの

サンプリングです。

 

右副腎静脈は非常に細い静脈で、

カテーテルがエンゲージしにくいし、

小児の採血のようにポタポタとゆっくりしか

血液が引けません。呼吸などでエンゲージ

が外れたりと、非常に気を使います。

そして上手くサンプリングできたか、

その場では分からないのです。

 

ちなみに当院では、今までに30例の

AVS施行例がありますが、平成18年から

平成23年末までの初期の20例だけを

見てみると、左副腎静脈のサンプリング

成功率は95%でしたが、右副腎静脈の

成功率はなんと40%しかありませんでした。

 

幸い、その後の連続10例については

右副腎静脈の成功率は90%まで改善

しています。

 

成功率が改善したのは、造影CTで右副腎静脈

を同定しておくことと、マイクロカテーテル

の使用ですが、造影CTもルーチンには

行っていません。きちんとサンプリング

できているかをコルチゾール迅速測定キット

で判定する手もあるのですが、

まだ利用したことはありません。

 

たぶん経験値が改善に一番寄与している

気がします。ちなみに失敗理由を探ると、

右副腎静脈をそもそも間違っていたことが

しばしばありました。

 

というのも、IVCにはあんまり腎静脈と

肝静脈以外はあんまり流入する枝が

ないようなイメージですが、じつは色々と

細かい枝が入っています。

写真のように、初期は右下肝静脈や肝小葉

から直接IVCに還流する短肝静脈を間違って

認識していました。もしこれから取り組む人

がいたら気を付けてください。

 

ハッキリ言ってAVSは見ていても、

全く面白くない検査です(笑)。

 

術者としても達成感がないのですが、

1週間後にきれいなデータが出ていると、

一人でガッツポーズをしています(笑)。

 

次回はAVSの結果判定についてです。

           (編集長)

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アルドステロン症の見つけ方  その5

2018.01.04
カテゴリー: カンファレンス循環器

 前回はカプトプリル負荷試験など機能検査で

原発性アルドステロン症(PA)と診断された

後の対応について紹介しました。

 

次に知りたいことは片側性か、両側性かで、

最初にやることはCTでした。ただし、

一般にPAでは腫瘍サイズが小さいので、

CTで腫瘍が分からなくとも否定は

できません。

 

もし、仮に片側性病変だったとしても、

患者さんが手術を望まない、

もしくは手術できない状況であれば、

ここで打ち止めです。

この後は内科的治療になります。

 

一般論として、片側病変であれば

病側の副腎摘出を勧めますが、

じつは副腎摘出と内科的治療とで、

長期的な臓器障害や生命予後を比較した

エビデンスはありません。

 

なので、手術を希望しなければ

内科的治療としてアルドステロン拮抗薬

(スピロノラクトンやエプレレノン)を

服用してもらいます。

 

通常はスピロノラクトンで100㎎~200㎎/日

ほど必要になりますが、カリウム値を

見ながら用量を調整していきます。

 

一方、CTで片側性が疑われたり、

両側性かどうかはっきりしない場合で

患者さんが手術をしてでも血圧の

コントロールを得たり、降圧剤を

減らしたいと思っているのであれば、

次にすることは局在診断、具体的には

副腎静脈サンプリング(Adrenal venous

sampling:AVS)を行います。

 

次回はAVSについて紹介します。

             (編集長)

年末のICUの一コマ

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アルドステロン症の見つけ方  その4

2017.12.28
カテゴリー: カンファレンス循環器

 前回までアルドステロン症のスクリーニング

と機能検査について紹介しました。

カプトプリル負荷試験などの機能検査で

アルドステロン症と診断されれば、

次の病型診断に移ります。

 

実はアルドステロン症の病型分類は

下の表のように10個もあります。

でも実際に覚える必要はなく、片側病変か

両側病変かを判断することがポイントに

なります。何故かというと、片側病変なら

手術を、両側病変なら内服治療となるから

です。

 

そのためにまずやるべき検査はCTです。

一般に片側性であるAPAの腫瘍サイズは

平均12㎜程度と小さいので、CTでは1㎜

スライスで撮影する必要があります。

 

またアルドステロン症はコレステロールが

豊富な腫瘍なので、単純CTでは腫瘍が

Low densityになっています。このため

単純CTでも十分にあたりはつけることが

出来ます。ただし、副腎静脈サンプリング

(AVS:Adrenal venous sampling)をする際

には造影CTでの副腎静脈の同定が役に

立ちます。

 

注意点は、片側に径が10㎜程度で

Low densityの腫瘍を認めれば、かなり

疑わしいのですが、径が6㎜以下の微小腺腫

がAPAの約半数を占めていることや、腫瘍

病変の無いUAHやUMNがあるので、

CTで副腎に異常がなくともAVSで局在診断

が必要となります。

 

             (編集長)

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